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イッピン選「悠久の時が生む漆黒の器 ~宮城 雄勝石~」

<番組紹介>
評判のフレンチレストランで出される「漆黒のプレート皿」、
端正なフォルムで人気の「石の盃」。
宮城県の雄勝石で作られた製品の魅力を
女優の内山理名が徹底リサーチ!
評判のフレンチレストランで出される食器、
「漆黒のプレート皿」。
これは宮城県石巻市の雄勝町で生まれたイッピンで、
材料は「雄勝石」という真っ黒い石!
「驚くほど薄く割れる」という
雄勝石の不思議な性質を活かしてこの皿は作られた。
そこには1億年前に起こった自然現象が大きく関係していた!?
さらに「ある技術」を駆使して生み出した端正なフォルムの
「石の盃」など。
雄勝石で作られた製品の魅力に女優の内山理名が迫る。
<初回放送日:平成30年(2018)年1月8日>
 

 

 

1.プレート皿

 
東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた雄勝町。
全国から来た延べ6,500人以上のボランティアにより
流失した原材料・硯・石工芸品を回収。
平成24(2012)年の東京駅丸の内駅舎保存復原には、
この時、回収した雄勝石のスレート約1万5千枚が用いられていました。
 
平成24(2012)年4月には震災後初めて採石が行われ、
伊勢神宮より依頼を受けた硯を生産するなど、
少しずつ震災前の硯産地に近づけられるよう努め、
平成26年には特許庁より「地域団体商標」に登録されました。
 
「雄勝石」は、圧縮や曲げに強く、
吸水率が低いため経年変化しにくいという特徴を活かして、
明治以降の洋風建築の屋根などのスレート材として利用されてきました。
 
建築資材としての需要が減ったことから、
プレート皿のアイデアが生まれました。
雄勝硯生産販売協同組合の千葉さんによると、
「雄勝石」は薄く割れる性質を持っているとのこと。
割れた石肌はツルっとしていて、更に削る加工も可能です。
 
プレート皿の作り方が紹介されました。
まずは皿のサイズに合わせて石盤をカットし、
安定させるために、裏側を石を磨いて平らにします。
面を整えて、縁は持ちやすいよう斜めにします。
小さな筋目を落としていったら、完成です。
 

 
 

2.日本人が愛し続けてきた硯「雄勝硯」
 (樋口昭和堂硯舗・樋口昭一さん)

 
「雄勝石」は室町時代より、
墨の持ち味を引き出す硯としてその名が知られるようになりました。
震災後職人が減る中、樋口昭一さんは硯作りを一手に引き受けています。
 
 
樋口さんは、それぞれの石を生かすことにこだわっていらっしゃいます。
ひとつひとつの岩肌の表情や硬さ、性質を見極めながら彫っていきます。
美しい硯にするためのポイントは、
「陸」と「海」の境目の「胸」だそうです。
削り過ぎても境目が分からなくなる。
 
樋口さんの作業の様子が紹介されました。
専用のノミを使って外枠を作り、
その後丸い刃のノミに持ち替えたら、円を描くように整えていきます。
最後に砥石を使って、表面を滑らかにします。
 
 
 

3.石の限界に挑戦!優美に輝く盃「雄勝濡れ盃」
 (「こけしのしまぬき」島貫昭彦さん)

 
「雄勝の濡れ盃」は、
東日本大震災の地震及び大津波により
甚大な被害を被った雄勝町の復興支援を目的として、
地域産学官連携により開発されたものです。
 
 
 
宮城県大崎市のNPO法人「未来産業創造おおさき」、
仙台市の工芸品販売「こけしのしまぬき」などの企業、
更には大学、自治体が協力。
石巻市のみならず、仙台市や大崎市、美里町など「オール宮城」で
誕生しました。
 
中心的な役割を果たしたのが、「こけしのしまぬき」の島貫昭彦社長です。
「雄勝の濡れ盃」の販売と盃のデザイン、
原材料の雄勝石の調達などを担当しました。
島貫さんは、「硯以外のものを作れないか探していた時に、
盃を作るような最新技術があることを知った」とおっしゃいます。
 
「雄勝石」は平らに割れやすい性質があるため、
丸く加工するのは非常に難しいです。
それを解決したのが、
東北大学大学院工学研究科の摩擦学の
堀切川 一男(ほりきりがわ かずお)教授の指導を受けた、
宮城県美里町にあるハイテク技術を使った金属の超精密加工が専門の
キョーユー」です。
 
キョーユー」が石を削るのは初めてでした。
試行錯誤の連続で、
金属と同じように石を回転させて削ったらヒビが入ってしまいました。
それで6㎜の機械の先端部分を動かして削ったところ、
2㎜の薄さに削ることに成功し、
驚くほど見事に丸い盃を削り出すことが出来ました。
滑らか過ぎて、石の製品には見えず、木製品に見えるほどです。
そして平成27(2015)年12月に直径10㎝の丸く平らな盃と、
外径5㎝の極上の冷酒用酒器「雄勝の濡れ盃」が誕生しました。
 
「雄勝の濡れ盃」は、平成28(2016)年5月に仙台市で開かれた
「G7財務省・中央銀行総裁会議」の歓迎式典で披露されました。
平成29(2017)年には、地方の名産を全国49新聞社などが審査して
1県1品ずつ表彰する「日本ギフト大賞 都道府県賞」を受賞しています。
 
「雄勝の濡れ盃」という名前は、
お酒(水)を入れると石の肌の色が濃いグレーから黒く変わって、
盃がぬめっとしてきて、酒が美味しく見えることから来ています。
 
素材は天然石で、
ひとつひとつの石によって割れ方が違うため、
加工面の表情はひとつひとつ異なり、
世界にひとつだけの盃を持つことが出来ます
 
雄勝石は熱伝導がいいので、熱燗だと手が熱くなります。
ですから、「雄勝の濡れ盃」は冷や酒がオススメです。
熱が伝わりやすいので、手のひらの体温でお酒が温まり、
いい香りが立ち込めます
 
広い盃の濡れた風情を眺めながらお酒を味わう時は「平盃」で、
手に包み込んで石の肌触りを感じながらお酒を楽しむ時は、
「ぐい呑み」や「角盃」がいいでしょう。
 

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