MENU

イッピン「庶民の器が華麗に変身!〜愛知瀬戸焼〜」

<番組紹介>
光にかざすと透けて美しく輝くカップや、
伝統の絵付け模様を大胆にアレンジした色鮮やかな器。
驚きの進化を遂げている「せともの」=瀬戸焼の魅力に、
吉木りさが迫る。
 
光にかざすと透けて美しく輝く、花びらを模したカップ。
モダンな印象の器は、愛知の瀬戸焼。
「せともの」の呼び名で親しまれ、
茶碗や湯飲みなどの普段使いの器を作ってきた産地が今、
おしゃれに大変身中! 
白地に水墨画のような花を描いた斬新なデザインの皿や、
江戸から続く瀬戸伝統の絵付け模様をアレンジした
色鮮やかな器まで。
驚きの進化を遂げている瀬戸焼の魅力を
吉木りさがリサーチする。
<初回放送日: 令和2(2020)年10月18日>
 
 

1.樽田裕史さん


www.youtube.com

 
樽田裕史さんは、キレイな白や青みがかった白に、
線による「蛍手」(ほたるで)という透かしが入った作品を
制作しています。
 
光にかざすと透けて美しく輝くため、
蛍の光に例えて「蛍手」(ほたるで)と呼ばれています。
「蛍手」(ほたるで)とは、明代にルーツを持ち、
磁器素地に透かし彫りをした後に、
その空間に透明釉を充填して焼き上げる技法のことです。
 
一般的な蛍手の透かし彫りは「丸い穴」が多いのですが、
樽田さんが選んだのは「線」。
釉薬を塗る前の開口部が大きくなるため、
焼きものの制作難易度は格段に上がりますが、
「線」から漏れる光は雲間からの光、クラブの光線のようです。
樽田さんはこの手間の掛かる伝統的な技法を用いながら、
透明感溢れる独自の美的表現の探求を続けています。
 
樽田さんの光が透ける陶器は評判で、
中でも花びらをイメージしたカップは女性に人気の作品です。
番組では、そのカップの製造工程を紹介して頂きました。
 

 
 

2.瀬戸染付焼「眞窯」(4代目・加藤真雪さん)


www.youtube.com

 
 
「瀬戸焼」は、約1000年前から焼かれてきた焼き物です。
世界有数と言われる白く焼き上がる良質で豊富な陶土が、
釉薬や絵付けが美しい焼き物を生み出しています。
日本の中でも珍しい、陶器も磁器も焼かれる産地で、
日本で陶器一般を指す「せともの」という言葉は、
長い歴史の中で、やきものづくりを牽引してきた瀬戸焼から来ています。
 
瀬戸物は素朴な陶器から歴史が始まりました。
今に繋がる白い器が作られるようになったのは江戸時代。
戦後には瀬戸物の大量生産が行われるようになり、
全国に「瀬戸物」が知れ渡るようになりました。
 
白地に水墨画のような花を描いた斬新なデザインの皿は、
大正8(1919)年創業の瀬戸の窯元「眞窯(しんがま)の作品です。
 

 
「眞窯」(しんがま)は、
愛知県瀬戸市の北東部の三国山の山間にある
小さな瀬戸焼の街「しなの」にある
大正8(1919)年創業の瀬戸染付の窯元です。
現在は、4代目の真雪さんと
父で3代目の眞也さん、母・美穂子さんの3人で作陶を行っています。
 
真雪さんは伝統工芸士にも認定されている染付職人で、
国内外で活躍されています。
器に一輪の花だけが描かれている器が人気です。
 
真雪さんの魅力といえば、何と言ってもデザイン性です。
そして白色の素地に、
瀬戸染付の特徴の「濃み」(だみ)と呼ばれる技法で
絵付けをしていきます。
「濃み」(だみ)とは、大きく太い筆にたっぷりと含ませた
「呉須」(ごす)という酸化コバルトを主原料とした顔料を使って文様を描き、
濃淡を付けながら描いていく技法です。
素焼きの素地への沁み込みを計算しながらグラデーションをつける技術は、
染付の中で一番習得が難しいのだそうです。
そしてガラス質の釉薬をかけて焼成すると、
墨絵にも通じるような、藍一色の濃淡だけで多彩な青が表現されるのです。
 
「呉須」(ごす)による藍色の発色は、
素地・釉薬・焼き方によって窯元ごとに変わります。
「眞窯」ではより美しい白と藍色のコントラストにするべく、
土、釉薬、呉須選びにこだわり、
「ねらし」と呼ばれる
瀬戸地方独特の焼成方法(一定時間高温を保ち焼く)により、
瑞々しく凛とした藍青色が表現しているのが特徴です。
 

 

瀬戸染付焼・眞窯

  • 住所:〒480-1218 
       愛知県瀬戸市中品野町330
  • 電話:0561-41-0721
 
 

3.瀬戸本業窯(8代目・水野雄介さん)

 
水野雄介さんは、250年以上続く「瀬戸本業窯」の8代目です。
時代の潮流を捉えた「新製焼」を手掛ける窯元が増える中、
「瀬戸本業窯」はその名の通り、
少し懐かしい、瀬戸本来の日用雑器づくりを生業にしてきました。
 

 
「馬の目」や「麦藁手」といったシンプルなデザインが
本業焼の代表的な器です。
 
民芸運動の柳宗悦氏が評価した他、
白洲正子も「麦藁手」の茶碗を愛しました。
 

 

 瀬戸本業窯

  • 住所:〒489-0847
       愛知県瀬戸市東町1−6
  • 電話:0561-84-7123
 
 

4.M.M.Yoshihashi (エムエムヨシハシ:吉橋賢一さん)


www.youtube.com

 

 
瀬戸では、昭和30年から40年代にかけて、
大量生産が行われるようになり、
型屋、生地屋、窯元、絵付屋など
それぞれの工房が専門分野に専念した、分業化が進み、
「瀬戸」という産地全体で
大量の需要に応えるためのシステムが確立していきました。
 

 
その時代に大きな窯元から独立して、昭和34(1959)年に創業し、
製品の元となる原型から量産するための型を作る
「型屋」として陶磁器生産の一翼を担ってきました。
吉橋賢一さんは3代目です。
 
 
陶磁器は「ろくろ」を回して作るというよりも、
その多くは「型」によって作られています。
「型屋」さんとは、製品の元となる型を作る工房です。
「窯元」さんがこの型に粘土を流し込み
固まったら粘土を中から取り出して、
最後に焼くことで製品になります。
 
「窯元」さんからオーダーがあって初めて仕事をする訳ですから、
「型屋」さんというのは待ちの仕事になります。
陶磁器業界全体が右肩下がりの中、
陶磁器用の型だけでは厳しい時代が来ると感じた
自動車産業を始めとする工業製品の石膏型も手掛け、
乗り越えてきました。
ところが、工業製品の生産技術の革新により、型の受注は減少。
3代目の吉橋賢一さんは待っているだけだと潰れてしまう。
それなら新しいことをやろうと、
自社ブランドを立ち上げてみようと思い、
自社で商品を企画して窯元に発注し、
販売まで手掛けることを始めました。
 
 
平成22年にオリジナルブランド「彫付(HORITSUKE)」を発表。
ここから少しずつ動き始めます。
様々なデザイナーやセレクトショップとの取り組みを通して
陶磁器の新たな魅力を発信しています。

 

 
また、「生活に溶け込み、特別に意識することなくいつも使える」を
コンセプトにしたブランド
AND C(アンドシー)」も立ち上げました。
子供から大人まで家族みんなで選んで使ってもらえるように
6色のカラー展開をしています。
 
環境が変化していく中で、
「型屋」として培った技術をベースに、
新しいことに挑戦し続けています。
 

 

f:id:linderabella:20210513110253j:plain