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イッピン「多彩な技巧 新たなきらめき〜愛知 ガラス製品〜」

<番組紹介>
愛知県で生み出されるガラス製品。
全体を網の目のように六角形の模様が取り囲んだグラスや、
大昔の「土器」のような質感のランプシェードなどを
藤澤恵麻がリサーチする。
 
「瀬戸焼」など、焼き物で有名な愛知県。
その焼き物の町で今、様々なガラス製品が誕生している。
例えば、全体を網の目のように六角形の模様が取り囲んだグラス。
細かいパーツを編み物のように組み合わせて作られたものだ。
そして、大昔の「土器」ように見える不思議な質感のランプシェード。
明かりをともすとガラスとは思えない温かな光を放つ。
さらに、草花をモチーフにした曲線が美しい切子ガラス。
藤澤恵麻がリサーチする。。
<初回放送日:令和2年(2020)年4月14日>
 
 
瀬戸市は、「ガラス」の主原料である
「珪砂」(けいしゃ)の全国一の産地です。
「珪砂」を精製し、その後、1700度以上の高温でドロドロに溶かし、
必要な形に成型すると「ガラス」になります。
最近の全国シェアは40%前後ですが、
最盛期の昭和40年代には70%前後あったそうです。
資源の少ない日本の中である程度、国内で賄える原料であると言えます。
 
瀬戸の「珪砂」は全国のガラス工業で使用されています。
そして瀬戸市でも様々なガラス製品が作られています。
 
 

1.「瀬戸切子」(切子作家・左口 学さん)


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「切子」(きりこ)とは、
ガラスの表面を彫り込んで細工するカッティングの技法、
及び、その技法で装飾されたガラスの器のことを言います。
代表的な日本の代表的な切子の工芸品の種類としては、
「江戸切子」と「薩摩切子」があります。
 
名古屋市生まれの左口学(さぐち まなぶ)さんは、
「薩摩切子」が有名な鹿児島に住んでいた祖父母の影響で、
小さい頃から切子や吹きガラスの工場をよく見学していました。
東京ガラス国際学院・基礎科卒業をして作家活動を経た後、
瀬戸市新世紀工芸館」の研修生として瀬戸へ。
現在は独立して、形成から削りまで一貫して行なっています。
 
 
左口さんが作る作品「瀬戸切子(せときりこ)は、
淡い色や二色三色使い、草花をモチーフにした
曲線が美しい切子ガラスです。
色によって硬さが異なるガラスは、
異なる色を組み合わせて形を整えるのが難しいのですが、
左口さんは試行錯誤により
2〜3色のグラデーションを実現させることに成功。
多彩なガラスが光を受けて、優美な輝きを放っています。
 
また左口さんは、
ドット柄や唐草紋、唐花紋、ダマスク紋、アラベスク紋など、
左右対称に滑らかに削ることが難しい、敢えて高度な技術がいる
曲線文様にこだわって、器やコップを制作しています。
 
 
  • 住所:〒480-1207
       愛知県瀬戸市品野町4丁目599
  • 電話:0561-76-9617
 
 
 

2.ガラス作家・吉村桂子さん(glass studio Katsura

 
吉村桂子さんは、富山ガラス造形研究所造形科を卒業され、
現在は愛知にて活動されている女性ガラス作家さんです。
 
「色」を楽しむことを大事にしている吉村桂子さんが作るのは、
カラフルで温かみのあるおしゃれなガラスの製品です。
代表作は、
洗練された色調のモザイクガラス「Iroami」(イロアミ)や
全く異なる模様のガラスをランダムに繋ぎ合わせた
「Tsugihagi」(ツギハギ)です。
 
他にも、お花のような星のような様々な模様が
彩り豊かに施された色の刺し子「Irosashi」(イロサシ)や
「Iroe」(色絵)、「Mebuki」(芽吹き)があります。
 
 
 
番組では、「Iroami」(イロアミ)シリーズの
六角形を組み合わせた模様のグラスを制作する様子が紹介されました。
 
吉村さんは、「ムリーニ」と呼ばれるヴェネチアングラスの技法で、
金太郎飴状の長いガラス棒作成し、それを細かいパーツに輪切りし、
最後にそれらを敷き詰めて一連の模様を表現する技法で
制作されています。
 
まずは透明のガラスに色を付けてから細長く伸ばして棒を作り、
それをカットして丸いパーツを作ります。
色のバランスを考えながら丸いパーツを1つずつ並べ、
炉に入れて柔らかくして押し付けていくと、
熱せられたパーツは互いに隙間を埋めようとして広がり、
六角形になります。
ただここで作業を急ぎ過ぎて熱を加え過ぎると形が崩れてしまう、
手間暇の掛かる手法です。
ガラスの粒が溶けてくっついて板になったら
それを巻き取って、吹きの作業に入ります。
そんないくつもの工程を経て、やっとこのグラスは生まれます。
そのため、1日で10個の作品を作るのがやっとなのだそうです。
 
 
それでも、吉村さんは
「出来上がったものに自分も元気づけられる。
 苦しみながら作ると思うんですけど、続けていきたい」と
おっしゃていらっしゃいました。
 
なお、吉村さんの作ったグラスの下の部分には、
工房名に因んで「Katsura」の銘が入っています。
 

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