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イッピン「土の新たな可能性を 〜茨城 笠間焼〜」

<番組紹介>
瓶やすり鉢など、
耐久性が求められる焼き物を多く生んできた笠間焼。
酸化鉄を多く含み、
茶色に焼きあがる笠間の土の弱点と向き合い、
新しい可能性に挑む作家たちに迫る。
 
多種多様性ゆえに
「特徴がないのが特徴」ともいわれる笠間焼。
笠間の土は職人たちを刺激し続け、
さまざまな試みに挑ませてきた。
炭化焼成を陶芸に取り入れ、
黒く金属的な質感を器に持たせた
元ジュエリー・デザイナー。
笠間の土を釉薬がわりに、
料理が映える器を手掛ける陶芸家。
笠間の土と釉薬との反応を研究し、
やわらかな質感のカップを作った陶芸家など、
土の性質を見極めながら斬新な器づくりに取り組む職人たちに迫る。
 
 

1.笠間粘土の特性(Keicondoさん)


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Keicondo(ケイコンドウ)さんの作品と言えば「イエロー」。
茨城県窯業指導所(現・茨城県立笠間陶芸大学校)に入所して陶芸を学び、
卒業後はJICA青年海外協力隊に所属して、
南米のボリビアで陶芸指導を行いました。
この時ボリビアで見た大地の茶色く黄色っぽいような色が
Keicondo(ケイコンドウ)さんの作品の特徴になりました。
 
「笠間粘土」が使われなくなっていることに危機感を持っていらっしゃいます。
 
笠間焼の歴史はおよそ250年。
笠間焼は、「笠間粘土」を使うことで丈夫で固く焼き上がる為、
甕・摺り鉢などのような耐久性が求められる日用雑器が作られてきました。
ただ「笠間粘土」は酸化鉄を多く含んでいる赤土で、
焼くと茶色くなってしまい、
その上に釉薬(ゆうやく)を塗ると発色も悪くなってしまいます。
その為、最近は余り使われなくなってきているのです。
 
「岐阜県の土で陶器を作り、その上に笠間粘土を塗る」という手法で、
「笠間粘土」を釉薬のように使って作陶されています。
 
 

2.土を金属のように!(沖 誠さん)

 
沖 誠さんは、静岡県生まれ。
ジュエリーデザイナーとしてオリジナルブランド運営していましたが、
平成19(2007)年より笠間の陶芸家の伊藤東彦氏の元、陶芸を始めます。
平成21(2009)年にはKeicondo(ケイコンドウ)さんも通われた
「茨城県窯業指導所」(現・茨城県立笠間陶芸大学校)に入所して、
陶芸を学びました。
「茨城県窯業指導所」は、
後継者育成のために昭和25(1950)年に設立され、
平成28(2016)年に茨城県立笠間陶芸大学校となりました。
ここから、多くの新しい感性の陶芸家達が育っています。
 

www.itic.pref.ibaraki.jp

 
 
そんな沖誠さんの器は、
「黒」「赤」「銀」というような色が特徴です
 

 
特に黒い器は「炭化焼成」という
炭素が器に付着する手法によるもので、
まるで金属を思わせるような肌になっています。
「炭化焼成」とは、作品をいぶしながら本焼きする技法です。
 

 
「匣鉢」(こうばち)の中に
作品とともに大小の木炭やモミ殻等を入れて蓋をし、
そのまま窯詰めします。
酸化・還元等窯内の雰囲気に関わらず、
匣鉢(こうばち)の内部は強い還元がかかり、
その炭素が作品に吸着することで窯変します。
木炭等の量や、密度と埋め方、土の種類によって
様々な景色が生まれます。
 
匣鉢(こうばち)
  
陶磁器を焼く時に、素地を火炎その他から保護し、
影響を受けないようにするために用いられる
耐火性の容器のこと。
さや、えんごろ、ぼし、などとも呼ばれています。
 
赤土を使ったこの作品は、
黒から褐色、緋色へと、複雑な景色が波状の層となって全面に表れます。
ビールカップで使うと、泡立ちがきめ細かく口当たりが良くなります。
また、釉薬を掛けた花瓶やガラスの花瓶よりもお花が長持ちします。
これは焼き締めることで、
土の多孔質という性質が水を腐りにくくさせているからなのです。
 
 
 
 

3.土を生かす釉薬の妙技(鯨井円美さん)


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鯨井円美さんも
「茨城県窯業指導所」(現・茨城県立笠間陶芸大学校)を終了後独立され、
笠間で作陶をされている作家さんです。
 
鯨井さんが作品に使用しているのは「笠間粘土」です。
Keicondo(ケイコンドウ)さんのところでも記したように、
「笠間粘土」は酸化鉄を多く含んでいる赤土です。
表面の凸凹や縁に土色の影響が出やすく、
釉薬をキレイに見せることが難しい土です。
ですが鯨井さんの作品の独特の色合いは
和でも洋でも、どんなテーブルでも合わせやすいと評判です。
 
鯨井円美さんは「笠間粘土」に合う釉薬を求めて、
数多くのテストを重ねてきました。
そして5年のテストの末、今の釉薬に行き着いたのでした。
 

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