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イッピン・名匠への道「未来へ 輝きはさらに深く 熊本・肥後象嵌」

<番組紹介>
江戸時代、熊本で独自の進化を遂げた象嵌を
肥後象嵌という。
コロナ禍の中で、
その伝統に新たな風を吹き込もうと奮闘する
二人の若手職人を追い、その技術と思いに迫る。
 
コロナ禍の厳しい状況の中、
伝統工芸を守り、発展させていくために、
新たな挑戦にのりだした若手職人を紹介するシリーズ
「名匠への道」。
 
今回は、江戸時代に独自の進化を遂げた
熊本の肥後象嵌。
象嵌とは黒地の鉄板に金や銀の形をはめ込んでいく
装飾技法 。
一人は、かつて肥後象嵌の特徴だっ
た独特の黒の再現に挑み、成功させた職人。
もう一人は、スペインの象嵌技法を取り入れ、
“渋さ”が身上の肥後象嵌に華やかさをもたらした職人。
 
<初回放送日:令和2(2020)年8月25日>
 
 

1.京象嵌「アミタ」奥田裕也さん

 
平成30(2018)年、
「漆黒に浮かぶ金銀の輝き〜京都 京ぞうがん〜」の回に登場した、
象嵌師・奥田裕也さんは、
新型コロナウイルスで営業出来ない日々が続く中、
奥田さんは技術を洗練させることに努めていました。
直径わずか3cmの円の中に
金と銀、黒を配した風景を表現していました。
奥田さんは、40代ですらまだまだ若手だとおっしゃっていました。
 

 
  • 住所:〒606-8323
       京都市左京区聖護院円頓美町21
       京都ハンディクラフトセンター
  • 電話:075 - 761 - 8001
 
 
 

2.稲田憲太郎さん


www.youtube.com

 
「肥後象嵌」は、武士の刀や銃の装飾として受け継がれてきたため、
渋さと重厚感を醸し出しています。
これは、鉄を錆びさせることで黒を表現しているために
生まれるものだそうです。
 
稲田憲太郎さんは、「肥後象嵌」の技術で、
帯留め、香炉、ピンバッジなどおしゃれなアクセサリーを
ほぼオーダーメイドのみで製作しています。
卓抜の技術から生まれる端正で美しい作品にはファンも多く、
休む間も惜しいほど日々作品作りに励んでいます。
 
稲田さんは、叔父さんが肥後象嵌士であったため、
仕事する姿を間近に見ながら
モノづくりを生業にすることへの興味を深めていきました。
17歳で象嵌師になることを決意し、
高校を卒業すると19歳で、人間国宝・米光太平光正氏を始め、
多くの肥後象がん士を輩出した米野美術店に就職、
働きながら基礎を学びました。
 

 
更に、4年後には河口知明氏に師事し、
27歳で独立して工房を構えました。
その後も多くの象嵌技術に触れながら、
技術を高めることに力を注いでいます。
 
平成29(2017)年には、新しい発想でモノづくりに取り組む
若き匠をサポートする「レクサスニュータクミプロジェクト」の
熊本県代表に選出されましたが、
「SAMURAI」をコンセプトに作り上げた作品は、
バイヤーを始め、多くの人々に支持されました。
 

lexus.jp

 
 
人間国宝・米光太平氏が手掛けた作品に近づこうと、
稲田さんが目指すのは、「赤みがかった黒」。
稲田さんは自然由来のもので、昔の溶液の再現をしました。
赤土に含まれる「酸化鉄」がカギを握るのだそうです。
まずは溶液に鉄を浸し、炭火で熱した網に乗せる。
乾いたら溶液に浸し、鉄網に乗せるという工程を20回以上繰り返します。
 
稲田さんは、江戸や明治時代に活躍した
職人のレベルに到達したいとおっしゃいます。
そして、90歳でも仕事をしていたと考えると
あと40年の月日は残されているとおっしゃっていました。
 

 
 

3.Damasquinador
 (ダマスキナドール:伊藤恵美子さん)

 
伊藤恵美子さんは
熊本の伝統工芸である「肥後象嵌」と
スペイン・トレドの伝統工芸である
「ダマスキナード(damasquinado・スペイン象眼)」を融合させた
アクセサリーブランド「Damasquinador(ダマスキナドール)
平成27(2015)年に立ち上げました。
 

oveja-emi.cocolog-nifty.com

 
伊藤さんは、23歳の時、「肥後象嵌」のことを知り、
象眼についてネットで調べていると、
スペインにも技術があると知りました。
そこで、九州電力の派遣事業に応募して、留学しました。
 
トレドはスペイン中央部にある
世界遺産にも登録されている古都です。
そんな伝統ある古都で受け継がれてきた工芸が
「ダマスキナード(Damasquinado)」です。
 
 
「ダマスキナード」とは、
日本語で「象嵌細工」と言います。
スペイン・トレドのダマスキナードは「金工象嵌」で、
金属のプレートなどに金や銀で出来た糸を象嵌し
文様を仕上げていたものになります。
「金工象嵌」は、
元々シリアのダマスカスから生まれたとされており、
「ダマスキナード」の名前も
ダマスカスからきていると言われています。
 
 
伊藤さんは、スペインで一通り修業してから、
日本の象嵌の技術を見直してみると、
日本的な感覚が美しいなと気づき、
スペインの派手できらびやかなものと日本の侘び寂びを融合した
若い女性が気軽に手にしてもらえるような
「可愛い」を生み出したいと思い、
アクセサリーを製作されています。
 
 
伊藤さんは、百貨店などで展示販売が決まっていましたが、
コロナ禍で白紙となってしまいた。
それでも伊藤さんは立ち止まることなく、
表現の幅を広げるべく、
京象嵌の「中嶋象嵌」の三代目・中嶋龍司さんに連絡を取って、
「京象嵌」の技法について尋ねました。

この技法を取り入れて、
違う世界観を見せることが出来ればと考え、
伊藤さんは日々精進しています。
 

 
 
 

4.べっ甲象嵌(松下良太郎さん)

 
松下良太郎(まつしたよしたろう)さんは、熊本地震をきっかけに、
歯科技工士から肥後象眼師に転身した作家さんです。
肥後象眼で培った技術を生かして、
鼈甲(べっこう)に金銀の繊細な装飾を施した
「べっこう象嵌」独自に確立しました。
 
これは「ピクウェ」(Pique)と言い、
ルイ14世の頃の17世紀フランスで誕生した技法で、
鼈甲、象牙などに金、銀、真珠母貝を象嵌したものですが、
製法が秘法とされたために
19世紀末頃を最後に歴史の舞台からその姿を消しました。
 

 
昭和60(1985)年に、塩島敏彦氏が発表した技法が
世界で唯一の製造技法とされてきましたが、
松下さんが、平成30(2018)年12月、遂に
「鼈甲に金銀を象嵌したピクウェ」を再現することに成功しました。
 

 
 
 

5.肥後象嵌 光助(4代目の大住裕司)


www.youtube.com

 
肥後象嵌 光助さんは、明治7(1874)年創業の肥後象嵌の老舗です。
長年の信用と実績で、 天皇陛下への献上品を始め、
熊本県、熊本市の贈答品などを委嘱されています。

刀の鍔、小柄等に独特の意匠を凝らした
古来の文様に新感覚のデザインを加え、
ファッションやインテリア分野でも注目されている存在です。
四代目光助の大住裕司さんは
肥後象嵌の真髄とも言うべき伝統の文様と意匠で、
歴史の重みを感じさせる作品と
現代的なデザインの作品を数々発表し続けています。
  • 所在地:〒860-0004
        熊本県熊本市中央区新町3-2-1
  • 電 話:096-324-4488
 
 

≪参考「肥後象眼」≫

omotedana.hatenablog.com

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