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イッピン選「伝説の古陶 よみがえる技~長崎 現川焼~」

<番組紹介>
幻の器といわれ、
200年間その製法が不明だった長崎・現川焼。
昭和の半ば、その秘密が解明されたが、
現在手がける職人はたった2人。
他の陶器には見られない魅力に迫る。
初回放送日:令和3(2021)年5月8日 
 
 
<参考> 現川焼(うつつがわやき)

元禄4(1691)年に、諫早藩(現在の長崎市)に彗星のように現れ、
その類い稀な表現力と存在感で世の中をあっと言わせ、
半世紀程でこの世から忽然と消失した「現川焼」(うつつがわやき)
 
諫早家「日新記」の記録によると、
「現川焼」(うつつがわやき)
元禄4(1691)年に諫早家・田中刑部左衛門が開窯し、
寛延元(1748)年までの60年間に渡って焼かれた窯です。
 
 
鉄分の濃い粘土を素地に、
刷毛目技法を駆使した大胆な器形と、
呉須、鉄砂、白土を用いて一筆で、
四季折々を描いた図柄が合致した姿は、
「西の仁清(じんせい)」「刷毛目文様の極致」と賞賛されました。

ところが藩の財政面を理由に、
突如として「現川焼」は姿を消し、
残された一握りの品は幻の銘陶となり後世への伝説となりました。
「現川焼」に魅了された沢山の陶工達は、
幻となった秘法の再現に挑戦してきましたが、
約200年間は誰も再現を成功させることが出来ませんでした。
 

 
明治時代に入り、「臥牛窯」(がぎゅうがま)の12代・横石臥牛が
この秘法の謎を解き明かし、現代にその陶器を蘇らせます。
その後、13代の横石臥牛兄弟が再現を完全なものに仕上げました。
そしてこの「現川焼」再興の技法をもって、
「長崎県無形文化財」となりました。
 
現在、再興された「現川焼」を手掛ける職人は
わずかに2人です。
佐世保市木原皿山にある「臥牛窯」と、
長崎市現川町にある「土龍窯」です。
 
 

1.臥牛窯(がぎゅうがま)

 
臥牛窯(がぎゅうがま)は、慶長7(1602)年に、
三川内(皿山・木原・江永)のひとつ「木原皿山」に開窯し、
420年もの間、代々伝承を重ね伝統の技を受け継いで来きました。
地元で採れる赤土を使い、古来より伝わる刷毛目文様を施した「陶器」と
泉山に発見された磁石を使って作る「磁器」の
相対する両極の技術を有する類稀なる窯元です。
 

 
「臥牛窯」という名前は、
窯元を訪れた松浦藩の初代藩主・松浦鎮信候が
「臥した牛に見える窯の形状」から命名したものです。
 
「臥牛窯」の12代目・横石臥牛が、試行錯誤の末、
「現川焼」の「刷毛目」の技法を解き明かしました。
 


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番組には、14代目の横石臥牛さんが登場されました。
14代目によると、軽くて薄い「現川焼」には、
地元の赤土が欠かせないそうです。
この赤土を3年間寝かせると、粘り気が強くなります。
ただ、粘り気のある土の扱いは難しく、焼くと縮んでしまいます。
普通は収縮率17%程ですが、「現川焼」の収縮率は23%。
きめを細かくするためには、技術が必要なのだそうです。
 
次は、「刷毛目」をつけます。
「刷毛目」の最大のポイントはタイミング。
一般的には、素焼きをした後に絵付けをしますが、
「現川焼」は素焼きをする前の
生地が生乾きの状態で「刷毛目」をつけます。
 
14代目は、白化粧土を器に、
ヤギやイタチなどの毛で出来た筆を打ち付けていきます。
これを「打ち刷毛目」と言います。
何度も打ち付けると、水分と白い成分の両方が粘土と混じり合い、
白い成分の一部だけが表面に残ります。
器が白くなった状態で焼けば、器は白くなるはずですが、
実際には、白い刷毛目の線が一部にしか残りません。
 

 
「刷毛目」の上に、白鷺の絵付けをしていきます。
白い化粧土を塗り重ね、羽の一本まで丁寧に仕上げていきます。
描いた器を素焼きし、
更に釉薬に浸して、再び1250℃の窯で30時間程焼いてきます。
 
  • 住所:〒859-3166
       長崎県佐世保市木原町1897-1
  • 電話:0956-30-8653
 
 

2.土龍窯(向井康博さん)

 
現川町には、「現川焼」を制作するもう一つの窯元
「土龍窯」(どりゅうがま)の向井康博さんは
元々サラリーマンでしたが、「現川焼」に魅せられ修行を積み、
30年前にこの地で製作を始めました。
向井さんは、伝統を守り、現川の山で採れる鉄分の多い赤土で作陶。
白化粧土を刷毛筆で彩り、現川焼の技法を再現しながら、
独自の世界を模索し続けていらっしゃいます。
 
向井さんは、江戸時代に作られた「現川焼」の破片を
大事に持っていらっしゃいます。
 
現川焼土龍窯
  • 住所:〒851-0135
       長崎県長崎市現川町2980
  • 電話:095-837-0068
 

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