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イッピン「木の個性を感じ、いつまでも 鳥取 木工製品」

<番組紹介>
森に恵まれた鳥取県。
木地師の技を受け継ぐ
緻密で美しい茶筒や廃材利用のカラフルアクセサリー、
ワイルドな彫りでもツルッとした食器。
いつまでも使いたくなる木工芸に迫る
 
ケヤキや桜やブナや杉、
様々な木に恵まれ木工の盛んな鳥取県。
全国を渡り歩く木工職人「木地師」が江戸時代に定住。
その技を受け継ぎ木の声を聞き、
2か月かけピタリと閉まる茶筒を削る職人。
民藝(げい)の椅子にも学び
ワイルドなのにツルッとした食器が飲食店で人気の職人。
廃材の木片で、元の持ち主の思いもくみ、
寄せ木でペンダントや文具を作る職人。
「いつまでも使いたい」と感じさせる、
ぬくもりに満ちた鳥取木工芸の世界へ。
<初回放送日: 2022年1月14日>
 
 
豊かな自然に恵まれた鳥取県では、
ケヤキや桜やブナや杉など豊富な森林資源を生かした
木工製品が作られてきました。
弥生人が作った精巧な木製容器が見られます。
明治時代に入り、徐々に伝統技法などは廃れていきましたが、
吉田璋也(よしだしょうや)が医師としての仕事の傍ら、
昭和6(1931)年頃から鳥取県に「民藝運動」を広め、
民藝のプロデューサーとして、県内の職人達と一緒に、
民藝品の企画・デザイン・製作・流通・販売・消費に至る組織を
作り上げました。
現在でも吉田の精神を引き継ぎ、
独自のスタイルを築いた匠達が活躍しています。
 
 

1.工房このか・藤本かおりさん


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藤本かおりさんは、大学で建築を学んだ後、
「それぞれの性格を持つ木と、対話や相談をしながら制作出来る」
そういった木工の魅力に魅せられ、
岐阜県立高山高等技能専門校で木工の基礎を学びました。
鳥取県若桜町で活躍する
山根粛(やまねただし)さんの木工作品に惚れ込み、
木地師(きじし)として活動することを決め、
帰郷して、平成14(2002)年より山根粛さんに師事し、
兵庫県山崎町の伝統京蒔絵師・武野恭永さんに漆芸を学びました。
 
平成19(2007)年に独立して「工房このか」を設立し、
木を素材に器や玩具などを製作しています。
藤本さんは、挽物での成型から仕上げの漆塗・蒔絵までを
一貫して行っています。
 
 
藤本さんの木の優しさや温かみを感じる作品は、
見ても使っても生活を豊かにしてくれます。
精密は加工技術がなければ出来ないと言われる「茶筒」は、
蓋の重みで、ゆっくり閉まって、ピタリと閉まります。
完成には、なんと2か月掛かるそうです。
手に持った時にスッと馴染む感じもたまりません。
 
藤本さんは、様々な性格を持つ木と
対話や相談をしながら木を削っていきます。
 
「木地師」は、
かつては木材が豊富に採れる場所を転々として
木製の器を作っていました。
現在、「木地師」は減少してきていると共に、
樹木の種類も減っています。
そんな中でも藤本さんが作品を作り続けているのは
木の持つ美しさと個性を伝えたいからだそうです。
多くの種類の木を使って作品を作るのは、
それぞれの持つ良さを使う人に知って欲しいからです。
 
今も木が採れるのは、
過去に樹木を植えてくれた人がいるからこそ。
未来に繋ぐためにも、消費するだけではなく樹木を育て、
「木地師」だからこそ出来ることは何かを常に考えながら
活動しているそうです。
 
 
最近、藤本さんは、樹木の魅力や大切さを広く伝えたいと、
「木育」にも取り組んでいます。
2018年 LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」の鳥取の匠として、
丸いお椀に拭き漆を施した子ども椀「育美椀(はぐくみわん)
製作・発表しています。
 
LEXUS NEW TAKUMI PROJECT とは
レクサスが主催となり2016年に始動し、
地域の特色や技術を生かしながら、
自由な発想で新しいモノづくりに取り組む、
日本各地の若き「匠」をサポートしてきました。
レクサスは、「CRAFTED」の精神のもとに
日本のモノづくりに取り組む人々を応援しています。
 
藤本さんは、小学生のお子さんを持つお母さん。
普遍的な美しさや力強さ、古代からの力をお椀に乗せて
お子さんの成長を見守るという意味が込められていて、
お守りのような存在になることを祈って作られています。
 

lexus.jp

 
  • 住所:〒680-1252
       鳥取県鳥取市河原町本鹿271−1
  • 電話:0858-85-2950
 
 
 

2.ワイルドなのにツルっとした皿(ドモク堂・朝倉康登さん)


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ドモクは「土と木」。
鳥取県湯梨浜町に工房を構える木工作家の朝倉康登さんと
栃木県益子町で作陶する陶芸家・
加藤芳夫・みえこさんご夫妻(「陶房かとう」)による
親子のクラフトユニットです。
 
自然の中から生まれる土と木のもつ力を活かし、
日々の暮らしに寄りそう道具作りをしています。
3人のユニットで全国的に活動しています。
 
 
鳥取県湯梨浜町の木工作家である朝倉康登さんは
元々、木を扱うのが好きで、小さい頃の夢は大工でした。
東京で働いていた折、
陶芸家である義父母(加藤さんご夫妻)の勧めで、
ひとつのスプーンを作ったことから木工に魅了されます。
 
平成23(2011)年3月の「東日本大震災」でUターンを即決。
地元で働きながら、実家の倉庫で本格的に始めた木工が面白く、
のめりこんでいきました。
 
朝倉さんが作る木製品のほとんどは
カトラリーや器、バターケースなど、食卓に寄り添う道具です。
 
朝倉さんの作品の特長は、
手仕事による細かい彫り痕が残る木肌の仕上げです。
やすりで磨くより、刃物で切った面の方が水弾きがよく、
食器に適しているそうです。
刃物で削った面は、光を反射するほど艶やかです。
時間は掛かりますが、ひとつひとつ手作業にこだわり、
敢えて彫り跡を残すことで、自分らしさを表現しています。
そして、体に入っても害のない
クルミ油や漆、柿渋など自然素材で仕上げます。
 
朝倉さんは、食に関するものを多く作るため、
口に入れても安心出来る自然素材にもこだわり、
木材の選別・管理も行っています。
 
主に地元で切り出された広葉樹などの原木を
譲り受けたり、買い求め、
丸太を製材するところから木材に向き合います。
現在、大きな木でも使われずチップにされるのが現状です。
朝倉さんは、たとえ曲がりや節があっても、
木の特長をよく見て、
加工する作品を思い描きながら適切に製材すれば、
余すことなく使うことが出来るとしています。
加工出来るまで乾燥させるには何年もかかるため、
数年先に使う材料を貯蔵しています。
 
使用する木材は主に国内産の桜で、
用途や特性に合わせて様々な産地・素材の木材を使っています。
特に鳥取県で多く採れる山桜の木は、
道管が詰まっているため、固く割れにくいという性質があり、
食器類を作るのに適しているそうです。
使っていくうちに木材の色が変化していくことも魅力のひとつです。
 
これからも自然に優しく、
食卓まわりの作品を作っていきたいと語る朝倉さん。
食器だけではなく、ダイニングテーブルや椅子などの
家具を製作することにも挑戦しています。
数年前からは「たくみ工芸店」の依頼で、
吉田璋也デザインのスツールの復刻を手掛けています。
 
  • 住所:〒682-0721
       鳥取県湯梨浜町田後813‐2
  • 電話:080-6543-9571
 
 
 

3.寄木ペンダント(白谷工房・中村建治さん)


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鳥取県日南町福塚地区の白谷集落にある
「旧・福栄(ふくさかえ)保育園」。
 
 
ここに「白谷工房」(しろいたにこうぼう)を構えるのは、
廃材の木片で作った寄木でペンダントや文具を作る、
職人の中村建治さんです。
中村さんが作る寄木細工は、
工事現場や廃校などから出た
端材、廃材を活用して作ったものです。
 
 
中村建治さんは、小学生の頃から
父親のような大工になろうと思っていました。
高校卒業後、県立倉吉高等技術専門校
(現・県立産業人材育成センター倉吉校)で建築を学び、
念願の建築大工になります。
 
ただ、大工となって働くうち、
建築や解体の現場で木が捨てられるのがもったいなく感じ、
どうにか使える方法がないかな、と考えるようになりました。
そこで10年程前、TVで見た寄せ木細工を真似て作り始め、
平成24(2012)に作品展を開いたのを機に販売を始めました。
 
 
転機は平成27(2015)年。
TVドラマで木村文乃さん演じる主人公が
髪を束ねるのに使った
「白谷工房」のヘアアクセサリーが話題になり、
全国から注文が殺到。
「白谷工房」は自宅で始められましたが、
平成28(2016)年12月には「旧福栄保育園」に工房を構えます。
そしてスタッフも2人を雇い、現在は3人で製作していますが、
なかなか注文に追いつかないそうです。
 
中村さんは、木を大切にしたいとの思いから、
古い民家を解体した木や建築現場の端材を使って製作しています。
古い家の柱だったクリ、
敷居だったサクラ、ホオノキやトチ、クワ、ケヤキ・・・。
材料をいただいた方の顔が思い浮かび、
その方々の思いも汲んだ作品作り行っています。
 
中村さんが通い、
その後廃校になった福栄小学校の建材も作品に使っています。
ブナの床や黒板など、小学校を解体した材料は、
木工品などに使うことが出来るのだそうです。
 
 
中村さんは、
虫食い痕も朽ちたところも自然が作り出した表情と捉え、
材料の選別は一切行っていません。
なるべく捨てる材料を減らしたいとの思いから
寄木細工を始めたのに、
きれいな材料を選りすぐりするのは違うなとの
思いからだそうです。
また、木を小さく切ることで、無駄なく作品に生まれ変わります。
 
 
パーツを切り出す大きさを揃えるのが苦労するところで、
0.1㎜もズレてはいけません。
一番小さく切るのはなんと2.7㎜角。
ピンセットを使って市松模様のネクタイピンにしています。
何十年、何百年かけて育った木を大切にしたいとの思いからです。
 
 
鎌倉の寄木細工は、
寄木の塊を薄く切って板に貼り付け、
様々な加工用品にするというものですが、
中村さんの寄木は一つ一つ作っていくため、
裏側も同じ木なので、
アクセサリーになった時など裏から見ても美しいです。
 
 
「白谷工房」では、日南町の魅力を発信したいという想いから
地域ブランド「にちなん日和」を立ち上げました。
豊かな自然を活かし、
様々な食材や加工品の販売、木育活動を行っています。
「木育」とは木との関わりから豊かな心を育てる教育の一環で、
「白谷工房」では積み木などの木のおもちゃを製作も行っています。
 
 
サクラ、クリ、ヒノキ、ブナ、
ナラ、スギ、ミズメ、コクタンなどの
木の持つ独特の色合いを活かした幾何学模様になっています。
ミツロウと植物由来のオイルをブレンドした
100%自然素材のワックスで仕上げられています。
 
 
  • 住所:〒689-5671
       鳥取県日野郡日南町福塚1002-1
  • 電話:0859-83-0180
 

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