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イッピン「丈夫でしなやか心地よく 山形・鶴岡のシルク製品」

<番組紹介>
カイコのまゆの、外側部分。
外敵から身を守るために吐き出された
「きびそ」という希少なシルクで作った製品が人気。
世界的なテキスタイルデザイナーが
「きびそ」を使って生み出したバッグの秘密とは!?
さらに数々の一流ブランドのスカーフを作ってきた
職人たちの緻密で繊細な染色技術も徹底リサーチ。
山形のシルク製品の魅力に迫るのは、女優の黒谷友香。
 
 

1.芳村捺染


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「芳村捺染」さんは、
昭和8(1933)年に日本のスカーフ発祥の地・横濱で生まれ、
絹の街・山形県鶴岡で、日本で指折りの手捺染工場として、
捺染一筋。
大判スカーフ、ストールを始め、リーバーシブルスカーフなど
一色一色、職人の手でスカーフを刷り上げてきました。
 
メーカーからオーダーされる複雑な色や模様を完璧に染め上げ、
色は鮮やかでありつつも、
模様が境界面で色が重ならないという精密さでも
高い評価を受けてました。
 
 


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「芳村捺染」では、独自配合で3000種類上の染料を生み出していて、
職人さんが色毎に型を変えて染め分けします。
まずスクリーンをシルクの生地の上に置き、その上に洗液を置いたら、
大きなヘラで上から下へ一気に塗っていきます。
スクリーンを置いて染料を塗っては、
次の個所にスクリーンを置き直して
また上から下へと一気に塗っていきます。
 
「多色染め」の場合は、
一度染めた柄の上にまた別のスクリーンを寸分ズレないように置いて、
別の色を乗せていきます。
柄が大きい場合は、スクリーンも大きくなるため、
二人、三人掛かりで息をピッタリ合わせて染めていきます。
 
現在、世界ではこうした染色はオートメーション化されているため、
どうしても柄のズレや色の滲みが生じてしまいます。
それを「芳村捺染」さんでは、
手作業で微調整しながら染め上げていくため、
柄のズレや色の滲みはありません。
 

 
イヴ・サンローランのスカーフを日本国内で初めて生産したのは
「芳村捺染」でした。
また、カルダン、ディオールなどの
ブランド・スカーフやストールの生産も手掛けてきました。
スカーフやハンカチだけでなく、
紳士物の「抜染(ばっせん)マフラー」などを手掛けました。
 

 
残念ながら、令和3(2021)年6月29日、
「芳村捺染」は山形地裁鶴岡支部より破産手続開始の決定を受けました。
 

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2.「kibiso」
(テキスタイルデザイナー・須藤玲子さん)

 
山形・鶴岡市でシルク産業が始まったのは、明治に入ってからです。
新政府の「生糸立国」政策により、
旧庄内藩士約3000人が「刀を鍬に代えて」、
羽黒町松ヶ岡の原生林を開墾したことで鶴岡の絹産業はスタート、
最も新しい絹産地となりました。
しかし昭和に入ると、化学繊維や外国産に押されて
大変厳しい状況になりました。
 

omotedana.hatenablog.com

 
そんな中、「生皮苧」(きびそ)に着目。
「きびそ」とは、蚕の繭の外側部分にある糸のことを言います。
外敵から身を守るために、
普通のシルクより線が太くて丈夫ではありますが
硬くて加工しづらいため、
これまで主に化粧品などには配合されていましたが、
織物には使われていきませんでした。
   
 
「きびそ」には
水溶性の蛋白質セリシンが豊富に含まれ、
高い保湿力、紫外線吸収力、
そして抗酸化作用があると言われ、
スキンケアの成分として利用されています。
 

 
鶴岡織物工業協同組合では様々な工夫を重ね、
更に、プロデューサーに岡田茂樹さん、
テキスタイルデザイナー・須藤玲子さんを迎えて
kibiso」としてブランドデビューさせました。
 
ストールなどの小物を中心に
紫外線防止効果を活かした「日傘」などおよそ100種類。
きびそ製品の中で一番人気なのが「バッグ」です。
一見、シルクとは分からない落ち着いた風合いと光沢が
隠れたお洒落心をくすぐるのだそうです。
 

 
蚕の繭を「きびそ」として加工するのは、
製糸工場の「松岡製糸(松岡株式会社)」さんです。
元々は松ヶ岡開墾場に端を発し、
明治20(1887)年に鶴岡町で松岡製糸所が創業されました。
因みに、日本国内の製糸工場は現在、
群馬県の「碓氷製糸農業協同組合」と「松岡製糸」さんの2社のみです。
 

 
「きびそ」は、繭全体のうち僅か4%しか取れない希少な糸です。
それに加え、節があるので引っかかりやすく、
機械をストップさせてしまうこともあるため、
布の仕立てる織り職人の佐藤さんですら、
手の掛かる素材とおっしゃいます。
 

 
こうして布となった「きびそ」はその後、
シルクの再復興を目指し、
デザイナーと職人達が試行錯誤を重ねて
独特の風合いを活かしたバッグなどが生まれました。
 

 
因みに、松岡株式会社さんの本社工場では、
現在、航空機などの最先端の精密部品の製造や設計・加工などが
されています。
 
<おまけ>

 

日本を代表するテキスタイルデザイナー・須藤玲子氏が率いる
『NUNO』(株式会社 布)が作り出した生地を採用している
スピーカーグリル「TEAC ティアック GRILLE N18048NO WS-A70用」

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