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美の壺「精進料理」<File 434>

仏教の戒律に基づいて作られる、精進料理。
肉や魚介類を使わずに、
おいしくいただくための知恵と工夫が込められている
 ▽曹洞宗大本山・永平寺の朝食に出される
  「粥(かゆ)」には、作ることから、
  食べる所作に至るまで、さまざまな作法が!
 ▽京都・萬福寺の「普茶(ふちゃ)料理」で
  ふるまわれる肉や魚に似せた「もどき料理」とは
 ▽創作精進料理や料理教室まで、精進料理の魅力を紹介!
(初回放送日: 平成30(2018)年1月19日放送)
 
仏教の戒律に基づいて作られる精進料理。
精進料理は肉や魚介類を使いません。
その制約の中で、季節ごとの食材を余すところなく使い切ります。
長い年月に渡り、各地で受け継がれてきた
精進料理が紹介されました。
 

美の壺1.粥に始まる、精進の心

 

粥(曹洞宗大本山「永平寺」


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三大禅宗の一つ、曹洞宗の大本山「永平寺」は、
今からおよそ800年前の鎌倉時代、
寛元2(1244)年に開かれました。
今も、170人余りの僧侶が仏道修行を行っています。
 
午後6時30分、永平寺の台所「大庫院」(だいくいん)では、
翌朝の食事の準備が行われていました。
朝食の主役は「粥」。
開山以来、永平寺の朝食は「粥」と定められてきました。

米を2升研ぎ終えると、大きな釜に入れ、
炊きムラが出ないように、
米をドーナツ状に広げて、一晩水に浸します。
翌朝の午前五時、修行僧達のお経の声が境内に広がる中、
食事を取り仕切る典座(てんざ)という役が粥を炊き始めます。
粥に添えられるのは、「香の物」と「胡麻塩」。
毎年、年の瀬が近づくと、
修行僧達の手によって「たくあん」漬け込みが行われ、
一年後に、日々の食事に出されます。
胡麻はその時使う分だけを炒って、擦りたてが出されます。
 

 
「修行僧の一番の大事な食べ物を作る所ですからね、
 身も心も安楽になって、
 修行に専念出来るようにという気持ちで作っています」
 
 
  • 住所:〒910-1228
       福井県吉田郡永平寺町志比5−15
 
永平寺では、食事を食べる時にも様々な作法があります。
 
作法通りに出来上がったら、飯台の上に置き、
典座は袈裟をかけ、坐具を敷いて、
まず坐禅堂の方向へ向かってお香を焚き、九回礼をします
(「僧食九拝」(そうじききゅうはい))。
この礼拝が終わってから食事を運ぶのです。
 
食事に使うのは「応量器」(おうりょうき)という漆器。
修行僧が持つことが出来る数少ない物の一つです。
 
粥を受けた後、食事をいただく時の心得、
「五観の偈」(ごかんのげ)を唱えます。
  • 一つには功の多少を計り、彼の来処を量る。
  • 二つには己が徳行の全欠を忖って、供に応ず。
  • 三つには心を防ぎ、過を離るることは、貪等を宗とす。
  • 四つには正に良薬を事とするは、形枯を療ぜんがためなり。
  • 五つには成道のための故に、今この食を受く。
 
この食事が出来上がるまでに、
どれだけ多くの縁の支えがあったか、
どれだけ多くの人々の苦労があったかに思いを巡らせ、
自分は食事をいただくだけの徳行をしたのか、
行いを振り返ってからいただきます。
 
器は顔の高さに保ち、食べ物を見下さず、
食べ物から気をそらすことがないよう、無言でいただきます。
 
 
 

美の壺2.知恵と工夫でもてなす

 

曹洞宗大雄山「最乗寺」

神奈川県南足柄市にある応永元(1394)年草創の
大雄山最乗寺は、
福井県の「永平寺」、神奈川県・鶴見の「総持寺」に次ぐ、
格式のある曹洞宗のお寺です。
創建に貢献した道了という僧が、
寺の完成と同時に天狗になり、
身を山中に隠したと伝えられることから、
「道了尊」とも呼ばれています。
 
紅葉が盛りを迎える11月の終わりに、
一年を締めくくる行事「清浄鎮火祭」が行われます。
 
100人余りの客に振る舞われるのは、特別な精進料理です。
紅葉麩や蓮根のお煮しめを味や色合いが混じらないように
別々に煮て、ひとつの椀に盛り付けます。
 
肉や魚を使わない、決められた枠組みの中で
工夫を凝らした料理が並べられます。
 
「どの世界にも法、ルールというものが存在します。
 ・・狭いとは思わず、自分の中で掘り下げていって、
 頭をひねって考えていけば、
 こういったお膳というものが出来上がります。
 思いやりを持ち、食する人のことを考えて、
 丁寧に一品ずつ作ることが、振る舞いの気持ちだと思います。
 
  • 住所:〒250-0127
       神奈川県南足柄市大雄町1157
 
 

黄檗宗大本「万福寺」


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京都府宇治市にある日本三禅宗の一つ「黄檗宗」の
大本山の寺院「萬福寺」は、
1661年にChina僧「隠元隆琦禅師」(いんげんりゅうきぜんじ)によって
開創されました。
禅師は明朝時代の臨済宗を代表する僧で、
福建省福州府福清県にある黄檗山萬福寺のご住職をされていました。
その当時、日本からの度重なる招請に応じ、
63歳の時に弟子20名を伴って1654年に来朝されました。
そして、宇治の地でお寺を開くにあたり、
隠元和尚は寺名をChinaの自坊と同じ
「黄檗山萬福寺」(おうばくざんまんぷくじ)と名付けました。
 

 
ここで振舞われるのは「普茶料理」(ふちゃりょうり)です。
「普茶」とは「普く(あまねく)大衆と茶を供にする」という
意味を示すところから生まれた言葉です。
大皿に盛りつけられた料理を、
それぞれが直箸で取り分けて食べるのが作法です。
 
時代とともに、工夫が重ねられてきた「普茶料理」。
精進料理では、肉や魚など動物性のものが使えないことから、
そうしたものに似せて作る「もどき」が大きな特徴です。
 
見た目は「うなぎ」や「かまぼこ」にそっくりなのですが、
動物性のたんぱく質を一切使わずに
豆腐や芋を材料に似せて作ったものだそうです。

「そのまま材料を簡単に調理して
 お出しするのもよろしいのですが、
 あくまでも楽しんでもらうのがコンセプトですから、
 お寺では全く食べられないものが出てくるというところに、
 驚きがあり、楽しみがあるのではないでしょうか」
 
もてなしの心が息づいています。
 
  • 住所:〒611-0011
        京都府宇治市五ケ庄三番割34
 
 

美の壺3.ハレの日をともに迎える

 

今様(観心寺 創作精進料理「KU-RI」


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高野山に向かう途中にある
由緒ある真言宗のお寺「観心寺」は、
701年に、修験道の開祖・役行者によって開創され、
後に弘法大師が高野山開山の拠点としたことで知られる寺院です。
 
その一角に、江戸時代に建てられた庫裏(台所)を改装した
築400年以上の建物に、北欧インテリアを合わせて、
精進料理を提供しています。
 
「KU-RI」のオーナーは、
観心寺の住職の奥さま、永島和佳さんです。
そして、料理を担当するのは、住職の妹さんで、
漢方養生指導士、ジャパンテーブルアーティスト、
野菜ソムリエの肩書をお持ちの松永有紀子さんです。
高野山真言宗の戒律を守って、
五辛のニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、ねぎを使わずに、
植物性だけで料理をしています。
 
こちらの魅力は、何と言っても、庫裏の竈(かまど)
大阪では、今でも親しみを込めて「へっついさん」と呼んでいます。
この昔から使われていた「へっついさん」を利用し、
地元の野菜を使った創作精進料理が名物になっています。
 

 
精進料理の基本は、身近な食材を使うこと。
永島さんは、
地元の直販所や農家から食材を調達しています。
この日は、大阪で伝統的に作られてきた
普通のカブより緻密で甘みがある「天王寺 蕪」を使い、
豆乳で作ったカッテージチーズやクリームチーズを合わせた
グリル焼きを作っていました。
 
  • 住所:〒586-0053
        大阪府河内長野市寺元475
  • 電話:050-3746-8600
 
 

鎌倉不識庵(精進料理研究家・藤井まりさん)


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江ノ電の稲村ヶ崎駅から歩いて15分から20分。
小高い林の中に、
精進料理研究家・藤井まりさんのご自宅はあります。
藤井さんは、僧侶であったご主人の故・藤井宗哲さんとともに
そして、ご主人が亡くなられた後も、
精進料理を分かりやすく、
家庭でも作りやすいレシピとともに紹介し、
国内外で精進料理の普及に努めていらっしゃいます。
 
 
月に数回、自宅を開放しての精進料理の教室を開催する他、
地域のカルチャーセンターや全国各地に招かれての料理講習会、
パリ、ロンドン、北欧、米国、東南アジアなどで
精進料理のワークショップなどもされていらっしゃるそうです。
 

 
藤井さんの料理教室には、
料理初心者からプロの料理人まで幅広い層が参加されています。
お寺の精進料理の知恵を、
家庭で活かせる、簡単に出来る、
それがこの料理教室のポイントです。
 

 
ご主人の故・藤井宗哲さんは、お若い頃、
修行していたお寺で精進料理を任され、
その後、各宗派の精進料理を書籍にまとめて世に発信、
教室も始めました。
 

 
藤井まりさんは
夫から受け継いだ精進料理の知恵を広く伝えたいと
教室を続けています。
 

 
  • 住所:〒248-0024
        神奈川県鎌倉市稲村ガ崎 3-12-25
  • 電話: 090-4961-5383
 
 

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