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美の壺「書くよろこび 万年筆」<File 456>

らでん、まき絵、大理石…豪華装飾の万年筆が勢ぞろい!
 ▽作家・北方謙三さんは万年筆に名前をつけ愛用。
  驚きのこだわりとは!?
 ▽漢字やひらがななどを書くため、
  日本で独自に進化を遂げたペン先。
  究極の書き味を追求する職人技!
 ▽祇園の石畳の色、長崎の夜景、六甲山の緑など、
  今大人気のご当地インク登場!
 ▽万年筆画家が描く食べ物のイラストは、食欲そそる!
 ▽謎の“賢者の万年筆”とは!?
(初回放送日: 令和元(2018)年9月21日)
 
 
 
筆記具の王様と呼ばれる 万年筆。
使う人の思いを乗せて、
頼れる相棒のような存在感を宿しています。
インクは、黒やブルーブラックが定番とされた時代を経て、
今や、百花繚乱。色とりどりのインクが登場しています。
その表現も、書く事から描く事にまで広がっているのです。
書けば書くほど、触れれば触れるほどに、
愛おしさが増す不思議な筆記具。
そんな万年筆の奥深い魅力を堪能していきましょう。
 
 

美の壺1.軸に宿る職人技を楽しむ

 

軸の魅力(蔦屋書店 文具コンシェルジュ・佐久間和子さん)


www.youtube.com

 
東京・代官山にある蔦屋書店(つたやしょてん)の文房具売り場には、
およそ1000本もの万年筆が並んでいます。
文具コンシェルジュの佐久間和子(さくま かずこ)さんに、
万年筆の胴体、軸の魅力が光る逸品を見せていただきました。
 
佐久間さんは自他ともに認める「大の万年筆好き」です。
中学生の時に偶然入った文房具店で、
パイロット製の万年筆に一目惚れして
衝動買いしたのをきっかけに
コツコツ買い集めた万年筆は50本以上、
インクも100種類以上にも上るそうです。
文具売り場の公式ツイッター(@DT_stationery)で
ツイートして、使った万年筆とインクを紹介しています。
 
 
イタリアのメーカー・AURORA(アウロラ)社の
アドリア海をメージした万年筆「Mar Adriatico」(マーレ・アドリア)は、
アウロラ社が開発した特殊な樹脂
「アウロロイド(アウロラ樹脂)」の塊を削り出して
色鮮やかで、透明感のある軸が作られています。
まさに、職人の高度な技術のたまものです。
 

 👆は、京セラの技術で生まれた「京都オパール」を
  希少な万年筆職人・大西慶造さんが作った逸品。
 
 
ドイツのメーカー・Faber-Castell(ファーバーカステル)社の
古代ローマの都市をテーマにした大理石の万年筆
「Imperium Romanum」(古代ローマ帝国)は、
軸が大理石というだけでも珍しい上に、
ミケランジェロのダビデ像と同じ
トスカーナ地方 Carrara(カッラーラ)産の最高品質大理石
「Statuario」(スタトゥアーリオ)を使用しています。

 👆は、エカテリーナ宮殿内の「瑪瑙の間」へのオマージュを表して作られた、
  2014年ペン・オブ・ザ・イヤーに選ばれた贅沢な最高級限定モデルです。
 
 
イタリアのメーカー・VISCONTI(ヴィスコンティ)社の
「Watermark Demo」(ウォーターマークデモ)は、
スケルトンにシルバーの装飾が美しい軸。
職人による繊細な手仕事によるものです。

 
 
「それぞれの万年筆に、
 ヒストリーがあったりとか、
 「素材は何だろう」とかっていうところに注目していくと、
 より楽しいと思います。」
 
  • 住  所:〒150-0033
         東京都渋谷区猿楽町17-5
  • 電  話:03-3770-2525
  • 営業時間:7:00~23:00(年中無休)
 
 

エボナイト軸(中屋万年筆 ろくろ職人・松原功祐さん)

 
手に吸い付くような握り心地。
足立区にある「工房松原」で作られる
「エボナイト」を使った「中屋万年筆」は
世界中で愛されています。
ろくろ職人の松原功祐さんは、御年85歳。
手作りで軸を作り続けて70年にもなる、
日本でも数少ない職人です。
 
「エボナイト」は歴史の古い樹脂で、
1839年に米国のチャールズ・グッドイヤー氏が発明した
一般に広まった最初の「合成樹脂」と言われています。
石油系プラスチックの台頭以前は、
生活のあらゆる場面に利用されていました。
 
黒褐色で硬いものですが、ゴムが主原料です。
表面を磨くと漆塗りのような美しい艶を放ち、
しっとりとして滑りにくく、固さがあり、
狂いが生じにくいことから、
高級蒔絵万年筆や喫煙具に、昔も今も利用されています。
愛好家にはたまらない素材として、注目されています。
 
松原さんは、「エボナイト」を回転ろくろにセットして、
勘を頼りに、製品の基礎部分を削っていきます。
軸の中心が寸分の狂いもなく、万年筆の真ん中を貫くように削る。
熟練のなせる業です。

松原さんは、キャップのネジを削るのが、最も難しいと言います。
最後に息を止めてグ~ッと一気に削り出した軸は、
驚くほど艶やか。
この滑らかさがあるからこそ、漆塗りの美しさが際立つのです。
意匠を凝らした装飾には、良い地が不可欠だと言います。
個性豊かな万年筆の軸は、繊細な手仕事と誇りによって
支えられていました。
 
 
 

美の壺2.理想の書き味を求めて

 

北方謙三さん愛用の「MONTBLANC」(モンブラン)

 
パソコン主流の時代。
北方謙三さんは、月に150枚を超える原稿を
今でも万年筆で書いています。
 
「パソコンで小説を書こうとすると、駄目なんですよ。
 指が全く動かない。
 ここに”ペンだこ”があるんですけれどね、
 ペンだこに何かピッと、刺激が行くと、脳に刺激が行って、
 言葉が出てくるんじゃないかなと思うな。」
 
北方さんは、万年筆を購入すると必ず行う儀式があります。
「軽~く、軽~く、ホントに 軽~くやんないとね。
 自分の癖に合わせて、ペン先を調整するのです。
 俺、半日位やるな、 3時間でいい、十分なんだけど。」
 
100本以上もの万年筆を手にしてきたという北方さんが、
中でも愛用しているのが、北方さん命名の「黒旋風李」です。
万年筆の書き味を、小説の登場人物に重ね合わせて付けた名前で、
51巻もの連作を書き上げた強者です。
現在執筆中の原稿も、この 「黒旋風李」が活躍しています。
 
もう一本は、25歳から30年間を共にした「武蔵」。
ペン先は、北方さんの書き癖そのままに、大きく斜めに削れています。
インク漏れで使えなくなった今でも
手放す事の出来ない大切な一本だそうです。
 
 

ペン先調整(フルハルター  ペン先研ぎ師・森山信彦さん)千葉県 我孫子

 
万年筆の歴史は、
「理想の書き味」の探求と言っても過言ではありません。
明治時代、日本にもたらされた万年筆は、
漢字や平仮名などを書くために、様々なペン先が開発されました。
例えば、先端が長刀状に研がれたペン先は、
紙との接地面が大きく、止めや跳ね、払いを
はっきりと書き分ける事が出来ます。
 
大きく曲がるように柔軟性を持たせたペン先も登場。
ペン先がしなって、力強い払いを書く事が出来ます。
超極細のペン先は、手帳などの小さなスペースにおススメ。
複雑な日本の文字を、細やかに表現することが出来ます。
 
フルハルターのペン先研ぎ師・森山信彦さんは、
森山さんは、その人の書く姿を必ず目で確認してから
ペン先の調整に入ります。
 
ペン先の角度には、2種類あるそうです。
立てる角度と寝かせる角度、そしてもう一つはねじれる角度。
設定と全く反対の方向で書くと、引っ掛かってしまいます。
使う人の角度に合わせて、引っ掛かりを取り除くのが、
森山さんの仕事なのだそうです。
 
まず、1㎜程のペンの先端部を砥石で削ります。
そして、サンドペーパーやクラフト紙などの
粗さの異なる様々な紙を使って、
より滑らかな書き味へと仕上げていきます。
 
研ぐ前は 四角い形をしていた極太のペン先が、
森山さんの手に掛かると、丸く滑らかになり、
書き手が角度を気にせずに
滑らかに書く事が出来るのようになります。
 
 
万年筆専門店 フルハルター
  • 住所:〒140-0011
       東京都品川区東大井5丁目26−20
 
 

美の壺3.小瓶に込めた物語を味わう

 

絵本作家・万年筆画家・サトウヒロシさん

 
絵本作家で、万年筆画家のサトウ ヒロシさんは、
実は 全て万年筆を使って描かいています。
集めたインクは、160色以上にも上るんだとか。
 


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ご当地インク「神戸インク物語」
ナガサワ文具センター 商品企画室・竹内直行さん)


www.youtube.com

 
日本各地で作られているご当地限定のインクが大人気です!
 
祇園の石畳をイメージした薄い焦茶色の「京彩/祇園の石畳」や
伏見稲荷の鳥居をイメージした「京彩/伏見の朱塗」などは、
京都ならではの色を表しています。
青空にそびえる大浦天主堂に平和への願いを重ねた
長崎美形の「長崎ピースブルー」の優しいブルーに、
市内の夜景をイメージした藍色の「稲佐山ディープインディゴ」など、
旅の記念に購入する人も少なくありません。
 
 
 
こうしたご当地インクの先駆けとなったのが、
神戸の老舗文具店「ナガサワ文具センター」の
神戸インク物語」です。
 

 
開発したのは、竹内直行さんです。
竹内さんが入社して10年が経った頃、
「阪神淡路大震災」起き、神戸は大きな被害を受けました。
様々な人の助けを借りて復興していく中、
竹内さんは、「お洒落な神戸の街」に似合う
万年筆のインクを考えたらどうかというふうに思いつきます。
そこで、セーラー万年筆の熟練したインクブレンダーの下で、
「お洒落な神戸の街」に似合うカラーをテーマに基づいて開発。
 
最初に手掛けたのは、次の3色でした。
1つ目は、六甲山をイメージした深いグリーンの
「六甲グリーン」。

 
2つ目は、遊覧船から眺めた神戸港の海の色の
「波止場ブルー」。

 
そして3つ目は、神戸らしい落ち着いた街並みを
セピアカラーで表現した「旧居留地セピア」でした。

 
その後も、神戸ポートタワーや有馬温泉などをイメージした色が
今も増え続け、今では100色達成しています。
 
2017年度には、
公益社団法人「日本マーケティング協会」が主催する、
優れたマーケティング活動を表彰する
「第10回 日本マーケティング大賞」奨励賞に
神戸インク物語」が選ばれました。
 

 
 
  • 住所:〒650-0033
       兵庫県神戸市中央区江戸町93番
       栄光ビル7F
  • 電話:0120-976-078 代表窓口フリーダイヤル
    (受付時間 9:00~17:00 土・日・祝日及び当社休業日を除く)
 

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