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美の壺 「日本ワイン」<File 461>

<番組紹介>
輝くようなルビー色、
キャンデーのような甘い香りの赤ワイン。
世界最高峰のワインコンクールで金賞を受賞した、
深い味わいの白ワイン。
世界が注目の日本ワイン躍進の秘密を探る!?
自然酵母にこだわった北海道のワインづくりに密着。
雄大な大地が育んだ味わいは?
必見は日本ワインならではのペアリング。
定番料理から、和のスイーツ「みたらしだんご」まで!
日本ワインが切り開く新たな世界を紹介。
 
<初回放送日:平成30(2018)年12月07日(金)>
 
 
 
国内で栽培したぶどうだけを使って、
国内で醸造した「日本ワイン」。
海外のワインにはない、独特の魅力を放つと言われています。
ヨーロッパのいわゆる「名醸地」と言われる所と比べると、
雨が多いため、凝縮感の強いものではないんですが、
今、「日本ワイン」は大人気で、消費量も年々増加し続けています。
「日本ワイン」躍進の背景には、
生産者の意識の変化があると言います。
今回の「美の壺」は、「日本ワイン」が切り開く新たな世界です。
 
 

美の壺1.日本のぶどうの底力

 

ブドウにこだわる山梨県勝沼のワイナリー「MGVsワイナリー


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赤ワイン用のブドウの中で、
最も生産量が多く、人気の品種があります。
明治時代に、アメリカとヨーロッパの葡萄を交配して作った品種です。
透き通るような ルビー色とキャンデーにも似た甘い香りが特徴の
「マスカット・べーリーA(Muscat Bailey A)」です。
ところが、これまで色も味も薄く味気ないと、
海外の専門家から批判されてきました。
 

 
「マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)」は、
日本において、「甲州」に次いで2番目に多くワインになって
いるブドウです。
日本の赤ワイン用のブドウとしては、最大の生産量を誇り、
平成25(2013)年に日本の黒ぶどうとしては初めて、
世界的に醸造用のぶどうとして登録された、
日本を代表する赤ワイン用のブドウです。
 
海外のブドウのように見えますが、昭和2(1927)年に、
新潟県高田(今の上越市)にある「岩の原葡萄園」で
川上善兵衛が米国系ブドウ「ベーリー」と欧州系マスカット「マスカット・ハンブルグ」を交配することによって生まれた
新潟県原産のブドウです。
原産地は新潟県ですが、現在では「マスカット・ベーリーA」のワインの半分は山梨県で生産されています。
 
 
日本最大のワインの産地、山梨県勝沼市に、
「マスカット・べーリーA」で
新たなワインづくりに挑戦している人がいます。
地元のワイナリー「「MGVs(マグヴィス)ワイナリー」の
オーナー・松坂浩志さんです。
 

 
松坂さんが目指す赤ワインは、
「マスカット・ベーリーA」の弱点を克服したワインです。
一番のうちの考えてるワインづくりの目的になると思います。
濃厚な日本ワイン開発のために、
松坂さんが着目したのは「ブドウの水分」です。
赤ワインは皮と身を一緒に醗酵させて、
濃い赤色と深い味わいを生み出します。
 
しかし、雨の多い日本では、
ブドウの水分が多過ぎて、色も味も薄まってしまうのです。
そこで、松坂さんが特別に栽培したのが、この小さなブドウ。
与える水分をこれまでの半分に抑え、
味わいをギュッと凝縮させる事に成功しました。
松坂さんの「マスカット・ベーリーA」でつくったワイン。
色もより濃い赤に。
日本料理を引き立てるワイン造りが私の目標の一つです。
 


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「MGVs (マグヴィス)ワイナリー」は、半導体製造を手掛ける「塩山製作所」が立ち上げたワイナリーです。
台湾やChina企業進出しにより、世界的な価格競争の時代へ
突入していったため、日本国内ではコスト面で不利と見て、
一部の生産拠点をベトナムに移し、事業をスリム化。
と同時に、実家が4代続くブドウ農家であった代表の松坂浩志さんは、これまで培った精緻な加工技術を生かしつつ
地域の活性化にも繋がる取り組みとして、「ワイン造り」を始めました。
 
  • 住所:〒409-1315
       山梨県甲州市勝沼町等々力601-17
  • 電話:0553-44-6030
 
 

世界に認められた白ワイン「甲州」(ワイン醸造家・三澤彩奈さん)


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平成26(2014)年、山梨県の「中央葡萄酒/グレイスワイン」の
フラッグシップ「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が、
世界最高峰のワインコンクール
「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)
(Decanter World Wine Awards)」で
日本初となる金賞および地域最高賞を獲得しました。
 
日本固有のブドウ品種「甲州」を使った白ワインです。
その繊細で複雑な香りと深い味わいが高く評価されたのです。
更に、そのワインを造った醸造家が30代の女性であることに驚き、
アヤナ・ミサワの名は一躍世界に知れ渡りました。
 

  

 
大正12(1923)年創業の「中央葡萄酒/グレイスワイン」の
4代目オーナーの長女として生まれた三澤 彩奈(みさわ あやな)さんは、平成17(2005)年に単身で渡仏、ボルドー大学ワイン醸造学部で学びます。
卒業後はブルゴーニュ地方で研修をしながら、
「フランス栽培醸造上級技術者」の資格を取得。
更には南アフリカ・ステレンボッシュ大学大学院に留学、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンの
ワイナリーで研鑽を積んできました。
平成19(2007)年に帰国してからは、「中央葡萄酒」の醸造責任者としてブドウ栽培からワイン醸造に取り組んでいます。
 
 
この白ワインのブドウ「甲州」は、
標高800mに広がるワイナリーの畑で作られました。
三澤さんは「甲州」には他のブドウにはない魅力を感じると
おっしゃいます。
 

 
日本のブドウ品種「甲州」が発見されたのは、
一説には1000年前と言われています。平安時代に高僧・行基が広めたとも、鎌倉時代に勝沼の雨宮勘解由という人物が発見したとも言われています。
そして長年、秋の味覚として生で食べられてきました。
ところが近年の遺伝子分析により、実は「ヨーロッパ系」のワイン用品種であることが判明しています。
カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方で発生し、
経緯はよく分かってはいませんが、
日本にはシルクロードを通って入ってきたようです。
(ブドウは世界に約70種あり、
 アメリカ系、東アジア系、ヨーロッパ系に大別されます。
 生食されるデラウェア、マスカットなどはアメリカ系で、
 ワイン醸造に用いられるのはヨーロッパ系が多い。)
 
 
日本のワイン産業は、明治初期、山梨県勝沼の地から始まりました。
フランスで本格的なワインづくりを学んだ山梨出身の青年達が、
醸造を始めました。
しかし、雨の多い日本では、ブドウの色も味も薄まってしまうため、
ワイン生産に向かないとされてきました。
「甲州」もまた、水分が多く、糖度が低い事から、
「水っぽく、薄味だ」と言われてきました。
 


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三澤さんが見直したのは、ブドウの「栽培方法」です。
それまで「甲州」は「棚栽培」が一般的でしたが、
フランスで学んだ「垣根栽培」に切り替えたのです。
 
日本では生で食べていたため、
粒は大きく、房がたくさん実るように栽培してきました。
江戸時代初期に始まった「棚架け」は、
出来るだけ多く生産するための工夫です。
でも、ワインに向くのはその逆。
粒は小さく少ないほうが
味がギュッと凝縮され、糖度がより高くなるので、
発酵した後の風味が良くなります。
そのため良いワインを造るには、
今までの当たり前に行われてきた「栽培方法」を
変える必要があったのです。
 
「垣根栽培」にする事によって、もう一つメリットが生まれました。
1本の木に実る房の量がこれまでの20分の1にまで減り、
栄養がより行き渡るようになったのです。
 
こうした改良の結果、糖度20度を超える甘さを実現しました。
三澤さんのブドウへの並々ならぬ思いが、
世界を驚かせる日本ワインを作り出したのです。
生産者一人一人の思いと自由な発想が、新たな可能性を広げています。
 

 
「甲州」以外にも、平成28(2016)年の「DWWA」では、
スパークリングワインの
「グレイス エクストラ・ブリュット・ブラン・ド・ブラン」が
アジア初の「プラチナ賞」と「ベストアジア賞」を受賞。
日本を代表するトップワイナリーとしての地位を
不動のものとしています。
 
 
 
 

美の壺2.日本の大地を味わう

 

東京都江東区のイタリアンレストラン「清澄白河フジマル醸造所


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東京 江東区白河の住宅街の真ん中にひっそりと佇む
イタリアンレストラン「清澄白河フジマル醸造所」は、
平成27(2015)年のオープン以来、いつも予約で一杯です。
木目調の店内はオシャレで、
なおかつホッとさせるような温かみがあります。
 
レストランの自慢はフレッシュなワインです。
客を魅了するそのフレッシュワインの秘密は、店の奥にありました。
レストランの階段を降りると、階下には何と「ワイナリー」が!
 
実は「清澄白河フジマル醸造所」は、大都市ならではの交通網を活かし、
周辺産地から新鮮で良質なブドウを集める「都市型ワイナリー」なのです。
 
 
 
「ワイナリー」と言えば、
ブドウ畑の近くにある大規模な工場が思い浮かびますが、
近年では住宅街の片隅に小さな醸造所を構える
「都市型ワイナリー」が増えてきていて、
清澄白河フジマル醸造所」は「都市型ワイナリー」の先駆け的存在です。
 
 
山形、山梨、茨城、千葉の契約農家さんから届いたブドウで
ワインを醸造しています。
1階はワイナリー、2階がレストランとテイスティングルームになっているので、
1階で醸造されたワインを2階にあるレストランで、
旬の素材を用いた本格イタリアンとともに味わうことが出来ます。
 

 

 
フジマルさんでは元々、早飲みタイプのワインを作っていました。
その年に出来たワインは、その1年のうちに販売するのが理想だそうです。
 

 
更に、「ワインを日常に」という社内理念から、
「より気軽にワイナリーに行ける」
「ワインが日常になる」ことを目指して、
街中にレストランを併設した「ワイナリー」を作っているのだそうです。
 

 
 
 

北海道のぶどうに魅せられた米国人醸造家・ブルース・ガットラヴさん


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新しいワイナリーが次々と生まれ、
日本有数のワインの産地となっている北海道で、
野趣溢れるワインを造って注目を浴びている人がいます。
米ニューヨーク州ロングアイランド生まれの醸造家・
ブルース・ガットラヴさんです。
 

 
「カリフォルニアワイン」の一大産地・ナパで、
ワインのコンサルタントをしていたガットラヴさんは、
偶然、口にした北海道産のブドウに心を奪われたそうです。
これほど質の良いブドウが採れるなら
自分の理想のワイン造りが出来るかもしれないと、
やがて思い始めるようになったそうです。
 

 
平成21(2009)年に北海道・空知地方の岩見沢に
奥様とともに移住して、ワイナリー「10R(トアール)」を設立。
道内各地で採れるブドウを使ってワイン造りを始めました。
 

 
この日は、北海道の西部にある余市で収穫された
赤ワイン用のブドウの仕込みを
ワイン造りの仲間10人で進めていました。
 
ガットラヴさん達には、ある信念があります。
それは、「極力、機械に頼らないこと」です。
枝から実を取り外す作業も手作業で行います。
手作業で枝を取り除くことで、
身も種も傷つきにくく、苦味や雑味を減らせるんだそうです。
 

 
収穫したブドウは発酵させるために、専用のタンクに入れます。
多くのワイナリーでは、培養した「酵母菌」を入れて発酵を促しますが、
ガットラヴさんは敢えて、何も入れません。
ブドウの皮には、畑に由来する自然の酵母菌が付着しているので、
その力を使って自然にじっくりと醗酵させるのだそうです。
 

 
ガットラヴさん、今度は白ワインのタンクにやって来て、
ブドウが発酵する音を聞いていました。
数か月かけて、ゆっくり発酵していく白ワインを
まるで子供の成長を見守るように、毎日確認しているのです。
北海道の大地が育んだ豊かな味わいが、
他のワインにはない魅力を生み出しています。
 
  • 住所:〒068-0112
       北海道岩見沢市栗沢町上幌1123-10
  • 電話:0126-33-2770
 
 
 

美の壺3.日本ワインならではのペアリング

 

絶妙なペアリング(東京・築地のレストラン「IMADEYA蔵葡」)


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東京・築地のレストラン
「IMADEYA蔵葡」(くらぶう)の壁面セラーには、
全国各地のワイナリーでつくられた「日本ワイン」が
常時200種以上並んでいます。
 
さて、日本ワインにピッタリの料理は?
和食出身のシェフ・岩川直己(いわかわ なおき)さんのおススメは
もちろん「和食」!
 
例えば栃木県産の赤ワインには
「きんぴらを使った和風のペンネ」です。
繊細な和食と合わせても楽しめるのが、
「日本ワイン」の大きな魅力です。
 

 
お知らせ
 「IMADEYA蔵葡」は令和2(2020)年11月15日より
 休業しています。
 
 

日本ワインと料理のおすすめのペアリング
(ソムリエ・ワインテイスター・大越基裕さん)


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日本を代表するソムリエ・大越基裕さんは、
「日本ワイン」は和食だけでなく、海外の料理にも合うとおっしゃいます。
大越さんにオススメのペアリングを教えていただきました。
 

 
まずは、緑茶を醗酵させたペーストを合わせた
色とりどりの野菜が鮮やかなサラダです。
このサラダに何を合わせるかというと、
オレンジ色が鮮やかな巨峰のワインです。
巨峰ならではの甘い香りがピッタリなんだとか。
 
「ティーリーフですから。
 その周りにはシーズンの色々なお野菜でしたり、
 歯応えのある食感のある素材をいくつかちりばめて
 一緒に食べて頂くというお料理なんですけれども、
 塩味と旨味と苦味と酸味に特化したタイプのお料理です。
 ちょっとワインのほうが少しだけ甘さを伴ってるので、
 こちらのワインを選んでおります。」
 

 
続いては、国産のハムを使ったベトナム料理です。
揚げたハムにココナツミルクと梨のソースを合わせた、
軽い食感とフルーティーな味わいが特徴の一品です。
この料理に合わせるのは、
「フィールドブレンド(field blend)」と呼ばれる白ワインです。
「フィールドブレンド」とは、異なる種類のぶどうを一つの畑で育て、
一緒に醗酵させたユニークなワインです。
 

 
「フィールドブレンド」とは、同じ畑に異なる品種を植え、
そこで実った多品種のブドウを混ぜて醸造する手法を
指します。
現代の一般的な「ブレンドワイン」の多くは、品種毎に
栽培・醸造して、ワインになった状態でブレンドします。
古来、欧州の庶民はそれぞれ自分の畑で実ったブドウを
どんな品種かをあまり意識することなく収穫して造る
「地ワイン」が一般的でした。
 
 
こういった古い手法はやがて洗練され、現代のような
「品種毎に畑を分けて植え」「品種毎に収穫、醸造を行う」というスタイルへと変わっていくことになります。
そういった洗練された方法ではなく、現代の技術を使いながらも、敢えて古来の混植・混醸というスタイルを復刻させて造ろうというのがこの「フィールドブレンド」です。
 
 
最後に取って置き
「マスカット・ベーリーA」の赤ワインに合わせられたのは、
何と、タレがたっぷりとかかった「焼き鳥」です!
ワインの甘い香りがタレの味を引き締めてくれるそうです。
 

 

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