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美の壺「あの人に贈る花束」<File 484>

<番組紹介>
感謝や祝福などの思いをこめて贈る「花束」
 ▽フラワーデザイナーの
  ローラン・ボーニッシュさんは、
  フランスの田舎の庭をイメージ!
 ▽ジュエリーデザイナー出身の
  フラワースタイリストが、
  花で表現する夕暮れの景色とは?
 ▽京都で30年近く続く花屋の店主は、
  西陣織から着想を得て、
  中間色のグラデーションを!
 ▽花瓶ではなく壁に飾る、
  新しいスタイルの「スワッグ」とは?
 ▽花束に見立てた多肉植物の贈り物も!
 
<初回放送日:令和元(2019)年09月20日 >
 
 
 
人から人へ。 思いを込めて贈る花束。
ある時は祝福の気持ちを色に託して、
またある時は「あの人に見せたい景色」を託して。
花束は贈る人の気持ちを饒舌に表します。
新たなスタイルの花束も次々登場し、個性を競います。
今も進化し続ける花束の魅力に迫ります。
 
 

美の壺1.よりそう:日々 花に親しむ

 

身近な花束
(「終日フラワー」フローリスト・田辺麻美さん)

 
東京・渋谷区代々木上原にある
ビアバー、カフェ、花店の3店舗からなる「終日one」。
花店「終日フラワー」の店主・田辺麻美(たなべ まみ)さんは、
中目黒の「hana-naya」から独立後、
現在の店舗のオーナーと知り合いだったことから
ポップアップショップを経て、
階段を利用した、店頭のスペースで花店を開くようになりました。
 

 
 
カフェから、
お祖母ちゃんの家へ行く途中の女の子がお母さんと一緒に
ふらりとやって来ました。
花束をお土産にしたいのだとか。
 
田辺さんは、手頃な値段で印象に残る花束を心掛けています。
出来たのは、カラーやケイトウの黄色と
青のエクメア ブルーベリーのコントラストが鮮やかな花束です。
女の子も「可愛い。喜んでもらえると思う」と嬉しそう。
 

 
この店で依頼が多いのは、3000円台の花束だそうです。
アルストロメリアやジンジャーなど長持ちするものを、
角度や高さを変えて束ね、ボリュームを出していきます。
その周りには、グレープフルーツミントなどの緑をあしらい、
3種類のラッピングを重ねて仕上げていきます。
 

 
花を身近に楽しんで欲しい・・・
そんな気持ちに溢れた花束です。
 

 
終日フラワー
  • 住所:〒151-0064
       東京都渋谷区上原3-44-11
  • 電話:090-2488-6212
 
 

フランス流の花の楽しみ
(「ローラン・ベー・ブーケティエ」ローラン・ボーニッシュさん)


www.youtube.com

 
年間5億本以上の花が流通する東京・大田区の大田市場花き部
ここに足繫く通うのは、
フランス人のローラン・ボーニッシュ(Laurent.Borniche)さんです。
 

 
ローラン・ボーニッシュさんは、
仏パリのブーローニュの森に隣接する高級住宅地ヌイイ市にある
100年近い歴史ある花店の4代目として生まれました。
16歳より花の世界に入り、パリ老舗花店で経験を積みました。
ローランさんは、平成10(19980)年に
「EFP(イル・ド・フランスフローリスト組合パリフローリスト養成学校)」の
派遣講師として来日し、
以来、フランス流の花の楽しみ方を伝えてきました。
 
ローランさんのアトリエ
「Art de Vivre(生活の美学)」をコンセプトに、
日常に花のある暮らしを提案、
花のもつ力、魅力、文化を広めています。
因みに「ブーケティエ」とは、
かつてフランスにまだ花屋さんがない時代の花売り、
またブーケの作り手、職人を意味する。
 

 
この日のテーマは、「フランスの田舎の庭」です。
ローランさんは、バラやダリアを中心に、
全部で17種類の花材を揃えました。
 
まず最初は、茎が最も真っ直ぐなバラ。
そこに様々なグリーンを重ねていきます。
隣り合う花の向きと高さを緻密に調整。
茎を斜めに重ね、螺旋を描くように回していく。
これは「スパイラル」という手法で、
花をふんわりと束ねられると言います。
 

 
ローランさんは
「エノコログサ」などの「雑草」と呼ばれる草も
積極的に取り入れてきました。
 

 
他にも、来日当時は、珍しかったものに目をつけます。
「ベニスモモ」や「ヒメミズキ」など、
かつて生け花に使われていました花材も、
花束の花材として使い始めたのです。
 
 
出来上がったのはフランスの庭の風景をそのまま包んだような、
楽しげな雰囲気の花束です。
日本で出会った草花を生かした、ローランさんならではのスタイル。
一人でも多くの人に花に親しんで欲しい・・・、
そんな思いが生み出した花束です。
 

 
  • 住所:〒145-0071
       東京都大田区田園調布3丁目4-5
       田園プラザ 1階
  • 電話:03-5755-5683
 
 
 

美の壺2.かさねる:色が織りなす あの人への思い

 

オーダー専門の花屋「OEUVRE(ウヴル)」(田口一征さん)

 
東京・目黒にあるオーダー専門の花屋
OEUVRE(ウヴル)」の店主・田口一征(たぐち かずゆき)さん。
田口さんは、仏パリのファッションデザイン学校「Studio Bercot」卒業後、
平成26(2014)年から、花屋「OEUVRE(ウヴル)」をスタートさせると、
季節の花を生かした、モダンで美しい色使いやあしらいで一躍人気に。
全国に多くのファンを持っています。
 
因みに「OEUVRE(ウヴル)」という名前は、
フランス語で「作品」という意味です。
創業当時より大切にしているコンセプト
たとえ一本の花でも、
花屋で扱われているお花には
それを一から育てたあげた生産者の想い、
それを仕入れて提供する花屋の想い、
それを選び購入する人の想い、
そしてそれを受け取る人の想い。
いろいろな人のたくさんの想いが、
そこには宿るのです。
たかが一本のお花でも、
それは素晴らしく立派な芸術作品そのもの。
だから私は、
花という生き物たちに最大の敬意を込めて
「作品」を扱う花屋という意味で
店名に『ウヴル』の名を付けました。
 
そんな田口さんのもとには、これまで様々な依頼がありました。
印象に残っているのは、
作家さんのアシスタントの方からの注文です。
作品が完成したお祝いと労いを込めた花束のイメージは
「夕焼け」。
執筆で外に出られなかった作家の先生に
見せてあげたかった風景だそうです。
 
田口さんが用意したのは、
「夕焼け空」を切り取ったような色の花。
まずピンクのアスターを中心に、
濃いオレンジのガーベラを
トルコキキョウやアジサイなどの薄い紫で繋げます。
またピンクのアスター横には、隣り合う色に近いバラを挿して、
色の繋がりをつけました。
更にラッピングも色の調和を意識して、
薄いオレンジの外側にはグレーを入れて、
日が沈む様子をイメージさせました。
 
作家さんからは、
「お花の美しさに絶句した」
「夢のようなお花でした。ありがとうございます」と、
とっても感動しているというお礼のメールを頂きました。
 
「花が主役のシチュエーションって、ほぼないんですよ。
 例えば、お誕生日会とかお祝い事、何でもいいと思うんですけど。」
 
人に寄り添い、思いを届けてくれる花束。
 

 
 
 

中間色のグラデーション(「プーゼ」フローリスト・浦沢美奈さん)

 
京都・西陣生まれのフローリスト・浦沢美奈(うらさわ みな)さん。
平成3(1991)年に
「テーブルに花を飾ると幸せが集まってくる」の言葉を胸に
京都市中京区に花店「プーゼ」をオープン。
フラワーアレンジメント教室を開講する
「アトリエプーゼ」を主宰しながら
雑誌・広告等で広く活躍中です。
令和元(2019)年に開かれた「G20大阪サミット首脳会談」では、
花を担当するという大仕事も手掛けました。

 
浦沢さんが作る
中間色を使ったグラデーション、
鮮やかな色にニュアンスのあるシックな色を合わせた花束は、
あしらうリボンを目印に「プーゼスタイル」と呼ばれ、
全国から人気を集めています。
 

 
プーゼ」に、友人へのお祝いの花束を買うために
お客様がいらっしゃいました。
「贈る相手はナチュラルな人。
 庭にジャスミンの木がある、」とイメージを伝えます。
 

 
浦沢さんは、メインには、
「吾亦紅」(われもこう)の赤をアクセントに、
4種類のバラを用いて、
スモークグラスやピスタチオのグリーンで仕上げました。
出来上がった花束は「イメージぴったり」とお客さんも嬉しそうです。
 

 
 
浦沢さんが好んで使うのは、中間色の花。
その原点は、生まれ育った西陣にあると言います。
子供の頃に友達の家に行くと、
織機(しょっき)で仕事をする様子を見ることが出来、
糸と糸が重なっていく姿がキレイやなと、
飽きずにずっと見ていたのだとか。
 

 
「花も一つ一つが持っている色と形があって、
 それを重ねていくことで
 ひとつのブーケが生まれてくるのが似ているなと思います。」
 

 
この日は、友人へのお祝いのために花束を作ります。
使うのは、色と形が少しずつ異なる6種類のバラ。
束ね方にも工夫が。
 
 
「面がやっぱり平らになっている方が、
 色がしっかりと重なっていくのが分かりますので、
 一枚のキャンバスに色を落としていくような、
 そういうイメージです。」
 
一本でも美しい花。
それをどう束ねて見せるか。
色のニュアンスを緻密に考えていきます。
 
様々なピンクの濃淡が溶け合い、
一枚の絵のように、
優しさと華やかさを併せ持つ花束となりました。
 
浦沢さんが花束贈るのは、
最近アトリエを開いたお菓子作家の友人です。
ピンクのグラデーションが美しい花束に、
御友人も大喜びでした。。
その時間、相手を思い、贈る花束。
その思いは、花の記憶としていつまでも刻まれます。

 
  • 住所:〒604-0815
       京都市中京区
       夷川通東洞院東入山中町537
  • 電話:
  • オンラインストア
 
 
 

美の壺3.いつまでも:ともに暮らす 楽しみ

 

「スワッグ」
(「ザ・リトルショップ・オブ・フラワーズ 」フローリスト ・壱岐ゆかりさん)


www.youtube.com

 
今、新しいスタイルの花束が注目されています。
一見、普通の花束ですが、茎の部分がそのままです。
実は、これ逆さに吊るして飾り、
ドライフラワーになった姿も楽しめる
「スワッグ(SWAG)」という花束です。
 
原宿駅の近く、木々が茂る一軒家は
フローリストの壱岐ゆかりさんがオーナーを務める
 
「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」では、
生花やプリザーブドフラワーと
ドライフラワーをミックスしたアレンジが、
色のコントラストが印象的で、
女性のみならず男性にも人気があります。
 
壱岐さんは、以前から店で余った花をよく
ドライフラワーにしていたことから、
「スワッグ(swag)」を手掛けるようになりました。
 
「キレイになるドライになる花材だけを使って、
 ブーケを作ってみようとか、
 ブーケだとちょっと飾りにくいかもしれないから、
 花をプロダクトとして考えられるような
 ポスターのようなインテリアの一部となる「スワッグ」の形にして
 作ってみようというふうになりました。」
 
「スワッグ(swag)」はドイツ語で「壁飾り」を意味し、「リース」と同じように、植物を束ねて壁や
ドアなどにかける飾りのことを言います。
なお、スワッグによく使用される花材のひとつが、
花や葉、実を乾燥させた「ドライフラワー」です。
「花束」や「ブーケ」は持ち手を下にして
花を上に向けることが前提とされますが、
「スワッグ」には向きの決まりはありません。
上下どちらの向きでも自由に飾れるのが特徴です。
 
「スワッグ」の材料には、
乾燥に強く、形が残りやすいものを選びます。
長くて強度のあるものを土台にして、
そこに草花を挿し込むように入れていきます。
乾燥しやすいように、長さと間隔を調整します。
後から縮むことを計算して、全体のボリュームは大きめに作ります。
「スワッグ」が完成しました。
このまま壁を飾る花束として楽しめます。
 
一月後、落ち着いた茶褐色になりました。
このままの姿を楽しむのもいいのですが、
「スワッグ」のもう一つの楽しみはこれから。
生の草花を足し、シックになった色合いに彩りを。
その時期その時期のものを加えることで、
異なる季節が一つの花束に融合します。
 
贈ってくれた人の思いに、自分の気持ちを重ねるよう、
様々な草花が寄り添います。
 
  • 住所:150-0001 〒
       東京都渋谷区神宮前6-31-10
  • 電話:03-5778-3052
 

 

「多肉植物の寄せ植え」(「TOKIIRO」植物空間デザイナー・近藤義展さん)


www.youtube.com

 
千葉県・浦安市を拠点に
多肉植物で作ったリースやタブロー、花束に見立てた寄せ植えなど、
多肉植物に特化したアレンジメントを提案する
TOKIIRO」の近藤義展さん。
多肉植物の可愛さに惹かれ趣味で育てるうち、
本業になったそうです。
 

 
「多肉植物」の魅力は、まず力強い生命力と、
ぷっくりと肉厚で愛らしい独特の形。
砂漠などの厳しい環境下で生息し、
葉、茎または根の内部の柔組織(じゅうそしき)
水分を蓄えるように進化した「いのちの姿」です。
 
そして、四季の移ろいで変化する多彩な色。
いつも静かに佇んで、
季節を通してあまり変化がないように見える「多肉植物」ですが、
近藤さんは、多肉植物が季節によって色を変えていくという
意外な事実を知ります。
 
実は「多肉植物」は、
木々が新緑に輝き、赤や黄色に紅葉するのと同じように、
四季の光と温度に応じて色を変え、多様な姿を見せてくれる
植物だったのです。
 
「多肉植物」の葉には、通常「クロロフィル」という
緑色の色素が多くあるため、緑色に見えます。
それが寒くなってくると、葉の先に貯蔵されていた
「ブドウ糖」が「アントシアニン」や「カロテノイド」
という色素に変化します。
「アントシアニン」は赤~紫色に見える色素で、
「カロテノイド」は黄色に見える色素です。
 
種類が豊富で、1万種以上もあると言われる「多肉植物」。
多種類を組み合わせて植えた小さな自然界が、
年間を通じて見せる豊かな表情と変化こそが、
近藤さんが作品を創り出す原点になっています。
 
 
絵のように植物を植え込んで
ウェルカムボードや表札、ウォールハンギングとして壁に飾る
「タブロー(tableau)」には、
どんな環境にも適応していく「多肉植物」はピッタリ。
 
開店記念や表札にして、新居祝いに贈る人も多いそうです。
この日、近藤さんが選んだのは、白牡丹など16種類の多肉植物。
大きさや形を整えるだけでなく、
季節が変わり、色づく姿もイメージして配置していきます。
 
「夏は、みんなちょっとずつ違う色でグラデーションになるんですよ。
 冬は、色のコントラストが出てくるんですね。
 赤になるものもあれば、黄色になるものもあるし、
 寒い中でも気持ちが上がるような、そんな作品になると思います。」
 
「多肉植物」は、元は乾燥地帯の植物。
水やりは2週間に1回程。
日々変わる姿を楽しみに、毎日、眺めたくなる多肉植物の贈り物。
日当たりの良い屋外に飾ると、何年でも育つそうです。
 

 
「こんな相手に贈りたいとか、
 もしメッセージが先に頂ければ、
 それを1年後に感じられるように、お作りするということも可能です。」
 
もらった後も、変化し続ける贈り物。
その思いとともに暮らします。
 
 

 

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