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美の壺「一杯の至福 コーヒー」 <File485>

一杯のコーヒーで味わう、至福のひと時。
豊かな香りと味の余韻を生み出すのは、職人たちの技。
「抽出」「焙煎(ばいせん)」「エスプレッソ」、
それぞれの物語を味わう!
 
豊かな味と香りを引き出す「ドリップ」。
ハンバーグのように膨らむ抽出の技とは?!
 
 ▽世界2位のサイフォニストが、
  繊細な感覚と技でいれる「サイフォンコーヒー」
 ▽コーヒー豆を焼き上げる「焙煎(ばいせん)」。
  機械と手回し、
  それぞれの名人が、豆の一瞬の変化を見極める!
 ▽イタリア人がエスプレッソに欠かせない
  「コーヒーのシャツ」とは?
 ▽「飲んで5分後に味が出てくる」という、
  新感覚のエスプレッソの秘密に迫る!!
(初回放送日: 2019年10月4日)
 
 
豆の産地や焙煎にこだわった人気のコーヒー店。
今、コーヒーは、
バラエティーに富んだ味が楽しめる時代です。
一杯のコーヒーには、職人達が追い求めてきた
それぞれの技があります。
秘められた豆の味を引き出す「抽出」。
コーヒー豆を焼き上げる「焙煎」。
「エスプレッソ」に人生を捧げる職人。
イタリアでは、それぞれの家庭に、
それぞれの人にこだわりのエスプレッソが。
今回は一杯のコーヒーを巡る、奥深い世界をご紹介します。
 

 

美の壺1.味と香りを引き出す

 

東京・表参道「ブルーボトルコーヒー 青山店」

 
「ブルーボトルコーヒー」は、米加州オークランドで生まれた
サードウェーブコーヒーの代表格のコーヒーチェーンです。
ネスレのグループ企業の一つ。
 
  • 住所:〒107-0062
       東京都港区南青山3-13-14
       増田ビル2F
  • 電話:03-5413-5380
 
 

東京都台東区「自家焙煎珈琲屋 カフェ・バッハ
(工場長・山田康一さん)

 
南千住には、コーヒー好きの間では、
知らぬ人がいないと言われている名店があります。
昭和43(1968)年に、日本のコーヒー業界を支えてきた
田口護さん・田口文子さんご夫妻が創業した
コーヒー店「自家焙煎珈琲屋 カフェ・バッハ」です。
全国から、お客さんが訪れます。
 
 
店内には、コーヒー豆が26種類。
美味しさの秘密は、
挽き立ての豆をお客様の目の前で抽出する「ドリップ」の技です。
 

 
お湯の温度は、
苦味・酸味・甘味のバランスが良くなるという83度。
まず姿勢を安定させ、
粉の少し上から
お湯を細く絞り出すようにゆっくりと注ぎます。
 
ハンバーグ状に膨らんできました。
このまま30秒蒸らします。
粉全体にお湯をしみ込ませて、味と香りを引き出しやすくします。
 
再び、ゆっくりと注ぐと、泡が出てきます。
これは焙煎したコーヒー豆に含まれる炭酸ガス。
お湯に触れると、豆の外に押し出されて、
味や香りの成分が出てきます。
 
透き通ったコーヒーが落ちてきました。
豆の良さを最大限に引き出した一杯です。
この膨らみが美味しさの証しです。
 

 
  • 住所:〒111-0021
       東京都台東区日本堤1丁目23−9
  • 電話:03-3875-2669
 
 

西麻布「丸山珈琲」(サイフォニスト・中山吉伸さん)


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東京・西麻布にあるコーヒー専門店「丸山珈琲」に所属する
バリスタ・中山吉伸さんが
「ワールド・サイフォニスト・チャンピオンシップ」で
2位に輝きました。
 
 

 
「サイフォン」は、
19世紀の初め頃にヨーロッパで開発され、
蒸気圧を利用してお湯を押し上げ、
高い温度のお湯とコーヒー粉を浸漬して抽出する
ガラス製の器具です。
コーヒーが出来上がるまでの過程が
目でも楽しめる演出効果の高い抽出器具です。
サイフォンでコーヒーを淹れる時に大切なのは、
火加減と、ヘラでコーヒーを攪拌することです。
 

 
コーヒーを淹れるのに欠かせないのは、
攪拌する時に使う「攪拌ベラ」。
勿論、中山さんは「マイ攪拌ベラ」をお持ちです。
“わずかな力加減で味が変わる”という
攪拌ベラを自在に操って
中山さんは繊細な一杯を生み出します。
 
中山さんは、指で漏斗の温度を確認し、
攪拌の時間を決めます。
攪拌は、粉とお湯が全体に交わるように混ぜます。
この時、混ぜる強さが重要だと中山さんは言います。
僅かな動きの差が、大きな味の違いを生み出します。
 

 
中山さんのサイフォンコーヒーに欠かせないのが
「スペシャルティコーヒー」と言われる豆。
柑橘系やベリー系など、豊富な種類の酸味を
サイフォンが上手に引き出してくれると言います。
 
 

日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)による定義

消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。
(中略)
生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。

引用:日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)
   「スペシャルティコーヒーの定義」(一部抜粋)
 
  • 住所:〒106-0031
       東京都港区西麻布3丁目13−3
  • 電話:03-6804-5040
 
 

美の壺2.一瞬をとらえる

 

福岡「珈琲美美」(店主・森光充子さん)


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焙煎(ロースト)とは、コーヒーの生豆を炒る加熱作業のことです。
焙煎時間や熱のかけ方の違いによって、
コーヒー豆には浅炒り・中炒り・深炒りといった焙煎の度合いが生じ、
コーヒーの風味が大きく変化しますので、
コーヒー豆の産地や銘柄と同じく、
コーヒーの味を決める重要なポイントです。
 
福岡市にある昭和52年創業のコーヒー店
「珈琲美美」(びみ)は、
焙煎にこだわったコーヒーを出す喫茶店です。
 
森光充子さんは、平成28(2016)年に亡くなられた
「コーヒーの名人」と言われた夫・宗男さんの跡を継いで、
お店の味を守り続けています。
充子さんは、御主人が亡くなられる2年程前から
ご主人から焙煎の技を学び、焙煎を任されていました。
 
森光宗男さん(1947〜2016年)は、
日本のコーヒー御三家の一人と謳われた
「もか」の標交紀(しめぎゆきとし)さんに師事し、
昭和52(1977)年に独立して「珈琲美美」を開店、
当時の福岡市内ではまだ珍しい
自家焙煎ホームコーヒーとネルドリップの店として、
珈琲屋人生を踏み出しました。
以来40年、「人を感動させるコーヒー」を目指し、
日々、焙煎とネルドリップ技術の研鑽を続けられましたが、
平成28年に、韓国で講演会を開催した帰路のソウル空港で、
亡くなられました。
 
 <日本のコーヒー御三家>
 
コーヒーの準備は、前日の夕方から始まります。
生のコーヒー豆を洗うのは、娘の英会さん。
50度のお湯で3回。
3回目は焙煎機に溜まったコーヒー豆の薄皮の灰を加えます。
水洗いして一晩ザルにあけておくと味が柔らかくなるとか。
 
翌朝4時、焙煎が始まります。
コーヒー豆を熱した釜に入れ、焼き上げていきます。
豆をどこまで煎るか、そこに味を作るポイントがあります。
充子さんが狙う温度は、223度。
その温度に緩やかに達するように、
空気を入れる量やドラムの回転数を変えて、調整していきます。
20分後、豆の大きくハゼる音がしました。
豆が十分に膨らみました。
223度に達すると、ブザーが鳴り・・・・、
充子さんは、数秒待って、煎り止めました。
 
  • 住所:〒810-0042
       福岡県福岡市中央区赤坂2丁目6−27
  • 電話:092-713-6024
 
 

東京・駒場「べにや民藝店」(元「大坊珈琲店」店主・大坊勝次さん)

 
東京・駒場の民芸品店「べにや民藝店」で開かれたイベントで、
伝説のコーヒー店「大坊珈琲店」の大坊勝次さんが
コーヒーを淹れていました。
 
「大坊珈琲店」は、
東京・表参道交差点の近くにあった喫茶の名店です。
ムク材でできたカウンターや床は煙で燻され、
ほの暗い店内には、村上春樹などの文化人を始めとした
多くのファンがいました。
店主・大坊勝次さんは、
手廻しロースターで焙煎した深煎りの豆を
ネルフィルターでハンドドリップにより
コーヒーを淹れていました。
平成25(2013)年12月を最後に、
ビルの取り壊しにより、惜しまれながら閉店しました。
 
  
 
大坊さんは、独自の焙煎を追い求めてきました。
味を作り出しているのは、
今は珍しくなった手回しの焙煎機です。
手回しで追求してきたのは、コーヒーの「甘み」です。
まず、強火で煎り始めます。
豆の色と時間を見て、火力を少しずつ弱めていきます。
徐々に薄茶色に色づいてきました。
焙煎が進むと、コーヒーの酸味は減っていきます。
酸味がゼロになる瞬間、
そこに濃厚な甘みが生まれると大坊さんは考えます。
そのポイントを「7.0」という独自の数字で表しています。
煎り始めておよそ25分。
コーヒー豆の艶を見極めて、煎り止めました。
 
大坊さんは毎回 、
煎の感覚をノートにつけては修正を重ねてきました。
滑らかさとかトロミに欠けるとか、
大坊さんしか出せない味のニュアンスを今も追い続けています。
 
深く煎った豆をゆっくりと抽出した濃厚なコーヒー。
コーヒー好きの間で「一度は飲みたい」と言われています。
 

 
  • 住所:〒107-0062
       東京都港区7 南青山2-7-1
       ホームズ飛騨1階
  • 電話:03-5875-3261
 
 

美の壺3.跡を残す

 

イタリアのコーヒー「エスプレッソ」
イタリア語学校「イル・チェントロ」校長・ファブリツィオ・グラッセッリさん)

 
ダンテ・アリギエーリ協会・東京支部会長で
東京・渋谷のイタリア語学校「イル・チェントロ」の校長、
グラッセッリ・ファブリツィオさんは、
授業の合間にエスプレッソを自ら淹れて楽しみます。
 
イタリアでは、コミュニケーションの場に欠かせないという
エスプレッソ。
家でも毎日エスプレッソ。
どの家庭にも「モカ」というエスプレッソメーカーがあって、
子供の頃に、母親の淹れ方を見て覚えました。

まず、エスプレッソ用に細かく挽いた豆を
加圧して抽出します。
 
それから「モカ」を直接火にかけておよそ2分半。
お湯が沸騰すると蒸気圧が高まり、およそ30秒で抽出されます。
 
朝はブラック。
気分を変えたい時は、砂糖を入れて楽しみます。
飲み終わった後も大事。
洗剤は使わず、水でサッと洗います。
シャツのように薄く色をまとった「モカ」。
家庭の味として受け継がれると言います。
 
イタリア語学校
イル・チェントロ
  • 住所:〒150-0031
       東京都渋谷区桜丘町 29-33
       渋谷三信マンション 702
  • 電話:03-5459-3222
 
 

東京 下北沢「BEAR POND ESPRESSO」(田中勝幸さん)


www.youtube.com

 

東京・下北沢にある「ベアポンド エスプレッソ」は
本格的なエスプレッソを提供するコーヒースタンドです。
このお店のエスプレッソを目当てに、
国内外から多くのお客さんが訪れます。
 
田中勝幸さんは、ニューヨークで学び、
10年程前に店をオープンしました。
人気の秘密は、濃厚でありながら甘くまろやかな口当たり。
苦味と甘味が際立つ、ドロリとした舌触りのエスプレッソです。
 
「エスプレッソでありながら、エスプレッソではない」
とも言われる田中さんの味。
「これが正しいんだ、これが間違ってんだ。
 こうすべきだ、そんなことはない。
 そういうことに囚われない世界というのが、
 僕は エスプレッソだと思ってます。」
 
 ベア   ポンド   エスプレッソ
  • 営業時間:10:30 - 18:00
  • 住  所:〒155-0031
         東京都世田谷区北沢2丁目36−12
  • 電  話:03-5454-2486
 

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