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美の壺「小さな幸福 ミニチュア」<File504>

<番組紹介>
なぜか心ひかれる、小さなものたち。
ミニチュアワールドを徹底探検!
 ▽麺やだしの光沢まで
  本物そっくりの「うどん」は指に乗るサイズ。
  その超絶技巧に迫る!
 ▽ぜいたく禁止令が生んだ江戸小玩具・
  ダジャレで健康を願う赤フクロウ
 ▽ナポレオンも愛した「豆本」は美術品のよう。
 ▽SNSで話題沸騰!
  壁コンセントの中に秘密基地!?
 ▽お盆の中の絶景アート・
  手元に置いて心をいやす豆盆栽も登場。
  遊び心満載!
 
<初回放送日:令和2(2020)年5月1日>
 
 

美の壺1.手に乗る幸せ

 

ミニチュアアーティスト・田中智さん(Nunu’s House

 
ミニチュア作家・田中智さんが作る
繊細で精巧なスイーツや雑貨は
圧倒的なリアルさと、おしゃれでストーリーのある世界観で、
今、世界からも大注目、SNSでも大人気。
そのフォロワーは何と41万人です。
 

 
田中さんは、平成13(2001)年より、
趣味でミニチュア製作を開始しました。
全て独学で身につけたのだとか。
 

 
既製品を使わない全て素材から作る事をコンセプトに、
誰もがよく知る食べ物を、
どこまで本物に近づけるか追求しているそうです。
 

 
番組では、黒い丼に入れるうどんを作っていました。
材料は樹脂粘土です。
樹脂粘土に絵の具を混ぜて着色して、素材を一つ一つ作っていきます。
「お揚げ」を幅1㎜以下にカッターで切っていきます。
「ネギ」はつまようじより細い針金に樹脂粘土を巻き付けたら、
3色の水性絵の具を混ぜて、
微妙に色を変えて、一本一本着色していきます。
ピンクの「かまぼこ」も外せません。
具材をトッピングしたら、濃いめの「おだし」をかけて、
「関東風うどん」の完成です。
 

 
 

江戸小物玩具(江戸趣味小玩具「助六」店主・木村吉隆さん)

 

 
江戸趣味小玩具の店「助六」は、
浅草仲見世、浅草寺の宝蔵門そばで商いをしている
間口一間ほどの小さなお店です。
お店の中には、江戸時代から伝承されている「江戸小物玩具」が
ぎっしりと並んでいます。
 
江戸のおもちゃが小さいのには訳があります。
江戸時代、幕府は着物やご馳走などの贅沢品を度々禁止しました。
立派なおもちゃなどご法度。
ならば、大きくしなければいいだろうということで、
江戸のおもちゃは小さくなりました。
 
江戸のおもちゃには、子供を思う親心が込められています。
例えば、疫病を退けると信じられていた
赤い色の「梟」(ふくろう)は、
「不苦労」という字を当てて、苦労知らずに育つという具合です。
 

 
また竹ザルを被った「ざるかぶり犬張子」は、
「犬」の上に「竹」を乗せると
「笑」の字に似て見えることから、
笑門来福の縁起物と言われています。
犬張子を振ってみると、 カラカラと音がします。
「まめな人間になり、将来芽が出ますように」と願って
豆が入れられているのだそうです。
因みに、犬は多産でお産が軽く毎年子供を産むから、
平安時代より安産・多産・育児の象徴とされています。
 

 
江戸時代中期に大流行したのは「コマ」も、
大きいものでも直径1㎝、
小さいものだと、何と2㎜と、とても小さいです。
「瓢箪からコマ」で、
瓢箪の中には小さなコマが5つ入っていました。
ちゃんと回ります。
小さくても回る秘密は、
一つの木材から削り出すために軸がブレないのだとか。
小さなおもちゃは、江戸の心意気と願いを、今に伝えています。
 

 
  • 住所:〒111-0032
       東京都台東区浅草2丁目3−1
  • 電話:03-3844-0577
 
 

美の壺2.小さな世界の大きな宇宙

 

豆本(豆本アーティスト・赤井 都さん)


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立派な革表紙の本かと思いきや、
大きさはおよそ10㎝程度、実際に読むことも出来ます。
手のひらに収まる本を「豆本」と言います。
 
15~16世紀、ヨーロッパでは、
携帯用の本として「豆本」が流行しました。
かのナポレオンも、戦いに向かう時に携えていたそうです。
持ち運びに便利で、いつでも携帯出来て、
それでジュエリーのように飾ったりしました。
「豆本」で盛んに作られたのは、聖書や物語でした。
 

 
「本を作るということは
 お金が掛かることですからそういうものが出来るのは、
 聖書とか、そういうものを小さくして、
 貴族の婦人が持っていたとか。
 もし この本が大きかったら、全然かわいくないと思いますけど。
 重いだけで。」
 

 
赤井 都さんは「豆本」を作るブックアーティストです。
デザインから製本まで、挿し絵を描くことも珍しくありません。
赤井さんの「豆本」は、
繊細な作りが美術品としても高く評価されています。
 
元々小説を書き、
「すばる文学賞」の最終候補にもなったことがあります。
自分で書いた物語を、
それに相応しい本の形にしたいという思いから、
自作小説を作者自装丁で自主制作を始めました。
 
独学で初めて作ったハードカバーの「豆本」
(『籠込鳥(かごめどり)』)で、
2006年ミニチュアブックソサエティ(本拠地アメリカ)の
国際的な豆本コンクールで、日本人初の特別優秀賞を受賞。
以後、2007年、2016年、2021年、連続受賞。
また2019年には、豆本に貢献した人として、
「Norman Forgue Award」を受賞しています。
 

 
『籠込鳥』の「豆本」は
まだらに金箔が押され、挿画は木版と、
和テイストの斬新な作りになっています。
勿論、赤井さんのオリジナル小説です。
その「豆」が竹籠に入っていて、
読者は、籠から「豆本」を取り出した瞬間、
物語の世界に誘われるという仕掛けになっています。
 
主人公の「私」が、羽を失って、
籠に閉じ込められているところから物語は始まります。
「私」は、最後、籠から出られるのか・・・?
ページをめくる毎に、キラキラ光る文字が
読む者を話に引き込んでいきます。

 
 

こびとの秘密基地(Mozuこと水越清貴さん)


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コンセントのカバーを開けると、
中にはエアコンや冷蔵庫、デスクに椅子、ハードディスクまで、
小さな小さなものたちが、精巧に再現されている、
SNSの世界で一大旋風を起こしたこちらの動画は、
90年代の大学生の秘密基地なのだとか。
 
作者は、Mozuこと水越清貴さんです。
幼い頃から絵や工作が得意だった水越さんは、
美術系の高校を卒業後、アーティストとして活動を始めました。
ミニチュア作りは、子供の頃に作ったプラモデルの延長です。
水越さん独自の作り方で、
プラスチックの板を削って小さな家具を作ります。
 

 
最初は、SNSで画像をアップしても、
それほど注目されませんでした。
あまりにも本物そっくりだったので、
ミニチュアだとは気づかれなかったのです。
 
「ミニチュアって、すぐ気付かせるようにしたいなと思って、
 みんながよく知ってるもので、
 比較出来るものって何だろうなと思ったら、
 コンセントが思い浮かんで。
 コンセントの横に、
 ちっちゃい階段とか、ちっちゃい部屋とかがあったら、
 小さな友達が住んでる感じで、
 すごい夢があって、いいんじゃないかということを思いついて。
 同時に、絶対にミニチュアってことが伝わるんで、
 みんな、反応してくれるだろうという・・・。」
 
狙いが当って、
コンセントの中の動画は瞬く間に世界中に拡散されました。
 
「最初は、本当に自宅の壁に開けようと思ってて。
 僕の部屋のその辺の壁に、
 実際にノコギリで穴を開けてやろうと思ってたんですけど、
 さすがに母に「それ、失敗したらどうするんだ」って言われて。
 諦めた結果、生み出したのが、壁ごと作っちゃうという・・・。」
 
水越さんの作品の主な発表の場は、インターネットです。
 
「ツイッターとかに、SNSに投稿する前に
 「これ、面白いの、俺だけじゃないの?」って、
 いつでも思うんですよ。大丈夫かな?みんな 分かるかな?」
 
ところが、フォロワーからは
「ここに住みたい」
「家のコンセント、開けてみたよ」といったコメントが沢山。
小学校、中学校時代、
クラスの中の人だけを驚かせるのが精一杯だったのが、
ツイッターとか、インスタというSNSが出たことによって、
今日も世界中のファンがコンセントの部屋を訪れます。
 

 
 

美の壺3.卓上に広がる自然

 

盆景作家・杉原景月さん

 
「盆景」とは、約1400年前に「日本」で誕生しました。
お盆の上に、
土や砂、石、苔や草木などを配置して自然の景色を作り、
それを鑑賞する伝統的な立体芸術です。
 
「盆栽」が樹木単体の容姿から自然の美を想起させるのに対して、
「盆景」は、木や苔、草などの植物は勿論のこと、
石や水などを用いて、その配置や景色の工夫を凝らして、
小さな自然の景色を作り出して美を表現することが
重要とされています。
 
15世紀頃、武士や貴族が始めた「盆景」は、
やがて庶民の間にも流行しました。
江戸時代の女性のたしなみを描いた浮世絵には、
「盆景」を楽しむ様子が描かれています。
 
盆景作家の杉原景月さんは、
かつて仕事で訪れた様々な国の名所や景色を
「盆景」にしています。
今回は、「浜辺と富士山」。
主な材料は、挿し木を植え付ける時などに使われる
園芸用の「化土」(けと)です。
これを、この盤面に平らに敷きます。
それから化土土を練って、どんどん景色を作っていきます。
 
富士山の形が出来たら、コテで山にひだを入れていきます。
そして「盆景」の大事なポイント、水入れを作ります。
ここから毎日水を入れて、土を乾かさないようにするのです。
 
形が出来上がったら次は、
天然色素などで染めた砂やおがくずを振り掛けて、
着色をしていきます。
振りかけてすぐは鮮やかな色ですが、
毎日水を補給することで、
湿った土と馴染んで落ち着いた色合いに変わっていきます。
 
それから、苔を森に見立てて貼り付けていきます。
土に水分があるため、緑がとてもみずみずしいです。
 
「盆景」には、フィギュアが欠かせません。
風景の中に置けば、世界がグッと広がります。
船と船頭さんを配置し、たっぷりと水を注いだら完成です。
お盆の上に絶景が現れました。

 
 

小さな盆栽(盆栽「豆松家」の盆栽家・山崎ちえさん

 
気軽に楽しめることから、
今、「小さな盆栽」が人気を集めています。
ビルの一室で、「小さな盆栽」を作る教室が行われています。
教えているのは、盆栽家の山崎ちえさんです。
 

 
盆栽には、高さ10㎝に満たないものもありますが、
小さくても、季節が来れば花を咲かせます。
 
「こちらは 10年ほど経過した長寿梅。
 可愛い過ぎて、造花かと思う人がいるみたいで、
 「生きてますか?」って言われるんですけど、
 「本物です」って言ったりして。」
 自然の中に生えている木の姿をイメージしながら、
 針金を巻いて形を整えていきます。
 10年後、20年後の姿も想像しつつ。
 
 
元々野山に出て自然に包まれるのが好きで、
大学時代はワンダーフォーゲル部に所属して、
休みのたびに山登りをしていたという山﨑さん。
しかし大学卒業後に就職すると、
そんな機会もすっかりなくなってしまいました。
 
「パソコンの前で、ずっと仕事をしてて、凄い緑が恋しくなって。
 で、緑を手元に置きたいなって、近くに置きたいなと思って。」
 

 
たまたま本屋さんで手に取った盆栽の本に、
「盆栽は一つの鉢の中に自然の風景を再現する」
と書いてあるのを見て、
なかなか山に登りに行くことは出来ないけれど、
これならば
身近に山の自然を感じることが出来るかもしれないと思い、
仕事をしながら盆栽教室に通うようになります。
ますます盆栽が好きになっていくとともに、
会社勤めが向いていないなあと思うことも増え、
会社勤めを辞めて、盆栽園に修業に入りました。
 

 
小さい盆栽に特に引かれるのは、
その多様な楽しみ方にあると言います。
「持ち主が楽しんでればいいというか。
 お部屋のちょっとしたところに、机の上とか、窓辺とか。」
 

 
日の光と、たっぷりの水で、生き生きとする盆栽。
長くお付き合いを楽しむことが出来ます。
暮らしのそばにある小さな幸福です。
 

www.bonsaichie.com

 

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