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美の壺「心をいざなう 階段」<File 507>

<番組紹介>
思わず上りたくなる階段が続々登場!
 ▽建築家・安藤忠雄さんが「夢のある階段」をアツく語る!
 ▽階段愛好家が選んだイチ推し階段
 ▽東京・京橋に出現した、劇場のような大階段
 ▽横浜・三溪園の茶室や京都・二條陣屋で発見!
  「和の階段の秘密」とは?
 ▽京町家の狭い空間を有効利用した箱階段の美を堪能
 ▽匠のこだわりは細部にも。
  木の手すりの美しい曲線を生み出す技や、
  階段箪笥の構造に込められた知恵に迫る!
 
 

美の壺1.心を操る、魅惑の階段

 

階段愛好家グループ「BMC」(ビルマニアカフェ)

 
「BMC」(ビルマニアカフェ)に所属しているのは、
  • 近畿大学建築学部准教授・高岡伸一(たかおか しんいち)さん
  • 設計士・岩田雅希(いわたまさき)さん
  • 阪口大介 (さかぐちだいすけ)さん
  • 井上タツ子(いのうえたつこ)さん
  • 川原由美子(かわはらゆみこ)さん
 

 
美しい階段を求めて、日本中のビルを巡り歩き、
数々のビルを鑑賞してきました。
そして、トークイベントや企画展を行ったり、
月刊ビル」の出版など幅広く活動しているそうです。
 

 
番組には、
近大准教授の高岡伸一さんと設計士の岩田雅希さん、
写真家の西岡潔さんが登場し、
1950年代〜60年代に建てられた、
「近代建築の階段」を紹介してくれました。
 

 

輸出繊維会館

階段愛好家メンバーが選ぶ「イチ推しの階段」は
しなやかに伸びる流れるような曲線が目を引く
大阪中央区にある「輸出繊維会館」の階段です。
 
輸出繊維会館」は昭和35(1960)年完成しました。
設計は階段の魔術師と呼ばれた、村野藤吾(むらのとうご)氏。
愛好家が注目するのは、階段の裏側「段裏」(だんうら)です。
 

 
白いカーブがとても美しい。
そして階段に沿った壁は、
カラフルなモザイクタイルが貼られていて、
具象なのか抽象なのか、見る人によって見え方が様々です。
西岡さんは水族館のように見え、海の中にいる気持ちになるそうです。
階段を昇るごとに少しずつ壁画が見えてくるような設計。
階段を昇った階にまで、モザイクタイルの壁画は続いています。
 

 
高岡さんによると、
このように趣向を凝らした階段は
主に1950年代〜60年代の
高度経済成長期に建てられた建築に多いそうです。
現在、建物の上下移動は
エレベーターやエスカレーターが主役ですが、
1950年代〜60年代は、
まだまだ「階段」が空間の主役を張っていた時代でした。
普通のビルでも、階段は凝ったデザインになっていて、
また、良い素材が使われているところが多いのだそうです。
 
  • 住所:〒541-0051
       大阪府大阪市中央区備後町3-4-9
 
 

曲がった木の手すりの職人技(大工・桜井謙治さん [平成建設])

階段の魅力は「木の手すり」にもあります。
曲がった気の手すりを作ったのは、
平成建設の大工さん、桜井謙治(さくらい けんじ)さんです。
螺旋階段の手すりを作るところを見せて下さいました。
 
厚さわずか1mmの米松(べいまつ)の板・60枚を
接着剤で手早く貼り合わせます。
曲線を生み出すのに欠かせないのが「型」。
カーブの違いのよって曲線も違いますから、
「型」も一から手作りで作ります。
カーブごとに綿密に設計した
「治具」(じぐ)と呼ばれる器具で固定し、
階段に合った曲線を完璧に作り上げていきます。
そして、まるで一本の木から作り上げたような
手すりが出来上がりました。
 
「人の動線を妨げない、
 スムーズな流れを導く手すりが
 きっと良い手すりじゃないかな」と
 
 

美の壺2.時代を映す階段に、思いをはせる

上りにくい階段(三渓園

 
横浜「三渓園(さんけいえん)内にある
茶室「聴秋閣」(ちょうしゅうかく)
「重要文化財」にも指定される「聴秋閣」(ちょうしゅうかく)は、
1623年、徳川家光の時代に「二条城内」に建てられ、
大正11(1922)年に「三渓園」に移築されました。
 

 
書院造の間に佇むのは、独特の曲線を描いた階段。
曲がった木を使い、一見、趣を感じるデザインですが、
傾斜の角度が途中から急になるため、とても登りにくくなっています。
建築デザイン史家の稲田愿(いなだ まこと)さんによれば、
江戸時代は現代と逆に「上りにくい階段」が多いとのこと。
城が攻め込まれた時のことを考え、敢えて登りにくくしてあるのです。
 

 
  • 住所:〒231-0824
       神奈川県横浜市中区本牧三之谷58−1
  • 電話:045-621-0634
 
 

秘密の吊り階段(二條陣屋

京都市中京区にある「二條陣屋」(にじょうじんや)は、
「重要文化財」に指定されている建物です。
 

 
「秘密の吊り階段」は廊下の天井にあります。
茶壺棚に見えますが、留め具を外すと吊り階段が降りてきます。
敵に攻め込まれた際にこの階段を上って二階に避難。
その後、元に戻してしまえば普通の棚にしか見えません。
吊り階段の他にも、
隠し階段や騙戸、屋根への抜け道がある中二階の茶室など、
まるで忍者屋敷のようです。
 

 
  • 住所:〒604-8316
       京都府京都市中京区三坊大宮町137
  • 電話:075-841-0972
 
 

旧お茶屋の箱階段(上七軒 くろすけ

西陣の奥座敷に受け継がれる京都最古の花街・上七軒。
室町時代、北野天満宮の一部が焼失した際、
その再建で残った木材を使って七軒の茶屋を建てたのが
「上七軒」の起源です。
 
料亭「上七軒 くろすけ」さんは、
明治時代にお茶屋として建てられた町家を譲り受け、
調度品もそのまま残した、当時の風情が感じられる佇まいのお店です。
 

 
お店の一角にある見事な「箱階段」(はこかいだん)
100年以上使い込まれた温もりが醸し出す独特の美しさ。
階段と収納をひとつにしたこの箱階段は、
日本の狭い居住空間を有効利用する知恵から生まれたと言われています。
 
仲居の原田絵美子(はらだ えみこ)さんによると、
収納棚を置かなくてもいいので、空間を広く使える、
人が上る雰囲気も懐かしい感じで気に入っているそうです。
 

 
  • 住所:〒602-8381
       京都府京都市上京区今出川通七本
       松西入ル真盛町699
  • 電 話:075-466-4889
 
 

階段箪笥の職人技(木工技術士・原義彦さん [マルイ造形家具工業])


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マルイ造形家具工業(まるいぞうけいかぐこうぎょう)
木工技術士で、
岩手県の伝統工芸品「南部箪笥」(なんぶだんす)の職人・
原義彦(はら よしひこ)さんは、
階段箪笥(かいだんたんす)を作っています。
 
組み立てには、釘を使わない指し物(さしもの)の技法を用います。
踏板部分の強度などを綿密に計算して組み立てていきます。
湿度による材の膨張や縮みも考慮した、微妙な寸法調整も職人技。
造りが複雑な「階段箪笥」は、普通の箪笥よりも難易度が高いそうです。
 
漆を塗り重ね、鋳物の金具を取り付けたら、完成です。
気品溢れる姿です。
「少しでもきれいに作るということのみを心掛けているので、
 お孫さんの代まで使い続けて欲しいです」と
原さんはおっしゃいます。
 

 
  • 住所:〒028-6502
       岩手県九戸郡九戸村伊保内11-13
 
 
 

美の壺3.階段と遊ぶ

野外劇場になる階段(京橋エドグラン)

 
東京都中央区の「京橋エドグラン(きょうばしえどぐらん)は、
歴史的建造物の「明治屋京橋ビル」を
改修保存しながら再開発したビルです。
 
明治屋京橋ビル
昭和8年竣工、コンドルの弟子である曾禰達蔵の設計によるルネサンス様式建築。
民間で初めて地下鉄駅と一体化計画された現存最古の貴重な歴史的建築物。
 

 
設計に携わったのは「日建設計」。
設計部の伊東宏和(いとう ひろかず)さんによると、
都市の野外劇場の観客席になる階段をイメージしたそうです。
イベント開催時には、階段下の広場がステージになり、
段には観客が座って賑わいます。
 

 
日建設計の再開発コーディネーターの
飛田早苗(とびた さなえ)さんは
「このエリアが中心になって、
 地域を盛り上げていこうと計画していく中で
 この大階段の果たした役割は大きい」と
感じているそうです。
 
  • 住所:〒104-0031
       東京都中央区京橋二丁目2番1号
 
 

行き止まりの階段(ベネッセハウス ミュージアム)


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香川県瀬戸内海・直島にある
ベネッセハウス ミュージアム」にある階段は、
どんどん昇って行って・・・あら、行き止まり?
「行き止まりの階段」になっています。
 


www.youtube.com

 
設計は建築家 安藤忠雄さん。
「夢のある階段を作りたい。
 その壁の前で立ち止まり、考え、
 未来を切り開く術を見つけて欲しい」
そんな願いが込められています。
 
安藤さんが考える「おもしろい階段」とは、
「心に働きかける階段」。
階段は未知の世界に行くもの。
そういう階段は大抵使いにくいけれども、心に残る。
そんな階段を作りたいのだそうです。

benesse-artsite.jp

  • 住所:〒761-3110
       香川県香川郡直島町 琴弾地
  • 電話:087-892-3223
 
 

ガレリア・アッカ

大阪・ミナミの繁華街にあるGALLERIA[akka](ガレリアアッカ)も
安藤さんが設計した昭和63(1988)年に完成した商業施設です。
間口8m、奥行き40mのうなぎの寝床のような敷地に建ち、
エントランスからの吹き抜けを中心に、
壁に沿うように階段が張り巡らされています。
人の動線を迷路のように作ることで、
迷宮に入り込むような楽しさを味わって欲しいと考えて
作ったそうです。
 
GALLERIA[akka]
( ガ レ リ ア ア ッ カ )
  • 住所:〒542-0083
       大阪府大阪市中央区
             東心斎橋1-16-20
 
 

兵庫県立美術館


www.youtube.com

 
こちらも安藤さんが設計した美術館です。
「兵庫県立美術館」の螺旋階段は、
深い階段の底から見上げると、
くり抜かれたような空にグルグルと誘われていくような
不思議な感覚に陥ります。
 

 
  • 住所:〒651-0073
       兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
  • 電話:078-262-0901
 

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