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美の壺「魂宿る 刀剣」<File 511>

2019年に発見された、明智光秀の愛刀「近景」。
光秀が刀に込めた思いとは?
 ▽世界が注目する刀鍛冶が作る、
  極上の刀剣▽室町時代から続く、砥ぎ師の本阿弥家。
  人間国宝が明かす「砥ぎの極意」
 ▽居合の達人による、時代ごとの形と真剣の技
 ▽平安時代に作られた国宝の刀の鞘(さや)には、
  にゃんと現存最古の猫の工芸!
 ▽職人の共演!刀の鞘(さや)
 ▽刀剣男士・三日月宗近(黒羽真璃央)も参上!!
 
 
古より、魂が宿ると言われる「刀剣」。
古墳時代から作られ、神の「依代」と考えられてきました。
「三種の神器」の一つに数えられるほど神聖な物も。
武器にとどまらず、
芸術品としても時代を超えて愛されてきました。
強さと幽玄さを兼ね備えた刀剣。
日本の刀鍛冶の技術は、世界の注目の的です。
輝きを生み出す人間国宝の研ぎの技。
そしてなぜか、平安時代の刀の鞘に猫の姿が…。
今回は「刀剣」のお話です。
 
 

美の壺1.己を映す

 

明智光秀の愛刀「近景」(井伊美術館・井伊達夫さん)

 
令和元(2019)年8月、ある武将の愛刀が発見されました。
名刀「近景(ちかかげ)
明智光秀の愛刀で、
備前国(現:岡山県)の刀鍛冶・近景によって
鎌倉時代に作られたものだそうです。
 
収蔵されている「井伊美術館」の
館長・井伊達夫(いい たつお)さんによりますと、
光秀から娘婿の秀満(ひでみつ)へ譲られのではないかと
考えられているそうです。
 

 
太く厚くスッと伸びた刀身。
秀満に譲ったのが、
本能寺の変の直前であったというのですから、
何ともまあドラマチックな刀剣ですね。
戦国武将が、腰に差してる愛刀を
自ら、人に与えるというのは深い意味があったのでは・・・。
刀は時に、歴史の生き証人なのかもしれません。
 

井伊美術館

  • 住所:〒605-0811
       京都府東山区小松町564
  • 電話:075-525-3921
 
 

居合道・町井勲さん(兵庫県 川西市)


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居合の達人、
修心流居合術兵法の創流者・町井勲(まちい いさお)さんは、
時速840kmのテニスボールを刀で斬るなど、
真剣を使ったギネス世界記録を6つ持つ現代の侍です。
町井さんは様々な時代の刀を集めて、その違いを味わってきました。
 

 
鎌倉時代初期・室町時代後半・江戸時代前期の刀が比較されました。
目に見えて異なっているのが、刀の反りです。
 

 
鎌倉時代初期の刀は、
斬ることよりも、突くことを重視して作られています。
平安や鎌倉の頃の鎧は、
胸元から喉元にかけて隙間が空いていたため、
刀で相手の喉元を狙って突くことを目的に、刀は作られました。
更に、馬を操りながら使えるように、
片手でも楽々操作が出来るような設計になっていて、
このまま馬で突進していくと相手の喉元に刺さるように
反りが深くなっているのが特徴です。
 
室町時代後半、戦国時代になると、
刀は突くから斬るに変わり、
遠心力で力をより出せるように変化しました。
刀の反りも、鎌倉初期のものよりも浅くなっています。
そして江戸時代前期になると、刀の反りは更に浅くなります。
剣術の研究が進んだ江戸時代は、
機能的にも美術的にも優れた刀が生まれました。
 
町井さんのお気に入りは、
各時代の良さを取り入れた特注品です。
その切れ味は・・・・。
試斬した畳表の切り口は、鉋で削ったようにツルツル。
力やスピードは関係なく、
刀と体がいかにひとつになるかが大切なのだそうです。
もう完全に相棒ですね。
切り口さえも芸術品に見せる。
刀への深い信頼から生まれる、技の極致です。
 
 

美の壺2.二、唯一無二の命を宿す

 

刀鍛冶・吉原義人さん(日本刀鍛錬道場)


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世界が注目する刀鍛冶吉原義人(よしはら よしんど)さんは、
刀鍛冶・吉原家の工房「日本刀鍛錬道場」の三代目で、
超一流と称される名工です。
これまでに作った刀剣は500本以上。
メトロポリタン美術館やボストン美術館にも
吉原さんの作品が収蔵されています。
 
吉原さんは、
「刀は武器として出来たのでしょうが、
 日本の場合は、宝物として大事にされてきたことで
 発達したのではないか」とおっしゃいます。
 

 
日本刀の原材料は「玉鋼」(たまはがね)です。
日本古来のたたら製鉄によって作られた純度の高い鉄です。
玉鋼を砕き、鋼が溶ける寸前のおよそ1300度まで上げる
「積沸し」(つみわかし)の作業は、
小づちで不純物を叩き出し、鋼を鍛えていきます。
線香花火のように燃えているのは、不純物のリンや硫黄などです。
鋼の純度が高くなるのを見極めて切れ込みを入れます。
 

 
「折り返し鍛錬」(おりかえしたんれん)は、
三人がかりで叩いては折り返し、
鋼の層が数千から数万枚に重なり、より強い鉄とします。
鍛錬を繰り返すと、「地鉄」(じがね)という刀の肌に、
何層にも重なった鋼の模様が現れます。
直線が重なり合う「柾目肌」(まさめはだ)に、
杢目交じりの「板目肌」(いためはだ)
こうした地鉄の模様も刀工や流派の個性を味わう楽しみです。
 

 
刀鍛冶が最もこだわるのが「刃文」(はもん)です。
木炭や砥石の粉などを混ぜた粘土を置いて文様を描いていきます。
熱した刀を水で冷やすと、粘土を置いたところが文様となるのです。
 
「刃文」(はもん)は、
作者の腕や流派を見分ける決め手とされる、
いわば個性の表現、刀鍛冶の創意工夫の結晶です。
 

 
さあ、いよいよ「焼き入れ」(やきいれ)です。
仕上がりを左右する真剣勝負です。
刀を700度から800度まで熱し、水で一気に冷やします。
白く浮かび上がる「刃文」の光沢。
大小の波が音楽のようにリズムを刻みます。
大切な宝物として大事に持ってもらえるように、
ありったけの気持ちを込めて作っていると吉原さんが語っていました。
 
 
 

古伯耆太刀(春日大社)


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奈良県にある「春日大社」。
武の神を祭ることから、貴重な刀剣が数多く奉納されてきました。
昭和14年に行われた宝庫の解体修理の際に、
天井裏で刀が発見されました。
それは南北朝から室町時代に奉納されたもので、
長くて立派な太刀でしたが、黒錆に覆われて曇っていました。
 
平成29(2017)年、
人間国宝の研ぎ師・本阿弥光洲(ほんあみ こうしゅう)さんの手によって、
600年前の輝きが蘇りました。
 
「持って拝見したところ、
 ちょっとまあよくある太刀の感じじゃないなというのが、
 第一印象でございました。
 黒い錆が全体を覆っていまして、
 実際、長くてですね、立派な太刀なんですけれども、
 どのようなものかは 分からなかった訳です。」
 


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それは平安後期に作られたと見られる、極めて貴重な太刀でした。
刃文は細かく、地鉄は流れるような流麗さ。
平安時代末期の「古伯耆物」(こほうきもの)と呼ばれる最初期の日本刀です。
伯耆国(現:鳥取県)で作られた傑作です。
無銘で作者不明ですが、
刀工・「安綱」(やすつな)の作の可能性があると言われています。
 

 
この刀を研いだ本阿弥さんは、室町時代から続く研ぎ師の一族です。
刀一振り研ぐのに、ひと月以上を費やします。
本阿弥さんは6種類の砥石を使い分けて作業を行います。
 
「内曇刃砥」(うちぐもりはど)という工程で、
軟らかい砥石で刃文を整えていきます。
削り過ぎず傷つけないように、優しく柔らかく研いでいきます。
 
地鉄の模様を際立たせるために行われる
「地艶」(じづや)という研ぎの作業は、
目の細かい砥石を薄く小さくし、
親指の腹を当てるように研ぐ繊細な作業です。
 
刀鍛冶が鍛えた刀を磨き上げる研ぎ師は、
切れ味を良くする役割にとどまらず
刀の持ち味をいかに引き出すかが腕の見せどころです。
そんな本阿弥家には、代々伝わる 「研ぎの極意」があると言います。
 
「澄んだ秋空のごとく青黒く、
 刃を研ぐ時は新雪が松の木に積もったような
 境目をいかにふんわりぼかすか」
 
鋼の中に景色を見る。 刀が命を宿します。
 
 

美の壺3.職人たちの技の競演

 

国宝・金地螺鈿毛抜形太刀(春日大社)

 
国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」(きんちらでんけぬきがたたち)は、
平安時代に春日大社に奉納された刀で、
当時の技術の粋を集めた一振りです。
(さや)には漆が塗られ、
金粉で蒔絵が施された絢爛たる作りになっています。
夜光貝を埋め込んだ「螺鈿」(らでん)で描かれているのは
「竹林に雀を追う猫」。
日本に現存する猫を扱った工芸としては最古のものと言われています。
絵巻物を見るように 猫の姿を追っていくと、
まるでアニメーションのように、動作が刻々と移り変わっていきます。
 
模様や目にはガラスや琥珀が使われ、
毛並みは0.1㎜にも満たない細やかさです。
目を凝らすと、肉球まで表現されています。
細工は、現代では顕微鏡を用いなければ出来ない精巧さです。
平安時代の鞘の最高傑作と言われています。
 
春日大社の宮司・花山院弘匡(かざんいん ひろただ)さんは、
「多くの最高の方々が何百人も集まって、
 すばらしい一つの太刀を作り、
 すばらしいものをお作りすることによって、
 神様に喜んで頂くというものが表れてるのではないか」と
おっしゃっていました。
 
 

鞘師・髙山一之さん

刀の外装「拵」(こしらえ)には、多くの職人の手が携わっています。
 
「拵」(こしらえ)
  
日本刀の外装のことを言い、「つくり」などとも言います。
刀身を納める「鞘」(さや)
「茎」(なかご)を入れる「柄」(つか)
柄を握った際に手が刀身の方へ滑らないように施す「鍔」(つば)といった
日本刀を構成する「刀装具」(日本刀の装飾品)の総称した言葉です。
 
鞘を作る「鞘師」(さやし)、鞘に漆を塗る「塗師」(ぬし)
柄に組みひもを巻く「柄巻師」(つかまきし)
鍔を作る「鍔師」(つばし)、金具を作る「白銀師」(しろがねし)など
5人以上の手により作られています。
刀は職人たちの技術が結集した総合芸術と言われてきました。
その中で重要な役割を担うのが「鞘師」です。
 
江戸時代から続く鞘師の6代目・髙山一之(たかやま かずゆき)さん。
「鞘師」は、拵を作るために全体をコーディネートします。
どんな拵にするかを考え、どの職人に依頼するのか、
鞘師が全体を取り仕切ります。
 
全ての装飾の起点となるのは鞘作り。
使う道具は60種類以上にも及びます。
それを刀の大きさや反りに合わせて、変えていきます。
鞘は、0.1㎜でも多く削れば緩過ぎてガタガタいってしまい、
逆に少なく削れば当たり過ぎてしまいます。
均等に刀を包む塩梅を見極めます。
 
鞘師は他の職人と協力して拵を作り上げていきます。
「出来るからといって自分で全部 作ってしまうと
 昔のものに比べて、良くないなってものが出来てきちゃう。
 職人同士がお互いによく話し合って一つにまとめていくと
 結構気に入ったものが出来る」と高山さん。
刀剣は、職人達の技の競演によって、
輝きを増し、未来へと受け継がれていきます。
 

 
 

刀剣乱舞・三日月宗近(黒羽麻璃央さん)

 
謎の剣士の正体は、
日本刀の名刀を男性に擬人化した『刀剣乱舞』の
三日月宗近(みかづき むねちか)です。
刀剣育成シミュレーションゲームとして誕生した『刀剣乱舞』は
ミュージカル、舞台、映画、アニメなどのメディアにも派生し、
刀剣ブームを起こしました。
 
ミュージカル『刀剣乱舞』で三日月宗近を演じた黒羽麻璃央が
出演されました。
 

 
なお国宝「三日月宗近」は、平安時代に作られたとされる日本刀で、
天下五剣の1振に数えられる名刀です。
現在、東京国立博物館に所蔵されています。
 

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