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美の壺「一服の交歓 京の抹茶」<File 523>

<番組内容>
日本随一の茶どころ・
京都の抹茶が織りなす魅惑の世界をご紹介!
 ▽抹茶の季節到来!宇治の献茶祭で茶壺の口切
 ▽濃茶に薄茶...美しくおいしく点てるコツ教えます
 ▽茶園に仕掛けられた極上の茶葉づくりの秘密とは?
 ▽豊臣秀吉や千利休も愛した茶商の「合組」の技
 ▽変幻自在!ホテルラウンジで話題の抹茶スイーツ
 ▽食の都・パリでフランス菓子の巨匠が挑む
  抹茶とチョコレートの可能性に迫る!
(初回放送日: 令和3(2021)年1月8日放送)
 
 

 
抹茶は、様々に形を変えて、
今も昔も多くの人に愛されています。
特に京都は、茶の湯文化が 花開いた場所であり、
日本有数のお茶どころの一つ。
美味しい抹茶の秘密は茶畑に。
更に、茶師に受け継がれる技がその味を守ります。
世界中で愛される抹茶。
今回は、その奥深い魅力を堪能して下さい。
 

美の壺1.始まりの季節を喜び、味わう

 

抹茶を神様に奉納する献茶祭

京都府宇治市にある「縣神社」(あがたじんじゃ)では、
ある神事が執り行われていました。
毎年11月5日に行われる「献茶祭」です。
 
「献茶祭」では、
石臼で挽いて抹茶に仕上げ、
「濃茶」と「薄茶」を奉納することで、
宇治茶の恵みに感謝を捧げ、茶業発展を祈ります。
 
まず、茶師の手によって壺の封を解かれる
「口切式」(くちきりしき)の儀式が行われます。
茶師は堀井長太郎さん、堀井七茗園の6代目園主です。
 


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宇治七茗園
「宇治茶」は、鎌倉時代に、
僧侶の栄西が中国から持ち帰った茶の種を、
京都栂尾高山寺の僧侶である明恵が譲り受け
宇治に植えたことが始まりだと伝えられています。
室町時代には、
将軍の足利義満に命じられた大内義弘が、
宇治に茶を植え、七つの優れた茶園が
生まれました。
七つの優れた茶園は「宇治七茗園」と呼ばれ、
「森、祝、宇文字、川下、奥の山、朝日に続く
 琵琶とこそ知れ」と和歌にも詠まれましたが、
現在、七つの茶園は都市化の中で姿を消し、
「奥の山」茶園だけが現存する唯一の生業茶園と
なってしまいました。
 
 ● 住所:〒611-0021 京都府宇治市宇治妙楽 84
 
堀井さんが茶壺の封を切ると、
今年5月に摘み採った
上質な茶葉が収められた包みが現れます。
それを茶臼で挽いて抹茶を仕上げたら、
茶道・籔内流家元の藪内紹智(やぶのうち じょうち)さんが
その抹茶を点て、献茶をします。
 

 
古くは、夏の湿気を避けるために、
茶葉は壺に入れて保存し、秋に口切をするのが一般的でした。
「献茶祭」は、この時期、日本各地で開かれています。
今年も抹茶をいただける・・・、
その喜びをみんなで分かち合うのです。
さあ、抹茶の季節が始まります。
 
縣神社
縣神社は平等院のすぐ南にあります。
祭神は、縁結び・安産の神である
木花開耶姫命(このはなさくやひめ)です。
毎年6月5日に行われる
「暗夜の奇祭」とも呼ばれている「県まつり」は
5日の深夜には、「梵天渡御」が周囲の明かりが
消された中で行われます。
 
  • 住所:〒611-0021
       京都府宇治市宇治蓮華72
  • 電話:0774-21-3014
 
 

濃茶・薄茶(裏千家・鈴木宗博さん)

茶室にも新茶の香りが。
茶道・裏千家で指導に当たる鈴木宗博さんに
抹茶を点てていただきました。
 
裏千家・鈴木宗博さん
江戸菓子司「鈴木越後」十代目・鈴木宗康のご長男で
裏千家教授、裏千家学園講師。
先々代の頃より裏千家茶道を学び、代々和菓子に
精通した本を多数著作していらっしゃる、
茶席菓子を語る上で欠かせない存在です。
 
「普段、皆さんが飲んでおられるのは
 「薄茶」の方が多いと思うんですけれども、
 正式なお茶では必ず「お濃茶」が出てまいります。
 濃茶の方がちょっと格が高いイメージがありまして、
 お茶席でも、わりと静かにいただくお茶ですね。
 薄茶の方は、わりと皆さん、会話を楽しみながら
 楽しんでお茶をいただくという、
 そういう二通りの形があります。」
 
抹茶は「濃茶」そして「薄茶」に分けられますが、
まずは「濃茶」から。

上質な濃茶向けの抹茶をたっぷりと茶碗に取り、
柄杓に僅かの湯を注ぎ、
茶筅でゆっくりと練っていきます。
茶筅をゆっくり動かしていくと、
お茶にだんだん輝きが出てきます。
濃茶はとろりとした濃厚な飲み口で、
深い甘味と旨味が味うことが出来ます。
 
次は「薄茶」も点てていただきましょう。

今度は抹茶を2尺ほど取り、茶筅を大きく動かします。
ちょっと空気が入るような感じで、お茶を点てます。
「薄茶」は、
きめこまやかな泡、さらりとした飲み口が特徴です。
 
 

一期一会の瞬間を楽しむお茶会(日本画家の中野大輔さん夫妻)

せっかくの抹茶の季節ということで、
鈴木さんは小さなお茶会を催しました。
声を掛けたのは、かねてから親交のあった
日本画家の中野大輔さん夫妻です。
中野さんが本格的な茶席は出席するのは
これが初めてだそうです。
 
この日のために用意した「主菓子」(おもがし)は、
紅白のおめでたい「咲き分けきんとん」です。
掛け軸には「寿」の文字。お花は「寒牡丹」。
その日、その時節柄を存分に味わうための
鈴木さんの演出です。
 
咲き分けきんとん
 
紅白は、咲き誇る梅の花。
1本の梅の木から、競い合うように咲く
紅白の梅花を表すオーソドックスなきんとんです。
ほんのりピンクと白に染め分けた、初春の祝い膳に相応しい、可愛らしいきんとんです。
裏ごししてホロホロと軽い口当たりを楽しみます。
 
「どういうお菓子を用意したらいいかとか、
 どういうしつらえでおもてなししたらいいかとか、
 そういうことを考えてる時間も楽しいんですけども、
 それこそ本当に、一期一会の、本当に瞬間ですけれども、
 それがお茶の中での一番の醍醐味かな、
 というふうな気が致します。」
 

    

 
 

美の壺2.気まぐれな自然と、変わらぬ味を保つ技

 

江戸時代から続く茶園
(長谷川栄製茶場・六代目長谷川裕晃さん)


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宇治では、13世紀から
茶葉の栽培が始まったと言われています。
町のそこかしこには、茶畑が広がっています。
寒暖差の大きな気候が、美味しい茶葉を育むのだそうです。
 
長谷川裕晃さんは長谷川栄製茶場の六代目で、
江戸時代から代々続く茶園を守っています。
こちらは「さみどり」という品種です。
 

linderabella.hateblo.jp

 
11月の時点で、既に新芽が顔を出しています。
新芽は冬の寒さを乗り越えて成長し、
春には抹茶の茶葉として収穫されます。
 
煎茶と抹茶とでは、栽培方法に少し違いがあります。
煎茶の茶葉は日光をたっぷり浴びて育ちますが、
抹茶の茶葉は春、収穫直前の一定期間(4月上旬~5月)、
黒い覆い「寒冷紗」(かんれいしゃ)をかけて、
日光を遮断して育てられます。
これが、美味しい茶葉づくりの秘密なのです。
光を遮ることで、
鮮緑色と独特の芳香やまろやかな旨味や甘味のある
茶になるのです。
これを「覆下栽培」(おおいしたさいばい)と言い、
宇治が発祥とされています。
 
 
敢えて新芽に日光を当てないようにします。
通常、茶葉に含まれる旨味成分は、
光合成によって、渋味成分に変化します。
日を遮り、その変化を防ぐようにすると、
旨味成分の多く、かつ葉は薄く柔らかくなり、
抹茶に適した高級茶葉になるのです。
 
年毎の日照量や雨量によって、
茶葉の出来は大きく左右されます。
品質を安定させるのは至難の技です。
 
「子供も自分がこういうふうに育って欲しいと思っても、
 (そのようには)育ってくれない。
 それと一緒で、良いものが出来た時には、
 やっぱりすごく嬉しいですし。」
 
春の茶園は大忙し。
摘み子さんによる手摘みが、昔ながらのスタイルです。
収穫した茶葉を蒸して乾燥させたものが「碾茶」です。
 
 
 

茶葉をブレンドして味を整える「合組ごうぐみ」
上林春松15代目・上林秀敏さん)

 
これを茶臼で挽くと「抹茶」になるのですが、
その前に、もう一つ重要な工程があります。
 
宇治御茶師唯一の末裔として、
450年の歴史を誇る上林春松家・上林秀敏さんに
「合組」(ごうぐみ)という
ブレンド作業の様子を見せていただきました。
 


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「特に抹茶は、
 一つの種類のお茶だけで出来てるんではなくて、
 別々の畑で採れた別々の環境で育った、
 それぞれ違う魅力を持ったお茶を混ぜ合わすことによって、
 一つのお抹茶が出来てるんですね。」
 
一口に「抹茶」と言っても、様々な銘柄があります。
また、「碾茶」の出来は、年毎に変化します。
毎年、同じ材料を使っても
全く同じ味になるとは限らないのです。
それを克服するために行うのが
「合組」(ごうぐみ)というブレンド作業であり、
得意先や常連客に、
それぞれお気に入りの抹茶を届けるのが茶師の役目です。
上林家では、かつて豊臣秀吉や千利休にも
抹茶を届けていました。
 

 
まずは、その年の「碾茶」の特徴を把握することから始めます。
 
始めに色の違いを見ます。
「碾茶」の緑が見やすいように、
壁や道具は「つや消しの黒」で統一してあります。
 天窓も、光が最も安定する「北向き」に設けられています。
 
次に、触って、弾力を確認します。
更に香り、そして最後に味を確認します。
お湯を通して、透明度から、
味の爽やかさや深みの違いを読み取ります。
 


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特徴が分かると、いよいよ処方を決めます。
何をどれだけ掛け合わせれば、
イメージする抹茶の味にひき上がるか。
 
江戸時代からある銘柄でさえ、処方の記録は存在しません。
茶師は、その時々の自然の恵みに合わせ、
「いつもの味」を再現し続けてきました。
 

 
「ワインとかですとね、
 「何年物の」っていう、そういう楽しみ方するじゃないですか。
 でも、お茶の場合は、そういうふうに楽しんでくれなんですよ。
 特達が去年よりも良いよねと思っても、
 その変化に対して、ネガティブな反応をされるんです、
 お客様は。
 毎年「いつものように」という評価をされるのが、
 一番嬉しいです。」
 

 
処方が決まると、茶臼で挽き上げます。
不変の価値を求めて、毎年、柔軟に。
今も昔も変わらぬ、
「抹茶」と向き合う茶師の姿があります。
  • 住所:〒611-0021
       京都府宇治市宇治妙楽38番地
  • 電話:0774-22-2509
 
 

美の壺3.甘味に溶ける無限の可能性

抹茶を使用したホテルのアフタヌーンティーセット
ANAインターコンチネンタルホテル東京アトリウムラウンジ」)

 
ティーラウンジ「アトリウムラウンジ」では、
京都の抹茶を使用したアフタヌーンティーセットが人気です。
近年の抹茶スイーツブームの盛り上がりに着目して企画した
抹茶フェアなのだそうです。
(令和3年9月30日まで、現在は行われていません。)
 
  • 抹茶とバナナのパウンドケーキ
  • 抹茶と胡麻のフィナンシェケーキ
  • 抹茶豆乳プリン
  • 抹茶とレモンのクリームパフ
  • 抹茶と白いんげん豆のモンブラン
  • 抹茶と黒糖のガナッシュ
  • 抹茶とラムレーズンのバターサンド
  • 抹茶とケシの実のケーキ
  • 抹茶とあんずのタルト
  • 抹茶と柚子のケーキ
  • 抹茶とココナッツのボンボンショコラ
  • 抹茶とクランベリーのスコーン

 
スタンドには、沢山の種類の抹茶のスイーツが並びます。
スタンドとは別に、
ウェルカムスイーツとして提供されるのが
「抹茶ミルクとわらび餅」。
 
抹茶は今、伝統の茶室を飛び出して
スイーツという舞台で魅力を開花させています。
 
  • 住所:〒107-0052
       東京都港区赤坂1-12-33
  • 電話:03-3505-1185(レストラン予約センター)
 
 

抹茶スイーツを手掛ける仏パリの洋菓子店
「ジャン=ポール・エヴァン」


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フランス・パリにあるチョコレート菓子専門店
「JEAN-PAUL HÉVIN JAPON」(ジャン=ポール・エヴァン)には、
数々のショコラが並んでいますが、
その中にも抹茶スイーツがあります。
その名も「MATCHA」。
宇治の抹茶を使ったムースに、
マロンクリームやチョコレートが響き合う逸品です。
手掛けたのは、フランスを代表するショコラティエの一人、
ジャン=ポール・エヴァンさんです。
 
エヴァンさんは、1984年に仏菓子店の 日本進出を任され、
来日。
そこで抹茶と出会い、
その味や香り、更には文化に惚れ込み、
今も究極の抹茶スイーツ作りに情熱を傾けています。
 
 
課題は、主役となる抹茶の引き立て役だそうです。
エヴァンさんは、
フランスの人々にとって馴染み深い「栗」を選びました。

抹茶ムースに、異なる二層のマロンクリームが寄り添います。
高貴さと親しみやすさが、絶妙に混ざり合う仕上がりです。
抹茶の新たな一面を引き出しました。
エヴァンさんは、
発想を刺激する抹茶。だからこそ挑みがいがあると言います。
 
くめども尽きぬ、その魅力。変わらぬ力と 変われる力を持つ。
それが「抹茶」です。
 

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