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美の壺「料理が映える 折敷」<File 524>

<番組紹介>
料理研究家・土井善晴さんの「一汁一菜」を支える
折敷(おしき)愛用コレクション公開!
 ▽伝統を受け継ぐ茶懐石の折敷には、
  黒漆や白木など茶人の趣向が
 ▽樹齢250年の吉野杉からうまれる、
  どこまでもシンプルでスタイリッシュ真四角の折敷
 ▽パン・うどん・ワインの晩酌
  フードスタイリスト・高橋みどりさんの
  折敷のある豊かな暮らし
 ▽人気の塗師・赤木明登さんならではの、
  マットな質感の折敷に迫る!
 
<初回放送日:令和3(2021)年1月22日>
 
 

美の壺1.食卓を豊かに

 

器専門店「暮らしのうつわ花田」 (松井英輔さん)


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料理の器を載せる敷物「折敷」(おしき)
茶事で用いられる道具ですが
近頃はランチョンマットと同じように
気軽に楽しむ人が増えています。
 
「折敷」(おしき)
 
器が置かれたトレーのようなもので、
昔は木の葉を折り敷いて、食器の代用としていたことから
「折敷」と呼ぶようになりました。
四角い形のものが一般的ですが、半月形や丸形など様々。
特に決められた形がある訳ではなく、
直接料理を盛り付けて使うことも出来ます。
杉や檜など木材の風合いをそのまま活かしたもの、
漆を塗って仕上げたものなど、材質は様々です。
平安時代から既に庶民の食卓でも使われており、
その歴史はとても長いです。
 
一見、「お盆」と「折敷」は同じように見えますが、
少し違いがあります。
「お盆」は食器など「物を運ぶもの」で、
「折敷」はその名の通り「敷くもの」です。
「お盆」は運んでいる最中に皿を落とさないように、
「折敷」に比べて縁が少し深めに作られていることが
多いです。
「折敷」の使用シーンとして
真っ先に思い浮かべられるのは「懐石料理」だと思います。
茶事で振る舞われる「茶懐石料理」の中で
最初に出される「折敷」は、飯・汁・向付の3品が
「折敷」の上に料理が載せられて提供されます。
また「折敷」は、神具としての役割も担っています。
神様に献上する食事「神饌」(しんせん)を載せて、
神社や神棚にお祀りする際に用いられています。
「神饌」には、米・酒・塩・水の他、魚や野菜、お菓子など
地域や季節によって様々な食材があります。
 
 
東京都千代田区にある「暮らしのうつわ花田」は、
「料理が主役、器は脇役」を軸に、
日々の暮らしを豊かに演出する食器を紹介する専門店です。
陶器、磁器、漆器、ガラスの作家さんの作品を取り扱っていて、
2階にあるギャラリースペースでは、
毎月、様々な作家さんの作品展が催されています。
 
取扱い作家が400人を超え、
皿、鉢、カップ、土鍋、ご飯茶碗など、様々な器が並ぶ店内。
「折敷」も色々なものが取り揃えられています。
二代目店主の松井英輔(まつい えいすけ)さんは、
「器と食卓の間に『折敷』が入ることで、
 食卓がぐっと引き立ち、
 料理や器がワンランクアップして食卓にメリハリが出る」
とおっしゃいます。
 
和食は勿論、パスタや丼物など、
普段使いの食卓にも「折敷」を使うと食卓が豊かになるそうです。
 
 器専門店
  • 住所:〒102-0074
       東京都千代田区九段南2-2-5
       九段ビル 1・2F
  • 電話:03-3262-0669
 
 

料理研究家・土井善晴さん


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『おかずのクッキング』や『きょうの料理』などでお馴染み、
土井善晴先生の食卓には、『折敷』が度々登場します。
 
『折敷』は、土井先生が提案する
「一汁一菜」(いちじゅういっさい)にピッタリなのだそうです。
 
『一汁一菜でよいという提案』
 
 一汁一菜とは、ごはんを中心として、汁(みそ汁)と菜(おかず)それぞれ1品を合わせた和食の原点ともいえる食スタイルです。
 
 昔の庶民の暮らしではおかずはつかないことも多かったから、実際には「みそ汁、ごはん、漬物」だけで一汁一菜の型を担ってきました。だから、いまだって、おかずをわざわざ考えなくても、ごはんとみそ汁を作り、みそ汁を具だくさんにすれば、それで充分「一汁一菜」なんです。
 
 ごはんを炊いて、具だくさんのみそ汁をつくる。これだったら料理の上手下手もないし、男女の違いもないし、一人からできる。10分もあれば食べ始められます。栄養面でいえば、日本人はずっとこれを続けてきたのだから、毎日3回ずっと食べ続けたとしても元気で健康でいられるはずです。まあ、ええことだらけなんですよ。
 
 考えることはいりません。日常の食事を一汁一菜と決めてしまえば、食事作りのストレスはなくなります。これなら料理が大変と言っている人たちにも、顔洗ったり部屋を掃除したりするのと同じ、毎日繰り返す日常の仕事の1つとして受け入れてもらえるんじゃないでしょうか。
 
 
 
「『折敷』は、
 お料理を載せて「お盆」として使い、
 皆さんの前に出したら「お膳」になる・・・。
 和食の道具というのは、
 非常に汎用性が高くて合理的なんですよ、」
 
土井先生ご愛用の「折敷」はどれも
旅先や骨董店などで出会った、
物語のあるものばかりなんだそうです。
 
 
土井先生が「折敷」に注目するようになったのは、
若い頃に通い詰めた器店の店主の
「折敷」の使い方に憧れたことがきっかけでした。
店主は、いつもあるもので美味しいご飯を作って
「折敷」に載せて出してくれたそうです。
学んだのは、美しいものを楽しみ、お料理を楽しむ美意識。
 
土井先生は、特注したという木目の美しい「折敷」を
今でも大切に使っています。
 
 
 

美の壺2.受け継がれる食の文化

 

MIHO MUSEUM・ミホ ミュージアム


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日本の料理文化史、茶道史や民芸運動などについて研究し、
MIHO MUSEUM(ミホ ミュージアム) 館長、
静岡文化芸術大学名誉教授の熊倉功夫(くまくら いさお)さんに
お話を伺いました。
 
茶事で振る舞われる「茶懐石料理」(ちゃかいせきりょうり)では、
最初に1人ずつに
「折敷」に「飯・汁・向付むこうづけ」を載せて提供されます。
因みに「向付」は、
「折敷の向こう側に置かれる料理」という意味から
名付けられました。
 
菜を椀や皿に盛ってひとりひとりに出す
「銘々膳」(めいめいぜん)
ごはんを食べるという伝統が残ってるのは、
茶の湯の「懐石」だけだそうです。
明治時代くらいまでは「銘々膳」が一般的でしたが、
その後、一家で卓袱台を囲む食事スタイルに変わって行きました。
 

 


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  • 住所:〒529-1814
       滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
  • 電話:0748-82-34114
 

 
 

吉野杉の折敷(坪岡林業・坪岡常佳さん)

 
奈良県吉野地方は「吉野杉」の産地としても有名な林業の町です。
そんな木の町にある 「坪岡林業」(つぼおかりんぎょう)の木工職人、
坪岡常佳(つぼおか つねよし)さんは
300年前から木工を生業とする家に生まれ育ちました。
 
坪岡さんは地元特産の「吉野杉」を使って
柾目が美しい「折敷」を作っています。
ブランド名は「聖山」(ひじりやま)
一見したところは何の変哲もない厚さ8㎜のシンプルな板。
僅かな傾斜「手がかり」があるだけです。
 
 
坪岡さんが使う、樹齢およそ250年の「吉野杉」は、
山守(やまもり)と呼ばれる人達が
何代にも渡って手入れし、大切に育てて来ました。

 
「吉野杉」は年輪の幅が均一で、1㎜~3㎜程と緻密なため、
他の地方の杉より強度があり水に強いことから、
昔から酒樽などに用いられ重宝されてきました。
「豆腐や味噌は杉の樽で仕込まれているのだから、
 日本の食文化の中で、杉と食は切り離せない」と
坪岡さんはおっしゃいます。
 
8年前、坪岡さんは、何とかこの貴重な
「吉野杉」の魅力を伝えるものが作れないものかと
模索していました。
ある日、母親が工場に落ちてる端材を
トレー代わりに使っているのを見て、
「折敷」に出来るのではないかと閃きました。
今まで、価値がなく捨てるものだった端材に
価値を見出した瞬間でした。
そして、「トレー」というよりも
「折敷」という名前がピンと来たそうです。
 
「折敷」に使うのは、
伐採して2年以上乾燥させた「吉野杉」です。
「赤身」と呼ばれる堅い部分を使います。
製品そのものが主役である必要がないという考えから、
必要のない加工は敢えてしていません。
木目という自然が作り出すグラフィックのみ。
細かく均一な年輪、美しい木目が飾らず凛とした雰囲気です。
 
試作を重ねて厚さは8㎜に決定。
少しずつ削り磨きをかけると、木目が更に際立ちます。
縁にやすりをかけ、滑らかな手がかりを作って、完成です。
 
余計なものは何一つない、引き算の「折敷」。
「折敷をつくる」というよりは
「折敷を使う暮らしをつくりたい」と思いを語っていました。
 

hijiriyama.com

  • 住所:〒639-3118
       奈良県吉野郡吉野町橋屋125−8
  • 電話:0746-52-0118

 
 

美の壺3.好きを極める

 

フードスタイリスト・高橋みどりさん

 
料理研究家の有元葉子さんや高山なおみさんらの料理本を
数多く手掛けてきたフードスタイリスト・高橋みどりさんの
朝食の模様が紹介されました。
 
 
高橋さんとご主人の吉田昌太郎さんは、
東京・恵比寿と栃木県黒磯(現・那須塩市)の
2拠点生活を送っていましたが、
令和4(2022)年、コロナ禍の自粛生活に背中を押され、
那須塩原に移住しています。
 
「antiques tamiser」「tamiser table」
  • 住所:〒325-0056
       栃木県那須塩原市本町3-13
  • 電話:0287-74-3448
 
 
楢の折敷(木工作家・高木克幸さん)
地元の採れたて野菜で作ったスープと
焼きたてのパンが載っていたのは、
木工作家の高木克幸さんが作った
(なら)の木で出来た「折敷」です。
 

katsuyuki-takagi.stores.jp

 
栗の折敷(鎌倉彫・矢沢光広さん)
仕事の合間に頂くお昼ごはんはこの折敷を使います。
ダイナミックな彫り跡のある折敷により、
白い丼がキレイに映えています。

arvr.jp

 
輪島塗の折敷(赤木明登さん)


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ザックリとした質感の漆塗りの折敷は
普段使いにもちょっとしたおもてなしにも、
日々の様々なシーンで大活躍しています。
 

 
スクウェアの美しさに
どんな器を盛ろう、どんな料理を盛ろう・・・。
空間に揃えると美しいカタチが広がります。
 

www.nurimono.net

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