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美の壺「麗しの音色 レコード」<File 526>

<番組紹介>
朝ドラ「おちょやん」主題歌の秦基博さんが語る、
レコードの魅力とは?▽レコードの製造工場に潜入!
レコードの溝を彫るエンジニアの緻密な技に迫る!
 ▽大正時代創業の名曲喫茶では、
  珍しいプレーヤーと巨大スピーカーが、
  クラシックの極上の響きを奏でる!
 ▽6万枚のレコードを持つコレクターが紹介する、
  レコードジャケットの楽しみ方。
 ▽国内外のジャケットを手がける、
  デザイナーの制作現場にも密着!
 
<初回放送日:令和3(2021)年2月5日>
 
130年以上に渡り音色を響かせている「アナログレコード」。
デジタルの波に押され、
一時はその存在自体が危ぶまれたアナログの音ですが、
今、その魅力が見直され、人気が再燃しています。
 
レコードは、エンジニアによる緻密な技で生まれます。
その生産現場に迫ります。
レコードを楽しむための名曲喫茶で
70年以上現役という音響装置がクラシックのレコードを奏でます。
レコードを包むジャケットも魅力の一つです。
ジャケット専門のギャラリーまで登場!
また、様々なアーティストのジャケットを手掛けてきた
デザイナーの制作現場にも密着し、ジャケットの誕生を紹介します。
 
今回の美の壺は、人気が高まっているレコードの
知られざる魅力が紹介されました。
 


ED『センチメンタルシティー』
(歌:草刈正雄、発売元:東宝レコード)

 
 

美の壺1.あたたかみのある音を味わう

シンガーソングライター・秦基博さん

 
シンガーソングライターの秦 基博さんは、
アナログの音に惹かれ、レコードを何枚もリリースしています。
 

5.『さみしいときは恋歌を歌って』 (作曲: 秦基博)
 
秦さんが音楽に興味を持ち始めたのは、小学6年生の時。
お兄さんが持っていたギターを手にしたことがきっかけでした。
中学校に入ると、自ら曲作りを始め、
弾き語りをするようになります。
 
大人になって、ソウルバーなどでアナログを聴く機会があり、
アナログの良さを知り、数多くのアルバムを聴くようになりました。
そんなある時、
キャロル・キングの『Tapestry タペストリー』と出会い、
レコードの魅力にはまり、
レコードを携帯プレーヤーに録音して、
移動中も聴くほどお気に入りになりました。
 
「ある日、自分がそれを聴きながら
 いつもの使う駅で、何気なく景色を見てたら、
 凄い良いなと思える瞬間があって。」
 
レコードに目覚めた秦さん。
令和元(2018)年に、
アナログレコードの自主レーベル「HOBBYLESS RECORDS」を設立、
5月2日には「ひまわりの約束」の7inchアナログをリリースしました。
 

これはCDです。
 
「マスタリング」という音の調整作業にも参加。
アナログの音をエンジニアと相談しながら作り上げていきました。
 
「特に自分の場合は歌声だと思うんですけど、
 一般的に、アナログレコードにした時に、
 低音がより豊かになっていくので、
 そうすると高い方の周波数の音の聞こえ方が変わるんで、
 歌の抜け方というか、聞こえ方が 変わってくるんですよね。
 自分が求める声の質感というのがあるので、
 それをどの程度調整したらいいかとか・・・。
 そういったものを感じられると思う。」
 

 
 

神奈川県横浜市のレコード製造会社「東洋化成


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レコードの製造会社「東洋化成」では
年間100万枚以上ものレコードを生産しています。
これは、日本一のシェアを誇るものです。
 
まず、カッティングエンジニアが
音源をレコードでも再生出来るアナログ信号に変換します。
次に、「カッティング」といって、
アルミの板に樹脂を塗った「ラッカー盤」に溝を彫り、
音の情報を溝に刻み込んでいきます。
 

 
レコードは、溝に刻まれた波形を針で擦ることで、
空気の振動によって音が鳴る仕組みになっています。
振り幅の大きさで音の強弱が決まり、
溝の波長の長短で低音・高音が決まるのです。
レコードの回転速度は外側と内側では違うため、
振り幅や波長の大きさを調整する必要もあります。
「ラッカー盤」を基に「電鋳メッキ」という方法で、
全てのレコードの原型となる「マスター盤」、
複製の「マザー盤」、
プレス機に装着するための「スタンバー盤」の3種類の原盤を
それぞれメッキをしながら作製します。
 
 

美の壺2.極上の響きを求めて

蓄音機の博物館・金沢蓄音器館(館長・八日市屋典之さん)

 
石川県金沢市には
金沢蓄音器館」という蓄音機の博物館があります。
故・八日市屋浩志さんが戦前から収集してきた
蓄音器540台、SPレコード約2万枚の「山蓄コレクション」を基に
平成13(2001)年7月に開館しました。
 
 
 
現在「金沢蓄音器館」には、
エジソンが1904年に開発した蓄音機や
日本で初めて製造された機種など、600台以上の蓄音機に、
今では珍しい78回転の「SPレコード」が4万枚以上も
所蔵されています。
 

 
レコードは元々、蓄音機で音を再生するための
円盤式の記録メディアとして誕生しました。
 
蓄音機のホーンには、「鉄」「紙」「木」の3種類があります。
レコードを聴くには、どの蓄音機が適しているのか。
金沢蓄音器館」の二階[音のフロア」では、
1日3回(11時、14時、16時)、「蓄音器聴き比べ」が行われています。
 
館長さんによると、
「紙製のホーン」は、人の声が前に出て、
演奏がちょっと後ろに引いたように聞こえ、立体的に聞こえるそうです。
「木製ホーン」は、木管楽器のバイオリンとかチェロとかが
非常に際立って聞こえるそうです。
 
  • 住所:〒920-0902
       石川県金沢市尾張町2-11-21
  • 電話:076-232-3066
  • 開館時間
    10時~17時30分(入館は17時まで)
 
 
 

東京渋谷の「名曲喫茶ライオン」


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東京・渋谷道玄坂にある老舗の喫茶店「名曲喫茶ライオン」は、
大正15(1926)年に流行歌を聴いてもらうために開業しましたが、
客からの要望で、クラシック音楽を流す「名曲喫茶」になりました。
 
レコードを再生するプレーヤーは、
ターンテーブルが2台並び、
ガラス窓がついた棚に入った珍しいタイプ。
昭和25(1950)年からずっと現役で使われているものです。
 
 
3代目店主の石原圭子さんは、
63年もの間、店の移り変わりを見守ってきました。
 
戦後、娯楽が少ない時代、
自分のクラシックレコードを持ってきて、
それぞれ自分の席へ座って、
一生懸命、クラシックの中に入り込んでいました。
2階の前の席は、高校生の学ランがずらっと並んでいたそうです。
 
店の最盛期は昭和30年代。
今では使っていない地下や3階席も連日満席。
店から溢れるほど客が押し寄せたといいます。
特注した日本製の巨大なスピーカーが
家庭で聴くよりもずっと体感的にも感じられ、
生の演奏を聴いているのと
ほとんど同じような感覚を味わえるものであったことから、
客を虜にしました。
 
現在もその音に魅かれて50年以上通い続けている客もいます。
時代が変わり、技術が変わっても、同じ音を守り続ける場所があります。
 
  • 住所:〒150-0043
       東京都渋谷区道玄坂2-19-13
  • 電話:03-3461-6858
 
 

美の壺3.音楽から生まれるアート

レコードを手掛ける印刷会社「金羊社」(きんようしゃ)

 
「金羊社」(きんようしゃ)は、大正15(1926)年創業以来、
音楽・映像パッケージ、アーティストグッズ、
デジタルコンテンツレコードのジャケットやラベルなどを手掛ける
95年の歴史を有する総合印刷会社です。
 
金羊社には、13年前より、3ヶ月毎にテーマを更新し、
レコードジャケット150枚以上を常設展示・公開する
ギャラリーがあります。
 
ここにジャケットを提供しているのは、
レコードコレクターの植村和紀さんです。
6万枚のコレクションの中から、毎回選んでいます。
梅村さんは、ジャケットの楽しみ方は、
音楽のジャンルによって デザインの傾向があることだと
おっしゃいます。
 

 
植村さんのお気に入り2枚を紹介していただきました。
まずは、イギリスのロック歌手、
アラン・クラーク(ALLAN CLARKE)の
「HEADROOM(ヘッドルーム)」というアルバム。
 


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「元々30㎝大きいんですけど、
 更に開いた形だと、迫力のある一つの絵として。
 ルネ・マグリットという、
シュールレアリスムの画家のオマージュで
 多分描いたと思うんですよね。
 非常に クオリティーの高いジャケットです。」
 

 
もう1枚は、
イギリスのブルースバンド、サヴォイ・ブラウン(Savoy Brown)の
「Getting to the Point(ゲッティング・トゥ・ザ・ポイント)」という
アルバムです。
 

 
「古今の名画のパロディーをイラストで描いた様々な絵の中に、
 迷路みたいな形になっていて、
 ここに如何に到達するかっていうお遊び性に溢れた
 希少価値などを含めて、結構レアで面白い作品です。」
 
 

レコードジャケットを手掛けるデザイナー・菅谷晋一さん


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今年1月、あるドキュメンタリー映画が公開されました。
レコードジャケットを制作する過程に密着した
ユニークな作品です。
 

 
菅谷晋一さんはレコードジャケットをメインに手掛ける
数少ないデザイナーのお一人で、
これまで国内外合わせて、
200枚以上のジャケットを手掛けてきました。
 
菅谷さんのジャケット制作は、
まず音楽を聴いて、
その感動をどう伝えるかを考えるところから始まります。
 

 
今、聴いているのは、
ザ・クロマニヨンズの最新アルバムです。
アルバムのタイトルは「MUD SHAKES」。
「H」を「N」にすると、「MUD SNAKES」になる ということで、
「ヘビ」をモチーフにしました。
それからクラフト紙に割り箸を使って描いていきます。
描きづらいという理由で使ってみるのが、菅谷流だそうです。
 
「割り箸でインクをつけて描くとね、
 思ったような線以外のものが出てきて、
 それがちょっと自分の中で面白い。
 何か新しい線との出会いもあるし、
 こんなの思っても描けないよなっていうようなかすれ方とか。
 そういうのに出会いたくて、
 毎回、新しいことにチャレンジしたいなというのは、
 必ず1個入れるんですよ。」
 

 
「試聴する前に目にするのがジャケットだと思うので、
 レコード屋さんでどう目立つかっていうのが、
 やっぱ一番大事かな。」
 
音楽家やエンジニア デザイナーらの思いが詰まったレコード。
今も輝きに満ちています。
 
 

おまけ


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草刈さんが口ずさんでいたのは、
自らが主演したドラマのエンディング曲
『センチメンタルシティー』でした。
 
 

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