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美の壺「和食の原点 ごはん」 <File 529>

<番組紹介>
ふっくらつやつや、白いごはん!
 ▽「もっちり」から「しっかり」まで、
  好みに合う米と炊飯道具を専門店が提案!
 ▽近茶流・柳原尚之さんが披露する、
  極上ごはんの炊き方!
 ▽料理研究家・有元葉子さんが提唱。
  おいしいごはんの秘訣は「おひつ」にあり!
 ▽秋田杉と竹で作る、伝統のおひつの職人技。
 ▽鎌倉の寺で受け継がれる粥(かゆ)
 ▽奈良県吉野郡の旅館では、
  かまど炊きの香ばしいごはんでおもてなし!
初回放送日: 平成3(2021)年3月5日
 
江戸懐石近茶流の柳原尚之さんは極上ごはんの炊き方を披露。
料理研究家 有元葉子さんによると、
美味しいごはんの秘けつは、炊飯鍋よりおひつだとか。
奈良県吉野地方の山あいにある旅館の最高のおもてなしは、
かまどで炊いたごはんに、おこげ!
日本人がこよなく愛する白いごはんを極めます。
 
 
 

美の壺1.その一粒に 無限の力

 

東京神楽坂の道具屋「AKOMEYA TOKYO」

東京神楽坂にある道具屋「AKOMEYA TOKYO」は、
米まわりの道具や食品が並ぶ専門店です。
 
全国から選りすぐった米が常時20種類以上、
品種や生産者も様々、珍しい米も揃えてあります。
 
お米コーナーには、お米の品種や保存方法、炊き方に精通した
「お米コンシェルジュ」がいて、
好みにピッタリのお米の提案をしてくれます。
「お米コンシェルジュ」の目印は、ゴールドのお米のバッジです。
 
日本各地では、それぞれの地域の気候や風土に合わせた
お米が生産されており、またバイオ技術の発展により、
ここ数年のうちで100種類以上の品種が新たに開発され、
日々お米の種類は増えています。
現在、日本で生産されているお米は500種類以上もあり、
そのうち家庭で食べるお米(うるち米)だけでも、
約300~330種類あると言われています。
 
 
 
お米の粒の大きさも様々です。
いのちの壱」は日本一の大粒米で、
米粒がコシヒカリの約1.5倍もあると言われています。
食べ応えがすごくあり、
頬張った瞬間、これまでにない食感が味わえます。
お肉料理に合わせてもお米が負けることがない品種です。
甘みと粘りが強いのも特徴です。
 

 
 
好みが特に分かれるのは「粘り」と「堅さ」の度合いです。
「あっさり」から「もっちり」、
「しっかり」から「やわらか」まであり、
好みや料理に合わせてお米を選びます。
そしてもう一つ、米は炊く道具によっても変わります。
 
もっちりごはん「ミルキークイーン」には、
「有田焼の土鍋」がおススメです。
「有田焼の土鍋」は、土の成分・遠赤外線効果が非常に高いため、
甘みを引き出してくれたり、もっちりな炊き上がりになるため、
とても相性が良いそうです。
 
ミルキークイーン
「コシヒカリ」の突然変異から生まれた、
低アミロース米品種の代表格のお米です。
お米の色が乳白色なので、
「ミルキークイーン」と命名されたと言われています。
アミロースはお米の粘りに関係しており、アミロースの含有量が少なくなるほどごはんの粘り気は強くなり、
もちもちとした食感になります。
「ミルキークイーン」のアミロース含有量は
「コシヒカリ」より低い10~12%で、もち米のように
粘りがあり、つやつやな炊き上がりになります。
冷えても固くなりにくく、モチモチ感があるので、
お弁当やおにぎりなどに向いています。
古米など、粘りが少ないお米に低アミロース米を混ぜて炊くと、粘りが出て美味しくなるそうです。
お米がパサパサしていると感じる時に試してみては。
また最近では、週末にお米をまとめて炊いて冷凍するという家庭で重宝されているそうです。
 
 
しっかりした食感で食べ応えのあるごはんを楽しみたいなら、
石川県の「ひゃくまん穀」というお米がおススメです。

食の宝庫・石川県の風土から生まれた、
大粒で「ひと粒ひと粒の粒感」と「粘り」のバランスがとれた
しっかりとした食べ応えのあるお米です。
「萬古焼」で炊くと、
力強い、粒感がハッキリとした炊き上がりになるため、
カレーや丼、卵かけごはんに合うそうです。
 

 
毎日食べる「ごはん」にも、まだまだ知られていない世界があります。
 
  • 住所:〒162-0805
       東京都新宿区矢来町67番地
  • 電話:店 舗 03-5946-8241
       お食事 03-5946-8243
  • オンラインショップ
 
 

江戸懐石近茶流嗣家・柳原尚之さん

 
日本で米が食べられるようになったのは、縄文時代の終わり。
弥生時代の甕には、米を煮た吹きこぼれの跡が残っています。
江戸時代中期になると、
従来は見られなかった分厚い蓋をつけた釜が普及し、
現在のような、水の量を加減して
水分を米が吸収してしまうまで炊く「炊き干し法」が完成し、
以来、日本人はずっと米の美味しい炊き方を追求してきました。
 
江戸懐石近茶流嗣家きんさりゅうしかの柳原尚之(やなぎはらなおゆき)さんは、
日本人にとって米というのは主食。
美味しいごはんがあるから日本料理のおかずが生きてくるし、
ごはんと合うから日本料理が発達してきたとおっしゃいます。
 
 
そんな柳原さんですから、
「ごはん」には並々ならぬこだわりがあります。
柳原さんが好んで使う米は「新潟県産コシヒカリ」です。
それを「羽釜」を使って炊きます。
「羽釜」の深さと底の丸みは、炊飯に理想の形だとか。
特注の「袴」を被せて使います。
 

 
最も重要なものは「蓋」だそうです。
「蓋」は木で出来ていてとても重いのですが、
これこそが重要で、重いことによって、自然と圧力が掛かって、
ごはんがふっくら炊き上がるのです。
まず、研いだ米に十分に水を吸わせます。
夏は30分、冬は1時間が目安です。
火にかけ、まずは強火にして沸騰するまで待ちます。
 
ポイントは「米は音で炊く」。
音がお米の状態を教えてくれるのだそうです。
 
沸騰している時は「ボコボコ」という音。
中の状態を少し見るくらいなら蓋を開けても大丈夫。
沸騰状態を続けることで、米がしっかり膨らみます。
対流が上手く起こると、泡が筋状になって勢いよく上ります。
そしていわゆる「かに穴」が出来ます。
ごはんが美味しく炊けている印です。
 
- 「かにの穴」が出来るプロセス -
1.米と水が温まり鍋の中で対流する
2.水を吸ってくっつき出した米の隙間を水が上下する
3.更に炊くと水が蒸気になり、蒸気の通り道が残って
  穴になる
 
 
「ボコボコ」してた音が
ちょっと泡が弾けるような音に変わってきました。
水分が少なくなって、表面に米が見えるようになったら弱火にします。
 
音があまりしなくなり、
「ブチブチ」という音が少し静かになってきたら
少し蓋を開けて火を強くします。
 
「パチパチ」という乾いた音がしてきたら
これでもうお釜の下まで、水分が完全になくなりましたので、
蓋をして強火で10秒間保って下さい。
 
温度が上がったらこれで火を止めて、ここから蒸らしです。
蒸らしている間は
「赤子泣いても蓋取るな」と言い伝えられている通り、
絶対に蓋を取らないこと!
蒸らすこと10分。お待ちかねの炊き上がりです。
ピンと立った米粒の間には「かに穴」が出来ています。
 
ここで忘れてはいけないのが「天地返し」。
釜の上と下では水気が異なるため、混ぜて均一にします。
米がつやつやと輝き出しました。
 

 
当たり前にあり過ぎてしまうものは、
どうしてもおろそかにしがちですが、
一番近くにいるごはんが、
日本人にとって大切なものではないかと思うと
柳原さんはおっしゃいます。
ほかほかの炊きたてごはんは、ごく身近にある幸せです。
 
 

美の壺2.食卓で香る 自然の息吹

 

料理研究家・有元葉子さん

 
洗練された暮らしと素材を生かした料理で大人気の
料理研究家・有元葉子さんは、
ごはんは一手間加えることで、格別に美味しくなるとおっしゃいます。
有元さんによると、
高価なお釜よりも、いい「御櫃」(おひつ)を手に入れることだそうです。
有元さんが20年もの間愛用しているのは、秋田杉の御櫃(おひつ)です。
 
「伊賀焼」の土鍋でごはんを炊き、
炊き上がったあつあつごはんを
十分に湿らせておいた「御櫃」(おひつ)に移します。
そして布巾を挟んで、蓋の水滴が落ちるのを防ぎます。
中では杉の木が余計な水分を吸ってくれ、いい具合になるそうです。
ごはんのお供は自家製のたくあんです。
蓋を開ければ、ごはんとともにほんのり杉が香ります。
 
「炊き立ても勿論美味しいんですけれども、
 御櫃(おひつ)に移した特別の美味しさというのは、
 やっぱり食べてみないと分からないんですね。
 何とも言えずおいしくなるんですね。」
 
 

秋田県能代市の桶樽職人・福島輝久さん(桶樽工房「樽富かまた」)

 
「杉」は爽やかな香りで食品と相性が良いため、
いにしえより重宝されてきました。
特に秋田は「杉」の宝庫で、「秋田杉」は
「木曽ヒノキ」「青森ヒバ」と並ぶ「日本三大美林」のひとつです。
寒冷地という厳しい環境で少しずつ育ってきた「秋田杉」は、
年輪の目が細かく、赤みが強く、とても美しい木目を持ちます。
清純爽快な香りで、構造的に強く腐りにくいという特性もあります。
 

 
秋田県能代市はそんな「秋田杉」の産地です。
有元さんご愛用の「御櫃」(おひつ)も秋田県能代市で作られたものです。
 
能代の地で江戸時代中期から桶樽業を操業していたとされる
「樽󠄀冨かまた」の桶樽職人の福島輝久さんは、
26年の間、「秋田杉」に向き合ってきました。
 
「御櫃」(おひつ)の材料となる「秋田杉」は
樹齢80年以上のもので、
「赤身」と呼ばれる中心部分だけを使います。
腐りにくく、変形しにくいためです。
 
切り出した「赤身」を乾燥させた後、
年輪に対して直角に「鉈」(なた)を入れて板を切り出します。
この板を「銑」(せん)という刃物で削って、
目的の寸法に近づけていきます。
 
円弧曲線に整えられた板を集めて円形にし、
錆びてこないように、金属ではなく竹の釘で板を留めます。
竹の釘で板を留めます。
そして竹を編んで輪にした「箍」(たが)使って、
板を外側から締め上げます。
 
「箍」(たが)
竹を割き、編んで輪にしたもので、桶や樽などの外側にはめて締め固めるために用います。
(たが)が外れると、桶を構成している板がバラバラになるところから、「タガが外れる」とは「それまで保っていた緊張や締め付けがなくなって、感情が抑えられなくなる」「何かの拍子に自分の感情や気持ちを抑えていたものが外れて、自分の言動をコントロール出来なくなった」様子を言います。
 
秋田杉と竹という自然素材で作った
こだわりの「御櫃」(おひつ)が出来上がりました。
 
「なかなか手入れも大変だし、
 陶器とかプラスチックに比べたら、扱いにくいですけども、
 手入れをするところも楽しんでいただけたら。」
 
北国で育まれた秋田杉の「御櫃」(おひつ)の、
まっすぐに通った木目、凛とした気品が、
食卓に大自然の息吹を届けます。
 
 
 

美の壺3.心にしみる 米の粒

 

神奈川県鎌倉市・臨済宗大本山 円覚寺

 
鎌倉時代に開かれた臨済宗大本山・円覚寺
朝4時、まだ暗いうちから、かまどに薪をくべるのは、
「典座」(てんぞ)と呼ばれる炊事係です。
禅宗寺院では修行僧は様々な職務を分担して取り組みますが、
その中で「典座」は食を司る役職であり、
修行僧達の食事を始め、仏や祖師へ供える膳などを任される役職です。
 

 
3合の米で10人分のお粥を作ります。
通称「天井粥」(てんじょうがゆ)と言います。
天井が映り込むほど薄いため、そう呼ばれるようになったとか。
米が貴重だった時代。
貴重なお米を皆に行き渡らせるようにするための薄い粥です。
 
「典座(てんぞ)は限られた食材を
 いかにして工夫しながら調理をするかということに重点が置かれ、
 工夫をしながら調理をするということも修行と捉えています。」
と大原宗尚さんは語って下さいました。
 
食事を作るのが修行であれば、食べるのもまた修行。
朝食はお粥と香の物。一切無言。ただ目の前にある粥に集中します。
 

www.engakuji.or.jp

  • 住所:〒247-0062
       神奈川県鎌倉市山ノ内409
  • 電話:0467-22-0478
 
 

かまどでごはんを炊く旅館「朝日館」(女将・辻芙美子さん)

 
役行者が開いた修験の場として知られる大峰山。
その麓の川上村に、一軒の旅館があります。
明治14(1881)年創業の「朝日館」です。
約140年前から、山で厳しい修行をする行者、登山客、
そして多くの旅人を温かい食事、山の水を焚いたお風呂で
もてなしてきました。
 
女将の辻 芙美子さんは、50年に渡り、旅館を切り盛りしてきました。
24歳の時に奈良市内から嫁ぎ、
慣れない仕事に、初めは戸惑うことばかりだったとおっしゃいます。
まず驚いたのは、ごはんを薪のかまどで炊いていたことでした。
以来、芙美子さんは、
この大正時代からずっと台所に鎮座している古い「かまど」と
毎日向き合ってきました。
 
芙美子さんが小さい頃、祖父母の家にはまだかまどがありましたから、
別に違和感はなかったそうですが、
自分が実際にそんなことをするとは思ってみなかったそうです。
 
「電気釜のような訳にはいきませんので、
 いまだにやっぱりちょっとおこげがたくさん出来たり、
 慌ててると、蒸し足らなかったり。
 その都度、いろいろ変化は楽しめますね。」
 
今日のごはんもとてもいい具合に炊けました。
釜の底には、香ばしい「おこげ」。
米は奈良県産「ヒノヒカリ」です。
 

 
夕食には、地元の恵みが並びます。
初めて食べるかまどのごはんの感想は?
「甘みがある」
「嚙めば嚙むほど味が出てくる感じがする」
「やっぱり違う」
 

kawakami-asahikan.com

 
翌朝6時、台所に芙美子さんの姿がありました。
鍋で炒るのは、自家製ほうじ茶です。
このほうじ茶を煮出した汁に、米を入れて炊くこと15分。
この日の朝食は「茶粥」です。
 

奥では、息子の晋司さんがお客さんの依頼でお弁当作りをしています。
主役は「塩むすび」です。
「毎日の生活の中で、ごはんを炊かして頂けるっていうのは、
 やっぱりお客様をお迎えしてのことですから、
 ありがたいことだなとは思ってますけども。」
 
「一番うれしいのは、やっぱりお料理がおいしかったとか、
 のんびりさして頂いたとかいうお言葉を頂けた時。
 やっぱりこの商売をしていく上で、私の励みとはなってますね。」
 
人と人を繋ぐ「ごはん」です。
 
  • 住所:〒639-3601
       奈良県吉野郡川上村大字柏木154
  • 電話:0746-54-0020
  • 空室検察・予約
 

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