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美の壺「食す宝石 塩」 <File547>

<番組紹介>
魔法の調味料「塩」。
 ▽食す宝石、1800種類をコレクションする
  塩のスペシャリストが語るロマンと神秘
 ▽国の重要無形民俗文化財、
  奈良時代から受け継がれる石川県奥能登の製塩法、
  先人の知恵が結集した匠の技
 ▽世界に一つだけの驚きのオーダーメイド塩
 ▽塩の魔術師が創り出す
  イタリアンと各地の風土を塩で表現する寿司
 ▽塩スイーツの先駆け、塩チョコが生んだ新たな可能性
 ▽盛塩清(竹財輝之助)が草刈家に
 
太陽と大地の恵み「塩」。
食材の調理や保存には欠かせない存在です。
また、ある時は場を清めてくれるなど、
塩は、古くから日本人の暮らしと深い結び付きがあります。
今回は奥深い 「塩」の世界に迫ります。
 

 
 

美の壺1.人を虜にする多様性

 

ソルトコーディネーター・青山志穂さん

 
ソルトコーディネーターの青山志穂(あおやましほ)さんは
料理に合った塩の使い方をアドバイスしてくれる塩のスペシャリストです。
青山さんも多様な塩の世界に魅せられた一人です。
世界各国から集めた青山さんの塩コレクションは何と1800種類。
宝石のように美しいものが沢山あります。
塩は、産地や成り立ちによって千差万別です。
 

 
その土地に含まれるミネラルによって色が異なり、
透き通る水晶のような塩もあれば、青い塩、赤黒い塩様々です。
 
イランの南部で採れる「ペルシャ岩塩」は、
この土地特有の土壌とカリウムの成分が多く含まれているため
青く輝いています。
 
 
火山により焼かれて赤黒くなった塩は「マグマ塩」といい、
温泉卵のような硫黄の香りが漂ってきます。
 

 
海から採れる海塩、粒子の細かいものや粗い塩、
それから丸形の塩やピラミッド形の塩など、結晶の形も様々です。
 

 
塩は、熱が加わると塩分濃度が上がり、
徐々に結晶化して出来上がります。
その結晶化するスピードや作り方により、形が異ってくるのだそうです。 
 

 

東京・恵比寿「Sel Sal Sale(セルサレサーレ)」
イタリアンシェフ・濱口昌大さん

 
塩の味を自在に操って料理を演出しているのは、
イタリアンシェフの濱口昌大さんです。
濱口さんは、出す料理に応じて塩を合わせます。
塩味、苦み、甘みといった、
味が異なる塩を常に20種類以上使い分けています。
 
厚く切ったマダイに振りかけるのは、山口産の塩です。
塩味のしっかり効いた塩で、
マダイが持つ旨味を最大限に引き出した一品です。
 
メイン料理の子羊に合わせるのは、広葉樹の葉で燻した塩です。
藁で焼いた肉に燻製した塩を合わせて、香ばしさを演出します。
更にお皿の横に添えたのは、一風変わったメキシコ産の塩です。
この塩は、サボテンに住む「グサーノ」という芋虫を乾燥させて、
トウガラシとブレンドしたというものです。
土っぽさとトウガラシの辛みが、エスニックな味わいを生み出します。
 
国の専売であった日本の製塩方法は、
昭和46(1971)年の「塩業近代化臨時措置法」の成立で、
日本では「イオン交換膜製塩」以外の方法で
海水から直接「塩」を採ることが出来なくなりました。
この様な制約の下、専売公社から許された製塩法は、
その当時専売公社が
「メキシコ、オーストラリア」から輸入していた
「原塩(天日塩田塩)」を利用する方法でした。
ほとんど輸入に頼っています。
平成9(1997)年3月「塩専売法」の廃止により
海水からの直接製塩が認められ、
平成14(2002)年4月からは「塩の自由化」により
原料塩の産地を選択出来るようになりました。
 
    
 
<日本の塩の輸入量の内訳(令和元年)>
  1. オーストラリア:311万t
  2. メキシコ:278万t
  3. その他:147万t
 
  • 住所:〒150-0021
       東京都渋谷区恵比寿西1丁目16−7
  • 電話:03-6416-5230
 
 

美の壺2.風土や食材をいかす技

 

石川県・奥能登の塩職人・登谷良一さん

 
四方を海で囲まれた日本では、
昔から海水を汲み上げて塩を作ってきました。
石川県奥能登では、
日本で唯一、1000年以上続く塩の伝統製法が受け継がれています。
国の重要無形民俗文化財にも指定されている 「揚げ浜式製塩」です。
 

 
登谷良一(とやりょういち)さんは
幼い頃から奥能登の塩作りを見て育ちました。
かつては能登以外でも行われていた「塩作り」ですが、
昭和46(1971)年に「塩業近代化臨時措置法」によって
およそ30年もの間、塩の製造が禁じられたのです。
全国から塩田が姿を消す中、
昭和44(1969)年4月12日に「能登の揚浜製塩用具」の166点が
重要有形民俗文化財に指定されていたこともあって、
奥能登の地域だけは、唯一、変わらぬ製法が守られたのです。
そして、平成20(2008)年3月13日に
「能登の揚浜式製塩の技術」は重要無形民俗文化財に指定されました。
 
汲み上げた海水を細かい砂を敷き詰めた塩田に撒き、
太陽の力で乾燥させ、塩分を含んだ砂を集め、
更に海水をかけて塩分濃度の高い「かん水」を集め、
釜で煮詰めて塩の結晶を取り出すという、
熟練した技術が必要とされる「揚げ浜式製塩法」が
古から連綿と続けられているのは、唯一石川県能登半島だけです。
 
 
塩作りは、海水を汲み上げるところから始まります。
肩荷棒に2つの桶を括り付け、一度に汲み上げる重さは80㎏。
それを何度も繰り返して、1500ℓの海水を運びます。
 
次に、その海水を塩田に撒きます。
砂に塩を付着させ、塩分濃度を上げるのです。
「潮汲み3年、塩撒き10年」と呼ばれる、技を必要とする仕事です。
 

 
塩を撒く「打桶」と呼ばれる桶は、
底がすぼんだ形になっていて、
桶を回転させながら撒くことで、海水が霧状に均等に広がる仕組みです。
 
 
塩田で仕事が出来るのは、晴れた日だけですが、
奥能登では1年で僅か80日程しかありません。
海水の塩が付着した砂を濾過して不純物を取り除き、
塩分濃度が高くなった海水を抽出します。
 

 
次は、釜で焚く「本焚き」です。
朝3時に火入れをしてからおよそ18時間続きます。
3時間程すると、「花塩」と呼ばれる最初の結晶が浮かび上がります。
 

 
「火加減が命」と言われる釜焚き。
始めはよく燃える松の木で一気に温度を上げ、
次に杉の木で、徐々に全体に熱が行き渡るように調整を繰り返します。
火入れから9時間経ち、釜の底からソフトボール大の塩が現れます。
そこから3時間はまるで生き物のように塩が変化していきます。
 
 
そうして出来た奥能登の塩は、
バターのように濃厚で、滑らかな舌触りの味わいになっています。
 

www.sio-denen.jp

 

東京・銀座「米菜°sakura織音寿し」・奥田政行さん
      (べいさいどさくらおりおんすし)

 
風土の味を塩に見出し、
料理との組み合わせを追求する料理人がいます。
「世界の料理人 1000人」にも選ばれた奥田政行さんです。
奥田さんは、常に素材を引き立てる食べ方にこだわってきました。
そして、魚を最も美味しく食べる方法として、
「塩と寿司」に辿り着いたのでした。
 
鳥取から取り寄せた「マグロの中トロ」に合わせるのは、
石川産の「竹炭塩」です。
程良い炭の香りを足すことで、
鉄分と脂が乗ったマグロのまろやかさを引き出してくれる塩です。
 

 
愛知の「たいら貝」には、
貝の甘みが引き立たせてくれる、粒子の細かい沖縄の塩を合わせます。
 
 
礼文島の「バフンウニ」には、
ほのかな苦みと独特な香りが漂う山形産の「温泉塩」と焼きなすを合わせます。
土地で作られた塩と食材が結び付いて、互いの味わいを引き立て合います。
 

 
  • 住所:〒104-0061
       東京都中央区銀座6丁目12−12
  • 電話:03-6263-8395
 
 

美の壺3.広がる塩の可能性

 

「Ek chuah (エクチュア)」ショコラティエ・植松秀王さん

 
甘~いチョコレートに、ピリッとした塩味が効いた
大人のスイーツ 「塩チョコレート」。
塩ブームに先駆け、15年前から塩チョコレートを手掛けてきたのが
ショコラティエの植松秀王さんです。
 

 
植松さんは、チョコレートに合う塩を求めて、
全国から30種類もの塩を取り寄せています。
そして植松さんのイメージに合ったのが、高知産の塩でした。
 

 
植松さんは、
チョコレートも塩も両方ともが主役になるような味にこだわっています。
薄く敷いたチョコレートに塩を練り込むのではなく、
敢えて塩を表にまぶします。
口の中で混じり合って、味が変わることを狙っているのです。
 
  • 住所:〒542-0012
       大阪市中央区谷町6-17-43
  • 電話:06-4304-8077
 
 

高知県・田野町 塩職人・田野屋塩二次郎さん

 
太平洋に面した高知県田野町には、
塩の限りない可能性を追い求めて、塩作りをしている塩職人がいます。
田野屋 塩二郎(たのや えんじろう)さんです。
 

 
田野屋 塩二郎(たのや えんじろう)さんは、
昭和46(1971)年生まれ、東京育ち。
高校から大学時代はラグビーに打ち込み、
普通のサラリーマンになるのが嫌で、 趣味だったサーフィンを仕事にします。
30代の半ばに差し掛かると
「人生において働ける年齢は70歳まで」と考えるようになり、
残りの半分はサーフィン以外の何かを極めて日本一になろうと一念発起。
サーフィンは続けたかったので、海のそばで出来る仕事を考え、
製塩職人の道に入りました。
道を極めるなら日本一の職人のもとで修業したいと、
高知県・黒潮町で完全天日塩を作っていた吉田猛氏に師事。
「日本一の塩を作りたい」という想いに
唯一耳を傾けてくれた田野町に製塩所を構え、
師匠から屋号「田野屋塩二郎」をもらい旗揚げ、現在に足ります。

 
塩二郎さんが作る塩は、
火を一切使わない、太陽の熱でだけで乾燥させる完全天日塩です。
ビニールハウス内の温度は、晴れた日には60度を超えます。
その中には、海外からも注文が来る、
変わり種の塩が入った木箱がズラリと揃っています。
これらの塩は全てオーダーメイドです。

塩二郎さんはこれまで、2000種類以上の塩を作ってきました。 
イワシのだし、マツタケ、バラの花びら、ナッツ、
それからタイのハーブティー「バタフライピー」まで
何でも塩にしてしまいます。
出来た塩は白じゃなくて、様々な色があります。
 

 
塩二郎さんは 塩の味そのものにもこだわっています。
じっくり時間をかけることで、
塩味のナトリウムや苦味のマグネシウムといった
ミネラルの比率を調整して、味を作り分けることが出来るのだそうです。
日々変化する塩と対話し、まさに「手塩にかけて」育てていきます。
 

 
この日は、新たな子供が仲間入り。
イタリア産ポルチーニ茸の塩の製作が始まりました。 
 

www.takumi-shokutaku.jp

 

東京丸の内「Restaurant Rosette」フレンチシェフ・鏡智之さん

 
東京・丸の内にある、荘厳な佇まいの「明治生命館」は、
昭和9(1934)年竣工の国の重要文化財です。
 
その明治生命館の地下1階「センチュリーコート丸の内」にある
「Restaurant Rosette」(レストラン ロゼット)
フレンチシェフ・鏡智之(かがみともゆき)さんも
8年前から塩二郎さんの塩に惚れ込んだ一人です。
鏡さんは、様々な塩を注文してきました。
 

 
ローストした岩手のホロホロ鳥の中には、
しっかりした味わいのフォアグラと黒トリュフに
あのポルチーニ茸の塩でまとめます。
料理人の創造力を掻き立てる塩。
その可能性は どこまでも広がっていきます。
 
  • 住所:〒100-0005
       東京都千代田区丸の内2丁目1−1
    明治生命館 B1F センチュリーコート
  • 電話:03-3213-1711
 

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