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美の壺「ひらり華麗に 蝶」<File 580>

<番組紹介>
「春の女神」、ギフチョウの撮影に密着
 ▽儚い命の輝きを活写
 ▽金銀箔を背景に乱舞する蝶の絵画
 ▽江戸の画家・伊藤若冲の「芍薬群蝶図」
 ▽明治を代表する七宝家・並河靖之
  テレビ初公開の作品も!
 ▽圧巻の輝き!超絶技巧が生み出す螺鈿の蝶
 ▽蝶のデザインで世界を魅了!
  デザイナー・森英恵さんの信念とは
 ▽華麗なドレスが続々登場!
 ▽伝統の西陣織に蝶の輝き
 ▽人々の夢をのせて羽ばたく!
 
<初回放送日:令和5(2023)年5月10日>
 
 

美の壺1.出会いの一瞬を切りとる

 

昆虫写真家・海野和男さん

 
TBS『どうぶつ奇想天外』や
日本テレビ『世界一受けたい授業』でも
お馴染みの写真家、海野和男(うんのかずお)さんは
昆虫写真の第一人者です。
 
 
小学生時代より昆虫と写真に興味を持ち、
東京農工大学で昆虫行動学を学んだ後、
長野県小諸市のアトリエを拠点に、
50年以上に渡って世界各地で様々な昆虫を
撮影してします。
 
熱帯雨林の昆虫、特に擬態に興味を持ち、
ライフワークとしてマレーシアで
撮影を続けいます。
 
 


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一番のお気に入りは、マレーシアに生息する
「アカエリトリバネアゲハ」です。
「アカエリトリバネアゲハ」は、オスもメスも
首の部分がキレイな赤い色をしており、
赤い襟をつけているように見えることから
この和名がついた揚羽蝶です。
ビロードのような黒と
輝くメタリックのような緑の羽根を持ちます。
羽根を広げると、15㎝位の大きさになります。
 
 
 
海野さんによると、
(ちょう)は、人間と同じく、
目で見る生き物だそうです。
 
そして、魅力的な写真を撮る秘訣は、
蝶の生態知ることだそうです。
 


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海野さんは、「ギフチョウ」を探しに
福井県あわら市を訪れました。
「ギフチョウ」は黒と黄色の縞模様で
日本の本州にしか生息しない蝶で、
桜の咲く頃のみ訪れます。
 
「カンアオイ」という
「ギフチョウ」の幼虫が食べる草を探します。
「ギフチョウ」が「カンアオイ」の葉に
卵をつける瞬間に出会い、
シャッターチャンスを迎えました。
 
カンアオイ(寒葵)
主に山野の樹林下など、薄暗い場所に自生します。
生育が遅く種子の伝播も遅いためか、産地毎に特徴のある種が残っていて、日本にも約60種もあると言われています。
江戸時代から栽培されています。
葉の下で、地面すれすれに真っ暗な口を開けて咲く花は、その色、形、香りが種毎に著しく異なることも大きな魅力で、植物愛好家の間に強い人気があります。
「カンアオイ(寒葵)」の名前は、徳川家の家紋「三葉葵」のモチーフとなっていることで有名な「フタバアオイ」の近縁で、冬でも葉が残る常緑性であることに因みますが、「アオイ科」ではなく、「ウマノスズグサ科」です。
 
「ギフチョウ」は、
卵をつけるとすぐに亡くなります。
わずか3週間の命です。
海野さんは、1年に1度、春に出会える蝶は、
一期一会のようだと語って下さいました。
 
 

美術家 小松孝英さん

 
小松孝英(こまつ たかひで)さんは、
宮崎市を拠点に、国内外で高い評価を受ける
新進気鋭の現代美術家です。
20代の頃から、国内は勿論、世界各国で
個展やアートフェアに出品してきました。
国内大手企業とのコラボレーションや
国連施設に展示されるなど、錚々たる実績を
お持ちです。
 
 
小松さんはお父様の影響で、
子供の頃から昆虫採集が趣味でした。
昆虫の色やデザイン、形、全てが好きで、
観察してきたそうです。
 


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日本画の技法の金箔や銀箔を背景に、
蝶が舞う姿を描きます。
子供の頃の記憶の中にある蝶を大切に描いています。
『流水吸水図』という作品は、
子供の頃に見た、雨上がりの春の日に水たまりに
蝶が群れる「吸水行動」(きゅうすいこうどう)の姿を
描いたものです。
蝶の生命力を感じる瞬間です。
 


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吸水行動(きゅうすいこうどう)
チョウが湿地や水辺などに集まり、吸水→排泄を繰り返す行動のことです。
なぜこの様な行動をするのか、まだはっきりと分かっていませんが、現在2つの説が有力となっています。
 
一つ目は、「吸水行動」が暑い日に集中的に見られることから、体温の上がり過ぎた蝶が体を冷やすために水を飲んでいるという「体温調整説」です。
 
二つ目は、この「吸水行動」がメスには稀れで、
特に若いオスの蝶が動物の排泄物などに吸水しに
集まることが頻繁に観察されることから、
メスを探して活発に飛び回るオスは、
筋肉の運動に必要なナトリウムイオンを
排泄物から吸水によって補給するという
「栄養成分補給説」です。
 
小松さんの住む宮崎県には、
亜熱帯と熱帯の地域に生息する蝶が見られるなど、
たくさんの種類の蝶がいます。
地元延岡市の「かわなか保育園」には、
小松さんがこれまでに出会った蝶を描いた作品
『延岡城藪椿と群蝶図』があります。
 
自然環境が変化する現代、身近にいる蝶の姿を
子供達に見て欲しいという思いから描いたと
おっしゃいます。
更に自由な発想で探してもらいたいと、
想像上の蝶まで描き込まれています。
 
小松さんは、自分が子供の頃にいた蝶を
知ってもらい、実際に外に出て
探してもらいたいなあとおっしゃっていました。
 

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美の壺2.永遠の命を吹き込む

 

並河靖之の蝶
(「清水三年坂美術館」館長・村田理如さん)


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古くから日本は蝶を愛でてきました。
平安時代の『源氏物語図屛風』や
江戸時代の画家・伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)
『動植綵絵―芍薬群蝶図』
(どうしょくさいえ-しゃくやくぐんちょうず)の中で
蝶を描いています。
 
 
短刀の鞘(さや)には「蝶」がかたどられ、
卵から幼虫、蛹(さなぎ)から羽化して
華麗に生まれ変わる「蝶」は、
再生や復活を思わせる縁起物として
武士からも好まれました。
 
 
明治期の日本を代表する七宝家の一人で、
近代七宝の原点である「有線七宝」を極めた
七宝家・並河靖之(なみかわやすゆき)
『瓢型花生一対』には、
並河作品の大きな特徴である「黒色透明釉薬」の
透明感のある艶やかな黒い地(背景)の上に、
色彩豊かな華やかな「蝶」が描かれています。
この蝶は想像上のものだそうで、
独創的な羽根がその美しさを強調しています。
 
 
並河靖之は、独自に研究を重ねて、
これまでの七宝にはなかった様々な色の釉薬を
開発しました。
 
 
清水三年坂美術館」の館長・村田理如さんは、
並河が描いたのは、極楽浄土にいる蝶ではないかと
考えています。
 
「現世にいる蝶の色は限られていますが、
 現世を超えた美しい蝶を描くことで、
 自身が発明した色を
 より有効に使ったのではないか」
と蝶を題材にした理由を語っています。
 
  • 住所:〒605-0862
    京都府京都市東山区清水3丁目337-1
  • 電話:075-532-4270
 
 

漆芸家・橋本千毅さん


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独学で身に付け、昔の漆芸品を研究し、
手業の伝統工芸と現代のテクノロジーを融合させた
独特のスタイルで生み出している
富山在住の漆芸家・橋本千毅さんは、
子供の頃から好きだった「蝶」をテーマとした作品をその超絶技巧で作っています。
 
蒔絵の上に蝶がのっている『蝶華螺鈿薪絵箱』は、
まるで本物の蝶が箱に止まっているみたいです。
橋本さんは、蝶の羽根が貝殻と同じ構造色である
ことに注目し、羽根の輝きを螺鈿で作っています。

天然の貝より色を取り出します。
ひとつの貝殻からは、
12の種類の色が取り出せるそうです。
羽根のつややかな部分は、漆を塗ります。
羽根の色は、切り出した貝を
一粒一粒、丁寧に貼っていきます。
橋本さんは、下地・塗り・蒔絵・螺鈿細工に
至るまで全ての工程を一人で行います。
 
橋本さんは「蝶は神様が作った造形物みたい」
だとおっしゃいます。
どれだけ本物にどれだけ肉迫できるか、
かっこよく、リアルに作りたかったそうです。
美しいものは、時代が変わっても
ずっと長く美しくいて欲しいという
橋本さんの思いが
本物さながらの蝶に込められています。
 
 
 

美の壺3.夢をのせて羽ばたく

 

「マダム・バタフライ」デザイナー・森英恵さん
(服飾研究家 深井晃子)


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令和4(2022)年8月11日、
世界的ファッションデザイナーの森英恵さんが
96歳でお亡くなりになりました。
昭和52(1977)年、日本及びアジア出身者としては
初めて、高級ファッションの最高峰団体とされる
パリのオートクチュールの会員になったことでも
有名でした。
 
 
森さんと言えば、
「蝶」の羽をモチーフにしたデザインで知られ、
「マダム・バタフライ」と呼ばれました。
島根県で生まれた森さんにとって、
「蝶」は特別な存在でした。
「蝶」の訪れは、花が一杯咲き、外で遊ぶことの
出来る「春」がやってきた合図でした。
「蝶」の華麗ではあるけれど、その儚い美しさは、
森さんの美意識に通じるものでした。
 
森さんのデザインしたドレスは
どれも華やかで日本的なものです。
緑色のサテンドレスに薄い羽を重ねた作品は、
ボリュームあるスカートが、羽根を広げた蝶のよう
です。
胸元に大きな蝶のモチーフがあしらわれた
黒いドレスは、手を広げると羽根を羽ばたかせた
ように見えます。
 
 
森さんがモチーフとした「蝶の柄」は、
ヨーロッパでよく見られるものではなく、
日本の着物や帯などに日本独自の柄として
使われているものでした。
 
服飾評論家の深井晃子さんによると、
森さんは、日本の美意識を持って、
世界の人々に見てもらおうと思っていたようです。
 
森さんの原点は、ニューヨークで観た
「オペラ 蝶々夫人」です。
ニューヨークで見た「蝶々夫人」は、
みじめな姿で描かれていました。
森さんはその時「一人の日本女性として、
日本女性のイメージを絶対に変える」と
心に誓ったそうです。
 
 
 

西陣帯店「西陣坐佐織」三代目・佐竹美都子さん


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日本を代表する美しい織物、京都の「西陣織」。
多くは着物や帯などに使用される高級織物です。
「西陣坐佐織」は、西陣で機織りを生業としている
メーカーです。
40年程前には、京都にあった機場(はたば)
石川県の山中温泉に移し、
「地区外出機」(ちくがいでばた)としても、
西陣織のものづくりをしています。
 
 
三代目の佐竹美都子(さたけ みつこ) さんは、
平成16(2004)のアテネ五輪のセイリング競技に
出場した選手でした。
佐竹さんは、海外の選手達と交流する中で、
「日本人で着物を作る家に生まれて、
 どうして着物を着ていないの?」と言われたり、
日本の伝統文化について語れなかったという
苦い経験がありました。
 
その後、佐竹さんは
オリンピック選手に代わりはいるけれども、
この家に生まれた自分の代わりはいないと思い、
和装業界に入ることを選びました。
更に生け花や能も学ぶようになってから
「日本てこんないい国だったんだ」と気づき、
家業の「西陣織」を通して
日本文化を発信したいという思いが募り、
平成25(2012)年、「かはひらこ」というブランドを
立ち上げました。
 
「かはひらこ」とは、大和言葉で「蝶」のこと。
「蝶」は武将の紋様にも用いられたように、
「再生」「永遠の命」という意味を持っています。
また「蝶」は、か弱そうに見えますが、
古代より厳しい環境を果敢に生き抜いてきた
生命力を持っています。 
日本にも生息している「アサギマダラアゲハ」は、
たった1匹でヒマラヤ山脈を越え、2000キロの海を
渡ります。
 
「過酷な状況でも飛び続けるそんな「蝶」のように
 日本の女性も、「蝶」のように
 現代の過酷な社会を生き抜いて欲しい。
 着物がそんな女性達の羽根になれたらいい。
 そして、着物の世界を再生したい。
 着物という羽を持って羽ばたいて欲しい」
という願いを込めて名付けました。
 
佐竹さんは、身近に着られるように、
伝統的な柄を使わず、
独創的なデザインを取り入れました。
一からデザインを起こし、
どの糸で織るのか設計図を作ります。
立体的に織ることで角度によって色が変わります。
一匹、一匹羽ばたいている蝶には、
一人一人に輝いて欲しいという佐竹さんの思いが
込められています。
 
 
西陣坐佐織
  • 住所:〒603-8224
    京都市北区紫野西藤ノ森町12-21
  • 電話:075-441-3007
 

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