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美の壺「スイーツの芸術 パフェ」<File538>

▽「起承転結」を計算しつくした「イチゴのパフェ」
▽500以上独創的なパフェを考案した
 気鋭のシェフが作るブーケのような「リンゴのパフェ」
▽まるで苔(こけ)むした庭!
 季語から発想する「和テイストのパフェ」
▽料理研究家・大原千鶴さん行きつけ洋菓子店の
 「チョコパフェ」は温かいソースで味と香りに驚きの変化が!
▽お酒と合わせて楽しむ「夜パフェ」の魅力
▽前川泰之さんふんする
 “パフェ好きの幽霊”の物語に涙腺崩壊?!
 

 

美の壺1.構造:グラスに込めた物語

 

日本の個性が溢れたスイーツ「パフェ」

パフェは、日本で独自に発展したスイーツです。
グラスにアイスや果物、クリームを盛りつけた食べ物で、
様々に発展しました。
 
初めてパフェが登場したのは明治26(1893)年。
鹿鳴館の晩餐会のデザートに出されたのが始まりだと言われています。
(「明治26年天長節晩餐会メニュー」)
当時のパフェは、フランス生クリームを凍らせただけの
フランスの「パルフェ」に似たものだったようで、
その後、アイスにチョコレートソースが載った
アメリカの「サンデー」の影響を受けて、
日本独自のものとなっていき、愛されるようになっていきました。
 
 

いちごのパフェ(L’atelier MOTOZO・藤田統三さん)

 
東京・目黒区 のイタリア菓子店
「ラトリエ モトゾー (L’atelier MOTOZO)」のシェフで
イタリア菓子歴史研究家の 藤田統三(ふじた もとぞう)さんは、
これまで様々なパフェを考案し、
パフェの製法をまとめた著書も出されている方です。
 
藤田さんのパフェ作りは、
設計図でバランスを計算することから始まります。
構想を練りながら、最初にラフスケッチを描いていきます。
いろいろな色を組み込んで味のバランスと同時に配色も考えます。
一番下に、全体よりも濃い色を落とし込むのが
安定して見えるコツだそうです。
 
紹介されたのは、
一番下は苺のソースが落とし込まれたいちごのパフェ、
「コッパ アッラ ブルチャータ(Coppa alla Bruciata)」。
彩りと味わいがバランスよく重ねられています。
 
パフェにしかない魅力の一つが、グラスに入っているということ。
上からしか食べていくことが出来ないため、
お客様が食べる順番、素材を感じる順番を
作り手側から決めることが出来るのが、作る上での面白さなんだとか。
作り手のストーリーをお客様に楽しんでいただくためには、
「起承転結」のある物語性をはめ込んでいくことが必要。
この苺のパフェは、
まずミルフィーユで心を掴み、
次に、クリームブリュレの甘みと苺、ジェラートの酸味を楽しんでもらいます。
スポンジやパイで食感を転じ、
最後は苺のソースで余韻を残します。
 
グラスに詰めるのは物語の終わりから。
ラズベリーのソースに苺を加えて、主役の印象が残るように。
僅かに塩味を効かせたパイ生地で、食感と味に変化を出します。
グラスの縁にはライムの果汁を塗り、
その爽やかな香りと酸味で
苺やクリームブリュレを軽やかに食べ進めてもらい、
物語へと引き込みます。
更に、ミルフィーユの脇には苺味のチョコフレークを添えて、
期待感を演出します。
 
小さい器の中に、
どこまで自分の知識や記憶のエッセンスを落とし込めるか、
自分にとってもいい勝負だと語る藤田さんでした。
 
  • 住所:〒153-0043
       東京都目黒区東山3丁目1−4 ニューリバー東山  
  • 電話:03-6451-2389
 
 

Fabパフェ(小関智子さん・FabCafe Tokyo)

 
東京・渋谷にある「FabCafe Tokyo(ファブカフェ とうきょう)」。
「FabCafe」は、3Dプリンタやレーザーカッターが使える
「デジタルものづくりカフェ」です。
 
パフェ専門のパティシエ・小関智子(おぜき ともこ)さんは、
平成27(2015)年から約2か月に1回のペースで、
毎回違った「期間限定パフェ」(8日間)を提供しています。
「FabCafeで作るパフェ」なので、
その名は「Fabパフェ(ファブパフェ)」。
「Fabパフェ」は完全予約制で、
予約だけで売り切れてしまう人気ぶりです。
 
「Fabパフェ」はまず、
レーザーカッターでアクリル板を切り、
メレンゲ用の型を作るところから始まります。
この自作のメレンゲ型の丸い穴に材料を載せたら、
ヘラで伸ばして、メレンゲをグラスの口径に合わせていきます。
そして、メレンゲを焼きます。
 
グラスぴったりの大きさの型が作れるのが「FabCafe」の魅力。
誰でも資材を持ち込んで、お店の機材(レーザーカッターなど)で、
自分が作りたい物を作ることが出来ます。
機械の使い方はスタッフがサポートしてくれるので安心です。
 
今回、紹介されていた「Fabパフェ」は、
25作目の「Soupir(スピール)= 吐息(といき)」(提供は終了しています)。
 
ソルベは中国茶とラズベリー。
酸味のある果実とほのかな甘みのあるお茶との取り合わせです。
そこに先程のメレンゲで蓋をします。
これが今回のパフェで最も重要なポイント。
メレンゲを1枚入れるだけで、
食べる人が「次にいくぞ」と、
物語を進めて行けることを狙っているのだそうです。
 
まず最初に、上にある苺やピスタチオのアイスを楽しんだら、
メレンゲの下の層に進みます。
メレンゲを使うことで味と気分が変わり、
物語のイメージが広がると考えました。
グラスに込めた作り手の思い。パフェならではの世界があります。
 
  • 住所:〒150-0043
       東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F 
  • 電話:03-6416-9190
 
 

美の壺2.見立て:新たな世界を生み出す

 

りんごパフェ(森郁磨さん・L’atelier à ma façon)

東京世田谷区 のパフェ専門店
「L’atelier à ma façon(ラトリエ ア マ ファソン)」。
パフェを専門に作り続けてきた森郁磨(もり いくま)さんが
これまで考案したパフェは500以上。
前例に捉われない独創的なデザインで注目を集めています。
 
今回紹介された「りんごパフェ」はまるでバラの花束のよう。
リンゴを薄くスライスして花のように仕立てた
目にも美しいパフェです。
美しいけれども、パフェはやはり食べ物であって、
なくなってしまうことが最終目標。
一瞬のために、どれだけの技術が盛り込めるかを考えているそうです。
 
森さんにとって花は最もこだわってきたモチーフの一つ。
花びらとなるリンゴは、
程よい固さで加工しやすい「ふじ」を選び、
赤ワインとシロップで煮ます。
煮すぎると加工しにくくなるため、
程よい固さを見極めて火を止め、凍らせます。
薄くスライスしてシャリシャリとした食感は残します。
1枚ずつ巻いて挿していくと、リンゴの花びらになりました。
 
グラスには、
紅茶のジュレ、パンナコッタ、オレンジ、ブランデーのアイス。
そして最上部にバラの花束のようなリンゴ。
リンゴというありふれた食材を使いながらも、驚きを与えたい。
その手法として、今回は「見立て」という何かを思わせる仕事を施した
と語っていました。
 
  • 住所:〒158-0093
        東京都世田谷区上野毛1丁目26−14  
 
 

自然の風景を写したパフェ(中野慎太郎さん・shinfula)

埼玉県志木市にある「shinfula(パティスリー シンフラ)」の
シェフパティシエ・中野慎太郎(なかの しんたろう)さんが作るパフェは
自然の風景を細密に表現したものです。
 
枯れ落ちた小枝に苔に覆われた岩、そして朝露。
匂いや湿度まで感じられるかと思うほどしっとりした風情があります。
五月晴れがあれば、梅雨が来る・・・、
そういう形でだんだん5月という形が見えてくる。
中野さんは、発想は季節の言葉から生まれてくると言います。
朝靄、森の中、雨の降った後の土の香り、新緑の緑の香り・・・。
日本人らしい日本人にしか作れないオリジナルな洋菓子を目指しています。
 
地面の代わりにごぼうのパンナコッタ。
あんこ入りの抹茶わらびもちを砕いた抹茶クッキーをまぶして、
苔むした岩に見立てます。
明るい緑のクッキーは苔の新芽を表現。
クロモジの香りを効かせたジュレは朝露。
ほうれんそうとリンゴのシャーベットでグラデーションをつけ、
5月の苔庭を思わせるパフェが出来上がりました。
味わいの中心は抹茶の苦みとあんこの甘み。
そこに緑の香りやごぼうの土の風味が緻密に組み合わされています。
最後に、緑茶にドライアイスを入れたソースをグラスに注ぐと
霧が立ちこめた新緑の風景が広がりました。
 
  • 住所:〒353-0005
       埼玉県志木市幸町3丁目4−50  
  • 電話: 048-485-9841
 
 

美の壺3.調和:合わせて楽しむ

チョコレートパフェ(垣本晃宏さん・ASSEMBLAGES KAKIMOTO)

料理研究家の大原千鶴(おおはら ちづる)さんがよく足を運ぶという
町家を改修した洋菓子店
「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」。
京都市中京区にあるこの洋菓子店では、
落ち着いたバーのようなカウンター席で
ケーキやパフェを頂くことが出来ます。
もてなしてくれたのは
ショコラティエの 垣本晃宏(かきもと あきひろ)さんです。
 
紹介されたのは、チョコレートの国際大会の日本予選で優勝した
甘みを抑えたチョコレートのクリームをはじめ、
10種類の素材を重ねたチョコレートづくしのパフェです。
チョコレートのクリーム、セロリのクリーム、
チョコレートのカスタード、アイスクリームの層で構成。
そこにグレープフルーツを煮詰めた温かいソースをかけると、
チョコレートの葉っぱと蓋が溶け出して、
景色がどんどん変わり、風景が広がっていきます。
溶けたチョコレートの香りが
グレープフルーツやセロリの香りと結びつき、
甘みとほろ苦さの絶妙な調和が口の中に広がります。
チョコレートは冷たいと、香りや味が出にくい食べ物なのですが
温かいソースを入れることで、香りを引き出し、
甘みやほろ苦さが口の中で広がるのです。
また層によって温度差が生まれ、違った口どけも楽しめます。
 
  • 所在地:〒604-0982
        京都府京都市中京区松本町587−5  
  • 電 話:075-202-1351
 
 

ワインと合わせる夜パフェ(延命寺信一さん + 延命寺美也さん(EMMÉ)

東京・表参道にある「EMMÉ(エンメ)」は
ソムリエ・延命寺信一(えんめいじ しんいち)さんと
パティシエ・ 延命寺美也(えんめいじ みや)さん夫婦が営むバーです。
 
ワインバーとアシェットデセールのお店で、
明るい時間にはパティシエの作るデザート、
夜にはソムリエの選んだワインと料理がいただけくことが出来ます。
「アシェットデセール」とは
仏語でアシェットは「皿」、デセールは「デザート」のことで、
「皿盛りのデザート」を意味します。
テイクアウトを前提にして作られるケーキなどと違い、
「アシェットデセール」は、
作りたてのデザートをその場で味わうスタイル。
1枚のお皿の上に盛られた冷たいアイスや
とろけるソースを使った美しいデザートを味わえるのが魅力です。
 
おすすめはワインとパフェの組み合わせ。
お酒と合わせて、あるいはお酒の後の締めに味わう
「夜パフェ」が人気です。
 
ロゼワインと合わせた「さくらんぼパフェ」は
旬の野菜を使った甘過ぎない味わいのもの。
バルサミコのソースにチーズのクリーム、
ウスイエンドウから作ったアイスにさくらんぼの載ったパフェです。
揮発したアルコールと一緒にさくらんぼの香りが鼻から抜け、
華やかな香りがより強調されます。
またウスイエンドウの若くて青い香りが
ワインの青い香りとマリアージュして、
美味しい香りに変化することも計算されています。
 
ワインの選び方で、パフェもワインもより美味しくなるのだとか。
白ワインはグレープフルーツ、ライム、ハーブ、柑橘系、
赤ワインはベリー、いちご、サクランボの香りを持つのものが多いのが特徴。
そして、ロゼは赤ワインと白ワインのいいとこ取り。
「EMMÉ(エンメ)」では、
パフェの香りにマッチするようなワインを用意しているそうです。
 
次に紹介されたのは「ブリュレなチーズパフェ」。
マスカルポーネのアイスに、甘みの強い品種のミカンを添え、
軽く炙ったチーズケーキを載せたもの。
パルメザンチーズをふりかけ、程よい旨味と塩味をプラスします。
合わせるワインは、柑橘とほのかにバターが香る
カリフォルニア・ナパバレーのシャルドネです。
チーズと柑橘の香りが心地良く、鼻に抜けていきます。
 
奥様の美也さんは、お酒でゆっくりするのと同じように、
デザートを食べてゆっくりして欲しいと語って下さいました。
 
  • 住所:〒150-0002
       東京都渋谷区渋谷2丁目3−19 ローゼ青山 2F 
  • 電話:03-6452-6167
 

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