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岩手県・安比塗(あっぴぬり)

 
岩手県北部の八幡平市は、豊富な漆の産地という恵まれた条件を生かし、
藩政時代から生活に根ざした漆器「荒沢漆器」を作っていました。
生産は一時低迷していましたが、
現在、伝統ある漆器の復興の目指して、
新たに時代の用に合わせた「安比塗」として、
丈夫で使いやすい漆器を天然素材のみを使って作っています。
 
 

安比高原ブナ二次林

 
日本は国土の約7割が森林に覆われた森林国です。
中でも県土の約8割を森林が占める岩手県は、
本州一の森林面積を誇ります。
県の木「ナンブアカマツ」を始めとする針葉樹に加え、
広葉樹も豊富で、ナラやクリ、ケヤキなど50種類以上にも上ります。
 
岩手県北西部、八幡平東部に位置する「安比高原」は、
オールシーズンリゾートとして、
また日本有数の規模を誇るスキー場としても有名ですが、
森林浴の森日本100選」の1つにも選ばれた
「ブナ二次林」が広がるなど、
古くから良質な木材が豊富なところでもあります。
 
「安比高原ブナ二次林」
地元の人達が「下の牧場」、「中の牧場」、「奥の牧場」と
呼んでいる安比高原。
この芝生高原を取り囲むように
ブナの二次林が広範囲に分布しています。
ここは、今から80年ほど前の昭和初期、
地元の人達の木炭や漆器等の資材にするため
皆伐されました。
その際、1ヘクタール当たり1本ほどの母樹が、
そして当時は手鋸を使っていたため、
伐採できないような大きな木が残されたといいます。
それらが親木となり、種子が落下し、一斉に発芽し、
成育しました。
当時は牛の林間放牧も盛んに行われていたため、
ブナの稚樹の成育をさまたげる
ササ等の競争相手が採食されたことも、
成育にとって好都合だったといわれています。
80年後の現在、見事なブナ二次林となり、
私たちに豊かな水と安らぎを与えてくれています。
林内には散策路があり、二次林が間近に観察でき、
日本の森林浴百選にも選ばれています。
 
 
安比川上流で伐採された木々は、
川を下った畑地区で器に成形され、
荒沢地区に住む職人によって浄法寺で採取された漆が塗られました。
そしてそれは「荒沢漆器」と呼ばれ、明治時代には隆盛を誇りました。
 
 

荒沢漆器

 
岩手県は国産漆の約8割を生産する漆の産地でもあります。
県北部は、古くから漆の木が多く自生し、
日本有数の漆の産地として知られています。
ここから採取される漆は透明度・発色ともに良く、
硬度に優れた堅牢な品質を誇っています。
そして、上質な漆や漆器が作られてきました。
 
現在、二戸市浄法寺町と八幡平市安代地区で生産している漆器は
それぞれ「浄法寺塗」「安比塗」と呼ばれていますが、
二つの地域に流れる安比川流域では、
古くから地域一体となって漆器生産を行なってきた歴史があり、
それらは「浄法寺椀」や「南部椀」「荒沢漆器」などといった呼称で
呼ばれていました。
 
藩政時代より、安比川上流で伐採された木々は
川を降って畑地区で器に成形され、
荒沢地区に住む職人によって浄法寺で採取された漆が塗られた
「生活の器」が作られてきました。
明治時代には隆盛を誇り、
漆器生産に携わる人が約500名もいたと言われています。
ところが、戦後になるとプラスチック製品や陶磁器の普及、
価格の安い輸入漆の増加によって漆器生産は衰退してしまいました。
 
 

安比塗(あっぴぬり)の誕生

 
一時途絶えた「荒沢漆器」でしたが、
昭和58(1983)年に、もう一度漆器文化を復活させようと
地元の漆掻き職人や塗師が立ち上がりました。
まず、「荒沢漆器」の伝統を後世へ伝えるために
「安代町漆器センター(現・八幡平市安代漆工技術研究センター)」を開設し、
塗師を育成。
多くの塗師を全国に輩出してきました。
 

 
また平成11(1999)年には、
卒業生を受け入れるための「安比塗漆器工房」を開設。
「安比漆器工房」では、地域の伝統を踏まえつつも、
現代の食生活にマッチした実用的でシンプルなデザインの漆器
「安比塗」として生まれ変わりました。

 

「安比塗」の特徴


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「安比塗」は、漆絵や蒔絵などの加飾が施されていない
シンプルなデザインのため、飽きが来ず、
シーンやシチュエーションを選ばないと、
普段づかいの漆器として多くの人に愛されています。
 
女性の作り手が多いので、
丸みを帯びた可愛らしいデザインのものや
使いやすさを追求したものが多い点も特徴です。

 
 
そんな「安比塗」は、天然100パーセントの漆器です。
国産材のミズメザクラやトチなどの歪みの出にくい木地を厳選し、
地元岩手県産の貴重な漆を工房内で精製し、
「漆下地」という下地から上塗りまで重ねる技法で製作しています。
漆は時間が経つにつれて、硬くなっていく性質があるので、
木地にたっぷりと漆を塗っては研ぎ、研いでは塗っていく作業を繰り返し、
何度も塗り重ねていきます。
漆を塗り重ねることで、漆本来のつや質感が生まれ、
また保温性も高まることで、
温かい料理も冷たい料理も美味しく食べることが出来ます。

 
そして最後の仕上げ塗りには、「浄法寺漆」を使用。

塗りの美しさを堪能することが出来ます。
優しい口当たりや、使うごとに艶を増していくのも魅力です。

 
  • 住所:〒028-7533
       岩手県八幡平市叺田230-1
  • 電話:0195-63-1065
  • 営業時間:火~日 9:30~17:00
  • 定休日 :月(月が祝日なら営業)
         年末年始不定休
 
 

日本産漆生産・精製

 
昭和51(1976)年5月4日、「日本産漆生産・精製」が
文化財保存技術に登録されました。
 
また、令和2(2020)年6月には、
魅力的な文化や伝統を世界へアピールする
文化庁の「日本遺産」に認定されました。
 
今回認定されたは、
かつて「奥南部」と呼ばれた八幡平市から二戸市へ流れる
安比川流域に根付いた漆文化の繋がりに光を当てたものです。
安比川の上流に広がる山域には、
上流に木を伐採して椀や盆などを作る「木地師」が住み着き、
中流域にはその椀や盆に漆を塗る「塗師」が暮らし、
下流域では漆の木から樹液を採取する「漆掻き職人」が住み、
木材から漆器へと繋がるものづくりの伝統と技を現代に受け継いで来ました。
一連の作業を地域内で全部賄うことが出来るのは、
この地域の大きな特徴なのです。
 
更に令和2(2020)年12月には、「漆掻き技術」が
「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の一つとして
ユネスコ無形文化遺産登録となり、世界が認める技術となりました。