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東京都「東京籐工芸」(とうきょうとうこうげい)

「編組工芸」(へんそこうげい)とは、
編んだり、組んだりして制作された手工芸品をいいます。
竹や籐 (とう)、藤、あけび、柳、蒲、麦わらなどを素材とし、
古くから家具、敷物、すだれなど生活用具に使われてきました。
 
 
 
 
「編組工芸」(へんそこうげい)の中で
最も身近な素材として利用されるのは「竹」です。
 

 
「竹」は日本中に生育していて、
竹稈 (ちくかん) が空洞で軽い割に強く、
表面は滑らかで、弾力性があり、湾曲しやすく、
裂いたりして加工がしやすいこと、
生長が速く3年程で利用出来ることから
生活道具の素材として重宝されてきました。
 
ただ折れや曲げに耐えられない「竹」は
「巻く」「結ぶ」は苦手であるため、
しなやかさに優れた「藤」(とう)が、竹に代わって、
専らもっぱら「巻く」ことや「かがる」ことに利用されてきました。
 
 


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「籐(ラタン)」は、
主に東南アジアにだけ成長するヤシ科の植物です。
地球上で最も長い茎を持った植物と言われています。
しなやかで軽く、堅牢で弾力に富んでいることを特徴に持つため、
竹に比べて巻いたり結んだりする作業に適し、
古くから様々な製品に用いられてきました。
 

竹と同じように節がありますが、中は空洞ではなく繊維で、
特に、引く力に対する強度が極めて高く、
キングコングがぶら下がったぐらいでは、びくともしません。
 
 
「籐」は、日本には遣唐使が初めて伝えたとされています。
正倉院に保管されている「篭」、
平安時代以降は「重籐弓」(しげとう)、薙刀の柄巻などの武具や、
また、棟の接合やタガ締など、建築にも多く用いられました。
筆、笛、尺八など様々なものに使われていました。
 

  

「重籐」(しげとう)
弓の束 (つか) を黒漆塗りにし、
その上を籐で強く巻いたもの。
大将などの持つ弓で、
籐の巻き方などによって多くの種類がある。
正式には握り下に28か所、握り上に36か所巻く。
 
 
江戸時代には、籐の網代編みの編笠、枕、草履の表などに使われ、
籐材料の輸入については、
『出島蘭館日誌』の正保元(1644)年8月30日の項に、
バタニ(マレーシア)から1000束が長崎に入っていると
記されています。
 
明治時代には姥車(乳母車)や籐椅子が出現し、
大正時代には芯籐の造形性が注目され、
昭和の初期から、家具類やルームアクセサリーにも用いられ、
籐の利用範囲は更に拡大していきました。
 
顔にふるる芭蕉涼しや籐の寝椅子
 
夏目漱石「漱石全集」
 
 
今日では籐製品は身近なものとなり、
高温多湿の日本の夏には、
ひんやりとした肌触りからホテルのロビーやレストランなどの他、
一般の家庭など様々な場所で使われています。
 
しかし残念なことに、日本の籐工芸業界は、
台湾やインドネシアなどの安価な製品により壊滅的な打撃を受けて、
日本に残る腕の良い籐職人は数10人になってしまいました。
 
天然・自然素材の良さ、品質の確かさが強く求められる中、
「籐」の伝統工芸品としての価値が見直されています。
 

 
 
 
 伝統的な技術・技法
  1. 曲げは、火熱又は蒸気を用い、
    曲げ台などにより行うこと。
  2. 挽きは、ふし取りした丸籐の皮を割鉈ではいで
    (せん)で裏の身をとって、切出しで幅をきめること。
  3. 巻きは、骨組の接合部分などを
    皮籐(かわとう)、芯籐(しんとう)で巻き補強すること。
  4. 編みは、皮籐・丸芯・平芯で行い
    装飾性、強靭性など製品の用途に合せ正確に行うこと。