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美の壺「暮らしにぬくもり 型染」 <File559>

<番組紹介>
大人気落語家・林家たい平さんの、
美術大学時代の型染作品から
自らデザインした手ぬぐいまで紹介!
 ▽海外でも人気の型染のれん。
  ギリギリまでそぎ落としたデザインとは?!
 ▽伝統の「伊勢型紙」。
  小刀一本でミクロに彫り上げる型彫師の技!
 ▽昔の型紙を組み合わせてモダンな印象に仕立てる、
  江戸小紋師の帯
 ▽人間国宝・芹沢銈介の名品とデザイン秘話。
 ▽布だけじゃない!
  カレンダーから詩まで和紙の型染!!
 
 
 

美の壺1.キレよく くっきり 大胆に

 

型染と手ぬぐいの関(落語家・林家たい平さん)

 
 
日本テレビ「笑点」大喜利で活躍する林家たい平さん。
たい平さんは武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。
「型染」との出会いは、大学生の頃になります。
美大生として商業デザインを学び、その中で「型染」を知ったのです。
卒業制作は、手拭いをモチーフとした型染作品
『手ぬぐいのためのポスター』でした。
 

 
「手拭い」は、落語家にはなくてはならないアイテムです。
前座から二ツ目に昇進すると名入りの「手拭い」を作ることが許されます。
ご贔屓筋に渡したり、芸人間で交換することもあります。
たい平さんは、毎年、色違いの手拭いを作っています。
鯛をモチーフとした大胆な「手拭い」です。

たい平さんは、ご自分の「手拭い」ばかりでなく、
弟子の三味線漫談家・林家あずみさんや
故郷の秩父神社の「手拭い」も作っています。
 

www.chichibu-jinja.or.jp

 
たい平さんは、「型染」はマジックのようなもの。
絵画と違って糊を落とすまで出来上がりが分からないのが
魅力のひとつだとおっしゃっていました。
 
 
 

型染の魅力
(型染工房「たかだ」髙田長太さん)

 
「型染」は、日本独特の染色方法です。
織り上げた布や和紙、板などに型紙を置き、
色をつけない部分に防染糊を塗り、
顔料や染料などで色染めをする手法です。
同じ型紙で何度もいろんな色で染められるのが特徴です。
 
神奈川県足柄下郡湯河原町にある型染工房「たかだ」の
髙田長太さんの作る暖簾は、国内外でもインテリアとしても人気です。
フランス・パリの刃物店の店先にも髙田さんの作った暖簾がかけられています。
 
髙田さんのお父様・正彦さんはグラフィック・デザインを学んだ後、
昭和45(1970)年に型染作家の人間国宝・故芹沢銈介に内弟子に入った人物です。
(正彦さんは平成30(2018)年年6月に亡くなられています。)
その父に学び二代目を継承しました。
 
人間国宝・芹沢銈介
 
明治28(1895)年に静岡市葵区に生まれ。
民芸運動を代表する一人として知られ、
また一枚の型紙を使って多彩な模様染めをする
沖縄の「紅型」(びんがた)に精通し、
従来の枠に捉われない技法で独創的な作品を次々と
生み出しました。
そうした功績が認められ、
この技法は重要無形文化財「型絵染」として
より広く世に伝えられていくこととなり、
昭和31(1956)年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に
認定されました。
 
 
番組の撮影時、髙田さんは蓮根の暖簾を作っていました。
蓮根は先を見通すことが出来る縁起物です。
作る時のポイントは「糊の厚さ」。
表と裏に糊を載せてくっきりとさせることだそうです。
水洗いの後、藍で染めます。
気温や湿度によって仕上がりも違うそうです。
髙田さんは、線を簡略化して
何の図案が分かるギリギリのラインまで引き算をするそうです。
また、糊が、はみ出たりする事が型染の良さなのだとも語って下さいました。
 
  • 住所:〒259-0312
       神奈川県足柄下郡
       湯河原町吉浜1902-36
  • 電話:0465-62-8020
 
 
 

美の壺2.紙が生み出す 無限の世界

 

伊勢型紙(伊勢型紙資料館・代田美里さん)


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江戸時代には、
「型染」が流行して様々な図案の型紙が作られました。
その多くが三重県鈴鹿市で作られた「伊勢型紙」です。
 
 
「伊勢型紙」は、
三重県鈴鹿市の白子・寺家・江島地区で作られている
染色用の型紙です。
強靭で保存性の高い美濃和紙に柿渋を塗り、
繊維が縦方向のものと横方向のものが交互重ねて、
強度が上がるように3〜4枚貼り合わせ、
そこに着物の文様や図柄を丹念に彫り抜いていったものです。
昭和58(1983)年には、「伊勢形紙」の名前で
国の伝統的工芸品 (用具) に指定されています。
 

 
型紙問屋の寺尾斎兵衛の江戸時代末期の住宅を修復した
平成9(1997)年に開館した「伊勢型紙資料館」には、
6000枚の伊勢型紙が収蔵されています。
鈴鹿市文化財課の学芸員の代田美里さんが紹介していただきました。
鯉の滝登りをイメージした立身出世のおめでたい柄は、
幕末から明治初期の型紙です。
江戸時代の中期の型紙は、
竜の子どもが雨を呼ぶ「雨竜」という柄もあるそうです。
 

 
  • 住所:〒510-0242
       三重県鈴鹿市白子本町21−30
  • 電話:059-368-0240
  • 営業時間:10:00~16:00
  • 定休日 :月・金・第3火・年末年始
 
 

型彫りの復刻を手掛けて(型彫師・内田勲さん)


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型彫師の内田勲さんは「突彫り」の職人さんです。
「突彫り」とは、「穴板」と呼ばれる台に5~8枚の型地紙を置き、
刃先1mm~2mmの小刃で、
垂直に突くように前方向へ掘り進める技法です。
 
内田さんは、江戸時代や明治時代の型紙を復刻しています。
当時のオリジナル型紙の写しをもとに復刻作品を作っています。
この日、制作をしていた型紙は、
一面に咲き誇る桐の花模様で明治時代のものです。
これを元に桐の花の一部分を切り取り
小さい型「小本」(こほん)を作ります。
「小本」(こほん)を上下左右に繋げると、
花や茎が繋がって大きな模様になります。
 
これを耐久性の強い美濃和紙に柿渋を塗り、
3枚重ねたものを6枚重ねまとめて掘り進めます。
彫り上げるのに2週間かかるそうです。
内田さんは、昔の作品は勢いがあり、味があるとおっしゃいます。
当時は、競争相手も多かったようです。
型紙彫りの伝統が現代に受け継がれています。
 
 

江戸小紋と型紙(江戸小紋師・菊池宏美さん)

 
「江戸小紋」は、遠目には無地に見えるほどのごく小さな柄を、
一色のみの「型染め」で染め上げた小紋のことです。
繊細な模様づけは、
型彫りされたわずか20cm程の型紙を
布の上にわずかのズレも許さずに一枚ずつ置いていき、
少しずつ染めていくという綿密な作業によって実現されています。
 

 
江戸小紋師の菊池宏美さんは、
江戸時代に流行した型染「江戸小紋」を元に
現代でも映える小紋の制作をしています。
 

 
菊池さんは学生時代には数学を勉強されて、
卒業後はSONYに入社しましたが、
偶然に出遭った江戸小紋の第一人者・藍田正雄の着物を見て感銘、
弟子入りをします。
修行後、平成23(2011)年に群馬県伊勢崎市で「工房よし菊」を構え、
現在に至ります。
 

 
 
菊池さんは、昔の「伊勢型紙」を型染に使っています。
三つの菊の型紙を使って帯を染めていました。
この型紙は、大正から昭和初期のもので
元々は一つだった図案を三つに分けて彫り起こしてもらったものです。
菊池さんは、菊の型染の上に江戸小紋の代表的な柄「大小あられ」を載せ、
糊に僅かな色を入れ染め上げます。
 

 
これは、菊池さんならではの技法です。
菊池さんは「型合わせ」と呼んでいます。
異なるデザインを組み合わせることで新たな風景が生まれました。
モダンな帯が生まれました。現代の息吹を吹き込んだ作品です。
 
 
 

美の壺3.何でも染める、何にでも染める

 

芹沢銈介(芹沢銈介美術館・学芸員の白鳥誠一郎さん)

芹沢銈介(せりざわけいすけ)は、
民芸運動の共鳴者で「型絵染」の人間国宝として知られています。
当時、分業だった型染の工程を全て一人で行い、
型染を芸術の域まで押し上げた人物です。
 
 


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芹沢は86歳の時、自身の作品600点を故郷の静岡市へ寄贈して、
昭和56(1981)年に「静岡市立芹沢銈介美術館」が開館しました。
現在収蔵されている芹沢の作品約800点とコレクション約4500点は、
年に3回展示替えが行なわれ、順次公開されています。
学芸員の白鳥誠一郎さんが、コレクションを紹介して下さいました。
代表作の「貝文着物」は、貝文様が散りばめられた型染の着物で
貝の文様は全て違っています。
 
芹沢は、布を染める型染を和紙に応用する技術を確立し、
和紙の型染カレンダーや本の装丁、カードなどを製作しました。
芹沢銈介の眼には、あらゆるものが模様に見えていたのだろうと
白鳥さんはおっしゃいます。
生前、芹沢は、「模様の中に溶け入りたい」と語っていたそうです。
 
 
  • 住所:〒422-8033
       静岡県静岡市駿河区登呂
       5丁目10−5
  • 電話:054-282-5522
 
 

芹沢銈介に見い出されて(「小田中染工房」三代目・小田中耕一さん)

 
「型絵染」の創始者である人間国宝・芹沢銈介氏に師事し、
現在は岩手県紫波町で「小田中染工房」を営む、
型染め作家として活躍される小田中耕一さんは伝統的な技法を用いて、
手拭いやなどの染織の他、カレンダーやポスター、書籍のグラフィックなど
多岐に渡ります。
宮沢賢治の著書『注文の多い料理店』の装丁や
盛岡の銘菓「くるみクッキー」の箱に描かれた印象的な文字や可愛い絵、
手仕事フォーラムさん発行の『日本の手仕事カレンダー』を
毎年手掛けられているのも小田中さんです。
「小田中染工房」は藍染めを行う「紺屋」として
昭和初期に創業しました。
当時は農家の作業着を藍染めする仕事が主力でした。
藍には抗菌や保湿、防虫などの効果があるため、
野良着やもんぺなどの農作業着は藍で染められていたのです。
しかし農業の方法が変化し、服装が変わると需要は次第に減少。
工房を続けていくために、小田中さんの先々代は
「型染め」や「印染め」(しるしぞめ)を始めました。
 

 
三代目の小田中耕一さんは、高校でグラフィックデザインを学びました。
お店のお客様に見せていただいた「芹沢銈介自選作品集」に衝撃を受け、
卒業後は上京。
「芹沢染紙研究所」に8年間在籍し、学び行きついたのが文字の型染でした。
 
「芹沢染紙研究所」
昭和30(1955)年に東京の蒲田に設立。
研究所ではカレンダーやはがき、うちわなどを制作し、
「日用品として購入できる、安価なものであること」、
「需要に応じるため、数多くつくられたものであること」など民芸の考え方を実践しました。
 
 
小田中さんは、一般的に分業して行われていた型染めの工程を
ひとりで一貫して行います。
まず、文字の型紙を字がバラバラにならないように彫っていきます。
補強するために裏側に紗を貼ったら、
紗を切らないように文字の繋がりを切り取り、型紙が完成させます。
そして色をつけて染め上げます。
 
小田中さんは、自分が発案した時よりも
いいものが出来てくる楽しみがあるとおっしゃいます。
そしてどんなものが出来上がるか
最後まで分からないことに魅力を感じるのだそうです。
芹沢銈介に導かれて半世紀が経つ、小田中さんです。
 
 小田中染工房
  • 住所:〒028-3441
       岩手県紫波郡紫波町上平沢
       南馬場60−1
  • 電話:019-673-7605

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