MENU

美の壺「日本の筆、はけ、ブラシ」 <File545>

日本の筆・はけ・ブラシの奥深き世界
 ▽ミス・ユニバース・ジャパンのメイクを手掛ける
  お坊さんメイクアップアーティストが愛用する
  広島の熊野筆は「かわいさ」が要
 ▽将軍徳川吉宗のお墨付き!はけとブラシの老舗の品数は
  なんと800!驚くべき種類と用途
 ▽繊細な毛先に見る江戸はけ作りの技
 ▽今ブームの靴磨き・手植え靴ブラシの工房へ
 ▽世界が注目する「隠れメイドインジャパン」は
  美しき暮らしのパートナー
 
 

美の壺1.繊細な肌触り

 

熊野の化粧筆
(世界的メイクアップアーティスト・西村宏堂 さん)

 
東京都内に室町時代から続く由緒あるお寺があります。
そこでお勤めをしていたのは西村宏堂さんです。
実はこの方、世界的なメークアップアーティスト。
ミス・ユニバース世界大会などで
各国の代表を美しくメークしてきました。
西村さんの仕事に欠かせないものが「化粧筆」です。
特にお気に入りの化粧筆、それは日本の「熊野筆」です。
 
 

熊野・化粧筆工房「竹宝堂」
(竹森鉄舟さん)

 
広島県熊野町は、江戸時代より続く筆作りの町です。
昭和56(1971)年創業の「竹宝堂」(ちくほうどう)さんは、
選りすぐりの素材を使い、熊野の筆作りの技でもって、
化粧筆を製作しています。
 

 
創業者で竹宝堂会長の竹森鉄舟(たけもりてっしゅう)さんは、
人形の顔を描く「面相筆」を作る家に生まれ、
父からその技を受け継ぎました。 
化粧筆は、リスやヤギなど希少価値のある動物の毛より作られます。
化粧筆の命は何と言っても「穂先」です。
鉄舟さんがその穂先の仕上げを担います。
 

 
穂先を整え、先のないものや傷んだ毛を小刀で抜き取る
「逆毛取り」をした後、
「コマ入れ」と呼ばれる作業を行います。
中をくり抜いた「コマ」と呼ばれる木型に逆毛取りした穂先を入れ、
丸い形にしていきます。
それから、手のひらで揉み、穂先の形を作っていく
「揉み出し」を行っていきます。
揉む場所を変えるだけで、
穂先の形を自由に変えることが出来るのだとか。
手のひらの感覚を頼りに穂先を整えていく、まさに職人技です。
「可愛い」が大事という、鉄舟さんの手による究極の化粧筆です。
 

 
  • 住所:〒731-4221
       広島県安芸郡熊野町出来庭6丁目5−5
  • 電話:082-854-0324
 
 
 

美の壺2.丁寧が生み出す良きモノ

 

東京・日本橋 刷毛とブラシの老舗「江戸屋」
(濵田捷利さん)

 
東京・日本橋に、刷毛とブラシの老舗「江戸屋」があります。
「江戸屋」では800種類に及ぶ刷毛やブラシを扱っています。
創業は江戸中期で、
店の屋号は八代将軍徳川吉宗から賜ったのだそうです。
庶民から大奥まで、日常の様々な場面で使われていました。 
 

 
現当主は十二代目の濱田捷利さんです。
店内には、様々な刷毛やブラシがあります。
漆を塗るための「漆刷毛」は、人の髪の毛、
それも30年以上乾燥させた
日本女性の髪の毛が最適だと言われていました。
 

 
「江戸刷毛」と名付けられた刷毛は、
掛け軸や屏風、ふすまや障子などの表具に糊を塗ための
「糊刷毛」です。 
享保年間に日用品などの良し悪しを解説した
『万金産業袋』(ばんきんすぎわいぶくろ)には、
「江戸刷毛は表具によろし…」と記されています。
 
  • 住所:〒103-0011
       東京都中央区日本橋大伝馬町2番16号
  • 電話:03-3664-5671
 
 

東京・日本橋「経新堂稲崎表具店」
(表具師・稲崎昌仁さん)

「江戸刷毛」とはどういうものか、
東京・日本橋に五代続く老舗表具店
「経新堂稲崎表具店」(きょうしんどういなさきひょうぐてん)
表具師・稲崎昌仁さんに伺いました。
稲崎さんのご先祖は、江戸城への出入りと苗字帯刀を許された、
筆頭の表具師でした。
 
表具に使う刷毛には色々な種類があります。
糊を塗るのに使う「糊刷毛」、
貼った和紙をしっかりなでつける「なぜ刷毛」、
叩くことで和紙の繊維が締まり強く貼り付けることが出来る
「打ち刷毛」、
細かいところに糊をつけるための「切り継ぎ刷毛」など様々です。
 
稲崎さんは、良い「江戸刷毛」について、
「強過ぎてもいけないし、弱すぎてもいけないという、
 コシの強さというのが、一番大事になってきますよね。
 毛先に糊をつけた時、一直線に揃うのが、よい江戸刷毛。 」と
おっしゃっていらっしゃいました。
 
 
  • 住所:〒103-0007
       東京都中央区日本橋浜町2丁目48−7
  • 電話:03-3666-6494
 
 

東京・台東区 江戸刷毛「小林刷毛製造所」
(田中重己さん・宏平さん親子)

今も変わらぬ技で「江戸刷毛」を作り続ける親子がいます。
「小林刷毛製造所」田中重己さん、宏平さん親子です。
父・田中重己さんは、この道64年、
「文化庁認定表具用刷毛制作選定保存技術保持者」です。
 
田中さんが作る刷毛は、国宝の修復にも使われています。
安土桃山時代の絵師・狩野永徳の『檜図屏風』です。
経年劣化により絵の具が剥落したため、
18か月かけて修復が行われました。
その時に使われたのが、田中さんの刷毛でした。
 
品質を保つためには、
自然と時間や行程がかかる職人の技だと言います。
刷毛50本分の毛先の下処理だけでも、およそ2か月がかかります。
糊刷毛に使う毛は、馬の尻尾です。
まず、毛を右手で引っ張り毛先を丁寧に揃える「先揃え」の後、
逆毛や毛先のないものを小刀で取り除く「すれ取り」を行います。
刷毛にとって 毛先は命。
毛先を一直線に揃えることで、
糊を均等に和紙につけることが出来るのです。
そして仕上げ。 檜の板挟み、三味線の糸で綴じていきます。
 
余分なものは一切なく、糊を塗る為だけに作られた「江戸刷毛」。
丁寧な仕事が生み出した、江戸のよきものがここにありました。
 

 

 
  • 住所:〒110-0008
       東京都台東区池之端2-7-6
  • 電話:03-3821-6296
 
 
 

美の壺3.輝きを生み出す極上のパートナー

 

大阪・中央区 「THE WAY THINGS GO」
(靴磨き職人・石見豪さん)


www.youtube.com

 
靴ブラシが密かなブームとなっています。
大阪の船場ビルディングにある「THE WAY THINGS GO」は、
マニアにとって憧れの靴磨き専門店です。
靴磨き職人・シューシャイナーの石見豪(いしみ ごう)さんは、
昭和57(1982)年生まれ、勤めていた会社を辞めて靴磨きの道へ。
平成30(2018)年に「靴磨き日本選手権大会」で優勝し、
日本一の靴磨き職人の称号を手に入れました。
(靴磨き日本選手権大会三連覇 2018 2019 2020優勝)
 
その石見豪さんに、プロの靴磨きを見せていただきました。
まず馬毛のブラシで汚れを落とし、
表面に残る古い油や蝋などを取り除き、クリームを塗ります。
次に使うのが「豚毛のブラシ」。
コシがあって硬い豚毛は、
クリームを均一に伸ばし、靴を輝かせることが出来ます。
そして、最後に使うのは「ヤギのブラシ」です。
ワックスを、少しの水を含ませたヤギのブラシで靴全体に行き渡らせ、
完成です。
一足にかかる時間は40分から1時間。
つま先はピカピカとまるで鏡のようです。
 
修業時代、石見さんは、3年で2万足の靴を磨いたそうです。
石見さんにとって靴ブラシとは、「魂」みたいな感じだなのそうです。
 
 
  • 住所:〒541-0047
       大阪府大阪市中央区淡路町2丁目5-8
       船場ビルディング415
  • 電話:06-6203-0551
 
 

東京・江東区亀戸 手植えブラシ工房「寺沢ブラシ製作所」
(寺澤一久さん)


www.youtube.com

 
東京亀戸にオーダーメイドのブラシを作る専門店
「寺沢ブラシ製作所」があります。
寺沢さんが作るブラシの毛は、何と全て「手植え」。
先代の父から受け継いだ 、
手作業で一穴ごとに手縫いをする手植えの技術で、
ブラシを作っています。
手植えにすることで、
抜けにくく耐久性に優れているブラシが出来るのです。
 
オーダーメイドで作るブラシは、
ブラシの形や色、毛の種類や長さなどを
注文者の好みに応じて作られます。
大切なことの一つが、毛を植える「穴の形」です。
表は大きく、裏は小さく穴を開けていきます。
大きい穴から二つ折りにした毛の束を入れ、
裏から留めるためです。
こうすることで 毛が抜けにくくなります。
小さな穴からステンレスの針金を通して指で毛の束を摘み、
針金で引っ掛け、引っ張って毛を留めます。
秤を使わなくても、
寺沢さんの指先は正確に同じ量の毛を植えていきます。
最後に専用の工具で毛先を揃えて、出来上がりです。
 
木の板から自然に毛が生えているようなブラシです。
靴の磨きを引き立てるための極上のパートナーであるブラシが
今日も紳士の足元を彩っています。
 
  • 住所:〒136-0071
       東京都江東区亀戸9丁目35−21
  • 電話:03-3684-6938
 

f:id:linderabella:20210513110059j:plain