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兵庫県「姫路レザー」

 
日本で製品として利用される「皮」は、
(豚皮以外)8割をアメリカなどからの輸入に頼っていると
言われています。
 
兵庫県姫路市は、牛や馬の生産から加工まで
全てが地域内で完結している、稀有な地域です。
企業数、出荷額では全国の2分の1以上を占め、
現在、日本で流通している革製品の7割は
兵庫県姫路市で製造されている「姫路レザー」と言われています。
 
 

1.姫路における革の歴史

 
兵庫県における製革業の歴史は極めて古く、
皮革生産地として「播磨」の国名が史料に初めて出るのは、
延長5(927)年に完成した『延喜式』ですから、
千年以上の歴史を持ちます。
 

 
室町時代において、播磨の皮革生産は極めて盛んで、
特に、豊臣時代が最も盛んだったと言われています。
地域の市民が一枚の革を姫路城にいた秀吉に献上したところ、
その品質に喜んだお礼に秀吉が井戸を掘ったという、
当時の生産のと技術のレベルの高さを示す言い伝えも残っています。
 

 
江戸時代には、
播州姫路の「白靼革」(しろなめしがわ)やその「皮細工物」は
全国的な需要を持った商品となり、
姫路、大阪、江戸、尾張などの商人の手を通じて
全国に販売されていました。
 

 
当時、既に地域的な分業が行われており、
「鞣製(じゅうせい)部門」は、
いわゆる「白靼革」(しろなめしがわ)の製革で、
姫路の東側を流れる市川流域を始め、
姫路の西側を流れる揖保川流域に沿った地域に展開されました。
「白靼革」(しろなめしがわ)は、加工原料としても、
そのままの形で多くの市場を持っていました。
 

 
一方「加工部門」は、
箱類、文庫類、武具、馬具類、稽古道具類などの製造が
姫路城下町の中二階町から東二階町にかけて展開され、
参勤交代の武士を相手とする土産品として、
主に煙草入れ、向掛(つまがけ)、鼻緒などの
製造販売の店舗が軒を並べた他、
江戸、尾張、大阪との取引で隆盛を極めたと言われています。
また、「白靼革」ほど上質ではなかったが「張木地」(はりきじ)と称して、
鼻緒や伊勢合羽が作られ、街道筋で売られたそうです。
 

 
姫路藩は進んで皮革業を保護・奨励したため、
皮革業は「白靼革」を中心に広汎は発展を遂げ、
姫路藩の財政を支える産業となりました。
 

 
明治維新後も、時代の変化に対応しながら革づくりは行われ、
海外からも高い評価を受けました。
明治33(1900)年の「パリ万博」では、「銅賞」を受賞しています。
 
更に、近代的鞣製法(「クロムなめし」など)が取り入れられ、
大正期には軍需専門化が行われ、急速に企業化が進みましたが、
戦後は強制的な軍需専門化は分裂し、
小規模民需産業として再出発しました。
業界は、昭和26~38年の間に著しい成長を遂げ、
昭和40年代の後半に入り、経営の合理化や設備の近代化を進展させました。
現在、企業数、出荷額では全国の2分の1以上を占め、
特に成牛革の生産量は約7割のシェアを誇っています。
 

 
 

<参考> 姫路のおしごと(皮革編)


www.youtube.com

 
 

2.タンナー

 
そんな姫路での革づくり。
その大きな流れは、
動物から剥がしたままの状態である「皮」の状態から、
耐熱性や耐久性がある「革」を作り上げていくことにあります。

動物の皮は非常に柔らかく丈夫ですが、
腐敗や乾燥により硬くなり、柔軟性がなくなってしまいます。
それを防ぎ、長く使えるようにするために、
樹液や薬品を使った「鞣し」(なめし)の工程が必要なのです。
 
現在、姫路市内だけでも
数十もの「タンナー」がいると言われています。
 
タンナー
  
  
 
皮を鞣す(なめす)という英語のtanに由来。
製革業者又は皮革製造に携わる人のこと。
近年は製革業者というより、
「タンナー」という言葉がよく使われています。
からを作る」のがタンナーの仕事になります。
 
「皮」は
「鞣されていない毛のついた状態の生の表皮」で、
「革」は
「皮を鞣して腐ったり固くなったりしないように
 加工したもの」を言います。
そして「鞣す」(なめす)とは、
動物の「皮」を腐らないように加工し、
柔らかくし耐久性を加えて、
製品である「革」にしていく技術のことです。
鞣す前の状態のものが「皮」で、
鞣した後の状態のものが「革」で、
その鞣す工程を行うのが「タンナー」なのです。
 
日本のタンナーは、兵庫県の姫路市やたつの市の他、
和歌山県、東京都などに集積しています。
 
日本で唯一の製革業者による全国団体
日本タンナーズ協会」の本部は姫路市にあります。
 

日本タンナーズ協会

  • 住所:〒670-0964
       兵庫県姫路市豊沢町129
  • 電話:079-282-6701
 
 

3.クロムなめし

 
世界で流通している革製品の約8割は、
「塩基性硫酸クロム鞣剤」で鞣す
「クロムなめし」によって作られています。
甲革、袋物用革、衣料用革などの用途に
最も広く行われている鞣し法です。
高級感というよりは、カジュアルなテイストに近いです。
 
「姫路レザー」においても
「クロムなめし」が採用されています。
 
特徴1.エイジング(経年変化)があまりない
クロム剤は「塩基性硫酸クロム」と呼ばれる化学薬品です。
経年変化が少ないことが特徴です。
使用前とあまり変色をさせたくない場合におすすめです。
 
特徴2.着色しやすい
「クロムなめし」をした後は色が白っぽい色になるので、
染色時の発色が良くなる、
多彩なカラーバリエーションを作りやすいというメリットがあります。
 
特徴3.伸縮性 / 耐久性がある
柔らかいので伸び縮みしやすく、耐久性があります。
革を薄く伸ばす加工などにも適しているため、
衣料品やバッグなどに多く使われています。
 
特徴4.効率よく革を作れる
鞣し時間が短く、経済性に優れ、加工のしやすさから
コストパフォーマンスを抑えながら、
質の高い革を提供することが出来ます。
多くのタンナーに使用されています。
 
 

4.コンビなめし

 
近年、「姫路レザー」の製造においては、
「コンビなめし」という加工法も採用されています。
これは、「クロムなめし」と昔ながらの「タンニンなめし」の
二つを合わせた加工法です。
「クロムなめし」の特徴である
耐久性や生産工程における効率の高さに加え、
「タンニンなめし」の特徴である「革の経年変化」も可能とする、
いわばハイブリッドな加工法です。
両者のなめしの長所を取り入れ、かつ短所を補った、
より質の高い革製品の製造方法です。
 
 

5.姫路の白なめし

 
「姫路レザー」について説明する上で
忘れてはいけないのが「白鞣し」(しろなめし)です。
 
「姫路白鞣革」は
わが国が世界的に見ても誇りうる皮鞣し技術で、
その原型は、ほぼ千年昔には完成していました。
江戸末期に至るまで盛業でしたが、
明治以降、生活の洋風化や低い生産性、
あるいは新式製革法として
「植物タンニンなめし」や「クロムなめし」の技術の普及に伴い、
次第に衰微していきました。
特に昭和20年以降は、「クロムなめし」一色となり、
白鞣業者は激減してしまいました。
但し、「クロムなめし」などで使われる化学薬品は全く使わず、
塩と菜種油で揉み上げて天日干で仕上げるため、
人にも環境にも優しいのが特徴で、とても高い評価を受けています。