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イッピン「編んで丈夫においしく 長野・戸隠竹細工」

<番組紹介>
今回は長野県・戸隠の竹細工。
一流店も愛用する丈夫なそばざるや、
まろやかでおいしいコーヒーがいれられる
竹製のドリッパーなど、
驚きの製品を生む職人の編み技に迫る。
 
今回は、長野県・戸隠の竹細工。
20年以上も使えるという「そばざる」は
レストランガイドで一つ星をとる
そば屋さんが愛用するほど。
とにかく丈夫で使いやすいと評判だ。
他にも見る人をひきつけてやまない
美しい編み目模様の籠や、
一流のバリスタも舌をまくほど、
おいしいコーヒーがいれられる竹製のドリッパーなど
現代のライフスタイルに合った製品も続々。
職人達の驚きの「編みワザ」を
工芸品が大好きな三倉茉奈がリサーチ!
 
<初回放送日:平成29(2017)年12月12日>

 

1. 原山昭俊さんの「蕎麦ざる」(原山竹細工店)

 
長野県北部、標高1000mの山間にある戸隠は、
冬には大量の雪が降り積もります。
 
「戸隠竹細工」は、江戸時代の初め頃から
地域の人達の生活の中に始まり、
雪に覆われた戸隠の冬の手仕事として、
400年もの昔から、代々、その技術が継承されてきました。
今も30人程の職人さんがいらっしゃいます。
 


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老舗竹細工店「原山竹細工店」は
150年以上の歴史を持つ根曲がり竹細工の専門店です。
店内には竹で作られた製品がずらりと並んでいます。
 

 
四代目で職人の原山昭俊さんが採るのは、
「根曲がり竹」(チシマザサ)の1~2年目の若い竹です。
 
雪の重みに耐える「根曲がり竹」は、
標高の高い場所に自生しています。
原山さんが伐採するのは、9月中旬から11月中旬頃。
この日は100本程の竹を採取しました。
 

 
2種類の竹に乾燥させた竹だけでザルを作ります。
直径15㎜程の竹を4つに割るために、中央に鉈(なた)を入れ、
節のある所で力を入れて割いていきます。
「根曲がり竹」は他の竹と比べて硬いため、力加減が難しいそうです。
「ヒゴ引き」という鉄板には2㎜と4㎜の穴が開いていて、
この穴に割った竹を通します。
これを何度も繰り返して2種類の細い竹ヒゴを作ります。
中心部の縦横に規則的に編む「網代編み」で底編みし、
その外側では渦を巻くような文様を作り上げているのは
戸隠独特の「七回し」(ななまわし)
ザルに強度・弾力性をもたせる「七回し」には
1年目の細さ2mmの竹ヒゴを使用します。
 
丈夫で扱いにくい竹を2本一組にして広げ、
頑丈な骨組みにするために、体重を右足にかけ、
強い力で締め付けながら編んでいきます。
「七回し」でキレイなザルを作れる職人は一握りだそうです。
 
「網代編み」から伸びた網が丸く均等に広がり、
強い骨組みが出来ました。
最後は「ざる目編み」で、
2年目の竹で骨組みを上下交互に編み込みます。
仕上げに乾燥させた竹の輪を縁に取り付け、
竹の皮で巻いたら、全て手仕事で完成させました。
 
原山さんは、「蕎麦ざる」の他にも、
かばんかご、茶盆かごなど丈夫で実用的な竹細工を手作りしています。
店舗横の工房で簡単な竹細工の体験も出来ます。
 

 
原山竹細工店
  • 住所:〒381-4101
       長野県長野市戸隠3393
  • 電話:026-254-2098
 
 
 

2.木下晨進さんの「楕円碗籠」(戸隠竹細工センター)

 
戸隠では、現代のライフスタイルに合う
オシャレな竹細工も誕生しています。
 
戸隠産の竹を使用した木下晨進さんが作る
幾何学模様が美しい楕円形の籠は、
しっかりとした安定感と美しい編み目模様で、
手提げつきはマガジンラックにもなりますし、
小ぶりのものはパンや果物を入れるとテーブルにもなります。
 
木下晨進さんが使うのは、1年目のしなやかな竹です。
6本の竹を左右斜め横に組み合わせて、六角形の形にします。
リズムに乗って一気に編み込み、
20分程で280個もの六角形が出来ました。
籠の縁のところで余った竹を折り返したら、
編み込む「返し編み」の技法で編んでいきます。
 
戸隠竹細工の良さを多くの人に知ってもらいたい、
そんな木下さんの思いが込められた竹籠です。
 

 
  • 住所:〒381-4101
       長野県長野市戸隠3694
  • 電話:026-254-2947
 
 

3.井上栄一さんの「コーヒードリッパー」(井上竹細工)


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新発想の竹細工が誕生に話題になっています。
竹で作った「コーヒードリッパー」です。
コーヒー抽出の世界大会「World Brewers Cup」で
アジア初の世界チャンピオンとなったバリスタの谷哲(かすや てつ)さんも
甘さをより感じやすい、酸味が苦手な人も飲みやすいとおっしゃいます。
 

tetsukasuya.com

 
竹で編まれた目の細かい「コーヒードリッパー」を作った
井上栄一さんは、竹細工職人になって40年のベテランです。
銀座の寿司屋から「茶こし」の製作を依頼されたことがきっかけで
生まれたんだそうです。
細かい茶葉は網目に詰まってしまうため、
茶こしと紙のフィルターをセットで使う必要があります。
このことは、同様にフィルターを使う
「コーヒードリッパー」にも応用出来るのでは?と思い立ち、
蕎麦ザルの技術を駆使して、
1年がかりで「竹のドリッパー」を商品化しました。
 
 
「コーヒードリッパー」の網目は、
「蕎麦ザル」の網目以上に先端部分が細かいため、
材料の選定に一番気を使いました。
井上さんが選んだのは、
30年前に先代が選定した「根曲がり竹」です。
竹独特の香りが抜けてしまっているので、
コーヒーの香りを邪魔しないと考えました。
 
井上さんは古い竹と新しい竹を使い分けて、
底から編み進めていきます。
最初のこの部分が一番難しいとおっしゃいます。
竹ヒゴを1.5㎜という極細に削ります。
井上さんは編みながら爪の先を使って、竹をしっかり押し込み、
少しでも緩んでいるところがないかチェック。
最後に丈夫な縁をつけたら、完成です。
 
緻密に整えられた網目には、
コーヒーの味を変える秘密があります。
ドリッパーの内側には「リブ」と呼ばれる溝があることで、
ペーパーがドリッパーに密着せずに、
お湯を注ぐとコーヒーはこの隙間を通ってカップに落ちます。
 
竹細工のドリッパーは網目がリブの役割を果たしてくれます。
しかも、網目が非常に細かいため、
コーヒーが少しずつ染み出し、
普通のドリッパーよりゆっくりと落ちます。
時間をかけて抽出することで甘みが増し、
渋味や雑味のない、まろやかな味になるのです。
 
  • 住所:〒381-4101
       長野県長野市戸隠3416
  • 電話:026-254-2181
 
 

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