<番組紹介>
気軽にドリップコーヒーが楽しめる、
備前焼のコーヒードリッパーが人気だ。
釉薬を使わないすっきりした表情や、
炎を操ることで生まれる独特の模様を生み出す技をリサーチ。
ひとりでも気軽にドリップコーヒーを楽しめる、
備前焼のコーヒードリッパーが人気だ。
すっきりとしたデザインは、
何年もかけて独自の土味を追求したもの。
釉薬も絵付けも施さない備前焼では、
土と炎の力だけでさまざまな表情の器を生み出してきた。
炎を操り美しい花器を作る技や、
伝統を守って緋色(ひいろ)の線模様を描く作家も紹介。
飾り気のない器に秘められた作家たちの技と情熱を、
女優の白石美帆さんがリサーチする。
<初回放送日:平成29(2017)年10月3日 >
1.1人用備前焼コーヒードリッパー 「nagom」(ナゴム)(鳴瀧窯)
「鳴瀧窯」の安藤騎虎(あんどう きこ)さんは横浜出身。
23歳の時に備前市にやって来て、
研修センターで2年、窯元で5年の修業を経て、
平成20(2008)年独立、窯を構えました。
窯の裏山に雨が降ると出来る滝を
地元の人達は「鳴瀧」と呼んでいるのですが、
以前の窯主が名付けていたものを引き継ぎました。
尾形乾山の「鳴瀧窯」にもあやかっているそうです。
備前焼は薪窯で焼くため、
入れる場所によって同じ形でも色合いの全く異なるものが生まれますが、
「narutaki」ではシンプルな焼け色で、主張し過ぎない器を心掛けていて、
食の器に特化しています。
安藤さんが製作した
一人でも気軽に、
仕事の合間にもサッと本格的なネルドリップの珈琲を楽しめる
コーヒードリッパーが人気です。
「心和む時間を」との思いを込めて、
「和む(nagom)」と名付けられました。
ネルで淹れたコーヒーは深い味わいで人気がありますが、
少し手間が掛かるのもまた事実。
ですが「nagom」は一人用の筒型のドリッパーセットなので
ネルで淹れた後も、
一番上の受け皿に置いてそのまますぐに飲むことが出来ます。
また、専用のアタッチメントもセットに含まれているため、
もう少し手軽にという方は
ペーパーフィルターで淹れることも出来ます!
安藤さんは、備前焼を日常に取り入れてもらいたいと
おっしゃっていました。
鳴瀧窯
- 住所:〒705-0023
岡山県備前市伊里中461 - 電話:0869-67-3328
2.窯変(宮尾昌宏さん)
釉薬も絵付けも施さない「備前焼」では、
土と炎の力だけで様々な表情の器を生み出してきました。
備前焼作家の宮尾昌宏さんも、
「窯変」を存分に味わえる作品を作っています。
宮尾さんは、昔ながらの「登り窯」を使用して、
降ってくる灰の量を調節するため置き方を工夫して、
1週間ほど掛けてじっくりと焼き上げています。
代表作は、窯変を存分に味わえる「堆線文花器」。
何色にも彩られた、見事なグラデーション模様になっています。
口元の不思議な色は灰がかかって生まれる「胡麻」と呼ばれるものです。
3.「緋襷」(伊勢崎 競さん)
伊勢崎 卓(たく)・紳(しん)・創(そう)・競(きょう)の四兄弟は、
岡山県重要無形文化財保持者・伊勢崎 陽山(いせざき ようざん)を祖父に、
岡山県重要無形文化財・伊勢崎 満(いせざき みつる)を父に、
そして叔父さんが、人間国宝の伊勢崎 淳さんという
「備前焼」の名門に育ちました。
長男の卓さんは、父の満氏に陶技を学び、
陶彫、細工物に優れた祖父の陽山さんの影響を色濃く受け継ぎ、
現代の細工物を備前焼で追求されています。
手の掛かる細工物を積極的に取り入れ、風趣ある造形が特徴的です。
次男の紳さんも、卓氏と同様に父、満さんから陶技を習得。
“伝統から創造へ”をテーマに
様々な焼成方法で備前焼の可能性を追求されています。
独創的な「銀三彩」(ぎんさんさい)に取り組まれています。
三男の創さんは、陶芸家・山下 譲治さんに師事し、
父の満さんからも薫陶を受けました。
備前焼本来の良さにこだわり、
“主張し過ぎず、使って用を生かす”がテーマだそうです。
そして四男の競さんは、陶芸家・柴岡 紘一さんに師事し、
父の満さんにも薫陶を受けました。
「穴窯」で焼成し、
「窯変」によって生み出される独特の侘びた景色、
まろやかなフォルムから静かな存在感が漂う作品を作られています。
今回のイッピンでは、四男の競さんに
美しい「緋襷」(ひだすき)の器作りを見せていただきました。
競さんが生み出す美しい緋襷の鮮やかな緋色は
岡山で採れる特別な土から生まれます。
その名は「観音土」。
鉄分や有機物が豊富で極上の器が作れるのですが、
砂や小石が複雑に混ざっているため、
土作りには大変な手間が掛かりますが
美しい模様が現れるのだそうです。
競さんは昔ながらの方法で土作りをしていきます。
機械を使わずに、足で踏み続けて均一にしていきます。
踏み終えた土から一つ一つ小石を取り除き、
土作り最後の工程で土の中の空気を抜いていく「菊練り」を行います。
そして稲藁と一緒に鉄分を多く含む観音土窯で焼いていきます。
備前で「緋襷」が生まれたのは、江戸時代です。
持ち運ぶために藁で覆った器を
うっかりそのまま焼いてしまったのが始まりでした。
窯から出してびっくり仰天。
器に美しい模様が現れていたのです。
稲藁に含まれるカリウムと鉄分が反応を起こして、
美しい模様になるんだそうです。
「現代風な作家を尊敬しますし、
どんどん新しいもの作っていって欲しいと思うんですけど、
僕は伝統的な仕事を、先人達がやってきたことを
自分の中で勉強しながら後世に伝えていけたらなっているような
使命感っていうかそれが僕の仕事なんじゃないかな」