<番組紹介>
闇の中で光るブレスレット。
災害時に救助にやってきた人に存在を知らせる。
組みひもの職人が開発した。
また、手描友禅の職人は、
デジタル技術で手わざの味わいを生かした。
江戸時代以来、
着物文化とともに発達した東京の組みひもと手描友禅。
いま、その技を生かし、新たな分野に挑戦している。
組みひも職人が開発したブレスレットは、闇の中で光る。
災害時、救助にやってきた人に、存在を知らせるのに役立つ。
また、友禅の職人は、
その繊細な手わざをデジタル技術を使った製品に生かした。
着物の需要が減る中、生き残りをかけて
新たな分野に活路を見出そうとする職人たちの
アイデアと工夫を追う。
<初回放送日:令和4年(2022)年4月29日>
1.「蛍組紐 お守りブレスレット」(龍工房)
令和3(2021)年の「防災の日」(9月1日)、
組紐の老舗工房「龍工房」は、
防災用品「蛍組紐 お守りブレスレット」を発表しました。
この蛍組紐には
「蓄光撚糸」(ちくこうねんし)が組み込んであるため、
日中の太陽や蛍光灯の光を貯めておけば、
夜間や暗所でも蛍のように優しくぼんやり光り、
居場所を確認することが出来、
アウトドアや夜間の外出、そして夜間災害などの際にも役立ちます。
長さは約35cm~40cmあるので、
腕に2回巻いてブレスレットとして、
またはネックレスとしても使うことが出来ます。
毎日使うことを考え、
片手で簡単につけ外しが出来る金具を独自開発。
ワンタッチで開閉出来、勝手に外れにくい構造になっています。
伝統的で落ち着いた色柄は
どんなファッションにもよく馴染むため、
毎日の生活でのさり気ないオシャレを演出してもくれるでしょう。
カラーは緑・朱・藍・銀、サイズもSとMがあります。
蓄光撚糸を組み込んだ組紐「蛍組紐 お守りブレスレット」は、
防災用品として蓄光撚糸を組紐に用いる提案を受け、
「龍工房」の龍工房の若き職人である三代目・福田隆太さんと
防災士の資格を持つプロダクトデザイナーの三島大世さんが
コラボレーションし、共に商品開発を進めました。
東京・日本橋にある「龍工房」は、
創業から131年の歴史を持つ日本最高峰の「江戸組紐」の工房です。
代表の福田隆さんは、
平成27(2015)年に東京都知事認定資格である「伝統工芸士」に、
令和元(2019)年に「現代の名工」に選ばれるなど、
その精緻な色柄が人々を魅了し、
着物を日常的に着る歌舞伎役者や落語家や茶道の家元など、
和装を愛する人々から絶大な支持を得ています。
中尊寺金色堂、藤原秀衡懸守 の紐などの
「古代紐」の復元にも取り組んでいます。
また、三代目・隆太さんは、
ブレスレットにステーショナリー、
傘、マスクバンドにストラップなど、
組紐の伝統的な技術を活かした
ユニークなものの開発にも携わっています。
キヤノンマーケティングジャパンと共同で開発した
『東京くみひもカメラストラップ』、
「ラグビーワールドカップ2019」の
組紐メダルテープや参加記念敷布製作、
フランスの老舗メゾンの依頼で、店舗ディスプレイ
「組紐のカーテン・ウインドウディスプレイ」を作製するなど、
幅広く活動しています。
「蛍組紐 お守りブレスレット」は、「角源氏組」で組まれた
よりスタイリッシュで男性的なイメージのブレスレットです。
実は「丸源氏組」「平源氏組」という組み方はこれまでもあったのですが、
「角源氏組」というのは存在していませんでした。
福田隆太さんが新たに考案した組み方なのです。
「角源氏組」は「中尊寺組」の流れを持ちます。
「中尊寺組」は権威の象徴として首から提げていた紐の一つで、
四角く角張った「角紐」であることが特徴です。
そこで、「角紐」ならではの形を追求して作ったのが「角源氏組」で、
開発には1年以上かかったそうです。
- 住所:〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町4−11 - 電話:03-3664-2031
2.デジタル友禅®プロジェクト「some-pri」シリーズ
(東京友禅の作家集団「そめもよう(somemoyou)」)
「そめもよう(somemoyou)」は、平成25(2013)年12月に、
東京都工芸染色協同組合「東京手描友禅」の青年部の仲間で作った
手描き友禅を中心とした、伝統工芸を受け継ぐ若手作家の集団です。
「もう少し手軽なセカンドラインがあった方が、
もっと多くのお客さまに喜んでいただけるのではないか」
「高額品をどう売ろうかと考えるよりも、
気軽に手に届く価格の商品を工夫して作った方がいい」と考え、
手描友禅をデジタル捺染(なっせん)で複製した
デジタル友禅「some-pri(そめぷり)」シリーズが始まりました。
手描きの作品との混同を避けることに、細かく注意を払っていて、
商品の棲み分けは明確にすること、
必ずロゴをプリントすること、
図案はデジタル専用のデザインを描くことを徹底しています。
一般的な「デジタル捺染」では
PCなどでデザインした図案をプリントしますが、
デジタル友禅「some-pri」では
手描きで染めた生地や図柄をスキャンしてデータ化し、
それを素材にしてリデザインしたものプリントをするという手法を
採用しています。
つまり、職人さんの手仕事部分の工程は全く変わりません。
<手描友禅の製作工程>
「下絵」→「糸目糊置き」→「地入れ」→
「色挿し」→「蒸し」→「伏せ糊」→
「地染め」→「水元」→「仕上げ」
<デジタル捺染の工程>
「デザイン」→「生地の前処理」→
「プリント」→「蒸し」→「水洗」→「仕上げ」
絹以外の手入れが簡単なポリエステル素材を使用することによって、
価格は手描きのおよそ5分の1から10分の1と安価で手に出来ます。
一方、今までなら作家には
作ったもの1枚に対して1枚分の収入しか発生しなかったところを、
複数枚制作販売出来るようになり、
同じ労働量で収入が増えるようになりました。
作家や小さな会社にとっては、
大量生産ではなく一点からの制作が可能ということ、
無駄な在庫を作って抱えなくてすむことも、大きなメリットです。
「東京手描友禅」は、ほとんどの工程をひとりで行うため、
一つ一つの技術を習熟することにとても時間が掛かります。
また、「実際に売る商品を作る」技術の向上のためには、
経験の積み重ねがとても重要なので、
たくさんの仕事をこなせる環境が必要です。
デジタルにより売上が増えたことで、
手描きの大作を作ろうという余裕も出てきているそうです。
自分の生活が苦しいと、
本当に良いものを作ることは出来ませんものね。
伝統工芸を産業として継続させていくためには、
この仕事で食べていける人を増やしていくことが必要です。
「
デジタル友禅」は、デジナ㈱さんとの共同開発商品です。
デジナ㈱は平成24(2012)年に創業しました。
「ゴフクヤサン・ドットコム」の生地プリントノウハウをベースに、
小ロットプリントに特化したテキスタイル専門の
デジタルプリントサービスを行っています。