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イッピン「伝統を支える技 ここにあり  佐賀・有田焼」

<番組紹介>
佐賀の有田焼は日本を代表する磁器の一つ。
華麗な絵付けが魅力だが、
専門の職人による分業体制で作られる。
器の形を決める職人、素地を作る職人、
それぞれの技を見つめる。
 
佐賀県の有田焼。日本を代表する磁器の一つだ。
その魅力は、なんといっても華麗な絵付けだが、
実は完成までに
様々な職人がかかわる分業体制で作られている。
器の形を決める型職人は、
独自の創意工夫で、より優美で繊細な形を追求する。
また、絵付けを行う際の
キャンバスの役割を果たすのが素地だが、素地職人は、
絵付け職人が滑らかに絵筆を使えるように、
素地の表面を整える。
それぞれの段階で発揮される、最高度の技に迫る。
 
<初回放送日:令和4(2022)年3月4日>
 
 
概要

 
豊かな色彩が特徴の「有田焼」は、
江戸時代は高級品として珍重され、
海外にも伝わりました。
 
 
「有田焼」は、昔から伝統的に各工程が専門の職人による
「分業制」で造られている焼き物です。
型作りに始まり、生地作り、焼成、絵付けなど多くの工程を
プロフェッショナルの仕事の積み重ねで造られているのです。
 
 
この分業制のラインの中では、
自分達が作ったものが次に渡った先のことを考えて作ることが、
有田で仕事をする上で実は非常に大事な部分だそうです。
 

 
「型屋」だったら生地屋さんや発注を受けた窯元や商社に、
「生地屋」さんだったら
窯元や釉薬などをかける職人さんたちにとって、
使いやすくいいものが生まれるように渡していく。
そのスピリットこそが、有田から世界に誇る高い技術が
400年の間、途切れることなく生み出していった由縁でしょう。
 
今右衛門窯


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日本が誇る「有田焼」の
「三大窯元」(柿右衛門・源右衛門・今右衛門)の一角をなす
「今右衛門窯」は370年の歴史と伝統を誇る窯元です。
 

 
今泉今右衛門いまいずみいまえもん家」は、
 江戸時代は鍋島藩による将軍家への献上品として造られた
「色鍋島」の御用赤絵師を継承した家系です。
一子相伝の秘法である「赤絵」の調合技術を持ち、
国の重要無形文化財保持団体として認定を受けています。
 

 
現在の当主、十四代・今泉今右衛門さんは、
平成26(2014)年、陶芸分野史上最年少で
国の重要無形文化財(人間国宝)に認定された名工で、
襲名以来「墨はじき」という技法を駆使した作品で、
現代の色鍋島の品格と風格を求めています。
 
  • 住所:〒844-0006 
       佐賀県西松浦郡
       有田町赤絵町2-1-15
  • 電話:0955-42-3101
 
 

1.素地作り(古賀隆さん)

 
日本最古の磁器として知られる有田焼。
ひとつの「有田焼」の器が仕上がるまでには、
成形、素焼き、絵付け、施釉、本焼成と
多くの職人が関わっています。
「成形」はその最初の工程で、
それを担うのが「型屋」と「生地屋」です。
「型屋と生地屋の腕が、有田焼の出来を決める」
とさえ言われるほど、重要な工程です。
十四代・今泉今右衛門さんも
「有田焼」では「素地づくり」が大きなウェイトを占めていると
おっしゃっています。
 
 
有田町のお隣の武雄市には「素地作り」専門工房があり、
7人の職人が年間30万の素地を出荷しています。
「素地」と書いて「きじ」と読み、器の形のことです。
大きく分けて「ろくろ成形」と「鋳込み成形」の2種類があります。
 
職人歴32年の古賀隆さんは、まず機械をセットしたら、
ヘラが取り付いたアームの角度などを慎重に調整し、位置を決め、
それから回っている型の中に材料の陶土を入れて、
アームを下ろして型の中に薄い生地を成形していきます。
素地は焼成されると約13%~15%縮みます。
ですから、縮むことを想定して
大きさを決めて成形していかなくてはいけません。
そして、表面を滑らかにして絵の具が乗りやすいようにしていきます。
 
古賀さんは、素地職人の使命とは、
「完璧な素地にし、絵付け職人へバトンタッチすること」
とおっしゃいます。
そして、
「あそこに頼んだら、なんとかしてくれる。
 何でも対応出来るような技術を身につけたい」
ともおっしゃっていました。
 

十四代・今右衛門さんの幼馴染で、親友でもある
絵付け職人、李荘窯の寺内信ニさんは、
古賀さんが造った素地に長年、絵付けを施してきました。
素地が良いとテンションが上がるとおっしゃっていました。
 

 
古賀さんは自らの代で工房を閉じることになると
覚悟していたそうですが、
娘婿の山田健太郎さんが後を継ぎたいと5年前に弟子入りし、
型から素地を抜く作業などを行っています。
 
型から素地を抜く際、不用意に触ると
凹んだり、指の痕がついたりしてしまいます。
義父さんの古賀さんに、
「どうやって外すかを考えるように」と言われた健太郎さん。
型の底部に板を当てて素早くひっくり返せば、
課題は解決出来ると分かったそうです。
 
こうして、健太郎さんが任せてもらえる作業のレベルも
徐々に上がってきています。
 
 

2.型づくり(山辰製型所・山口幸彦さん)


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「素地づくり」には「型」が欠かせません。
「型屋」の仕事はまず「原型」を起こすところから始まります。
窯元と相談しながら、
磁器は焼くと1割以上縮むという性質があることから、
実際に出来上がる商品より約13%~15%大きい「原型」を完成させたら、
それを元に石膏で「型」を作っていきます。
この「型」によって、高級な商品を大量生産することが出来るのです。
 
山辰製型所の山口幸彦さんは、
クライアントと図面や要望をもとに打ち合わせをしますが、
図面は完成品をイメージしたものです。
磁器は焼くと1割以上縮むという性質を念頭に置き、
石膏を少しずつ削って型を作っていきます。
そして原型が出来たら、
型をとって素地職人へバトンタッチします。
 
山辰製型所は、シンプルな器の型よりも、
立体や人形のなど複雑な型を得意としていて、
有田焼の器の型だけではなく、
国内外の様々な企業やアーティストからの発注も多いそうです。
最近では、人気画家である小松美羽さんの絵から、
狛犬に起こして欲しいと発注され、
その有田焼の狛犬は、なんと「大英博物館」に所蔵されています。

 
 

3.陶磁器クリエーター・二位関めぐみさん

「染付け」という技法の表現と可能性を追い求めて、
陶磁器アクセサリーを作ってきた二位関めぐみさんは、
形の細かい表現が出来る石膏型に可能性を感じ、
6年前から山口さんのもとで型づくりを学んでいます。
二位関さんは、表現の幅が広がったとおっしゃいます。
 
令和3(2021)年からは、「アル。」シリーズを展開。
石膏で型を作り、磁器の原型から曲線や楕円を多用し、
釉薬をかけずに土の白さと素の美しさを活かした
オリジナルの作品を発表しています。
 
二位関さんは、教えてもらった技術を
後世に繋げていきたいとおっしゃっていました。
 
 

-おまけ-

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