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美の壺スペシャル 「庭園」

<番組紹介>
フランス人研究者が
「風の谷のナウシカ」の世界!と絶賛する庭とは?!
 ▽嵐の写真集などで人気の写真家・藤代冥砂さんの“推し庭”
 ▽巨匠・重森三玲が手がけた空前絶後の「枯山水」
 ▽世界で活躍する禅僧・枡野俊明さんが説く
  「庭との向き合い方」
 ▽京都の老舗料亭で料理と味わう「茶庭」
 ▽京町家で継承されてきた「坪庭」と伝統行事
 ▽近隣住民を繋げる個人宅の庭
 ▽子どもの五感を育てる「園庭」
 ▽草刈正雄邸には“庭師”橋爪功が!!
<初回放送日:令和4(2022)年2月12日>
 
 

美の壺1.体で感じる

 

無鄰菴(京都産業大学准教授 マレス・エマニュエルさん)


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フランス出身のマレス・エマニュエルさんは
日本建築史・日本庭園史をする京都産業大学准教授です。
著書に『縁側から庭へフランスからの京都回顧録』があり、
発表されると庭好きな人々に話題となりました。
 
 
マレス・エマニュエルさんが好きな庭は、
『風の谷のナウシカ』に通じるある庭。
京都にある国の名勝に指定された「無鄰菴」(むりんあん)です。
無鄰菴は、明治27~29(1894~1896)年に造営された
明治・大正時代の政治家 山縣有朋の別荘です。
こちらの庭園は、七代目小川治兵衛により作庭された
近代日本庭園の傑作です。
それまでの池を海に、岩を島に見立てる象徴主義的な庭園から、
里山の風景や小川そのもののような躍動的な流れをもつ
自然主義的な新しい庭園観により造営されました。
 
小さな飛び石を渡り外を眺めると
奥行を感じさせる東山の景色が解放感を感じさせます。
沢飛び石を配し、
背の高い木々や地面には様々な種類の苔が植えられています。
奥へ進めば進むほど山の中へ誘われているような雰囲気です。
 


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ナウシカが森の腐海の中へ入り、王蟲オームの抜け殻を見つけ
「きれい」と感じるものに通じるのだそうです。
庭との一体を楽しんでいるマレスさんでした。
 
  • 住所:〒606-8437
       京都府京都市左京区南禅寺草川町31
  • 電話:075-771-3909
 
 

瑞泉院(写真家・藤代冥砂さん)

嵐をはじめ俳優やアイドルの写真集を数多く手掛けてきた
人気写真家の藤代冥砂(ふじしろめいさ)さんは大の庭好き。
子供の頃から名所・旧跡に訪れるのが好きで、
全国各地、いろんな庭へ訪れました。
“入り込んで”庭を愛でていらっしゃいます。
 
藤代さんのお気に入りの作庭家は夢窓疎石(夢窓国師)。
鎌倉時代末から室町時代初期にかけての臨済宗の禅僧です。
朝廷から最高の僧侶に贈られる「国師」という称号を持ち、
尊敬の念を込めて「夢窓国師」と呼ばれることも多いです。
そして、自らを「石立僧」(いしだてそう)として、
禅宗庭園の基礎を作りました。
 
<夢窓疎石設計による庭園一覧>
  • 西芳寺庭園(京都市西京区) 世界遺産、国の特別名勝
  • 天龍寺庭園(京都市右京区) 世界遺産、国の特別名勝
  • 永保寺庭園(岐阜県多治見市)国の名勝
  • 瑞泉寺庭園(神奈川県鎌倉市)国の名勝
  • 竹林寺庭園(高知県高知市) 国の名勝
  • 恵林寺庭園(山梨県甲州市) 国の名勝
  • 覚林房庭園(山梨県身延町) 町指定文化財ほか
 
神奈川県鎌倉市にある藤代さんのお気に入りの庭園がある
瑞泉院(ずいせんいん)は、
夢窓国師によって鎌倉時代末期の嘉暦2(1327)年に創建されました。
こちらの庭は大きな岩でできていて、荒々しさが目立ちます。
平地が少なく、山がすぐ近くに迫ってくる
鎌倉の地形が生かされた庭です。
 
座禅を組み、池を見ながら瞑想。
孤独になる時間、一人になって庭と対峙することで、
自分を感じ、「枯れ葉になってみる」「水になってみる」など
対象物に入り込んで、その気持ちになって撮影するのが、
藤代さん独自の撮影方法だそうです。
 
  • 住所:〒248-0002
       神奈川県鎌倉市二階堂710
  • 電話:0467-22-1191
 
 

美の壺2.時代を映し心を伝える

 

日本庭園のはじまり

日本における庭の歴史は、『日本書紀』まで遡ります。
蘇我馬子が庭に池を掘り中の島を築いたことから始まったと言われ、
平安初期には、京都・大覚寺の池泉式庭園に代表されるような
「貴族の邸宅に池を中心とした庭」を築くようになりますが、
平安中期なると、天災、飢饉に見舞われたことから
極楽浄土を求めるようになり、極楽浄土を島に見立てた
宇治・平等院鳳凰堂のような「浄土式庭園」へと
時代の流れと共に変遷していきます。
そして庭園は、禅の思想を強く受け、
日本で独自の発展を遂げた「枯山水」のように
日本独自のものへと発展していきました。
 
 

京都市左京区実相院門跡「こころのお庭」(作庭家 小川勝章さん)

 
京都岩倉にある「実相院門跡」は、
新緑の頃は「床みどり」、紅葉の頃は「床もみじ」と、
庭の木々が床に移る景色で有名なお寺です。
 
ここに、新たに生まれた枯山水の庭「こころのお庭」があります。
作ったのは、作庭家の小川勝章さんです。
小川勝章さんは7代目小川治兵衛を祖先に持ち、
新たな作庭に加え、
歴代の手掛けた庭園の作庭・修景・維持も行っています。
 
『こころのお庭』は、市民参加で2年間かけて完成させたものです。
以前の庭は、白川砂に大きな石が置かれたシンプルな石庭でした。
石や砂だけでなく木材のオブジェも作り、山並みにも見立て、
立体的な庭・枯山水を目指しました。
白い砂は海や波を見立てたものですが、
同時期にあった東日本大震災が重なったため、
控えた方がよいのかと葛藤されたそうです。
作業の中心は、
苔を張ったり、シランという植物を植えたりというもの。
これは、200人以上の一般の人の手により行われました。
デコボコしていますがそれも個性的です。
庭と人との距離が縮まり、
自然の尊さも新しい枯山水と共に今に伝えました。
 
  • 住所:〒606-0017
       京都府京都市左京区岩倉上蔵町121
  • 電話:075-781-5464
 
 

「永遠のモダン」(作庭家・重森千靑さん)

昭和を代表する庭園研究家であり作庭家でもあった
重森三玲(しげもり みれい)を祖父に持つ、
作庭家・重森千靑(しげもりちさお)さんは、
京都の寺を中心に、
お祖父様同様、独創的な枯山水庭園を手掛けています。
 
重森三玲(しげもり みれい)が50代の頃作庭した枯山水庭園が
大阪府岸和田市にあります。
昭和28(1953)年に作庭された岸和田城庭園「八陣の庭」です。
天守閣へ登ると庭全体が一望出来ます。
三玲の目指した庭への思いを、重森千靑さんが語って下さいました。
 
「八陣の庭」は、
上・中・下3段の基壇の中央に、大小の石組みが配置されていて、
これを中心に8つの石組みが円形に配置されています。
これは、『三国志』の英雄・諸葛孔明しょかつこうめい
「八陣法」をイメージしたものだそうです。
これらの石組みは、地上からは360度
どの角度からも鑑賞することが出来るようになっています。
水平方向の視点だけでなく、
垂直方向に展開する多様な視点を意図した本庭園は
独創的で、国内外で注目されてきました。
これは飛行機の発展も見据えて、
上から見るという仕掛けをしたということだそうです。
進歩的な考えの持ち主です。
三玲は、生前、永遠のモダンを作り出すのが芸術品だと語っていたそうです。
 
平成26(2014)年10月6日付けで国の名勝に指定されました。
 
 

美の壺.木村多江さん お庭探訪

 

「六義園(りくぎえん)」

木村多江さんがお気に入りの庭は、
東京都文京区にある「六義園」(りくぎえん)です。
木村さんは高校生の頃、
お母様、祖父様と一緒に初めて訪れたそうで、
以来、事あるごとに訪ねているそうです。
 
「六義園」は五代将軍・徳川綱吉の側用人であった柳澤吉保が
元禄8(1695)年に賜った地に下屋敷を造り、
そこに7年の歳月をかけて造成した大名庭園です。
江戸初期に完成した桂離宮の庭園の様式を採用した
「回遊式築山泉水庭園」で、
元禄時代の明るく大らかな気風を反映した江戸大名庭園の
代表的なものです。
 
庭園の名称の「六義」は、
吉保の文学的造詣の深さを反映したものです。
古代Chinaで成立した『詩経』の詩型と表現法による6つの分類が、
日本でも『古今和歌集』の序に引用されて、和歌を6分類しています。
この和歌の六義にのっとって造園したのだそうです。
妹山・背山は、会えない男女の間柄を庭に表現したものです。
 
 

建功寺(禅僧・庭園デザイナー 枡野俊明さん)


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続いて木村さんが訪れたのは、神奈川県横浜市にある禅寺建功寺です。
18代目僧侶・桝野俊明(ますのしゅんみょう)さんは、
僧侶であると同時に、庭園デザイナーでもあります。
高校時代、寺の庭の改修工事を行われたのがきっかけで
庭師に弟子入りをし、
以来、僧侶と庭園デザイナーの二足の草鞋を履いて活動しています。
国内の他、シンガポール、アメリカ、カナダなど
海外にも活動の範囲は広がっています。
 
桝野さんは、石を主体に、禅の精神を通じた庭園のデザインをしています。
枡野さんが庭園デザイナーの道に進んだきっかけとなった庭
「釈尊成道の庭」は37年前に改修をし、
2年前に枡野さんにより手が加えられました。
 

禅の心を体験

木村さんも、桝野さんにご指導いただきながら
ミニチュアの庭づくりに挑戦しました。
座禅を組み、庭に入れ込む石の「石心」、植える「木心」を探りながら
庭づくりが始まりました。
まず、さざれ石を選んでメインの岩組を考えます。
そして熊手で砂紋を作り、水を表現します。
コケや木を加え整えていき・・・
木村さんオリジナルの庭が完成しました。
 
「ステキ!自分でやったのに感動しちゃった!」と
木村さん、思わず笑顔がこぼれます。
 
庭園づくりは、自分の心を映す鏡、
自分に向き合い確認する時間なのだと桝野さんに教えていただきました。
 
 

美の壺3.守り受け継ぐ

 

茶の湯文化を引き継ぐ「茶庭」
(京都市左京区の懐石老舗「瓢亭」料亭主人・髙橋英一さん)


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京都は茶の湯文化が発展した町です。
江戸時代初期より400年以上の歴史がある
懐石の老舗料亭「瓢亭」です。
創業当時から姿を変えず受け継がれてきた
「茶庭」を紹介していただきました。
 
茶の湯文化から生まれた「茶庭」は
元々は茶室に入るための通り道で「路地」とも呼ばれています。
庭だけれど、飛び石を歩き進めると待合の腰掛けがあり、
更に蹲(つくばい)や灯篭が並び、
日常から別の世界に入っていくことを演出するための場所でもあります。
琵琶湖疎水を引き込んだせせらぎも山里にいるような風情を演出しています。
 
14代目主人の髙橋英一さんは、
お客様を迎えるため、毎日庭の手入れをしています。
苔の手入れも怠らず、
ゼニコケをピンセットで採るなど余念がありません。
 
こちらで秋の旬たっぷりの茶懐石をいただきました。
髙橋さんは、庭の季節と料理の季節感を共に楽しんでいただきたい。
落ち着いた雰囲気で非日常を演出したいと語ってくださいました。
 
 

京町家「坪庭」(京都市左京区の京町家当主・田中峰子さん)


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京町家は、一般的に敷地形状は、
「うなぎの寝床」と言われるように奥行が長く、
間取りには通り庭、続き間、坪庭、奥庭と続く職住一体型の建物です。
 
国の登録有形文化財として一般公開されている京町家へおじゃましました。
京都市上京区にある西陣織の呉服問屋「冨田屋」の「西陣くらしの美術館」。
玄関へ入ると「坪庭」が迎えてくれます。
坪庭は、客人を出迎えるための庭です。
明かりや風通しを取り入れといった役割もあります。
13代目当主の田中峰子さんに、お屋敷の見所を紹介していただきました。
 
坪庭には、枯れない植栽を植えるそうです。
「冨田屋」は、能の金剛流のパトロンでもあったそうで、
坪庭には松を植えて、坪庭に面した部屋を稽古事や能を舞うのに使って、
能舞台の背景としたそうです。
 
 

美の壺4.守り受け継ぐ

 

個人の庭をリフォーム(造園家・藤原駿朗さん)

神奈川県小田原市には、注目を集める個人宅の庭があります。
このお宅のご主人山田純さんは、定年後、使っていない庭を見直しました。
中央にテラスを置いて食事や演奏会を行う空間にし、
誰もが気持ちの良い居場所とし、お隣さんとの行き来をしやすくしました。
子供達やお父さん、お母さん、子育てに疲れている人に
再構築をするシーンに使って欲しいと思ったそうです。
 
山田さんの思いを形にしたのは、造園家の藤原駿朗さん。
お隣の藤沢光さんは、最初は、戸惑いはあったものの、
今ではお友達が遊びに来ると、この庭を利用するそうです。
山田さんは、今後もコミュニティの場として活用してもらいたいと
願っています。
 

子どもための園庭 幼稚園 園長 亀ヶ谷忠宏さん

神奈川県川崎市の宮前幼稚園は、10年前に園庭の改修をしました。
朝、子供達がやってくると、まず園庭へ向かいます。
園庭には植物の木々が植えられていて、
四季を感じられるようになっています。
 
園長の亀ヶ谷忠宏さんは、
庭を通して子どもを育んでいきたいという思いがあります。
「幼稚園」を意味する「Kindergarten(キンダーガーテン)」は、
「子ども」と「庭」を組み合わせた言葉になります。
庭があってこその幼稚園生活だと亀ヶ谷さんは考えています。
亀ヶ谷さんは、ご自分が幼い頃の楽しかった体験、
身体を動かしたり、虫や植物と一緒に遊んだりといったことを
現代の子供達にも伝えたいと思ったそうです。
そしてこのような体験を通して成長して欲しい、
五感を通して多種多様の感覚を刺激する環境が大切なのだと
語って下さいました。
 

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