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美の壺「風雪に生きる 東北の温泉」<File 365>

<番組紹介>
冬の東北、一面の雪景色に彩られた山あいに、
今日もモクモクと湯気が立ち上る。
美しく温かい、東北の温泉の最高の姿を集めて東北縦断!
 
 ▽福島・吾妻山から湧き出る源泉を、
  淡い空色の「にごり湯」に変える、
  温泉の魔法使い・湯守の技とは?
 ▽長い年月をかけて「湯舟」をしっとり輝かせる
  高級木材・青森ヒバの秘密とは?
 ▽岩手のわびた「湯治場」には風雪に耐えながら
  湯とともに暮らしてきた、
  おおらかな日本の原風景がありました。
初回放送:平成29(2017)年3月3日
 
 
 
 
 

美の壺1.湯は 大地の色

 

東北屈指の名湯・鳴子温泉(宮城県大崎市)

 
鳴子温泉郷は1000年を超える歴史を持っています。
温泉の発見は承和4(837)年。
鳥谷ヶ森(鳴子火山)の大爆発により熱湯が噴出したと言われていて、
その時の轟音から、
村人が「鳴郷の湯」と名付けたとも伝えられています。
 
東北屈指の名湯・鳴子温泉郷には370以上もの源泉があり、
バリエーション豊富なにごり湯を楽しむことが出来ます。
例えば、侘びた佇まいが魅力の「高友旅館」では、
暗緑に濁った「黒湯」(くろゆ)と呼ばれる、
鳴子温泉郷唯一の鉄天然ラジウム泉が人気です。
高友旅館」には他にも、
微発泡の炭酸泉や美肌効果の重曹泉などがあります。
 
 
鳴子温泉にはその他にも、
硫黄を含んだ白いにごり湯や萌黄色のにごり湯など、
成分・温度のわずかな違いによって、
多種多様なお湯があります。
 
旧鳴子町温泉事業所の猪俣秀雄(いのまた ひでお)さんによると、
鳴子温泉郷は火山の温泉のため、
岩からいろいろな成分が溶け出しているのだとか。
大自然が生んだ温泉だからこそ、
心も体も芯から癒してくれるでしょう。
 
 

高湯温泉・吾妻屋(福島県福島市)

 
福島県福島市にある「高湯温泉」。
泉質は酸性・含硫黄(硫黄泉)。
にきび、しもやけ、やけど、きりきず、
婦人病、不妊症、水虫、あせも、胃腸病、アトピー性皮膚炎などに
効果のあるお湯です。
 
高湯には、自然湧出の源泉が10ヶ所ほどあり、
各旅館では落差により引き湯し、そのまま湯船より溢れさせている、
掛け流し方式を採用しています。
 
吾妻屋の旅館主人、遠藤淳一(えんどうじゅんいち)さんも、
湯を最高の状態に保つ「湯守」(ゆもり)でもあります。
 


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温泉の適度なにごり具合を作るために、
二日に一度は山に入って湯の状態を確認するのだそうです。
源泉は成分が強過ぎるため、
「湯樋」(ゆどい)という作業を通して、浴槽のお湯の力を調整します。
 
  • 住所:〒960-2261
       福島県福島市町庭坂字高湯33
  • 電話:024-591-1121
 
 

美の壺2.耐え抜いて 輝く

 

酸ヶ湯温泉・名物千人風呂(青森県八甲田山)


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青森市中心部から八甲田山麓を目指すこと約1時間、
標高925mの場所に「酸ヶ湯温泉」(すかゆおんせん)はあります。
 
 
今から約300年前の1684年、
地元の狩人が手負いの鹿を追って山へ入っていたところ、
その鹿が岩山を駆け上がり、元気に逃げていく姿を見つけました。
傷を負っていたはずの鹿を不思議に思い、
辺りを探索したところ、温泉が湧いているのを発見。
その後、その温泉に薬効があることを知ったことから
「鹿湯」(しかゆ)と名付けられましたが、
酸性の強い湯であったことから、
それがいつしか変化して「酸ヶ湯」(すかゆ)となりました。
昭和29(1954)年、優れた環境が整う温泉地として、
「国民保養温泉地」第一号に指定されました。
 

 
湯はその名の通り強酸性の源泉が特徴。
リュウマチ、神経痛、胃腸病などの効果改善が期待出来、
現在でも、湯治を目的にした利用者が訪れる名湯です。
 
酸ヶ湯温泉の名物は何と言っても、
混浴の大浴場「ヒバ千人風呂」です。
160畳もの浴室には、
熱の湯、冷の湯、四分六分の湯、湯滝など5つの浴槽があり、
柱ひとつないため、開放的な気分を味わうことが出来ます。
 
浴槽をはじめとして、
湯屋全体に使われている木は地元特産の「青森ヒバ」です。
油分が多く、使えば使うほどに味わいが増して
飴色に輝く高級な木材です。
「ここの泉質が強酸性でコンクリートも使えない」と
支配人の間山良輔(まやま りょうすけ)さんが
おっしゃっていました。
長持ちさせるには、ヒバの木しかないのだとか。
 
  • 住所:〒030-0197
       青森県青森市荒川南荒川山国有林
       酸湯沢50番地
  • お電話でのご予約・お問い合わせ
       017-738-6400
       [受付時間:7:00〜21:00]
 
<参考>獄温泉
こちらは、青森県弘前市にある「獄温泉」。
こちらも、青森ヒバの浴槽が名物です。




 
 

青森ヒバ(元大畑営林署・柴田円治さん)

青森県むつ市大畑町に在住の柴田円治(しばた えんじ)さんは、
昭和28年から平成30年までの約65年間、
大畑営林署の職員として、青森ヒバの林を守り続けてきました。
現在は、かご職人として
青森ヒバの端材を利用してかご作りを行っています。
 

 
ヒバの最大の魅力は、
日本の木材きってと言われる、とても精密で美しい木目。
雪深い山の中で厳しい風雪にさらされ、
杉の3倍もの時間をかけてゆっくりと成長していくため、
そのような木が育つには、
200年、300年もの時間が掛かると言われています。
青森ヒバの木材の強度も、
このような長い下積みが関係していると柴田さんは語ります。
 

 
ヒバを将来に渡り持続的に利用するためには、
大きく育った木を伐るかたわらで、
次の世代、その次の世代が育つような林にすることが理想的です。
美しいヒバ林が出来るまでには、
途方もない時間と携わる人の想いが込められているのです。
 
長い歴史が感じられる温かみのある木材が、
人々の憩いの場である湯屋を支えているのですね。
 
そして柴田さんは今、製材時に出る端材を利用した
「籠」や籠に持ち手を付けた「トートバッグ」、
衣装ケースにも使える行李(こうり)などを作っています。
その技術は「日本の籠の故郷」と称される
岩手県一戸町の鳥越出身の父親の手業を見て
身につけたものだそうです。
 
 

美の壺3.ニッポンを探しに

 

大沢温泉(岩手県花巻市)

 
「湯治場」(とうじば)とは、
湯治を目的に長期滞留する温泉地のことです。
 
岩手県花巻市の花巻温泉郷「大沢温泉」もその一つ。
その歴史はなんと200年!
かつては農民が農閑期の骨休みに利用していたのだそうです。
 
大沢温泉は、「湯治部」「旅館部」と分かれていて、
「湯治部」は自炊しながら安い料金で長期滞在が出来ます。
 
 
 

東北の温泉地の写真を取り続ける(写真家の北井一夫さん)

 
写真家の北井一夫(きたいかずお)さんは、
戦後日本を代表する写真家です。
「第1回 木村伊兵衛写真賞」を受賞して以来、
現在まで40年もの間、
東北の温泉地の写真を取り続けています。
 
木村伊兵衛賞を受賞した『村へ』は、
アサヒカメラで連載した日本の農村を切り取った作品で、
後に写真集としてまとめられています。
失われつつある日本の原風景をモノクロで表現した作品は、
高い評価を受けました。
 
「湯治場は変わんないところがいいよね」と北井さん。
漆喰の壁があって、
畳の部屋で「寒いな」とか言いながらこたつあたっていると、
日本的な感じがするとおっしゃいます。
 
湯治には、他にもいろいろな方がいらっしゃいます。
岩手でリンゴ農家を営む石田さんご夫婦も
湯治歴が何と60年にも及ぶの常連さんです。
浜から来た方がいらっしゃると、魚をもらえるそうで、
石田さんは代わりに沢山のリンゴを持っていくのだとか。
人と人との優しい繋がりが生まれる湯治場です。
 

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