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美の壺「癒やしのあかり ランプ」<File530>

<番組紹介>
見れば必ず癒やされる!
あたたかく、なつかしく、美しいランプの数々
 
 ▽140個のランプのあかりだけで過ごす
  青森の秘湯のぜいたくなひととき
 ▽明治の職人が丹精込めて作った絶品ランプ・
  粋な楽しみ方
 ▽芸人ヒロシさんが
  キャンプで愛用するランプを特別公開!
 ▽最後の「ハリケーンランプ」職人・感動秘話
 ▽音楽ユニットEGO-WRAPPIN’と
  「ハンドランプ」
 ▽幻想的!阿蘇の温泉地の絶景イルミネーション!
 
<初回放送日:令和3(2021)年3月12日 >
 
柔らかな光を放つランプ。
灯油を燃料に、ガラスのほやで覆われたランプは、
周囲をふんわりと包み込み、
明治時代より人々を魅了してきました。
更に時代の変化とともに、
電気を使ったものなど、様々なランプが登場。
空間を彩るあかりとしても楽しまれています。
今回の美の壺は、
人々を優しく包み込む”癒やしの美”を堪能することが出来ます。
 

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美の壺1.心和ませる 火のぬくもり

 

ランプの宿 青荷温泉」(青森県石黒市)


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青森県石黒市の人里離れた山奥には、
ランプならではの魅力を味わえる、とっておきの宿があります。
昭和4(1929)年開湯。90年の歴史がある秘境の温泉です。
 

 
ここは電気の通らない場所にあるため、
夜は、非常灯以外は、
全て灯油ランプのほの暗い明かりしかありません。
 
灯油ランプの管理をするのは、笹村文明さんです。
灯油ランプは、温かみのあるオレンジ色の灯りで、
眩し過ぎず、目に優しいのが魅力。
オレンジ色の淡いあかりの下、
慌ただしい日常が徐々に遠ざかっていきます。
 

 
灯油ランプは芯を燃やすため、
笹村さんは芯の切り方が重要だと言います。
まず、平面に垂直に切り、
それから角を少しだけ落としていきます。
それに火を灯すと、
ぽってりとしたまあるい形の炎になりました。
柔らかな炎が心を鎮めてくれるようです。
素朴で、穏やかな時間が流れています。
 
ランプの宿」は、木造2階建ての本館と、
吊り橋を渡った対岸の離れ4棟から成ります。
約1万㎡(東京ドーム約1/4個分)の敷地内には、
4つの温泉(健六の湯・露天風呂・本館内湯・滝見の湯)があります。
地元の食材を中心に使った料理も楽しみのひとつ。
毎晩、支配人自らが津軽弁を交えた料理の説明をして
くれます。
毎週金曜日には、津軽三味線の生演奏もあります。
 
 
  • 住所:〒036-0402
       青森県黒石市沖浦青荷澤滝ノ上1−7
  • 電話:0172-54-8588
 
 

明治時代のランプ(京都祇園らんぷ美術館

「灯油のランプ」は、
幕末から明治にかけて、西洋からもたらされました。
それまで、ロウソクなどの
薄暗い明かりしか知らなかった人々にとっては衝撃的な明るさ。
それはまさに「文明開化の明かり」でした。
 

 
京都には、ランプを集めた美術館
京都祇園らんぷ美術館」があります。
展示されているのは、明治時代に作られた
およそ800点にも及ぶランプです。
館長の難波敏彦さんは「難波美術道具店」の3代目で、
幼い頃、家にあったランプに魅せられて、
集めるようになりました。
 
ランプは、初めは非常に高価な輸入品でしたが、
やがて国内でも生産されるようになり、
独創的なデザインのガラスのランプが
次々と作り出されるようになりました。
 
 
難波さんに、明治時代のランプのとっておきの楽しみ方を
教えていただきました。
 
明治後期に作られたとされるランプには、
ガラスに金を混ぜて作る「金赤」という色で縁取られた
ホヤ(火舎)がつけられています。
当時、この淡い色合いに多くの人が魅せられたと言われています。
 
難波さんが、先程の台に、同じ頃に作られた
横縞模様の別のガラスのホヤを付け替えると、
真ん中には楚々とした秋草のような植物が配され、
グッと和のテイストになりました。
 
多彩な表情を見せるガラスのランプ。
明治の夜を明るくともした光です。
時代を超えて、ランプは心に火を灯し続けます。
 
  • 住所:〒605-0074
       京都府京都市東山区祇園町南側540-1
  • 電話:075-531-3361
 
 

美の壺2.見つめるほどに いとおしく

 

ソロキャンパー芸人・ヒロシ


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ランプの魅力は 野外でも発揮されます。
大自然に身を置くキャンプの夜に欠かせない「ランプ」。
 
その味わいを語ってくれたのは、
空前のキャンプブームを牽引する
「ソロキャンプ」芸人・ヒロシさんです。
 

 
ヒロシさんは、1年のおよそ半分をテントで過ごすほど、
熟練のキャンパー。
ヒロシさんのキャンプになくてはならないのが
「ハリケーンランプ」です。
嵐の中でも灯した火が消えないと言われることから、
その名が付けられたタフなオイルランプです。
 

 
「俺のは、ちょっとシュッとスマートなの。
 そういうので気に入ってるから、
 もう結構4~5年、使ってんのかな これ。
 やっぱ いい味が出てるよね。」
 
ヒロシさんはランプのつけ方にもこだわりがあるそうです。
木の枝で、焚火から火を移します。
 
大自然の中で味わうランプのあかり。
静かに震える炎がそっと語りかけてくるようです。
 
 

ハリケーンランプ(WINGED WHEEL


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今、日本で「ハリケーンランプ」を作る職人はたった一人、
別所由加さんのみです。
その別所さんの製作所が町工場が立ち並ぶ大阪・八尾市にあります。
大正13(1924)年創業の老舗ランプメーカーの伝統を受け継ぐ
WINGED WHEEL」です。
 

 
元ホウロウ職人だった別所さんの曽祖父が、
ドイツ製のハリケーンランプを研究に研究を重ねた末、
10年掛かりで完成させ、
「別所ランプ製作所」を創業して
最初に「ハリケーンランプ」を売り出したのは
大正13(1924)年前後。
昭和初めが全盛期で、
200人もの職人が一日2000個のハリケーンランプを製作し、
北米や北欧、アフリカ、東南アジアへの輸出をメインに
事業を成功させました。
 
戦争を経て、戦後の復興、高度経済成長へと時代が移り変わり、
生活に必要な明かりも「ランプ」から「電気」になると需要が激減。
輸出事業を撤退し、
農業用ハウス栽培用のランプとして国内での新規需要を築いたものの、
生活の必需品ではなくなった時点で、先細りは避けられませんでした。
 
別所さんのお母様と祖父の時代から働いていた工場長、
更に数人のランプ職人でランプ作りを行っていましたが、
別所さんが大学生になる頃には、職人はたった一人に。
 
別所さんは大阪芸術大学で音楽を学んでいましたが、
平成22(2010)年に大学を中退し、ランプ作りを始めました。
 
ところがランプ作りの工程は一切データ化されておらず、
創業以来、職人さんによる「口伝」のみで受け継がれて、
全ての工程を把握している人は誰もいませんでした。
それでも別所さんは、
朝から晩まで先輩職人にへばりつき、必死に作業を覚え、
それぞれの工程を確かめつつ、何度も失敗を繰り返しながら、
記録を取り続けました。
 
ところが頼みの綱だったその先輩が他界し、
1枚のブリキを専用の機械を使って金型でプレスし、
手加工で各パーツを組み立てる
300ある製作工程をただ一人で行っています。
 
作ることの出来るランプの数は一年に200個程ですが、
それでも続けるのは、
幼い頃に聞いた祖父の言葉が心に焼きついているからです。
 
「暗闇の中に炎があると人は自然に集い合い、
 恋人達は炎のゆらめきが映った瞳に恋をする。
 家族は電気を消してランプの炎を見つめ語り合えば
 素敵な家族になれる。」
 
「その言葉に全てが詰まってる。
 祖父の物作りに対しての思いとか、ランプに対しての思いとか。」
 
絶えることのない、ハリケーンランプの灯火です。
 
  • 住所:〒581-0066
       大阪府八尾市北亀井町2丁目5−4
 
 

美の壺3.ランプがみせる新たな景色

 

ステージを彩るランプ「ハタヤ ハンドランプ ILI


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♬ チェリー いつまでもUP BEAT届けてよ胸にもっと
♬ 赤が美しいことを
 
ジャズや昭和歌謡をミックスし、
比類のない艶やかな世界を作るユニット「EGO-WRAPPIN'」。
常にステージに登場し、シンボルともなっているのが
20年程前に、ホームセンターで出会い、一目惚れした
「ハンドランプ」です。
ランプの放つ光は、時にノスタルジックに、時に妖艶に、
EGO-WRAPPIN'」の音楽を彩ってきました。
「こういうランプがプッともったりするだけで、
 自分の中のスイッチがクッと切り替わるんで。
 哀愁 感じますね。」
 

www.egowrappin.com

 
「ハンドランプ」は、
元々は大工作業や工事現場で使うために作られたものです。
オイルでなく電気によるもの。
ランプの形も使い方も多様化しています。
EGO-WRAPPIN'」が愛用している「ハンドランプ」は
35年前に作られた、青木雄作さんのデザインによるものです。
昭和61(1986)年に発売され、
令和元(2019)年現在も販売され続けているロングセラー商品です。
 
 
「華やかなショーアップされた世界で、
 これが主役を引き立てるようなところで生きてるということが
 びっくりですね。」
 
青木さんは当時、
工事現場でしか使われていなかったハンドランプを
家庭のDIYでも使えるようにデザインを一新しました。
 
手に持って楽しい光として、
青木さんが イメージしたのはオリンピックの聖火を運ぶトーチです。
つまみの角など細かいところに丸みをつけることで、
見た目の印象を柔らかく。
電球のカバーには、黄色と赤の明るい色を使い、
楽しい雰囲気に仕上げました。
DIYではなく、音楽のステージという
思わぬ場所での活躍を見せるハンドランプです。
 
 

黒川温泉「湯あかり」


www.youtube.com

 
熊本県阿蘇郡南小国町にある温泉地「黒川温泉」。
落ち着いた佇まいの旅館が立ち並ぶこの町では、
冬から春にかけて、ランプが大活躍します。
平成24(2012)年の冬から始まり、
今年、令和4(2022)年で10周年を迎える
湯あかり」というライトアップイベントで、
球体状の「鞠灯篭」約300個と、
筒状で高さ2m程の「筒灯篭」の明かりが温泉街の夜を彩るのです。
 
 
使っているのは地元の竹です。
竹の内側が白く反射して、ほんのり淡い光が生まれます。
町の中心を流れる「田の原川」の水面に揺らぐ明かりも幻想的です。
 
湯あかり」のシンボル「鞠灯篭」は、
毎年、黒川温泉に携わる沢山の人々の手で作り上げられています。
何と、竹のランプは手作りなんです。
竹の白い部分が内側になるように曲げ、
その輪を組み合わせ、丸い形を作っていくのです。
 
このライトアップイベントは、
寒い季節に遠のく客足を取り戻したいと願って始められました。
また、現在、日本各地で問題となっている
放置竹林の間伐、再生に取り組みのための
活動の一環としても計画されました。
湯あかり」を通じて得た利益は
この地域にある美しく豊かな環境を守るためにも
利用されています。
 
ランプが織り成す美しい景色は瞬く間に評判になり、
今では、黒川温泉の冬の風物詩です。
ランプの使い方 楽しみ方の可能性は、広がり続けます。
なお今シーズンは、
令和4(2022)年12月17日から令和5(2023)年4月2日に
なります。
 

 

www.kurokawaonsen.or.jp

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