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美の壺「足もとに咲く 草履」<File 516>

<番組紹介>
日本の暮らしと共に発達してきた「草履」。
多様な素材と鼻緒の組み合わせで無限のデザイン。
 
 ▽ロバート・キャンベルさんが「生きた伝統」と語る
  草履の魅力。
 ▽この道60年・職人兄弟が
  技を駆使し生み出した最高の履き心地とは。
 ▽明治時代から続く京都の履物店こだわりの鼻緒、
  意匠と機能を兼ね備えた鼻緒作りの秘密に迫る。
 ▽相撲の行司が履く畳表(たたみおもて)の草履。
  稲わらを編んだ貴重な一足が登場!
 
<初回放送日:令和2(2020)年10月23日 >
 
 
古来、日本人の足元を支えてきた履物「草履」。
竹や稲藁で編んだ「畳表」に、革や布を使ったものなど、
実に沢山の種類があります。
色とりどりの鼻緒も、用途と好みでデザインは無限に広がります。
草履は伝統文化を担う重要な道具としても生き続けています。
時にオシャレに、時に古式ゆかしく・・・。
草履の奥深い世界に、一歩、踏み出しましょう。
 
 

美の壺1.足をのせれば心も装いも晴れやかに

 
江戸時代に造られた庭園を
和の装いで、颯爽と歩くのは、
日本文学を研究しているロバート・キャンベルさんです。
水色の大島紬に合わせたのは、藍鼠色の草履です。
草履は、自分の足より一回り小さなものを履くのが良いとされています。
 
「和の履物ですと、結構、緩いと言いますか、
 すごく、インクルーシブなものなんですね。」
 ※ インクルーシブ:日本語にすると「包み込むような/包摂的な」という意味なんだそうです。?
 
キャンベルさんに
江戸時代の旅仕度について記した本を見せて頂きました。
当時の履物へのこだわりが分かるのだとか。
 
「草履や下駄というものがここに書かれていて、
 傷がつかないように、
 靴ずれがしないようにどうすれば良いかということが
 一つ一つ書かれてる訳ですね。」
 
旅には、柔らかくサイズの合うものを履けば、まめが出来ない。
また疲れた足を癒やすツボの位置まで書かれています。
徒歩が今より重要な交通手段だった時代、
人々の履物への関心が高かったことが分かります。
 
 

着物の専門店「銀座もとじ

 
キャンベルさんの和装を足元までまとめてくれたのは
銀座の着物専門店「銀座もとじ」さんです。
昭和54(1979)年、銀座に創業した
銀座三丁目に男のきもの専門店を構える呉服店です。
店主の泉二弘明さんは、
客の個性を生かす組み合わせを提案しています。
泉二さんが、おすすめの草履コーディネートを紹介してくれました。
 

 
深い赤の着物と羽織、袴の礼装には、明るい色の畳表の草履。
普段使いで着る紬には、畳表を茶色く染めた落ち着いた色を。
黒っぽく見えるので「カラス」というそうです。
 
草履を「生きた伝統」と捉えるキャンベルさん。
草履には、足取りを軽くし、いつもと違う楽しい気分にしてくれる
不思議な魅力があるとおっしゃいます。
そこに込められた秘密は、履く人への思いやりです。
 
  • 住  所:〒112-0014
         東京都中央区銀座4-8-12 コチワビル
  • 営業時間:月~日曜日(11:00~19:00)
  • 休 業 日 :年中無休
  • 電話番号:03-3535-3888
 
 

「三段の綿入り草履」
京都和小物さくら 草履職人・木村幸信さん)

 
女性の草履は、台を高く、段を重ねているのが特徴です。
着物の見栄えを良くし、格式や個性を演出してくれます。
 
訪問着には、白い革の草履。
台を三段にすることで、着物が映え、すらりとした印象に。
装いを華やかにしたい時は、色のある三段のものを。
長く履いても疲れないように、
台には綿をふんだんに詰められています。
 
作るのは、この道60年の職人・木村幸信さんです。
綿を入れることになったきっかけは、
ある客の注文だったそうです。
 
草履の台は コルクと木の板を重ねて段にします。
外側を覆う革を裁断。
段の数が増えるとパーツもより細かくなります。
 
革を巻くのは弟の久与志さん。
足をのせる木の板に置いたのは、大量の綿です。
高さ10㎝以上。
長年、試作を重ね、見つけ出した最高の感触を生む厚みです。
綿に革を当て、手の力でグッと圧縮しながら、
革を伸ばし、接着していきます。
 
最も難しいのが、爪先と踵のカーブです。
しわが出ないよう指先に力を込め、革を裏側へと押し込みます。
板の裏に出来るひだを丁寧に削ることで、
台がしっかり接着し、丈夫になります。
 
継ぎ目を感じさせない、流線形の台が完成しました。
手作業の積み重ねがデザインと履き心地を形にします。
履く人の何気ないひと言に応える熟練の手技によって
草履は進化を続けています。
 

sacra-japan.com

  • 住所:〒604-8174
       京都市中京区室町通三条上ル役行者町369
  • 電話:075-229-3678
 
 

美の壺2.ひとすじにこめる彩りと願い

 

京都東山区 創業明治30年の老舗草履屋「祇園 ない藤

祇園 ない藤」さんは明治30年創業の履物店です。
店の棚に仕舞われている鼻緒の数は何と3000。
祇園 ない藤さんでは創業以来、
「その人に会うものしか作らない」という方針を貫き、
お客様と対話から始まるお誂えの逸品を提供しているそうです。
 
店主の内藤誠治さんは、
客の雰囲気に合わせ、 鼻緒と台を合わせていきます。
 
店に馴染みのお客さんが やって来ました、
「普段に履く物で、
 よそ行きにも使える、上品でおしゃれな草履を探しています。」
 
ない藤さんの鼻緒には、こだわりがあります。
鼻緒の先、「前坪」と呼ばれる部分を赤にすること。
元々、お化粧をする時の 「紅をさす」というのは、
魔除けの意味があったそうです。
出来上がりは、前坪から漆の台へ連なる赤い色が印象的な、
世界で一つだけの草履です。
艶やかな鼻緒に込めた日本の美意識です。
 
  • 住  所:〒605-0803
         京都府京都市東山区祇園縄手四条下ル
  • 営業時間:10:00-18:30
  • 定 休 日 :不定休
  • 電話番号:075-541-7110
 
 

鼻緒職人・伊藤小夜さん

 
ところで、祇園 ない藤さんの鼻緒は
どのように作られているのでしょうか?
 
鼻緒を専門に作り続けて40年になる伊藤小夜さん。
生地の裁断から仕上げまでを行っていきます。
特に生地の縫い付けは、
ミシンを使った㎜単位の緻密な作業です。
特殊な棒を使って、縫い目が裂けないように慎重に裏返します。
この後、中に麻紐などの芯を通して、前坪を取り付け、
鼻緒が出来上がります。
 
その後、祇園 ない藤さんの手に渡り、台にすげられます。
念入りに叩くことで柔らかくなり、足の甲に馴染みやすくなるのです。
鼻緒が抜けてしまわないように、金具にしっかりと結びます。
誂える足の形に合っているかどうかを
手の感覚を頼りに微調整していきます。
 
鼻緒を足の指股で掴むだけで、草履は足にぴたりと寄り添います。
血行を良くする効果もあるのだそうです。
今、祇園 ない藤さんの草履を洋服に合わせる人も増えています。
たかが鼻緒と侮るなかれ。
その豊かな機能が、健やかに美しく足元を彩ります。
 
 

美の壺3.神聖なるものを守る 伝える

 

行司が履く伝統の稲わら草履(三役格行司の木村庄太郎さん)

 
日本の国技・相撲でも草履は欠かせません。
取組を裁く行司も伝統的な畳表の草履を履いています。
土俵の上で草履を履くことが許される行司は
幕内上位の取組を裁く「三役格行司」と「立行司」の
僅か5人しかいません。
十枚目格に昇格すると足袋に。
 
相撲が庶民の間で大流行した江戸時代に
行司の装束や履物に厳格な決まりが生まれたそうです。
現在、三役格行司を務める木村庄太郎さんも
入門から30年以上かかって、
ようやく草履を履くことが出来るようになりました。
木村さんが土俵の上で履く草履は
裏に麻縄が縫い付けられて、滑りにくくなっています。
そして、注連縄のような鼻緒が、激しい足さばきを支えています。
 
 

山形県寒河江市・草履の名産地「豊国草履」

 
山形県寒河江市。
収穫を迎えた田んぼでは、
行司の草履の材料となる稲が作られています。
通常の稲よりも背が高く育つこの品種は、
節と節の間が長く、草履の材料に適しているのだとか。
3か月程乾燥させた後、草履作りが始まります。
 

 
 

軽部草履

 
この草履を手掛けるのは、創業100年を超える草履の制作所
軽部草履(かるべぞうり)さんです。
 

 
草履職人の田川恒子さんは、
稲の節と節の間から切り出した稲藁を使って、
昔ながらの編み方で、専用の台に縄をかけ、
引っ張りながら、稲藁を横に渡すように編んでいきます。
爪先の部分は、縄を強く引き過ぎると丸みが失われてしまうため、
力を加減しながら、8の字を描くように規則正しく編み進めます。
 
田川さんが編んだ小判形の草履は、
片方だけでも、200本以上の稲藁が重ねられています。
この後圧搾して、引き締めることで丈夫になります。
裏には麻縄を縫い付けます。
 

 
春に田植えをし、冬にようやく出来上がる一足。
網目が揃った表は、滑らかで、足に吸い付くような履き心地です。
そして裏にしっかりと縫い付けられた縄が、行司の足元を守ります。
 
そして今、田川さんから編み方を受け継ぐのが軽部 聡さん。
共に制作しながら、技を見て習得しています。
職人の思いが籠る稲藁の草履が、土俵の上で活躍しています。
 
  • 住所:〒991-0061
       山形県寒河江市中央工業団地51
  • 電話:0237-77-5322
 
 

<参考>関連記事(伝統工芸品・イッピン)

 

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