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イッピン「コロナ禍を乗り越えて 北海道・小樽ガラス」

<番組紹介>
コロナ禍で大打撃を受けた観光地、北海道・小樽。
オンライン販売で注目された製品がある。
廃車の窓ガラスを使った再生グラスと、
陶器のようなガラス器だ。
職人の技に迫る。 北海道小樽市は日本有数の観光地。
しかし、コロナ禍で主力の土産物、
ガラス製品の売り上げは大きく落ち込んだ。
そんな中、オンライン販売に活路を見出した工房が。
ひとつは、再利用が困難とされてきた
廃車の窓ガラスを使ったグラス。
SDGsに関心が集まる中、話題を集めた。
また、素朴で温かみのある
「陶器のようなガラス器」を生んだ工房も売り上げが増加。
コロナ禍を乗り越え、新たな可能性を開いた職人たちの
努力と技に迫る。
<初回放送日:令和2年(2020)年8月26日>
 
 

1.小樽再生ガラス(深川硝子工芸)


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北海道小樽にある「深川硝子工芸」と
東京都亀戸にある「富硝子」とがタッグを組んで、
廃車の窓ガラスをアップサイクルしたグラスを「小樽再生ガラス」を
販売しました。
 

 
「小樽再生ガラス」は、北海道の道内から
石狩市の産業廃棄物処理業者に集まった廃車から、
手と工具で窓ガラスのみを取り外し、
再融解してガラス食器にしたものです。
製造過程では、廃熱や雪解け水や雨水を作業水として使用するなど、
環境に徹底して配慮して作られたグラスです。
 
 
こうしてできたグラスは、海の街・小樽を感じさせような
爽やかなシーグリーンの色とガラスの中の細やかな泡が
レトロな雰囲気を醸し出しています。
また、職人が吹いて作る厚さ約2mm以下の薄さが口当たりを良くし、
緩やかに広がった口は、
飲み物が滑り込んでいくような上品な飲み心地を与えてくれます。
 
 
「小樽再生ガラス」を作った深川硝子工芸は、
明治39(1906)年に創業しました。
当時は塩や薬品の保存瓶を製造していましたが、
昭和中期頃より業務転換を行いガラス食器の分野へと参入し、
業務用食器や生活雑貨、カットグラスなどの高級食器と
多岐に渡るガラス製品を作り続け、
先人達の築いた「吹きガラス」の技術を脈々と受け継いでいます。
 

 
日本では、使用済み自動車が年間で約350万台破棄されています。
しかし自動車の部品の多くは
金属などの資源物としてリサイクルされており、
そのリサイクル率は何と95%とも言われています。
 

 
ところが窓ガラスに限っては、
一部が断熱材(グラスウール)としてリサイクルされる以外は、
ほとんどがシュレッダーダストとなり埋め立てられているのが現状です。
その主な理由は、車の窓ガラスの回収には
人の手で丁寧に取り除く必要があるためコストが掛かり過ぎることと、
ガラスは鉄などと違って汎用性が低い素材であることが挙げられます。
 

 
そのような現状の中、深川硝子工芸の6代目・出口健太社長は、
丁寧に1台1台手作業で部品等を回収し、
再生資源として活用することは勿論、
回収した素材を各素材のプロフェッショナル達のもとへ持って行き、
製品作りを行っているリサイクル業者があることを知り、感銘を受けます。
そして自分達も是非一緒に取り組みたいと考え、
平成29(2017)年より、使用済み自動車の窓ガラスを再利用した
グラスウェアの開発に着手しました。
 

 
ところが、観光客向けの製品づくりに追われ、
開発はなかなか進まず、時間ばかりが過ぎていきました。
そして令和2(2020)年4月、新型コロナウィルス感染拡大による
緊急事態宣言により、工場はストップ。
社長の出口さんと工場長の日野森雅義さんは
「今こそ、開発を進めるべき!」と一致団結して
懸案だった自動車の窓ガラスによる製品づくりに取り組みました。
 

 
ところがそんな職人さん達の前に大きな壁が立ち塞がります。
ひとつは、自動車ガラスは工芸用に比べて粘りが強い
そして、砂埃や油膜を取り除くのが難しく、泡として残ってしまう
ということでした。
 
職人さん達は、材料の配合割合を変えたり、
ガラスを溶かす温度を変えたり工夫を巡らせます。
溶解温度は気温や湿度によっても変化してきますから、
10℃、20℃と温度を探っていきます。
 
一方、ガラスに息を吹いて形にしていく吹き職人の皆さんも、
通常4回に分けて息を吹き入れていた作業を1から2回に減らしたり、
息の量を均一にしてみたり、
また手を回す速さや右手と左手の連携の仕方などを
出来上がった製品を割って確認しながら行いました。
そういった作業を繰り返し、
令和3(2021)年夏、遂に「小樽再生ガラス」は完成しました。

 
観光客はなかなか戻って来ませんが、
このグラスはネット上で話題となったことから、
それまで取引のなかった企業からの注文も来るようになって、
結果的には、工場の可能性を広げることが出来ました。
 
コロナにより通常生産は出来なくなりましたが、
逆に新しいことに挑戦する時間が出来たことで、
職人の技は更に磨き上げられて、
工場の新しい扉を開けることが出来たようです。
 
 
 
 
 

2.新・小樽焼
KIM GLASS DESIGNキム グラス デザイン ガラス作家・木村直樹さん)

 
一見、陶器かと思わせる「新・小樽焼」。
しかしよく見てみると、
その透明感や色の深み、硬く艶やかな質感から
ガラス器だと分かります。
 
北海道小樽市には、100余年間だけ存在した焼物があります。
湯呑やぐい呑、徳利や皿などの生活雑器として、
小樽市民の家庭や飲食店などで愛された「小樽焼」です。
緑玉織部の透明感ある青緑色の釉薬を特徴とする
温かみのある陶器です。
明治時代から作り続けられてきましたが、
平成19(2007)年に「小樽窯白勢陶園」が
後継者難から107年にも及ぶ永い歴史に幕を閉じて以降、
「小樽焼」は生産されていませんが、未だに愛好者が多い焼き物です。
 
 
 
この小樽焼を復活させたいと挑んだのが、
工房「KIM GLASS DESIGN(キム グラス デザイン)
ガラス作家・木村直樹さんです。
木村さんは陶器ではなく、吹きガラスで小樽焼の特徴を表現した
「新・小樽焼」を開発しました。
 
木村さんが「小樽焼」に着目したのは平成23(2011)年。
それ以降、いつか「小樽焼」を再現したいと思い続けましたが、
平成29(2017)年にレクサス主催のプロジェクト
「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017」で
北海道の「匠」に選ばれたことで、
ようやく「新・小樽焼」に腰を据えて取り組むことが出来るようになりました。
 
木村さんは小樽焼を再現するにあたり、
小樽市民に再び愛される器のあり方を思索しました。
こうして誕生した「新・小樽焼」は単なるレプリカではなく、
ガラスとしての魅力を十分に備えた、
小樽の美しい風景を写し取った器になりました。
 

lexus.jp

 
「群来(くき)-kuki-」シリーズ
「群来-kuki-」シリーズは、
春先に小樽の海で見られるニシンの産卵現象を表現した作品群です。
緑色からターコイズブルーに至る淡いグラデーションに
優しい温かみを感じます。
 

 
ガラス作家の木村直樹さんは開発に当たり、
「小樽焼」を象徴する青緑色の釉薬「緑玉織部りょくぎょくおりべ」を出発点にしましたが、
更に自分なりの解釈を深め、小樽の春の海を表現しました。
 

 
木村さんは吹きガラスで
白色ガラスにターコイズブルーガラスを被せ、
更に緑色、黒色ガラスを部分的に被せ、
最後に透明ガラスの粒を全体にまぶして
「小樽焼」の油滴(斑紋)のようなムラの表情も生み出しました。
 
 
 
「蓮葉氷(はすはごおり)-hasuhagoori-」シリーズ
「蓮葉氷-hasuhagoori-」シリーズは、
朝晩の気温がマイナス10℃まで下がる
小樽の冬の風物詩を表現した作品群です。
小樽では冬、川が海に流れ込む汽水域や運河の水面に、
丸く薄い氷が無数に張る現象が起きます。
まるで蓮の葉が浮かんでいるように見えることから、
その様子を「蓮葉氷」と呼んでいます。
 


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「小樽焼」の中には黒色の釉薬もあり、
木村さんは漆黒のような濃い紫色ガラスで、
息も凍るほどの厳寒の様子を表し、
最後に透明ガラスの粒を部分的にまぶして
白い氷「蓮葉氷」が浮かぶ景色を描き出しました。
 
 
 

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