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美の壺「光を奏でる ガラス」<File 532>

<番組紹介>
国内屈指のガラス会社の「ワイングラス」。
繊細なラインを生み出す、吹きガラスの技!
 ▽ベネチアで製作する三嶋りつ惠さんによる、
  躍動感あふれるガラス作品
 ▽工業用のガラスを削り出して作る、
  神秘のグラデーション!
 ▽和の文様が引き立てる、
  砂糖菓子のような「パート・ド・ヴェール」
 ▽洋館を彩る、小川三知のステンドグラス
 ▽世界で活躍するデザイナー・吉岡徳仁さんによる
  「ガラスの茶室」とは?!
初回放送日: 令和3(2021)年3月26日
 
 
グラスをはじめ、暮らしに欠かせないガラス。
繊細さと優美さで 日常を豊かにしてくれます。
ガラスは変幻自在。
命が宿ったかのような躍動感を見せることもあれば、
神秘的な色のグラデーションを 生み出すものも。
時には あたたかみのある表情さえ 見せてくれます。
更に、ガラスは様々な空間を彩ってきました。
駅構内には、636個のクリスタルガラス。
近年、ガラスの茶室まで登場し、大きな話題を集めています。
無限の可能性を秘めたガラス。
その多彩な世界を巡ります。
 
 

美の壺1.形に命を宿す

木村硝子店・木村武史さん

 
「木村硝子店」は、明治43(1910)年創業のガラス会社です。
業務用のワイングラスやカクテルグラスを中心に
ガラス製品を取り扱っている老舗メーカーであり、問屋です。
 
 
「木村硝子店」は、100年もの間、
「工場を持たないメーカー」というスタイルを貫いています。
工場にはそれぞれ得意不得意があるので、
企画した商品の生産上の特性から
得意な工場にお願いした方が良いものが作れる。
自分達は商品開発や企画に専念出来、
職人は製造に専念出来ると考えているためです。
「木村硝子店」では、様々なガラスの食器を企画デザインしています。
レストランで使うグラスから普段使いのものまで、およそ1000種類。
デザイナーや料理家との コラボレーションも行っています。
これらの作品は、国内だけでなく、海外でも高い人気を誇っています。
中には、ニューヨーク近代美術館で永久所蔵になっている
ウイスキーグラスもあります。
これらのグラスの誕生に関わってきた木村武史さんは、
デザイナーとして、50年近くグラスのデザインに携わってきました。
が最も多く手掛けているのがワイングラスです。
「ステム」と呼ばれる脚の部分から
飲み物が入るボウル部分へと繋がるなだらかなラインは、
およそ50ものバージョンを経て、辿り着いた形です。
 
木村硝子店
  • 住所:〒113-0034
       東京都文京区湯島3-10-7
  • 電話:03-3834-1781
 
 

ワイングラスができるまで
(ガラス職人・緒方義春さん:TAJIMA GLASS – 田島硝子

 
木村さんのグラス作りは、国内に4軒、
海外だとトルコ、スロバキア、ハンガリー、Chinaに
お願いしている工場があります。
 
その一つが、江戸川区にある「田島硝子」です。
昭和31(1956)年創業の江戸切子、江戸硝子の製造メーカーです。
 
この道44年ガラス職人の緒方義春さんが
溶けたガラスに息を吹き込む
「吹きガラス」の技法で形を作っていきます。
デザインに合わせて、息の入れ方を緻密に計算しています。
次に、グラスの脚の部分を成形するために再び溶かし、
慎重に伸ばしていきます。
 
「ちょうどいい焼け方というのは、大体、引いてて分かる。」
 
口の部分は浅く傷をつけて取り除きます。
滑らかにするために熱して完成です。
 
田島硝子
  • 住所:〒132-0025
       東京都江戸川区松江4丁目18−8
  • 電話:03-3652-2727
 
 

ガラス作家・三嶋りつ恵さん

三嶋りつ惠さんは、京都で生まれ、
平成元(1989)年からはヴェネツィアに移住し、
平成23(2011)年からは京都にも住まいを構えて、
イタリアと京都を拠点に活動しているガラス作家です。
ムラーノ島のガラス職人とのコラボレーションにより、
ヴェネツィアン・ガラスの透明度や粘度を活かした、
周囲に溶け込みながら光の輪郭を描き出す無色のガラス作品を制作。
空気や光を取り込んで、その場のエネルギーを表現する作品は
公共空間でのアートワークとしても評価が高く、
美術のみならず建築やファッション、デザインと
ジャンルを横断した活躍が続けていらっしゃいます。
 
「葉っぱの皿」と名付けられた作品は、
複雑に隆起した花々が太陽の光を受け、きらめきを放っています。
透明で無機質なガラスでありながら、
動き出さんばかりの生命力が感じられます。
 
「蜂蜜状のマグマのようにオレンジ色なんですね。
 で、溶けているんですよね。
 何かそれがみるみると錬金術のように形になっていくというところが
 とにかく、いつまでも感動出来る、感動させられる。」
 
生き物のように伸びたガラスが幾重にも巻きついた作品は、
光の渦が立ち現れています。
三嶋さんは作品を作る時に、デザイン画はほとんど描かないのだそうです
熱によって姿を変え、日の光によって命が吹き込まれるガラス。
変幻自在な素材は、私達に新たな世界を見せてくれます。
 
 

美の壺2.千変万化する姿を味わう

ガラス造形家・小島有香子さん

 
令和2(2020)年10月25日に金沢市に開館した「国立工芸館」は、
日本で唯一の国立で工芸を専門とする美術館です。
陶磁や漆工、染織、金工など1900点が東京から金沢へ移転し、
開館しました。
 
国立工芸館」のオープニングの展覧会で注目を集めた作品があります。
直径およそ35㎝程のガラスの皿です。
冷たい夜の空に浮かぶ月の光がモチーフのガラスの皿です。
ブルーのグラデーションが輪となって広がるガラス皿は、
ガラスが10枚重ねて作られています。
 
作者は、富山在住のガラス造形作家・小島有香子さんです。
小島さんは、建築などで使われる板ガラスを材料にしています。
作品は板ガラスを貼り合わせ、層を作ることから始めます。
層にしたガラスを
「ウォーターサンダー」という石材を研磨する工具で削り出します。
水を噴射するのは、摩擦の熱でガラスが割れないようにするためです。

その後、「金剛砂」と呼ばれる研磨材を載せ、
円盤状のガラスで表面を滑らかにします。
光を反射する工業用ガラスの特性を生かすことで生まれたグラデーション。
極限までそぎ落としたデザインの中に、光が表情を宿します。
 
  • 住所:〒920-0963
       石川県金沢市出羽町3−2
  • 電話:050-5541-8600
 
 

パート・ド・ヴェール(Ishida Glass Studio

「パート・ド・ヴェール」は、
紀元前に古代メソポタミア時代に起源を持つ古代ガラス技法です。
吹きガラスの発明と共に滅び、
アールヌーボーの時代にフランスで再興されましたが、
一子相伝のため、再び途絶えた幻の技法です。
「パート・ド・ヴェール」とは、「ガラスの練り粉」というフランス語で、
粉ガラスで様々な表情を紡ぎ出します。
この「パート・ド・ヴェール」が、
京都の染織図案家の石田さんご夫妻によって、
「和のパート・ド・ヴェール」として蘇りました。
 
ここには日本古来の文様が煌めいています。
「日本人の美意識って特別だと思うんですね。
 品格があって、繊細で。
 そういうような作品を作っていきたいなとは思ってるんですけども。」
 
石田さんは元々着物や帯の図案を描いていました。
工芸作家になって、
正倉院などの宝物に見られる日本の伝統的な文様を研究し、
それを作品に取り入れています。
 
「鳳凰とかオシドリとかそういうのも
 現代的に自分でアレンジして、図案の中に入れていったり、
 日本の有職文様も入れていったりしております。」
 
作品作りは、石膏の型に模様を彫ることから始まります。
自作の道具で慎重に彫り進めます。
色を濃くするところは深く薄くするところは浅く彫ります。
模様部分に入れるのは色のついた粉ガラス。
筆で押しつけるように粉ガラスを入れていきます。
そして粒状のガラスを詰め、
厚さが均一になるように、空気を抜きながら整えます。
石膏の型でガラスを挟み込み、10日かけて焼き上げていきます。
石膏の型を壊してガラスを割り出します。
 
日本の伝統文様をまとった「パート・ド・ヴェール」が完成しました。
ガラスの中の無数の小さな気泡が
かすかに透過する光と柔らかな質感を生み出しています。
文様、質感、そして形。
石田さんならではの「パート・ド・ヴェール」です。
 
 

美の壺3.別世界を生み出す

 

鳩山会館のステンドグラス(テンドグラスの工芸家・小川三知)

 
東京・文京区にある「鳩山会館」は、
大正時代に建てられたイギリススタイルの洋館です。
 

 
こちらの1階には大きな窓が配され、開放的な空間になっています。
外光を受けて鮮やかな色を放つのは、「ステンドグラス」です。
鳩山会館」には、大正時代のステンドグラスが6組も残されています。
 
階段の踊り場にあるのは、高さ3.6mもの大きな作品。
たなびく雲に 空を舞う鳥、その下には真っ赤な五重塔、
ガラスで作られた一幅の絵画です。
 
これらを手掛けたのは、大正から昭和初めに活躍した
ステンドグラスの工芸家・小川三知(おがわ さんち)です。
三知は、橋本雅邦に日本画を学んだ後、
渡米して7年かけてステンドグラスを学びます。
そして、身に付けた複雑な色調を生み出すガラス技法で、
アール・ヌーヴォー、アール・デコ風でありながら
どこか日本情緒を感じさせる作品を生み出し、
ステンドグラスを日本に根づかせた、
日本初のステンドグラス作家と言える存在です。
 
ステンドグラス職人の越前谷典生さんは、
三知の表現に魅了されてきました。
 
「日本画っぽい雰囲気ですね。
 五重塔の作品では、上半分に余白を取って、
 主役の五重塔が左下に切り取った形で配されています。
 半透明のオパルセントグラスを効果的に使い、
 大胆かつ繊細な作風を築き上げています。
 三知は日本のステンドグラスを芸術の域にまで高めました。」
 
「小川三知は、
 美術とか工芸って呼べるような風を吹き込んだというところがあって。
 ステンドグラスというのは、
 時間によって全然見え方が変わってくるので、
 その空間を良いものにしてくれると言いますか。」
 
  • 住所:〒112-0013
       東京都文京区音羽1丁目7−1
  • 電話:03-5976-2800
 
 

ガラスの茶室-光庵(デザイナー・吉岡徳仁さん)

 
東京・六本木にある国立新美術館の正面入り口前に、
ガラスの作品
「ガラスの茶室-光庵(Glass Tea House – KOU-AN)」が
展示されています。
平成23(2011)年に、
「第54回 ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展」で
デザインが発表された後、
平成27(2015)年には、京都の「将軍塚青龍殿」の大舞台で披露され、
大きな話題となりました。
そして、令和元(2019)年4月17日からは
国立新美術館」で特別公開されています。
当初は令和元(2019)年5月10日まででしたが、
公開延長されて、現在も公開中です。
 
公開期間  2019年4月17日  ~ 2021年5月10日
(※公開期間延長)~ 2022年5月30日
会  場
・住所:〒106-8558
    東京都港区六本木7丁目22−2 
・電話:03-5777-8600
 
「ガラスの茶室」をデザインしたのは、吉岡徳仁さんです。
デザイン、建築、現代美術まで幅広いジャンルで活躍し、
名立たる美術館に所蔵されています。
 

 
使われているのは、4.5tもの透明度の高いガラスです。
床は畳の代わりに、水面のような模様のガラス。
炉や床の間の代わりに、ガラスの彫刻が置かれています。
三角形をしたものは、亭主が点前をする位置を示します。
長方形のものは床の間の役割を果たしています。
 
更に茶室の中には、とっておきの仕掛けが施されていました。
ガラスの反射で生まれる「虹の花」です。
これはクリスタルのプリズムによるもの。
太陽光線の角度を緻密に計算して虹が現れるようにしたのです。
 
紀元前25世紀頃から使われてきたというガラスは、
今でも様々な形で人々を魅了し続けています。
 

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