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イッピン「握って、切って、気持ちイイ! 兵庫・播州のはさみ」

<番組紹介>
兵庫県小野市は知られざる、
はさみの一大産地。
中でも手作業で作る“握りばさみ”は、
抜群の切れ味と極上の握り心地で、
裁縫好きの憧れのイッピン。
その熟練のワザとは?
また造園のプロが愛用するはさみは、
切れ味よく、音も絶品。
音と切れ味の不思議な関係とは?
そして、今大人気の、
よく切れるキッチンバサミを生み出した
画期的なアイデアとは?
機能的で美しい“播州のはさみ”の魅力を
水沢エレナが徹底リサーチ。
 
<初回放送日:平成27(2015)年3月10日 >
 
 
播州(兵庫県)は、
「日本三大刃物産地」と呼ばれる
関、堺、燕三条に続く、刃物の産地です。
一括りに「刃物の産地」と言っても、
それぞれ得意分野があって、
産地毎に様々な特徴があります。
 
 
250年以上の歴史を持つ「播州刃物」は、
握り鋏の生産量が日本一。
刀の鍛造が元々の始まりであり、
今もなお昔ながらの鍛冶仕事により
一点一点手作りされている。
 
 
兵庫県の中南部・東播磨のほぼ中心に位置する小野市では、主に家庭刃物や鎌が
「小野の鋏」「小野の鎌」という名称で
全国的に広く親しまれ愛用されてきました。
特に「握り鋏」の評価は高く、
東京・日本橋の老舗刃物店
日本橋木屋」で取り扱われている
究極の「握り鋏」は8000円もしますが、
入荷するとすぐに完売してしまうそうです。
 

1.握り鋏

鋏職人・水池長弥さん


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創業140年以上の「水池握鋏製作所」の
水池長弥(みずいけ おさみ)さんは、
四代目で、この道50年以上のベテランです。
プレス式機械を使った安価な生産方法が
主流になる中でも伝統製法「手打火造鍛造」で
「握り鋏」を作り続ける唯一の鋏職人です。
この技法は金型を使わないため、
自由に様々なサイズや形状を
1つから作ることが出来るため、
日本全国の様々な職人から製作依頼が来ます。
「握り鋏」
形態がU字状で、腰のバネが支点になっている
元支点型の鋏で、「和ばさみ」とも言います。
最も古い歴史があるにも関わらず、
現在ほとんど日本だけで使われています。
U型の「握り鋏」は細かい仕事には使いやすいし、
握りしめるというワンタッチで使える便利さもあります。
そのため、和裁の仕立て物、刺繍などの他、
映画フィルムの編集などにも使われています。
主な産地は、兵庫県小野市新潟県と三条市。
シンプルな構造なので、
 
 
水池さんは、直径7mm程度の細長い鉄の棒を
石炭を使って700~800度まで熱し、
叩いて伸ばす作業から始めます。
ある程度形を整えたところで、
刃先となる両端に硬い鋼(はがね)を接着します。
水池さんが使うのは、日本製の高炭素鋼です。
切れ味に加え、摩耗性にも優れた品です。
 
 
「鉄」と「鋼」を一体化するために
再び高温で熱して叩いていきますが、
正確さとスピードが重要です。
 
 
「握り鋏」の切れ味の決め手は
「腰」と呼ばれる柄の元の部分です。
「腰」を叩く作業も
プレス機の方が早く出来ますが、
手打ちの方が力を入れなくても
切ることの出来る鋏になるそうです。
全体を研いで真ん中で曲げたら、
完成です。
 
 
「シーラカンス食堂」小林新也さん
「小野の鋏」は250年の歴史を持ちながら、
他産地と比べてその認知度は低く、
また職人の高齢化していることから、
後継者問題にも直面しています。
 
「このままでは産地として生き残れない。
 指導者となる職人がいるうちに」と
立ち上がったのが、
シーラカンス食堂」の小林新也さんです。
 
小林さんは、「小野金物卸商業協同組合」の
新しい鋏をデザインしてくれという依頼で、
鍛冶屋さんの工場に訪問しました。
そこで、ボールペンぐらいの鉄の棒に
小さな鋼を着けて握り鋏を作る水池長弥さんに
出会ったのが、刃物にのめり込むきっかけに
なったそうです。
 
そして小林さんは、小野の「刃物産業」を
プレゼンテーションすることが重要だと考え、「播州刃物」という名前の下、
世界展開をスタートさせました。
 
 
「MORE THANプロクェクト」とは、
経済産業省が進めるクールジャパン政策で、
日本の商品を海外へ届けたい中小企業・
プロデュースチームの活動を支援する
「JAPANブランドプロデュース支援事業」の
認定を受け、
海外で「播州刃物」の展示販売をしたり、
「London designjunction」(ロンドン)では、
初めて職人である水池長弥さんを呼び、
現地で「握り鋏」の曲げと仕上げの工程を
実演して関心を集めました。
 
「2015 グッドデザイン・ものづくりデザイン賞」
を獲得。
産地の意識改革や後継者育成など「強力なブランディングが伝統的工芸品を未来につないだ」と評価されました。
 
 
水池長弥さんのお弟子さんをつくることにも
成功し、数人の若き職人さんが育ちました。
 
番組では、インターネットで水池さんの記事をみて感動し、コンピューター関係の仕事をやめて小野市にやってきたという”マウリさん”が紹介されていました。
「イタリアにはこのタイプの鋏はない。
 伝統的な手法で作られていることに
 感動した。
 私も職人になり水池先生のようになりたい」
と話していました。
 
 

2.刈込鋏
(「吉岡刃物製作所」吉岡崇さん)

若きカリスマ
(「エコ.グリーン設計」小林徹さん)


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小林徹さんは、昭和46(1971)年生まれの
埼玉県出身の造園家です。
高校卒業後、大正元(1912)年から続く造園会社の4代目として家業を手伝っていましたが、
若干25歳で独立して、平成10(1998)年に
エコ.グリーン設計」を設立。
造園、外構、植栽などエクステリア工事全般を請け負う会社の社長として今に至ります。
 
小林さんは、一級造園技能士、
一級ブロック建築技能士を始め、
30種目以上の資格を有する多能技術者です。
更に「内閣総理大臣表彰(ものづくり名人)」、
厚生労働大臣表彰(現代の名工)、
国土交通大臣表彰(建設マスター)といった
大臣表彰を全て30代で受賞しています。
平成25(2013)年秋には「黄綬褒章」を受章した
若きカリスマです。
そんな小林さんが使っている「刈り込み鋏」は
小野市にある「吉岡刃物製作所」が作ったもの
です。
「あまり気持ちが入っていないはさみは
 変な音になっている。
 これは安定して
 聞き心地が良い音になっている。
 断面がスマートで植物にとってもよい」と
小林さんはおっしゃいます。
 
  • 住所:〒360-0025
    埼玉県熊谷市太井485
  • 電話:048-520-3955
 
吉岡刃物製作所


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吉岡刃物製作所」は 昭和21(1946)年、
ラシャ切鋏を作り始めたのが始まりです。
「ラシャ切鋏」は、布地を裁断する鋏で
やや大型の鋏です。
「裁ちばさみ」「洋裁ばさみ」とも言います。
「ラシャ(羅紗)」とは、
ポルトガル語の「raxa」に由来し、
羊毛で地の厚く密な毛織物を指します。
 
吉岡刃物製作所」では、昭和48年頃から
「植木鋏」「根切鋏」などを手掛けるようになり、
現在は「刈込鋏」を中心に園芸用刃物の製造を
行っています。
吉岡刃物製作所」では、1日に1500本の
刈り込み鋏を製作しているそうです。
 
吉岡刃物製作所
  • 住所:〒675-1360
    兵庫県小野市喜多町346
  • 電話:0794-62-4421
 
 

3.魔法のキッチンばさみ
(「林工業」林文也さん)


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野菜や刺身、肉などを簡単に切れる
「魔法のキッチンばさみ」こと
「キヨツナシェフキッチン200mm」は、
年間3000兆売れるヒット商品です。
作ったのは「林工業」の林文也さんです。
 
 
リュウマチで利き腕が不自由になってしまった
知り合いが使えるものをと考え、試行錯誤を
繰り返しながら開発しました。
 
「魔法」と称される秘密は、
この鋏の独特の形状にあります。
 
交差する2つの刃は、
片方は食材が切れやすいように
包丁の形に加工された「包丁の役目」の刃、
もう片方は食材が滑りにくいように歪曲させて
「まな板の役目」をする受け刃にしたことで、
まな板の上で包丁を使うのと同じように、
しっかりと食材を固定して、
キレイにカットすることが出来ます。
 
焼いた肉をフライパン上で切り分けるのに、
大変使いやすく便利な逸品です。
またこれまで冷凍食品や魚の骨等の堅いものは
逃げてしまいましたが、
そういった食材も逃がすことなく、
楽に切ることが出来ます。
また、バナナ等の柔らかいものも、
繊維を潰さず、包丁で切った様な
滑らかな切り口となります。
刃と刃に隙間を設けたことにより、
鋭い切れ味が長時間持続します。
 
 
林工業」では、 熟練した職人がひとつひとつ
丁寧に製品作りをしています。
そして「キヨツナシェフキッチン200mm」は
随所に職人の技術と経験が光る逸品なのです。
 
 
刃の近くの輪は栓抜きとして、
持ち手近くの輪はくるみ割り等にも使用出来、
キャンプなどのアウトドアでも重宝する
でしょう。
 
  • 住所:〒675-1377
    兵庫県小野市葉多町329-1
 
 

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