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美の壺「繊細に姿よく はさみ」 <File 564>

<番組紹介>
キラキラ好き必見!江戸から続くあめ細工をきらめくアート作品に生まれ変わらせる握りばさみ。
5分が勝負!
あめ細工界の革命児が追及する握りばさみの機能とは!
 ▽緻密さと優美さに驚がく!
  世界が認めた圧巻のレース切り絵
 ▽最高ランクの花ばさみが可能にする華道の技!
  現代の名工たちが続々登場!
  伝統の技が紡ぎだす唯一無二の逸品。
  重厚な佇まいと洗練された形、その切れ味とは…。
 
初回放送日: 令和4(2022)年8月12日(金)
 
 
「はさみ」は、文具は勿論、調理や園芸、工芸用など、
私達にとって身近な道具です。
その歴史は古く、紀元前10世紀には、使われていたとか。
そして今、日本の職人達が生み出す鋏は、世界の一流達も認める逸品です。
その極上の「鋏」をひとたび一流のアーティスト達が握れば、
二つとない究極の美を作り上げていきます。
緻密で繊細な「レース切り絵」。
伝統を重んじながら常に革新を求める「華道」。
そして江戸文化をアートにまで高めた現代の「飴細工」。
「ものを挟んで切る」ただそれだけのシンプルな道具「鋏」。
その鋏が生み出す極上のアートと、それを生み出す技を支える鋏。
その奥深い世界に迫ります。
 
 

美の壺1.心地よく 手になじむ

透明な飴細工(「浅草 飴細工 アメシン」飴細工師・手塚新理さん)


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東京浅草寺近くの路地にある、
昔懐かしい飴細工の専門店「浅草 飴細工 アメシン」。
「アメシン」の看板商品の一つでもある
透明な飴細工の「金魚」は、
まるで水の中をゆらゆらと泳ぐ本物の金魚かと見間違うほど、
躍動感を感じさせる作品です。
 

 
「アメシン」を取り仕切るのは、
飴細工師の手塚新理(てづか しんり)さんです。
花火師を経た後、
「飴細工でもっと面白いことができるはず」と感じ、独学で飴細工を学び、
平成25(2013)年、東京浅草に工房店舗「浅草 飴細工アメシン」を設立。
そして平成27(2015)年には東京スカイツリータウンに2号店をオープン。
上海やニューヨーク、バルセロナなどでの実演も行い、
世界からも注目を集める、
長い歴史を持つ飴細工界においては、まさに新進気鋭の存在です。
 

 
透明な飴細工を最初に作ったのは、手塚さんです。
江戸時代から続く飴細工の歴史の中で
これまで透明の飴細工は作られていませんでした。
ですが手塚さんは、飴細工の原料である水飴は元々透明なのだから、
透明のまま細工が出来ないかと考え、
水飴の成分や温度管理などを何度も何度も調整して、
3年をかけてガラス細工のように透明な「金魚」をこの世に送り出しました。
 

 
手塚さんの飴細工のもう一つの大きな特徴は造形力です。
飴細工と言うと、お祭りの屋台でデフォルメされた
キャラクター的な造形が思い起こされるのですが、
手塚さんが作り出すものは本物そっくりの金魚。
わずか5分で指先が生み出す世界は、もはや芸術。
手塚さんは、飴を熱して棒につけ、鋏で切りながら形を作るという
昔からの技法やスタイルを踏襲しつつも、
その上で、より写実的で作品性の高い飴細工を追求し続けています
 

 
飴細工の勝負は、水飴が冷めるまでのわずか5分。
手塚さんは、小さなバーナーと
専用の「握り鋏」を使って飴細工を作ります。
 
まず、専用の容器で90℃程度にまで熱した飴を
ほんの一握り「握り鋏」で切り取り、棒の先につけます。
ここから飴が固まるまでのカウントダウンが始まります。
重力による変形を防ぐために、常にくるくる棒を回しながら
「握り鋏」で切って形を作り出していきます。
 

 
手塚さんの使う「握り鋏」は、裁縫用の「握り鋏」とは違います。
形を一気に作るため、バネの戻りを強くした鋏です。
手塚さんは7本の指を使うイメージで飴細工を作っているそうです。
右手は、5本の指と2本の鋼の指が増えている感じだそうです。
手塚さんの身体の一部のような「握り鋏」です。

 
 
<浅草本店工房>
  〒111-0024
  東京都台東区今戸1-4-3 1F
 
<東京スカイツリータウン・ソラマチ店>
 〒111-0024
  東京都墨田区押上1-1-2
  東京スカイツリータウン・4階
  イーストヤード11番地
 
 
 

播州刃物(播州刃物の握り鋏職人・水池 長弥さん)


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浅草 飴細工 アメシン」の代表・手塚新理(てづか しんり)さんが
手塚さん愛用の「握り鋏」を修理するために、
兵庫県小野市にあるやって来ました。
 
「握り鋏」は軸がない唯一金具が使われていない鋏です。
メンテナンスをきちんとすればずっと使い続けることが
出来ます。
  
 
兵庫県小野市は、江戸時代より続く
「播州刃物」で有名な地です。
小野市の「播州刃物」は主に鋏や鎌を得意とし、
「小野の鋏」とか「小野の鎌」という名称で
230余年の長きに渡り
全国的に広く親しまれ愛用されてきました。
 
小野市の握り鋏の歴史は、江戸末期の頃に遡ります。
大坂で鋏造りの修行をしていた盛町宗兵衛が、
技術を持ち帰り広めたことから始まります。
 
現在でも小野市の鎌は、全国シェアナンバーワンです。
他にも、鋏類やカミソリ類など、
薄くて高度な技術のいる刃物は、この辺りの十八番です
 
 
手塚さんが「握り鋏」の修理をお願いするのは、
鍛造から「握り鋏」を作ることが出来る世界で唯一の職人、
握り鋏職人の水池長弥(みずいけ おさみ)さんです。
手塚さんの「握り鋏」を作った燕三条市の職人さんは既に引退し、
残るは水池さんだけになってしまいました。
 

 
水池さんは、代々続く鋏鍛冶の四代目で、
この道50年以上のベテランです。
75㎡の小さな町工場で「握り鋏」を作っています。
今ではほとんどがプレス式の安価な生産方法で作っていますが、
水池さんは「総火造り鍛造」(そうびづくりたんぞう)という
伝統的な製法で作っています。
「総火造り鍛造」(そうびづくりたんぞう)とは、
1本の鉄板の上に1000度の炎で熱した鋼を乗せて、
叩いて接着、鍛造していきます。
持ち手部分も同じ鉄板からハンマーだけで作り出すので
刃から持ち手で1本物です。
刃と持ち手が一体成形なので強度が高く、
その分軽くすることが出来、手の負担が少ないのが特徴です。
切れなくなれば研ぎを繰り返し、
40年、50年と使い続けることが出来ます。
大量生産品は、身の部分、持ち手の部分を別々に作り、
持ち手部分は鋳型で作り接合します。
身の部分も手打ちほどは鍛えませんし、鋼の量も少ないので
切れ味の続く長さも短いので、鋏の寿命も短命と言わざるを得ません。
 
水池さんは熱した鉄に特殊な接着剤で鋼をつけたら
火にかけて金槌で叩いて作っていきます。
型を使わず30の工程を一人の手作業で行います。
手作業のため、依頼者の細かな注文にも応えることが出来ます。
 

 
水池さんは、魂を打ち込み、
お客様に喜んでもらうため考えを巡らせて製作しているそうです。
 
水池さんは数年前にある問屋さんの依頼を受けてから
日本剃刀も本格的に製作しています。

 
 
 

美の壺2.個性豊かな機能と形

はさみのコレクション(和光大学大学講師・関根秀樹さん)

 
和光大学で非常勤講師をしている関根秀樹さんは、
古代発火技術をはじめとする原始生活技術の研究家にして、
民族音楽研究家、刃物研究家、武術研究家などのフリーの研究者で
ライターでもあります。
 

  

 
そんな関根さんは、世界各地の鋏のコレクションもしています。
500本以上あるそうです。
古いものは、300年前に遡るものもあるそうです。
 
はさみと一口で言っても用途によって様々の種類や形があります。
コレクションのはさみを拝見しました。
 
大きなはさみは、モンゴル製の羊の毛を切るはさみです。
 

 
コウノトリの形をしたはさみは、
ヨーロッパの刺繍ばさみです。
繊細に施された刺繍糸を切るために先端が尖っていて
くちばしの部分で切ります。
 

 
 「竹ばさみ」は
蓄音器の竹製のレコード針を作るハサミです。

 
 

切り絵ばさみ(レース切り絵作家・蒼山日菜さん)


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山梨県南巨摩郡身延町にある「富士川切り絵の森美術館」は、
日本では数少ない切り絵専門の美術館として
平成22(2010)年に開館しました。
 

 
レース切り絵の作品『ハートの馬車』は
左右対称のハート型の馬車を
レースのような繊細な線を切り絵で表現したものです。
 
こちらの作品を制作した蒼山日菜さんは、
ハサミだけで緻密な切り絵を切る「レース切り絵」の先駆者です。
フランスに在住していた時にスイス切り絵に出会い、
2000年より切り絵を始めました。
 
 
文字を細かく切り出し再現した『ヴォルテールの書』は
2008年のスイスシャルメ美術館の
「第6回トリエンナーレ・ペーパーアート・インターナショナル展覧会」で
アジア人初となるグランプリを受賞。
以後、数々の賞を受賞。
News weekが発表する「世界が尊敬する日本人100人」にも
選出されています。
 

 
蒼山さんは黒い色を塗った特注の紙の裏に下絵を描き、
鋏で切り抜きます。
使うのは「切り絵ばさみ」です。
刃渡りおよそ24㎜、
シャープな刃になっているので、
切り絵の際に針を使用しなくても刃先で紙に穴を開けることが出来、
切り進むことが出来ます。
紙の繊維1本も残さない切れ味は、鋭い針のようです。
蒼山さんの使うはさみは、
日本のハサミメーカー・長谷川刃物と2年をかけて作ったものです。
蒼山さんは、製作をする時、無心になれるそうです。
切り進めると裏返して工程の進み具合を確認して感動し、
完成すると達成感で自分が満ちるのだそうです。

 
  • 住所:〒409-2522
       山梨県南巨摩郡身延町下山1597
  • 電話:0556-62-4500
 
 
 

美の壺3.想いを込める

花ばさみ(未生流笹岡三代目家元・笹岡 隆甫さん)


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未生流笹岡(みしょうりゅうささおか)
三代目家元の笹岡隆甫(ささおか りゅうほ)さんが生ける花姿は、
すっきりと洗練された「引き算の美」です。
重なり合った枝葉を極限までそぎ落とし、
一輪の花、一枚の葉の輪郭まで際立たせます。
 

 
この日、笹岡さんが生けた花は、夏の花です。
シモツケ、桔梗、ナナカマドを花材に
夏から秋へ「二季の通い」という手法で
夏と秋の二つの季節の移ろいを表現しています。
 

 
いけばなには、「花ばさみ」を使った巧の技が隠されています。
枝や茎を曲げる「矯め」(ため)は、
切れる花ばさみがあるからこそできる技です。
 

 
笹岡さんが6歳の頃のはさみがあります。
先代が誂えたもので、本名の「隆平」と名が刻まれています。
 

 
笹岡さんは、花ばさみは家族の存在を感じるそうです。
祖父、曾祖父の想いを継いでくれるものだとおっしゃいます。
歴代の家元が感じ取っていたことを想って
花ばさみを通じて継いでいくものだと話して下さいました。
 

 
未生流笹岡(みしょうりゅうささおか)は、
隆甫さんの曽祖父・笹岡竹甫(桃流斎竹甫)が開いた
華道の流派です。
 
 

華道鋏「國治」(「国治刃物工芸製作所」鍛冶職人・川澄巌さん)


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川澄巌(かわすみいわお)さんは、
東京・足立区にある「東京打刃物・国治刃物工芸製作所」で
65年以上、花ばさみ「國治」を作り続ける名工です。
 
父である初代國治(昭和49年、勲六等瑞宝章受章)のもとで、
華道・盆栽・園芸鋏づくりの技術を培い、「國治」を継承。
以降、鋼と鉄を火で熱し金槌で叩く昔ながらの製法により、
手仕事にこだわってはさみを作ってきました。
 

 
川澄さんのつくる「國治」は国内でも最高ランクと名高い名品で、
その完成された鋏の姿には他の職人の追随を許さない美しさがあります。
「切る音が違う」「刃先が指先になる」「刃先に目がついている」と
多くの華道家から絶大な信頼を寄せられています。
 
東京打刃物(とうきょううちはもの)
「東京打刃物」のルーツは「日本刀」にあります。
明治4(1871)年に「廃刀令」が公布されて以降、
刀鍛冶の多くが業務用・家庭用の刃物づくりへの転業。
日本刀の「総火造り」という技法を用いて、
暮らしの中で使われている刃物を造るようになりました。
「江戸打刃物」の職人がノミや鉋(かんな)を造るのに対し、
「東京打刃物」は鋏づくりが主流となり、
今日でも製造が行われています。
 
 
「地鉄」と不純物を極限まで排した「安来鋼」に
1000℃の熱を加え、金槌で一撃を加えて生み出された包丁は、
軽く触れるだけで裂くという日本刀の特性に近く、
鋏も繊維の一本一本を確実に裁つ精密さを備えています。
切れ味が長持ちし、刃欠けしにくく、軽くて持ち疲れせず、
美しいフォルムと輝きを持つ「東京打刃物」は、
百年続くと言われる一生ものです。
 
 
川澄さんは、「国治刃物工芸製作所」で一人で生産に携わっています。
「國治」が名品と言われる由縁は、製造工程の多さにもあります。
一製品を仕上げるのに、他の職人が作る鋏の倍以上の工程を経て
手間をかけて、刃先まで使い手の神経が行き届く逸品を作り上げているのです。
 

 
川澄さんはまた、
「新しいうちはどれも切れるが、長くどれくらい使えるかが問題」だと
おっしゃいます。
よく切れる鋏は左右の刃が1点のみで交わるようになっています。
川澄さんは、絶妙な嚙み合わせを追求します。
極上の切れ味は、熟練の職人の目と手先の感覚から生み出されています。
 

 
川澄さんは、手作りだから価値があるのではなく、
手作りで機械に出来ない価値を生み出すことが大事と
おっしゃいます。
花ばさみに込められた川澄さんの想いが伝わってきます。
 

 
将来の日本のものづくりにおいては、AIやロボットにやらせることが出来ればそれでいい。但し、それに携わる人間が基礎を学び勘を養うことを忘れては駄目だと思う。
「今はコンピュータに形を読み取らせて何でも作ることができますよ」と教えてくれる人もいる。でも形だけ出来ても、きちんとしたものにするためには微妙な調整が必要なんだ。
「あそこをちょっと叩けばよくなる」という微妙な部分にはまだ人が必要で、本当にいいものにするためにはその部分が最も大事なんだよね。基礎からこつこつ学んでいかなければ、身に付かないことなんだけれど。
 

 
国治刃物工芸製作所
  • 住所:〒123-0873
       東京都足立区扇一丁目3-12
  • 電話:03-3890-1854
 

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