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美の壺「新年を祝う 雑煮」<File 433>

<番組紹介>
日本の正月に欠かせない雑煮。
土地土地の産物を取り込み、具も汁もさまざま。
そこには新しい一年を幸せに過ごしたいという人々の願いが。
室町時代の武士が食べていたのは、「敵をのす」を意味する「結びのし」など縁起のよい具を煮込んだ雑煮。
奈良県山添村では、神聖な火と水で、昔ながらの雑煮を作る。
料理研究家の鈴木登紀子さんは、故郷の2種類の雑煮を披露。
ハレの日にふさわしい、雑煮用の器も紹介する。!
(初回放送日: 平成29(2017)年12月22日放送)
 
 
今回のテーマは雑煮。新年を祝う餅を入れた汁物。
土地土地の産物を取り入れる。雑煮は郷土の縮図と言われる。
そこには新しい1年を幸せに過ごしたいという人々の願いが込められている。
今日は雑煮の魅力に迫る。

 

美の壺1.神とともに餅をいただく

 

宮中雑煮(御ちまき司「川端道喜」・川端知嘉子さん

 
京都の老舗和菓子店「川端道喜」にある
代々伝わる、宮中行事に使われた御用品を表した
絵巻『御定式御用品雛形』には、御鏡餅の様子が描かれています。
神に捧げるお鏡餅が紅白の丸餅の上に薄い餅が重ねられたものです。
 

 
これと同じ丸餅が、
宮中の雑煮に使われていたと伝えられているそうです。
昔は汁のない雑煮だったと
和菓子店代表の川端知嘉子さんは教えて下さいました。
 

 
材料は赤い菱餅、白い花びら餅、そして味噌と牛蒡の煮物。
その名も「葩餅」(はなびらもち)
花びら餅を広げ、菱餅を重ね、
そこに味噌と牛蒡を重ねて出来上がりです。
身分の高い人も低い人も同じものを頂くことで、
神様のいただきものを皆で分かち合う意味があるのだそうです。
 
京都の老舗和菓子店「川端道喜」は、
文亀3(1503)年に、京都の鳥羽出身の武士・
渡辺進が開いた餅屋が起源です。
戦国時代には財政が逼迫していた朝廷に、
塩餡で包んだ餅を毎朝献上していたと言われ
その餅は「お朝物」と呼ばれていたと
伝えられています。
この餅菓子の献上は、
後に「朝餉(がれい)の儀」として形式化し、
明治天皇が東京に移るまで続きました。
現在の川端道喜を代表する銘菓
「水仙粽」「羊羹粽」は、吉野葛に上白糖を加えて練り上げ、笹の葉に包んで蒸したものです。
 
御ちまき司 川端道喜
  • 住所:〒606-0847
       京都市左京区下鴨南野々神町2-12
  • 電話:075-781-8117
 
 

伝承料理研究家・奥村彪生さん

 
全国の郷土料理から世界各地に伝わる伝統料理まで、
幅広く復元・研究している
伝承料理研究家の奥村彪生(おくむら あやお)さんは、
武士は宮中とは違う雑煮を食べていたとおっしゃいます。
 
具材は、武士らしい縁起を担いだ、海の幸・山の幸です。
丸餅、勝ち栗、わらび、結び熨斗、あわび、昆布、なまこで、
それぞれに意味があると解説して下さいました。
奥村彪生さんは、
「鏡餅の分身。餅には年神様が宿っている。
 もう一つは魂。神様の魂が宿っている」と語ります。
 

 
 

奈良県山添村の頭芋雑煮(中山勝功・容子さん )

 
奈良県の山添村は、
昔ながらの雑煮作りの風習が根強く残る地域です。
農家の中山勝功さんと容子さんの雑煮の支度は、
12月28日に、餅作りから始まります。
家中の神棚にお供えする為にたくさん作ります。
 

 
そして大晦日には、具材の下準備が行われます。
畑で取れた「頭芋」(かしらいも)を使って、
年が明けた春日神社から神聖な火を持ち帰り、
その神聖な火を種火として、
年の始めに汲んだ「若水」(わかみず)で雑煮を煮ます。
 
その年の恵方に「祝い膳」を神に捧げて、
儀式の後、餅を焼きます。
それをサッと煮てお椀に入れます。
頭芋は切らずにそのまま投入したら、
神への感謝と祈りを込めた雑煮の完成です。
お膳には神様と同じ餅が添えられ、
餅や頭芋はきなこにつけていただきます。
無事1年過ごせるようとの思いで、
雑煮を頂くと語っていらっしゃいました。
 
 
 

美の壺2.意外と知らない隣の雑煮

 

日本各地の雑煮

東京都内の料理教室で、
生徒さんそれぞれに雑煮を作ってもらいました。
5人5様にまるで違うお雑煮。
それぞれの雑煮を食べ比べると新鮮な美味しさ。
当たり前だと思っていた我が家の味は
他とは違う特別な味でした。
 
静岡県静岡市「里芋大根小松菜の雑煮」
静岡県静岡市出身の小池彰子さんは、
里芋・大根・小松菜が入った雑煮です。
 
大分県佐伯市「特産の鰤の塩漬けの雑煮」
大分県佐伯市蒲江出身の牧かつら さんは、
天然の鰤(ぶり)がよく獲れる12月ぐらいになると
買ってきて丸ごと塩漬けにして、
雑煮の具にするそうです。
 
兵庫県姫路市「白味噌丸餅が基本の雑煮」
兵庫県姫路市の中原紀子さんの雑煮は、
白味噌に丸餅の雑煮です。
 
愛知県名古屋市「鰹節をかけた雑煮」
夫の両親が名古屋市出身という中尾真由さんの雑煮は、
鶏肉にすまし汁の雑煮です。
名古屋は鰹節をかけることが多いそうです。
 
宮城県仙台市は松島湾のハゼがお椀から溢れんばかり
宮城県仙台市在住の高橋章子さんが作る雑煮は、
ハゼとイクラなどの海の幸がメインです。
松島湾で釣れたハゼを串に刺して、
炭火で焼いたものを縄に結んでぶら下げ、お雑煮にします。
暮れになるとお店にも売られているそうです。
 
 

ばぁばのお雑煮(鈴木登紀子さん)

「登紀子ばぁば」の愛称で親しまれている
料理研究家の 鈴木登紀子(すずき ときこ)さんに、
雑煮の作り方を紹介して頂きました。
 
野菜を3cmに短冊切りにして、下茹でします。
お餅は焼かずに湯で柔らかくします。
お餅の上に野菜を敷いて、
餅がくっついて器を傷めないようにするためだそうです。
最後に海の幸を加えたら、彩り豊かな雑煮が完成です。
 
更に、鈴木家にある、
「ひき菜」と呼ばれる大根の千切りなどを使う
「ひき菜雑煮」を紹介して頂きました。
 
ひき菜とは、
大根、人参、牛蒡、凍み豆腐などを
細くせん切りにしたものを
大きな鍋でサッと湯がき、
それを一晩凍らせたものです。
 
味付けは普段使う味噌、
具は餅と野菜、油揚げだけでさっぱりと頂く雑煮です。
 
 

美の壺3.ハレの日をともに迎える

 

母から娘へ継がれる雑煮椀(文筆家・編集者・片柳草生さん)

 
文筆家で編集者の片柳草生さんは、
様々な生活道具に関わってきました。
片柳草生さんが雑煮椀に使うのは特別なお椀です。
25年前に母から譲り受けた、
明治時代に作られたという漆塗りのお椀です。
お椀には、鳳凰と桐の蒔絵が施されています。
 
お父様は歌人の宮柊二(みや しゅうじ)さんで、
お母様は歌人の宮英子(みや ひでこ)さんです。
 
このお椀には、家族の歴史が刻まれているのだそうです。
このお椀は、元々、富山の菓子店を切り盛りし、
女手一つで子供を育てた、
祖母の瀧口カツさんが使用していたものでした。
お椀は元々20脚もあり、
カツさんは、そのお椀で店の従業員に雑煮を振る舞っていたと
考えられています。
それをお母様の宮英子さんが結婚する時に譲り受けました。
正月には、このお椀で家族賑やかに雑煮を食べていました。
そして25年前に片柳さんが母から譲り受けました。
女の歴史があるような気がして、
祖母や母のことを思い出して頂くと語っていらっしゃいました。
 
 

京都の伝統的な雑煮椀(京漆匠「象彦」西村毅さん)

 
京都御所に近い漆器の老舗京漆匠「象彦」
創業は1611年。
ずらりと並ぶ漆器の中で最も大きいのは雑煮椀です。
京都の伝統的な雑煮椀はシンプルに出来ています。
男性用は「総朱」、女性は「黒内朱」。
家族全員がそれぞれの雑煮椀を持っている家庭も多いそうです。
 

 

家紋入りの雑煮椀(山内早苗さん・レイラさん)

京都左京区に住む山内早苗さん。
山内さんのお宅は京都の由緒ある商家です。
早苗さんには、夫の母に作ってもらったお椀があります。
 

 
間もなく早苗さんの息子さんと結婚する予定という
レイラさんが見にいらっしゃいました。
早苗さんのお椀には
「木瓜紋」と呼ばれる家紋が入っています。
 
  • 住所:〒604-0916
       京都市中京区要法寺前町719ー1
  • 電話:075-229-6625
 
 

蒔絵師・富永幸克さん

蒔絵師の富永幸克さんによると、
正月が近くなると家紋入れの作業が増えてくるそうです。
京都はいろんな風習やしきたりがあるので、
全部家族愛や地域の結びつきに繋がるとおっしゃいます。
 
レイラさんが、お椀を見に来ました。
レイラさんは札幌出身なので気構えするとおっしゃっていました。
レイラさんのご実家の紋は「四つ菱」(よつびし)だそうです。
 

 
<参考> お雑煮

www.linderabell.com

 

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