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高知県「土佐打刃物」

 
現在、「第3次キャンプブーム」により、
おしゃれな刃物を使いこなすことがステータスとなっています。
そこで注目されているのが、自由鍛造の「土佐打刃物」です。
 
 

1.刃物の産地

 
刃物の産地と言えば、
  • 「燕三条」(新潟県三条市)
  • 「関」  (岐阜県関市)
  • 「堺」  (大阪府堺市)
・・・・などが挙げられると思います。
 
高知県(土佐)で造られてきた「土佐打刃物」も
これらに並ぶ古くからの刃物の産地です。
 

 
高知県は、森林率全国No.1。
暖かく雨が多いため良木に恵まれ、
昔から全国に多くの木材を搬出してきました。
その木材の伐採に必要なため、
古くから打刃物が造られて、使用されてきました。
 

 
「土佐打刃物」は、現在の土佐山田町の刀鍛冶から習って、
鎌、鉈、鋸、鍬など、
農山林具としての道具を中心に発達したと言われており、
今でも全国有数の刃物産地として認められています。
 
 

2.土佐打刃物とは


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「土佐打刃物」(とさうちはもの)は、
高知県の香美市・南国市・土佐市・いの町・須崎市といった
高知県東部から中部にかけての一帯で、
定められた工程で造られた刃物のことです。
 
 

 
 
「土佐打刃物」の特長は、
日本刀と同じ高品質の刃物鋼を用いることにあります。
日本刀のように鍛えることにより、
切れ味・耐摩耗性・刃の粘りを与えています。
 
また「土佐打刃物」は、
山林用・農業用の実用的な道具に端を発しているため、
切れ味だけでなく、耐久性や手入れのしやすさも特徴の一つです。
 
 
更に鍛冶師達は、
「金配り」に心を砕き「持ち重み」を意識すると言います。
どういうことかと言うと、
刃の背や腰を厚く、刃先は薄くしバランスをとることで、
同じ品でも持った感じが軽く、
長時間の作業でも疲れにくい刃物に造り上げるということなのだそうです。
 

 
一般的に「土佐打刃物」は、
鍛造から刃付け、仕上げまでを職人が一貫して行うため、
自由度が高く、
分業体制の刃物に比べ
コストパフォーマンスの高い刃物に仕上がっています。
 

 
このように、
切れ味がよく、耐久性があり、
比較的安価な「土佐打刃物」は、
業務用に重宝されてきました。
近年の世界的な和食ブームにより、
包丁は数ヶ月待ちというほど、人気になっています。
 
 

3.自由鍛造


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「土佐打刃物」の特徴は「自由鍛造」です。
「自由鍛造」とは、用途・場所(土壌)・背丈などに応じて、
寸法や柄の角度などを自由自在に形を造ることです。
原寸と形を書いた注文書だけで注文品を造ることが出来ます。
 
 
「土佐打刃物」の職人にかかれば、
鉄の塊が、瞬く間に希望の型になります。
プレスで抜く刃物では到底叶えられない、
高品質な一本が仕上がるのです。
 
 

4.土佐打刃物の歴史


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土佐刃物づくりの歴史は古く、
鎌倉時代後期の徳冶元(1306)年に、
大和国より刀鍛冶・五郎衛門吉光が土佐の国に移住。
その一派が戦国末期まで繁栄し、
打ち続く戦乱の世で武具刀剣などの需要に応じていました。
 

 
更に、土佐藩主であった長宗我部元親が、
豊臣秀吉の小田原征伐に参戦した際に、
佐渡から熟練した刀鍛冶を連れて帰り、
現在の香美市土佐山田町に住まわせました。
この鍛冶職人のおかげで
「土佐打刃物」の技術が著しく発展したと言われています。
 
天正18(1590)年の土佐一国を総地検した
「長宗我部地検帳」には、
399軒の鍛冶屋があったと記されています。
 

 
 
「土佐打刃物」としての本格的な始まりは江戸時代からです。
財政が窮迫した土佐藩は「元和改革」(1621年)を実行。
家老・野中兼山が
「森林資源の確保」及び「新田開発」などの
振興政策を進めたことにより、
農業、林業用の打刃物の需要が一気に拡大。
量産体制及び品質の向上が図られ、
「土佐打刃物」が確立されたのでした。
 

 
明治になり、田村喜蔵(鎌)などが多くの弟子を輩出。
この弟子らが切磋琢磨して、
他に比類なき「土佐打刃物」を今に伝えています。
 
「土佐打刃物」は、
平成10年(1998)に国の伝統的工芸品に認定されました。
高知県で認定されているのは、
「土佐打刃物」と「土佐和紙」の二つだけです。
 
 

5.山男「杣師」(そまし)


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「杣師」(そまし)とは、
高く険しい山から大木巨木を切り出す山男のことです。
 
土佐の「杣師」(そまし)は、
その卓越した山林作業技術が高く買われて、
全国各地の山仕事の現場に駆り出されていました。
 
その際、土佐の杣師達は当然、
大切な相棒「土佐打刃物」も一緒に全国各地に連れて行きます。
それにより、切れ味、耐久性、使い勝手の良さは
山仕事の一級品としての「土佐打刃物」の名前は、
土佐の山男の仕事ぶりとともに日本全国に広がりました。
「杣師」(そまし)の存在が
「土佐打刃物」を全国ブランドに押し上げたのです。
 
 

6.鍛冶屋創生塾


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高知県の重要な伝統的産業である「土佐打刃物」ですが、
近年は、鍬・鎌・斧・ 鋸等の農林用刃物の使用機会の減少、
加工食品の増加や中食市場の増加などによる
家庭での包丁の使用機会の減少などにより、需要が低下。
製造業者・生産額とも減少しています。
 
ただ一方で、農林用刃物が全国で野鍛冶が減少する中、
高知の職人は、どんな商品にも柔軟に対応出来ると、
最後の頼みの綱としての存在価値を高めているのも事実です。
 
しかし後継者不足も加速。
「この技だけは、どうしても伝承しなければならない。」という
職人達の長年の思いが叶い、
高知県土佐刃物連合協同組合は「鍛冶屋創生塾 [PDF]」を設立。
後継者育成のために尽力しています。
研修期間は2年、募集人数は3名です。
 


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<土佐刃物流通センター>

「土佐刃物流通センター」には、
「土佐打刃物」が3000点を常時展示されています。
また、家庭用、プロ用包丁を始め、園芸用刃物から本格的山林用刃物、
レジャーナイフなどのアウトドア用品まで販売されています。
 
  • 住所:〒782-0056
       高知県香美市土佐山田町上改田109
  • 電話:0887-52-0467
 
 

<関連>イッピン「伝統の切れ味、鍛造の極み 高知の刃物」

omotedana.hatenablog.com