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京都府・「京象嵌」(きょうぞうがん)


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日本の伝統的な技法「象嵌」(ぞうがん)は、
模様を象(かたど)り、嵌(は)め込むという意味で、
金属や木材、陶磁などに模様を彫り、
その窪みに別な素材をはめ込む加飾法です。
 
 

「京象嵌」(きょうぞうがん)とは

「京象嵌」(きょうぞうがん)は、
金銀を薄く伸ばしたものを切り抜き、
布目に彫られた鉄の生地に嵌め込み、
仕上げに漆を塗り焼き上げる「布目象嵌」を中心に発展し、
京都府知事指定の「京都府伝統工芸品」の一つに挙げられています。
 
現在、京都で製作される象嵌製品には、
ブローチ、ペンダント、イヤリング、ネクタイピン、カフスボタンなどの装身具、
額、衝立などを中心とする室内装飾品があります。
 
 

「象嵌」の歴史

 
「象嵌」の歴史は極めて古く、
どこで「象嵌」という技法が産まれたのか
はっきりとした手掛かりはありませんが、
「金工象嵌」は、鉄精錬が始まったとされる紀元前1500年頃に、
シリアのダマスカスにて始まったと言われています。
そのため「金工象嵌」の技法は、
英語で「Damascene(ダマシン)」と呼ばれています。
 
シリアのダマスカスから西進し、エジプトを経て、
13世紀頃に現在のスペイン・トレド市で
トレドの象嵌細工「Damasquinado(ダマスキナード)」が栄えました。
 
 
一方、東進しシルクロード経由で
仏教伝来と共に大陸より日本に伝わったのは飛鳥時代頃とされ、
仏像や仏具装飾等に用いられました。
奈良県天理市にある石上神宮いそのかみじんぐうの神宝「七支刀(しちしとう)が、
日本国内に現存する最古の象嵌製品です。
 

 
国内で作製された最古の象嵌製品は、
埼玉県行田市の稲荷山古墳から出土した鉄剣
金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん・471年推定です。
(「金錯」は「金象嵌(きんぞうがん)」の意味)
 
 
正倉院にも刀身に金で「象嵌」したものが遺されている他、
奈良の薬師寺本尊の掌や仏足にも輪宝文などが「象嵌」されています。
鎌倉時代以降には、刀の鍔(つば)や甲冑の金具など武具の装飾として、
草花鳥獣、風景などをデザインした「象嵌」が施されるようになりました。
 

 
 

京象嵌(きょうぞうがん)の歴史

 
「京象嵌」、いわゆる「布目象嵌」の技法は、
「鉄砲伝来」に始まります。
鉄砲に施された「鉄地への金銀装飾技術」から、
江戸時代初め頃、
西陣に住む埋忠(うめただ)と正阿弥(しょうあみ)などの職人が
優れた象嵌技術を生み出し、武器や武具に広く応用し、
流行しました。
この技術は、京都で繁盛したことから「京象嵌」と呼ばれました。
そして、両家の弟子達が日本各地の大名に仕えるようになり、
その技術は肥後・加賀など全国に広まりました。
 

 
「布目象嵌」は、
多方向に細い切れ目を入れた鉄地表面の谷間に
金銀を打ち込んだものです。
純金や純銀を使用するため大変高価であり、
上級の武士階級や貴族など一部の階層を中心に広がりました。
しかし江戸時代末期までには、
火鉢やキセルなどして一般にも広く用いられるようになりました。
ところが明治9(1876)年の「廃刀令」により、
「京象嵌」は一時途絶えかけました。
生き残りを掛けた職人達は政府の指導の下、
新たに美術装飾品や装飾小物を手掛け、
そして1878年のパリ万国博覧会へ正式出展したのを機に、
金銀の高尚優雅な色、落ち着いた艶の持ち味が
ジャポニズムに沸くヨーロッパで高く評価され広く輸出され
脚光を浴びるようになりました。
 


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明治期の代表的な職人のひとり、駒井音二郎は、
「Komai」と呼ばれて人気ブランドとなりました。
駒井家は京都で代々刀匠(とうしょう)を営む家で、
駒井音次郎は慶応元(1865)年に継ぎ、
肥後出身の三崎周助から「肥後象嵌」の技術を学び、
「布目象嵌」による刀装金具の制作を手掛けるようになりました。
明治9(1876)年に「廃刀令」が公布されたことによって、
西洋向けの置物や装飾具の制作へと変換し、
外国人の間で好評を博しました。
明治18(1885)年の火災により家産を失う不遇な時期を迎えますが、
多くの外国人が作品を買い求めた事で復興を果たしました。
内外の博覧会にも積極的に作品を出品しており、
明治36(1903)年の「第5回 内国勧業博覧会」、
明治37(1904)年の「セントルイス万国博覧会」、
明治38(1905)年の「リエージュ万国博覧会」をはじめ、
国内外の博覧会で受賞を重ねました。
 
「駒井象嵌店」は、昭和16(1941)年まで制作を続けましたが、
戦後は真珠店に改めました。
駒井製の作品は、海外への輸出を専業としていた為、
日本国内に現存する作品は少ないです。
 
 

「京象嵌」の 3つの特徴


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1.純金の色褪せない輝き

 象嵌の装飾では、純金や純銀を薄くホイル状に伸ばしたものを
 デザインに合わせて切り抜きます。
 薄く、と言っても金箔よりも分厚く、
 金属の生地にしっかり嵌め込まれた金銀は剥がれることはありません。
 
 
2.一点モノ

 象嵌はほとんどの製造工程が職人による手作業であるため、
 短期間での大量生産には向いていません。
 逆に、オンリーワンの別注品製造の対応も可能です。
 地金を金鋸で切り回しでの外形製作も可能です。
 
 
3.両面にデザインを入れることができる
 基本的に面があればそこに布目を切り、象嵌装飾を施すことができます。
 特にアクセサリー等で、表面と裏面とで異なったデザインを入れた商品も
 多数ございます。