<番組紹介>
今回のイッピンは、「小石原焼」。
福岡県の山間にある東峰村で作られる器は、
中心から外側に向かって細かく放射状に散る
独特の模様が特徴
その素朴な美しさが今、注目を集めている。
模様を生み出すのは「飛びカンナ」というワザ。
ろくろで回転させながら「カンナ」を当てる。
「カンナ」の形状やあて方ひとつで、
さまざまな表情が作り分けられる。
江戸時代から徹底して親しみやすい器を作り続ける
職人たちを加藤夏希がリサーチ。
福岡県の「小石原焼」とは、
福岡県朝倉郡東峰村の小石原地区で作られている陶器のことです。
普段使いの器で素朴ながらも美しい模様で、
九州では長年愛されてきました。
ナガオカケンメイさんがディレクションしている
渋谷のセレクトショップ「d47 design travel store」で
今一番注目されているのは「小石原焼」だそうです。
- 住所:〒150-8510
東京都渋谷区渋谷2-21-1
渋谷ヒカリエ8F
1.太田哲三窯
こちらで、「飛び鉋」の模様付けの様子や
「打ち刷毛目」、化粧土に凹凸をつける「櫛目」という技法を
披露してもらいました。
「飛び鉋」は江戸時代に誕生しました。
小石原の陶土は粒子が荒く、絵付けには向いていないためです。
昭和29(1954)年、「民藝運動」の柳宗悦やバーナード・リーチらが
小石原を訪れ、「用の美の極地」という言葉で賞賛しました。
この小石原訪問は、当時のマスコミにも大きく取り上げられ、
山間の小さな村で細々と作られていた「小石原焼」が
全国に知られる大きなきっかけとなりました。
また職人達も技を更に磨いていきました。
太田哲三さんは有田の高校で窯業を学んだ後、
やはり民藝運動の一人、陶芸家・濱田庄司の元で
弟子入りをする予定だったそうですが、
濱田氏より、父・熊雄氏の元で学ぶようにと促され、
以来、昭和50(1975)年に独立するまで父の元で修行しました。
現在は長男の太田圭さんと2人で作陶を続けています。
太田哲三さんはろくろの名手。
小物から大物に至るまで、
器のサイズがピタリと決まるほどの技術を持ちます。
伝統の「飛び鉋」や「刷毛目」といった技法をベースに、
用途に忠実で使いやすいもの作りをしていらっしゃいます。
- 住所:〒838-1601
福岡県朝倉郡東峰村小石原941
2.鶴見窯(二代目・和田義弘さん)
「鶴見窯」の和田義弘さんは、
和洋問わず使える現代のライフスタイルに程良く溶け込む
生活の中の器を作っていらっしゃいます。
義弘さんは元々体育教師になろうと思っていたそうですが、
途中で方向転換。
大学進学をやめて、京都の伝統工芸の学校で焼き物の勉強を始めました。
帰ってきた頃は手書きで「赤絵」の絵付けもしていましたが、
東京のイベントで、
古い伝統的な形を変えない
「小鹿田焼」と間違えられたことが転機となり、
伝統技法を活かしながら、
自分なりの味付けをした和モダンスタイルの器を作るようになりました。
モノトーンの渦巻き模様やシンプルで軽い飛び鉋の入れ方で、
小石原焼に新風を吹き込みました。
人気の「ドット飛び鉋」や光沢のある黒を使った新しい小石原焼は
和田さんの手から誕生しました。
飛び鉋の間を開けたり、少なく入れた「ドット飛び鉋」は、
余白の美やシンプルさが際立つモダンな器で、特に若い女性に人気です。
- 住所:〒838-1602
福岡県朝倉郡東峰村小石原鼓2514-3
3.マルワ窯(三代目・太田富隆さん)
「マルワ窯」の太田富隆(おおたとみたか)さんは、
「小石原焼」にある窯元の中でも
壺や大皿など大物を得意としていらっしゃいます。
アメリカ修行で習得した薄づくりのマグカップ類は、
特にこだわりをもって作っているそうです。
富隆さんは有田窯業大学を卒業後、窯元で10年間修行し、
先代についてみっちりと伝統的な小石原焼を叩き込みました。
「有田窯業大学」は、平成28(2016)年4月より、
4年制課程は佐賀大学の新学部「芸術デザイン学部」に、
2年制課程・短期研修は「佐賀県窯業技術センター
人材育成事業」に移行されています。
そして終業後には自分の作品を作陶し、全国の展覧会に応募していました。
そんな中、20歳の時に大阪民芸館展に出展した作品を見た
米国人陶芸家のリック・アーバンさんが
わざわざ訪ねて来てくれたことが縁となり、半年の米国修行。
薄く軽い焼き物を作る独自の方法やハンドル文化(柄の付け方)を
吸収しました。
その後英国にも渡り、バーナード・リーチの孫弟子の元で学びました。
このことがきっかけとなり、
伝統を守りながらも、常に新しいモノづくりに挑戦し続けています。
カラフルで鮮やかなのも「マルワ窯」の特徴です。
「LINEAGE(リネージュ)」というブランドで、
これまで「小石原焼」にはなかった土鍋や
焼酎サーバー、鮮やかなカラーの花器などを作陶されています。
「リネージュ」とは、
窯跡から出てくる古い「小石原焼」に見られる筋模様のことで、
今でも「刷毛目」や「飛びカンナ」など伝統技法に引き継がれています。
これをマルワ窯を象徴するカラーである鮮やかな赤や、
黒・紺そして伝統色とは発色を変えた白で作品を展開しています。
更に、太田さんは「藁刷毛目」という技法を使って
新たな器を誕生させました。
「藁刷毛目」は、
束ねた藁でろくろの回転に合わせて白化粧土を掛けて、
模様をつけていく技法です。
作家が一瞬にして描き出すため、同じ模様は二つとありません。
藁刷毛目の勢いや力加減で出来る濃淡やかすれ具合が
深い味わいになっています。
平成25(2013)年、福岡県知事注文により
「藁刷毛目壺」を宮内庁へ献上しました。
- 住所:〒838-1601
福岡県朝倉郡東峰村小石原892-1
4.小石原ポタリー
「小石原ポタリー」は、
小石原の窯元とフードコーディネーター・長尾智子の
コラボレーションによって開発された新しい民芸の器です。
テーマは「料理をおいしくする器」。
フォルム、手触り、重み、 意匠の一つひとつに、
温かい風合いが息づいています。
<参加窯元>
- 『森山實山窯』(森山 元實)
- 『宝山窯』 (森山 金光)
- 『元永陶苑』 (元永 彰一)
- 『福嶋窯』 (福嶋 秀作)
- 『川崎哲弘窯』(川崎 哲弘)
- 『鬼丸豊喜窯』(鬼丸 豊喜)
- 『圭秀窯』 (梶原 秀則)
- 『秀山窯』 (里見 武士)
- 『原彦窯』 (梶原 正且)