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イッピン「伝えたい いのちとぬくもり 岩手の焼きもの」

<番組紹介>
その器にいけられた花は、廃墟に咲く命のよう。
また、両手で持つことで
気分がほっとするように工夫された器。
どちらも東日本大震災を経験した
岩手の陶芸家が生み出した。
その花器の肌合いは、さびた鉄のようにも、
切り出された岩のようにも見える。
そこにいけられた花は廃墟に咲く命を思わせる。
東日本大震災の津波で、
大きな被害を受けた岩手県野田村の陶芸家が、
長い試行錯誤の末、たどり着いた形だ。
また、同じ岩手県の温泉郷・花巻市は、
震災後、観光客がなかなか回復していない。
地元の窯元は、
地域おこし協力隊でやってきた青年と
ある器を生み出す。
それは、両手で持つと気分がほっとする器だ。
 
<初回放送日:令和5(2023)年2月24日>
 
 
今回のイッピンは岩手県でつくられる焼きもの。
12年前の出来事がきっかけで、生まれたという。
 
 

1.のだ窯・泉田之也さん


www.youtube.com

 
 
岩手県久慈市にある「小久慈焼」は、約200年前の江戸時代後期に、
相馬より招かれた陶工・嘉蔵に技術を学んだ初代・熊谷甚右衛門が
地元久慈で採れる粘土と釉薬で独自の焼きものを創り出したのが
起源と言われています。
 
 
明治時代には、この地を訪れた民藝運動家の柳宗悦によって
高く評価されました。
今も地元久慈で採れる粘土と釉薬で主に日常食器を製造し、
地元の暮らしに寄り添い、ひとつひとつ手作りしています。
 

 
 
岩手・野田村の山あいに工房を構える
陶芸家の泉田之也(いずみだゆきや)さんは、
小久慈焼」の窯元・岳芳さんに師事した後、
平成7(1995)年、野田村に「のだ窯」を開窯。
平成10(1998)年には穴窯での焼成も始めました。
 
泉田さんは、地元・野田村や久慈の土をベースに、
他にも、野田玉川鉱山で算出されたバラ鉱石を使うなど、
地元にこだわった、風土性豊かな暮らしの器を作り、
数々のコンテストでも高い評価を得ています。
 

 
平成26(2014)年、泉田さんは、
外見からは、鉄板、岩、木のように見える花器を制作しました。
泉田さんは「(生命の)土台でありたい」と語った。
 
平成23(2011)年の東日本大震災では
野田村にも大津波が襲来し、37人が犠牲となりました。
泉田さんは自然を前に無力感を覚え1週間呆然としてしまいましたが、
その後、震災を感じるようなものを作りたくなり、
何かが湧き上がってくるのではないかと考え、
花器の制作に取り掛かりました。
 
太平洋を望む海岸で採取する粘土は粘り気が不足しているため、
焼き物には適してはいません。
ですが、地球の記憶を刻み込んだ地層から採った土を
使うことにこだわりがある泉田さんは、
他の産地の土を混ぜて粘り気を出し、
和紙に余分な水気を吸収させることで問題を解決。
 
素焼きを終えると、3種類の化粧土を表面に塗っていきます。
目指すのは村の海岸の地層。
泉田さんは
「震災後の人々の行動は再生で、
 傷つけられても前に行こうとする力強さ。
 根底にある生命力を震災後、感じました。
 自分の心にある圧力を解放していきたい」
とおっしゃいました。
 

 
  • 住所:〒028-8202
       岩手県九戸郡野田村玉川5-79-17
  • 電話:0194-78-3403
 
 
 

2.najimi(今野陽介さん、「台焼」窯元・杉村峰秀さん)

 
岩手県の中西部に位置する花巻市は宮沢賢治の故郷であり、
「花巻温泉郷」を擁する観光地です。

 
岩手県の名物である「わんこそば」発祥の地でもあります。

 
花巻市では、平成27(2015)年8月から
「花巻市地域おこし協力隊
 (イーハトーブ地域おこしプロジェクトチーム)」を結成、
花巻の活性化のために働いてくれる人を募集しています。
 
令和元(2019)年の地域おこし協力隊のミッションは
「花巻における伝統工芸の継承と活性化の未来を切り拓く」こと。
当時、大学4年生であった三重県出身の今野陽介(こんの ようすけ)さんは、
自分が就活のタイミングで募集が始まったことは運命だと思い、
この地域おこし協力隊の応募し、採用されました。
 

krt.smout.jp

 
今野さんはすぐに花巻市に来て、
伝統工芸を広める活動をする中、
明治28(1895)年開窯の130年近い歴史がある
「台焼」に魅せられます。
窯元の5代目・杉村峰秀さんと打ち解け、
以来、「台焼」を学び始めます。
と同時に、「両手に持った時、
安心するような、ぬくもりが伝わるような器を」と提案。
これは片手で持つことを前提とした器を手掛けてきた
杉村さんにとって新たな挑戦でした。
工房に来てくれる人に試作品を持ってもらったりして、
形状が決定。
絵柄は、先代達が編み出した馴染み深いものにしました。
 
こうしてフリーカップ「najimi」は完成。
令和3(2021)年1月からネット上で販売を開始すると、
大きな反響を呼びました。
 

hibikogeihanamaki.stores.jp

 
また今野さんは協力隊員としての任期が終わるタイミングで、
今後は本格的に陶芸家を目指すことを決断。
更にこれまでこれまでの総決算ということで作品展を開催。
カップや茶道具などおよそ100点を展示しました。
また会場で、粘土をこねてろくろで茶碗をつくる実演を行い、
訪れた人達が見入っていました。
 

 
今野さんを指導した杉村峰秀さんは
震災後に塞ぎ込みがちだったそうですが、
今野さんとの出会いで器作りに情熱が持てるようになったと
おっしゃいます。
そして今野さんの作品は清楚で品があり、素晴らしい。
これから、どうのように成長していくか期待しているとも
おっしゃっていました。
 

 
「台焼」は、明治28(1895)年にかつて台温泉で焼かれていた「湯ノ沢焼(小瀬川焼)」の窯を利用して始めた、
花巻温泉の台に誕生した窯元です。
地元岩手・花巻から採れる良質の陶石を使った、
東北では珍しい磁器の窯です。
初代の杉村勘兵衛は、寒国の風土にも堪える、堅牢で雅致のある製品を目指し、白磁器は先進地の水準に迫り、大正11(1922)年の平和博覧会で入賞し、その代表作は
花巻市の文化財になっています。
昭和に入り、現在の花巻温泉に窯を移し、
現在は五代目・峰秀さんが製作に携わっています。
窯は登り窯とガス窯を使い、磁器では白磁染付、青磁、辰砂等及び陶器を製作しています。
「糖青磁釉」という薄緑の色合いが特徴の焼き物です。
 
台焼
  • 住所:〒025-0304
       岩手県花巻市湯本第2地割9番地2
  • 電話:0198-27-2622
 

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