平成26(2014)年、「日本の手漉和紙技術」が
「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。
登録されたのは、
の3件です。
「小川和紙・細川紙」は、
埼玉県のほぼ中央部、秩父郡東秩父村及び比企郡小川町で
伝承されている「流し漉きの未晒紙」です。
未晒しの純楮紙ならではの強靭さと、素朴ながら艶やかな光沢を持ち、
地合が締まり、紙面が毛羽立ちにくく、剛直で雅味に富んだ味わいがあります。
小川町の和紙の中で
今も昔ながらの製法と材料で作られるのが、
「細川紙」です。
一口に和紙と言っても、
「楮」(こうぞ)「雁皮」(がんぴ)「三椏」(みつまた)といった
昔ながらの原料を100%使用したものとは限りません。
今では様々な用途に応じて、
塩素漂白や原料のブレンドが行われていたり、
また今は和紙と言っても
外国産の原料や木材パルプなどが
原料にブレンドされているものが多くなっていたりもします。
そんな和紙の中で、
国産の「楮」(こうぞ)だけを使い、
「漂白剤」を使わず、
「トロロアオイ」を加えて、
手で漉く「細川紙」は、
1000年もつ可能性がある大変貴重な紙と言われ、
昭和53(1978)年、
国の「重要無形文化財」に指定されています。
この手漉き和紙の歴史は、
宝亀5(744)年の「正倉院文書」に
武蔵紙の記録が見られることから、
1300年以上の歴史があるものと考えられています。
しかしその後、中世における状況は明らかでなく、
和紙に関する資料が見られるのは
江戸時代になってからになります。
当時は「大河原紙」あるいは「小川紙」と呼ばれており、
「細川紙」の名称が登場するのは江戸中期のことです。
ところで、「細川」という地名は地元にはありません。
江戸時代中期に紀州細川村(現在の高野町細川地区)で漉かれていた
「細川奉書」という良質な紙の技術がこの地に伝えられたことから、
「細川」という名で大消費地江戸向けに生産を始めたのです。
「細川紙」は、和紙の強靭さや高い保存性が人気となり、
この地域は和紙の一大産地として発展しました。
「細川紙」は、国内産の楮(こうぞ)を原料とし、
伝統的な方法と用具で作られます。
地合いが締まって美しく、紙面が毛羽立たず、
極めて強靭なのが特徴です。
主として帳簿用の紙として重宝されてきましたが、
文書記録用や反物などを包む文庫紙(たとう紙)にも
用いられるようになりました。
有名な「江戸からかみ」の地紙にも使用されています。
「小川和紙・細川紙」は、
書道用の半紙や版画紙、障子紙や掛軸の裏紙、
また和傘、提灯、紙の器など、その用途は多岐に渡ります。
和紙の強靭さや高い保存性は、
100年の使用にも耐えられるもので、
その丈夫さは海外でも高く評価され、
ヨーロッパの美術館では、
絵画の修復に極薄の和紙が用いられています。