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美の壺「きらめきの シャンデリア」 <File509>

<番組紹介>
空間に華やぎを与えるシャンデリア。
 ▽豪華絢爛!明治の社交界を今に伝える
  日本最高峰のシャンデリアが登場
 ▽気鋭のガラス作家が生み出す、光と影のアート。
 ▽光のデザイナー石井幹子さんが追求したきらめき。
  クリスタルガラスから溢れる七色の光にうっとり!
 ▽時代の趣を残すアンティーク。
  様々な装飾に込められた秘密とは?
 ▽和紙を使った癒やしのシャンデリアも登場!
  進化を続けるシャンデリアの魅力に迫る!
 
人が集う場に華やぎをもたらす シャンデリア。
時代毎に、贅が尽くされてきました。
まるで大きな宝石箱。
そのきらめきに心を奪われます。
今回は、シャンデリアの、
まばゆくも神秘的な世界に酔いしれるとしましょう。
 
 
 

美の壺1.光が咲かせる魅惑のアート

 

サントリーホールロビーにあるシャンデリア「光のシンフォニー」
(照明デザイナー・石井幹子さん)

 
東京・赤坂にあるクラシック音楽ホールの「サントリーホール」。
ロビーに入っていくと、
「光のシンフォニー」をテーマに作られたというシャンデリアに
目が釘付けになります。
開館以来、世界の一流音楽家達の演奏に華を添えてきました。
 
このシャンデリアをデザインしたのは、
石井幹子(いしいもとこ)さんです。
6630個ものクリスタルガラス。
今にもこぼれ落ちそうなきらめきです。
「お客様がお入りになって、一番最初に見えるものなんですね。
 これだけきらめきますと、
 お客様の目の中に一杯、星のように光が入るんですよ。」
注目は光の色。
透明なガラスから魔法のように放たれる7色の光。
ガラスの細かいカッティングが光を屈折させることで生まれる現象です。
 
 
  • 住所:〒107-0052
       東京都港区赤坂1丁目13−1
  • 電話:03-3505-1001
 
 

iino naho glass garden・ガラス工芸家・イイノナホさん)


www.youtube.com

 
ガラス作家のイイノナホさんが
デザイン、制作しているガラス工房です。
東京・千駄ヶ谷にあるお店には、
イイノナホさんの手作りの器や照明が並んでいます。
シャンデリアも個性的なデザイン。
豊かなガラスの表情から溢れる、柔らかい光が特徴です。
 
イイノナホさんは、武蔵野美術大学卒業後、
シアトルのガラススクールでガラス制作を学び、
平成9(1997)年より作家活動を開始し、
平成19(2007)年に「iino naho glass garden」を設立。
Art Workを中心に、食器、花器、ガラスの照明、インダストリアルデザインからテキスタイルデザインやグラフィックデザインまで幅広く手掛けています。
 
中でも幻想的な光の景色を作るのが、
「時の花」と名付けた作品です。
光を浴びた様は、たった今、満開を迎えた花々のようです。
シャンデリアを構成する400枚近くのガラスの花の中には、
流れるような模様が入り、
一枚一枚、全て異なる表情を見せています。
 
「ガラスって、
 やっぱり光を通して生きていくもののような気もするので、
 光を当てると、
 より生き生きと してくるっていイメージはあります。
 きらびやかなガラスのシャンデリアとはまた違って、
 丸みがあったり、温かみっていうのを
 感じていただいてるのかもしれないです。
 

 
光に温かみを宿すような表情豊かなガラス。
一つ一つの個性をどのように生み出しているんでしょう?
 
イイノナホさん、
炉に火が入れ、ガラスとの対話を始めます。
まず、束ねた色ガラスを溶かして、
花の模様となる部分を作っていきます。
1日5~6時間、炉の前に立って
刻々と変化していくガラスを見詰めながら、
最も美しい姿になる瞬間を探っていきます。
 
軟らかくなったガラスを2人掛かりで引き伸ばし、
それをカットしていくと、断面に模様が現れました。
ガラスのかけらを集めて花を作ります。
 
移ろう時の流れを表した「時の花」。
豊かな時間を演出する光のアート。
それが シャンデリアの魅力です。
 
 

美の壺2.時代を写す装飾

 

アンティークショップのシャンデリア
(東京世田谷区三宿「ザ・グローブ アンティークス」店長の板橋伶さん)

東京世田谷区三宿の交差点に程近い
英国アンティークショップ
様々な年代の、趣のあるシャンデリアが並んでいます。
 
その多くは、イギリスやベルギーなどで買い付けをしたもので、
中には100年以上前のものもあるのだそうです。
「シャンデリア(chandelier)」という名前は、
ラテン語で「輝く」という意味の
「カンデレ」から来たとも言われています。
 
100年程前にフランスで作られた王冠を模したシャンデリアは、
教会で使われていたそうで、所々に天使がいます。
そして、吊り下がった無数のガラスは剣の形。
 
王道のシャンデリアは、
18世紀に流行した「マリア・テレジアスタイル」です。
オーストリアの女帝マリア・テレジアが、
ボヘミアのガラス職人に命じて作らせたことから、
この名が付きました。
流れるような曲線を描く真鍮のアームを
高価なクリスタルガラスが覆い、
繋ぎ目の部分にはバラの模様があしらわれています。
形の華やかさに加え、
光の反射も計算に入れた画期的なデザインは、
どんな場にも映えます。
 
 
  • 住所:〒154-0001
       東京都世田谷区池尻2丁目7-8
  • 電話:03-5430-3662
 
 

美術史家・由水常雄さん

 
美術史家の由水常雄(よしみずつねお)さんが
シャンデリアの歴史を解説して下さいました。
由水さんは、現在は箱根ガラスの森美術館顧問で、
ガラス工芸に関する著作を多数執筆される他、
ガラス工芸作家として自らの作品も制作されています。
 
《参考》
シャンデリアが登場したのは、
紀元前ギリシャ、ローマ時代と言われています。
当時、光源として蝋燭は高価だったため、
宮殿や寺院など特別な場所で使用されていました。
このような建物は石造りで、天井が高いため、
明かりを灯すためには、天井から多数の蝋燭を
吊して使用していました。
これが「シャンデリア」の始まり・・・だそうです。
 
中世初期の6世紀に
東ローマ帝国で使われていたとされるシャンデリアは、
複数のオイルランプを吊り下げるためだけのシンプルな形状です。
 
11世紀の教会のシャンデリアには装飾性も加わって、
形も大きくなっています。
 
《参考》
11世紀に入ると本格的なシャンデリアが登場します。
「王冠型」とか「車輪型」と呼ばれるデザインが中心で、
ロマネスク調の寺院でも使用されていたことから
「ロマネスク風」とも呼ばれています。
 
大きな転機は、17世紀のフランス。
ルイ14世は、自身の宮殿を
誰も見たことのないほど豪華な装飾で包もうと、
シャンデリアに貴重な水晶をふんだんに吊り下げたのです。
これが評判を呼び、ヨーロッパ中の宮殿に広まり、
後のデザインの原型となりました。
 
《参考》
頂点に花束があしらわれた「花瓶型」もしくは
「竪琴型」の銅メッキの軸にきらびやかな水晶を
装飾したものが流行しました。
 
 

生活史研究家・小泉和子さん(小泉和子生活史研究所)

 
小泉和子さんは、小泉和子生活史研究所の所長で、
登録有形文化財「昭和のくらし博物館」の館長です。
父の建築技師・小泉孝さんが自ら設計施工した自宅で、
平成11(1999)年から一般に公開されています。
 
  • 住所:〒146-0084
       東京都大田区南久が原2丁目26−19
  • 電話:03-3750-1808
 
 

迎賓館赤坂離宮」のシャンデリア


www.youtube.com

 
明治42(1909)年に東宮御所として建てられた、
明治日本の究極の西洋建築です。
 
最も豪華なシャンデリアは、舞踏室として作られた客間にあります。
重さ約800kg、フランスから輸入したものです。
 
華やかで美しいです。
細かい飾りを見ていくと、ユニークな細工が施されています。
例えば鹿鳴館なら、テーマは「舞踏会」。
そして赤坂離宮のテーマは「仮面」。
ラッパやバイオリンの細工が施されています。
文明開化で華やぐ、社交界の喧騒が明かりの下でさざめいています。
 

www.geihinkan.go.jp

  • 住所:〒107-0051
       東京都港区元赤坂2-1-1
  • 電話:03-3478-1111(代表)
       - 一般参観に関するお問合せ -
        03-5728-7788(テレフォンサービス)
 
 

美の壺3.心潤す癒やしの灯り

 

和紙のランプシェード
(「ながはる」専属和紙デザイナー・小林順子さん)

和紙を使った照明作品を作り続けている小林順子さん。
新しいシャンデリアの制作に取り組んでいます。
モチーフは「滴り落ちる雫」。
 
繊維が丈夫で、加工に強いのが特徴の「楮」の樹皮を
ゆっくりと丁寧に伸ばして、光が透ける程の薄さにします。
広げると、植物の根っこや枝分かれを思わせる
不規則な自然の模様が現れました。
 
今にも滴りそうな雫の形にするために、
水が入った風船を型に、
繊維が横に流れるイメージで貼り付けていきます。
 
「植物の繊維感が、
 そのままダイレクトに見えるような形のデザインですので、
 出来るだけこの樹皮の表情を壊さないように、
 森の中にいるような感じで
 仕上げれたらいいなと思ってます。」
 
乾かして固まったら、風船の水を抜いて完成です。
「森の雫」と名付けました。
 
  • 住所:〒161-0031
       東京都新宿区西落合1-30-22
       長春ビル1F
  • 電話:03-5996-1751
 
 

ドライフラワーが彩るシャンデリア
(フラワーデザイナー・鈴木奈緒子さん
 「グリーンショップ オレガノ」/online shop「ジィール」)

神戸市のフラワーデザイナー・鈴木奈緒子さんは、
シャンデリアに、何とドライフラワー巻きつけています。
その作品は、まるで心地よい明かりに誘われた植物が
シャンデリアを棲み処にしてしまった・・・そんな風情です。
 
鈴木さんがこれらの作品を作り始めたのは12年前。
初めてのパリでお花屋さん巡りをしていた際に出会った
「アイアン(鉄)」と「ドライフラワー」の組み合わせに惹かれて以来、
追求していらっしゃるのだそうです。
 
「アイアンで出来た燭台に、
 モス・・・フィンランドの苔の一種なんですけれど、
 それをグルグル、グルグル、ワイヤーで巻きつけてて、
 もう、それがすっごく可愛くて。」
 
シャンデリアの蝋燭のような明かりに
魅力を感じていたという鈴木さん。
スモーキーなドライフラワーに合わせてみたいと
考えるようになりました。
 
あじさいのドライフラワーをメインに、
明かりがキレイに見えるよう、位置を探っていきます。
流れを出すために使うのは、ヘクソカズラ。
敢えて、歪に、儚い印象になるよう生けていきます。
 
「明るさのための照明とかじゃなくて、
 癒やされるための。
 自分で作っといてなんですけど・・・、
 ドライフラワーのちょっと見え隠れする光が
 凄くいいなって思うので。」
 
様々に姿を変えるシャンデリア。
常に人々の心を照らし続けています。
 
  • 住 所:〒410-2143
        兵庫県神戸市中央区山本通2-4-24
        リランズゲート1-5B
  • 電 話:080-4663-2847
  • open:12:00-17:00(closed 土日祝)
 

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