<番組紹介>
宝塚歌劇団では、娘役はアクセサリーを手作り?!
元娘役の桜咲彩花さんがビーズアクセサリーを公開!
▽みそ汁や日本酒も?!
フランスの技で作る新感覚のブローチ
▽日本は、世界有数のガラス製ビーズの生産国!
世界の高級ブランドがこぞって使う、
ガラス製ビーズの驚きの製法
▽30万個のガラスビーズからなる
「オートクチュールドレス」
▽昭和レトロな「ビーズバッグ」。
日本刺繍(ししゅう)の技とは?!
<初回放送:令和2(2020)年12月18日>
ガラスなどに穴を開けた ビーズ。
小さいけれど、その可能性は無限大です。
世界の国々をモチーフにしたゴージャスなドレス。
東京タワーに、渋谷のスクランブル交差点に、
昭和レトロのビーズバッグ。
着物の柄のような模様と職人の技が今、再び注目されています。
フランスで修業した刺繍家が手掛ける
ユーモアたっぷりのビーズのブローチも。
日本は直径数㎜のガラス製のビーズでは、世界有数の生産国です。
その質の高さから、海外の高級ブランドからの注文が絶えません。
今回は、小さな粒が作り出す豊かなビーズの世界が紹介されました。
美の壺1.笑みこぼれるビーズ
ビーズアクセサリー(宝塚花組娘役・桜咲彩花さん)
昨年まで花組の娘役スターとして活躍されていた、
桜咲彩花(おうさきあやか)さんによると、
宝塚入団当初、娘役の先輩方が
舞台用のアクセサリーを自分で作っているの見て
大変驚いたそうです。
「劇団が飾りを出してくれる場合もあるんですけれども、
娘役さんのほとんどは、皆さん、手作りで。
公演間際には部屋中にビーズを広げて、
夜な夜な作って・・・という形でしたね。」
桜咲さんが現役時代に作ったアクセサリーは
数百点にも及び、その多くにビーズが使われています。
「これは『アイラブアインシュタイン』という
バウホール公演があったんですけれども。
そちらのフィナーレナンバーで着けさせて頂いた
髪飾りになるんです。
透明なビーズから、こう、だんだん薄い水色になって、
最後は濃い水色になるという、グラデーションな飾りにしまして。
実際に、舞台で照明を当てて頂くと、
本当に繊細に キラキラしてくれるので、凄く嬉しかったです。」
「こちらはですね、
ディナーショーの時に着けさせて頂いていて・・・。
竹ビーズが照明を浴びると、
すごくキラキラ光ってくれているので。
この網のやり方がすごい気に入っていて。
桜咲さん、この日のピアスも
ビーズで手作りしたものを着けていらっしゃいました。
これからも、ビーズのアクセサリー作りを続けていきたいと
おっしゃっていらっしゃいました。
フランスの技で作る新感覚のブローチ
(ビーズ刺繍・小林モー子さん)
東京・渋谷区の「maison des perles」(メゾン・デ・ ペルル)は、
刺繍家・小林モー子さんの刺繍工房です。
モー子さんの作品は、思わず、クスッと笑ってしまうような
楽しいモチーフばかりです。
「モチーフがいろいろあるので、
その日の気分とかもあったり、
今日は雨だから傘つけていこうとか、
そういうところで、楽しんで欲しいなあと思います。」
モー子さんは、文化服装学園に通っていた頃、
フランスの「オートクチュール刺繍」の存在を知り、
パリの伝統のブランドを支える刺繍工房の学校
「Ecole Lesage broderie dʼ Art 」に留学して、
技術を身につけました。
オートクチュール刺繍
オートクチュール(高級仕立て服)を手掛けるアトリエで
長い間培われて来たフランス伝統の刺繍のひとつです。
「クロシェ」という特殊なかぎ針を使って、
たくさんのビーズやスパンコールを生地の裏側から刺繍する
独特の手法「リュネヴィル刺繍」が用いられます。
「リュネヴィル刺繍」は、
1800年代の仏・リュネヴィルという街で発祥しました。
それ以来、通常の針を使ってビーズなどを刺繍するよりも
速く・正確に刺すことが可能になり、
素晴らしい刺繍が施されたドレスがたくさん生み出されて
います。
小林さんのビーズ刺繍に欠かせないのが
オートクチュール刺繍に使う特別な
「Crochet de luneville」(クロシェ・ド・リュネビル)というかぎ針です。
このかぎ針、先っぽがかぎ状になってます。
まず「フィラガン」というリュネビル刺繍用の糸に糸通し、
スパンコールや糸通しビーズを移し替えておき、
生地の裏面を見ながらチェーンステッチで縫い付けます。
刺繍の出来上がりの具合は、刺繍枠を表にひっくり返して確認をします。
刺繍の途中で、キラキラと輝く美しいスパンコールや
ビーズでびっしりと埋め尽くされた表面を目にするたびに、
このリュネビル刺繍の虜になっていくのだそうです。
モー子さんは、
ビーズは自由な発想を形にする魔法の宝石だと
おっしゃいます。
粒を集めて、心遊ばす・・・笑みこぼれるビーズです。
美の壺2.その輝きが世界を魅了する
世界に誇る日本製ビーズ
(グラスビーズのトーホー [TOHO BEADS])
種のように小さいガラスの「シードビーズ(Seed bead)」の
主な生産国は、日本・チェコ・China・インドですが、
中でも日本製は質が高いと言われています。
最大の特徴は、粒が揃っていて、
色や輝きにばらつきがないという点です。
シードビーズ(Seed bead)
手芸に使用されるガラス製のビーズのうち、
種 (seed) のように小さいもののこと。
中空のガラス棒を切って作られるため、
ガラス棒の直径がビーズの大きさになります。
直径や長さ、穴の位置、表面の加工方法によって
様々な種類があります。
同じ種類のビーズでも、メーカーやロットに
よって微妙に異なります。
国内で「シードビーズ」を作っているのは3社です。
どのブランドも世界トップクラスの品質で、
規格の良さでは、
他の国のビーズに比べて圧倒的と評価されています。
- トーホー株式会社
〒733-0003
広島県広島市西区三篠町2丁目19-19 - 株式会社MIYUKI
〒720-0001
広島県福山市御幸町上岩成749番地 - 松野工業株式会社(松野グラスビーズ)
〒547-0023
大阪府大阪市平野区瓜破南2丁目3番67号
昭和32(1957)年創業の国内最大手
「トーホー株式会社(TOHO BEADS)」さんに
ビーズ作りの様子を紹介していただきました。
着色料を混ぜたガラスの原料を炉に入れます。
1300度で20時間、
ドロドロに溶かしてガラス素地を作ります。
ガラス素地が出来ると、鉄板の上でこねながら冷まして、
適度な硬さに調整し、
それをパイプが通っている成形炉に入れます。
ガラス素地の中央に空気を吹き込み、
穴を開けて管状にします。
ガラス素地が細いガラス管となり、
それをそのまま30m程引っ張っていきます。
ガラス管は引っ張られていくうちに、
程よく冷えて固まり始めます。
60㎝に切り揃えられたガラス管は、
太さは基準通りか、穴の位置がブレていないか、
何度もチェックし、修正します。
小さくカットした後、
加熱した炉の中で、回転させながら角を丸めます。
炭の粉を一緒に混ぜることで、
ビーズ同士がくっついたり、穴が潰れたりするのを防ぎます。
最後に、650度から700度の熱で表面を溶かし、
ツヤを出して完成です。
僅か2㎜の粒には、芸術品のような輝きが。
精緻な美しさの裏には、職人たちの熟練の技がありました。
オートクチュールビーズ刺繍デザイナ-・田川啓二さん
動きに合わせて揺らめく
ゴッホの油絵「星月夜」がモチーフのドレス。
ゴッホの激しいタッチや絵の具のボリュームが
ビーズの質感により巧みに表現されています。
作者はビーズ刺繡のカリスマ、田川啓二さんです。
オートクチュールビーズ刺繍のデザイナーとして、
日本のビーズ界を牽引してきた田川さん。
母親が趣味でやっていたフランス刺繍に関心を持ったことが、
後に服飾やビーズ刺繍を始めるようになった
きっかけだったそうです。
大学卒業後、
一度は婦人アパレルメーカーに勤めたものの退職し、
服飾専門学校を経て、フランスの高級服メーカーに就職。
そこでビーズ刺繍と出合い、美しさに心を惹かれた田中さんは、
ビーズ刺繍の技術を独学で学び、
1989年に株式会社「チリア」を設立。
同時に、インドにアトリエを構え、
オートクチュールビーズ刺繍を手掛け、
オートクチュールドレスなどを積極的に創作してきました。
平成8(1996)年には、
東京に刺繍教室「チリアエンブロイダリースタジオ」を
開講しました。
田川さんが扱うビーズは数千種類。
田川さんはまずデザイン画を描き、
そこにどのビーズをどう使うのか、
最適なものを一つ一つ選び、
絵の上にビーズを載せて決めていきます。
総ビーズのイブニングドレスには、
30万個ものビーズが使われています。
竹ビーズで描かれたペイズリー柄には、
強い光を放つクリスタルビーズも散りばめていて、
動くたびにきらめきます。
輪郭はきっちり描き、内側と背景にビーズをランダムに埋めて、
光を乱反射させています。
今 取り組んでいるのは、
世界各国の夜景をモチーフにしたドレスです。
その国のランドマークが、
まるでレリーフのように立体的に刺繍されています。
日本は、人々が行き交う、東京・渋谷のスクランブル交差点です。
最新作はオランダです。
運河沿いに立ち並ぶ街並み、人気の自転車競技や風車、空には花火。
オランダらしい風景が緻密に組み合わされています。
あらゆる種類のビーズとスパンコールを使って、
光をいかにコントロールするかが腕の見せどころです。
美の壺3.和と洋を結ぶかけはし
ビーズの和装バッグの老舗「柏ビーズ」
2017年5月28日、
「昭和に流行ったビーズバッグ。
持っている人は捨てちゃダメだよ。
いらないと思ったら誰かに譲って。
(中略)作る人がもういない。
最早消えるのみだから」という投稿がされました。
これをきっかけに、「ビーズバッグ」が再び注目を集めました。
「ビーズバッグ」はハレの日の装いに合わせるバッグで、
昭和30年代から40年代にかけて大流行しました。
現在、日本製のビーズバッグを製造出来るのは、ごくわずか。
今も昭和のビーズの技術は守り続けてられています。
昭和11(1936)年創業の「柏ビーズ」は、千葉県柏市にある
日本には数少ない「ビーズバッグ」の工房です。
のれんを守るのは3代目の仙田和雅さんです。
仙田さんは日本刺繍の技法で「ビーズバッグ」を作ります。
「ビーズバック」が昭和に流行したのには、きっかけがありました。
「今の上皇・上皇后陛下ご成婚の際、
皇室の方がビーズのバッグをお持ちになったことから
ビーズのバッグがメジャーになったんじゃないでしょうか。」
その頃、女性たちのフォーマルな服装の定番は着物。
着物にも洋装にも合うようにと生まれたのが
「ビーズバッグ」でした。
今では、カジュアルな服に合わせて楽しむ人もいるのだとか。
和風にも、洋風にも、どちらにも馴染む「ビーズバッグ」です。
- 住所:〒277-0841
千葉県柏市あけぼの1-1-5 - 電話:04-7143-4181
ビーズフラワーアーティスト・下永瀬美奈子さん
(ビーズフラワースクール 「Candy Garden」主宰)
「ビーズフラワー」とは、
2㎜のグラスビーズを専用のカラーワイヤーに通し、
花びらや葉、 それぞれのパーツを実物大の花に仕立てていく
イタリア生まれの ビースアートです。
ビーズフラワーの歴史には諸説色々とありますが、
16世紀当時イタリアが発祥の地と言われています。
ヴェネツィアのビーズ職人の奥様達が
ガラス工芸からこぼれ出るビーズを使い、
花に仕立てたのが始まりと言われています。
下永瀬美奈子さんはアメリカでビーズフラワーと出会い、
ビーズフラワーに魅せられ、
日本に広めたビーズフラワーアーティストです。
下永瀬さんの代表作「飛翔」は、
ビーズの花が重なり合い、繋がり合って生み出された形をしています。
鳥が翼を広げて、天に向かって飛び立つかのようです。
「紅葉」は、秋の深まりとともに、
赤から薄茶色へと葉が変化する様子がこまやかに表現されています。
一昨年、ベネチアを訪れた下永瀬さんは、
発祥の地でありながら、今では「ビーズフラワー」が
ほとんど作られていないことに衝撃を受けました。
ここで最後の継承者、
Giovanna Poggi Marchesiさんに出会います。
(ジョバンナ・ポッジ・マルケージ)
ジョバンナさんは、「ベネチアンビーズフラワー」の
伝統を絶やさないよう尽力してきたでしたが、
その時は既に引退を決意していました。
下永瀬さんはジョバンナさんに
ベネチアンビーズフラワーの継承を約束し、
ジョバンナさんの持っていたベネチアンビーズを
全部頂いて帰ってきました。
下永瀬さんは、伝統を踏まえつつ、
ビーズフラワーの新たな表現にも取り組んでいます。
日本で開発された「光るビーズ」を使った作品「小手毬」は、
光の中では可憐な白い花が、暗闇の中では青く光る不思議な作品です。
かつて、ベネチアのビーズフラワーが旅人達を驚かせたように
日本のビーズフラワーが見る人の心を捉えます。
ベネチアと日本を結んだビーズの輝き。
ここから未来へと繋がります。