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美の壺「作り方にもミソがある 味噌」<File 535>

<番組紹介>
大豆と塩と麹だけからできる神秘の味噌。
手前みその言葉通り、
全国の蔵元自慢の味は、香りも色も千差万別。
はんなり甘い京都の白味噌に、
豆麹で作る八丁味噌は緑と黒の不思議な世界。
更に木桶や蔵に棲みつく微生物の働きで
味噌は旨さを増していく。
個性派の味噌汁からぐつぐつ煮込む土手焼き、
フランス人シェフの味噌の日仏料理まで、
世界に誇る日本の食文化・味噌の奥深さを一挙紹介。
これを見れば納得です。
<初回放送日:令和3(2019)年4月16日(金)>
 
 
味噌のもとは「大豆」「塩」「麹」の3つだけ。
「麹」には「米」「麦」「豆」などがあり、
その種類や使う量によって味噌の味も香りも千差万別です。
全国におよそ900あるという味噌蔵では、
「我こそは」と、自慢の味噌作りに励んでいらっしゃいます。
麹室には知られざる世界が!
味噌の神秘的な世界へ、足を踏み入れてみましょう。
 

 
 

美の壺1.熱い思いに育まれ

 

味噌汁の持つパワー
(実践料理研究家・みそ探訪家・岩木みさきさん)


www.youtube.com

 
 
岩木みさきさんは、
「みそ」に魅せられ、各地のみそ蔵を探訪し、
日本の伝統調味料を沢山の方の方へ伝えたいと活動しています。
 

 
岩木さんが毎朝インターネットで配信している
鮮やかで気分も上がる味噌汁は大きな反響を呼んでいます。
ラディッシュを入れたサラダ感覚のような味噌汁もあります。
 

misotan.jp

岩木さんが味噌汁にのめり込んだのには訳がありました。
10代の頃に、拒食症と過食症とひどい肌荒れに悩んだ時、
薬で治らなかった症状が食生活を見直したところ改善に成功。
メンタル面も大きく変わり、何事にもポジティブに、
自信をもって取り組めるようになりました。
それを機に食に興味を持ち、栄養の道に進みました。
 

 
岩木さんの自宅の冷蔵庫は味噌でいっぱいです。
全国の蔵元から集めに集めた味噌の数は、何と151種類。
時間を見つけては夜行バスに乗って、
一軒一軒、蔵元を訪ね歩いています。
作り方など教えを乞う中で、
味噌の奥深さと作り手の情熱を知るようになったそうです。
 

 
こだわりの味噌が雲のようにかすみのように踊り、
その沸き上がるパワーが岩木さんの想像力をかきたてます。
今日も朝のひと椀が生まれます。
 

 
 
 

老舗の信州味噌蔵
(「石井味噌」六代目・石井康介さん)

 
「信州味噌」の名前で知られ、
全国の味噌のおよそ半分を生産する長野県。
長野県内には、個性豊かな味噌蔵が100軒以上点在。
各蔵は互いに切磋琢磨しながら、
その土地ならではの気候風土・文化を生かして、
こだわりの味噌を醸しています。
 

shinshu-miso.or.jp

 
松本市にある「石井味噌」は、慶応4(1868)年創業の老舗味噌蔵です。
杉の「木桶」で、
こだわりの「信州産の大豆」と「アルプス山系の水」を使い、
昔ながらの「天然醸造」(てんねんじょうぞう)という造り方で、
全く無添加の生味噌「信州三年味噌」を製造する信州味噌の専門店です。
 

 

信州では古くから「三年味噌に余念(四年)なし」と
言われてきました。
春に仕込まれ、土用、寒を越し、
翌年の土用、寒を再び過ぎて(土用、寒を二度越す)
十分に成熟され、
翌々年つまり三年目より出荷される味噌を三年味噌と称し、
その「味・香り」は共に最高品として重宝されます。
 
 
 
早春の桃の花の咲く頃に「仕込み」を始めます。
最近では天然醸造の味噌蔵でも合理化のため
ステンレスの桶を使っている蔵も多くなりましたが、
高さ2m以上、4.5tもある杉の「木桶」で味噌をゆっくり熟成させるのが、
この蔵のこだわりです。
 

 
まず味噌の原料の「信州産大豆」をよく洗い、
大釜で柔らかく煮上げ、
簀の子の上で、一晩、ゆっくり寝かせて放冷させます。
蔵の中には昔から棲みついている麹菌や乳酸菌があり、
それが豆の表面にたっぷり付着し、蔵独特の味噌の味になります。
 
「米麴」(こめこうじ)も、
作り手の細やかな気配りによって作られています。
精選された国産米をキレイに洗浄し、蒸し上げます。
蒸し上がった国産米に種麹を万遍なく振り掛け、
二日間(48時間)、こうじ室に入れます。
そして麹が活発に生育する温度や湿度になるように、
温度が低い時は毛布をかけて温めたり、高くなったら風を送って冷まし、
入念に手を掛け、子供のように育て、「米麹」が出来上がります。
 
こうして出来上がった「大豆」「米麹」、
それに食塩を混合して杉の大桶に仕込みます。
蔵には仕込みされた順に木桶が並べられていて、
それぞれの桶には、味噌の成長記録が記されています。
 


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夏期に十分発酵した味噌は、
9月、別の大樽へ移し替える「天地返し」を行います。
木桶を替えて、味噌の上下を入れ替え、
酸素を万遍なく補給して微生物の働きを活発にすることで、
味噌の成長が促され、味に深みが増していきます。
 

 
木桶の中で暑い夏と寒い冬を越していく味噌。
美味しい味噌が出来ますように。蔵の神様も見守っています。
 

 
石井味噌」さんでは、
1年目の味噌蔵と2年目の味噌蔵は見学が出来る他、
ランチ・直売も行っています。

 石井味噌
 
 
 

美の壺2.時が醸す味わい

 

名古屋名物「どて焼き」(「島正」三代目店主・喜邑定彦さん)

 
牛のスジ肉や大根などを「八丁味噌」で煮込んだ「どて焼き」
「関東煮」や「関西煮」とは違う、名古屋独自の郷土料理です。
鉄板の上に「八丁味噌」で「土手」を作って中に水を入れ、
焦がしながら煮込むことから、
「どて焼き」と呼ばれるようになったと言われています。
「味噌おでん」とか「味噌どて」などとも呼ばれています。
 
昭和24(1949)年創業、
どて焼きの老舗「島正」3代目・喜邑定彦さんは、
毎日、鍋の前に陣取り、
真っ黒な元祖「八丁味噌」をこれでもかと使って
グツグツと煮込んでいきます。
 
「八丁味噌」は、豆味噌の中でも
最も熟成した濃厚で複雑な味が特徴です。
煮込めば煮込むほど旨味が増します。
 
大鍋の中でグツグツ煮る具は、大根、豆腐、コンニャク、卵。
「八丁味噌」の味を存分に生かすために、
「島正」では、種は敢えて主張しないもの選びます。
 
中でも一番人気は「大根」。
口当たりを良くするために、
皮を厚く剥き、繊維部分を取り除いたら、
キリっと角の立った円柱形に切って、
10日かけて味を仕込みこませます。
 
「八丁味噌」にざらめを加えた特製だれを投入して、
1日目の煮込みが始まります。
1日煮込んでは冷まし、その繰り返しを7日間。
大根の中心にまで味がムラなく滲み込んでいきます。
大根は何日煮ても煮崩れしていません。
 

 島正

  • 住所:〒460-0008
       愛知県名古屋市中区栄
       2丁目1−19
  • 電話:052-231-5977
 
 

地域が生んだ味噌「八丁味噌」

 
八帖町に残る味噌蔵
徳川家康生誕の地として知られる愛知県岡崎市。
街のシンボルは「岡崎城」。
そして今回の主役「八丁味噌」です。
かつて岡崎城から西に八丁(約870m)の所には、
「八丁村」という村がありました。
岡崎の味噌作りはこの「八丁村」で行われていたため、
いつしか村の名前に因んで
「八丁味噌」と呼ばれるようになったそうです。
現在は「八丁村」ではなく、
「八帖町」(はっちょうちょう)と呼ばれています。
 
八丁村は、
米が出来にくく大豆栽培に適していたこと、
吉良に塩田地帯があったこと、
矢作川の舟運と東海道が交わる水陸交通の要所だったこと、
徳川家により保護されたことなどから、
味噌づくりが盛んに行われていたと言われています。

八帖町の旧東海道沿いには、
今でも昔ながらの味を守るの味噌蔵が2軒残っています。
延元2(1337)年創業の「まるや八丁味噌」と
正保2(1645)年創業の「カクキュー」です。
因みに「まるや八丁味噌」の味噌蔵は、
NHKの朝の連続ドラマのロケにも使われたそうです。
 

 まるや八丁味噌

 

 カクキュー

 
 
八丁味噌(カクキュー


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「八丁味噌」は、大豆と塩だけで仕込んだ「豆味噌」です。
豆が命の味噌ですから、丸々とした粒よりだけを選びます。
大豆を蒸して種麹をまぶしたら、
麹室に入れて「豆麹」に変えていきます。
数日すると、緑の豆麹になります。
豆麹に塩を入れて仕込みに入ります。
 

 
杉で出来た巨大な木桶に入れて、木蓋を被せたら、
その上にピラミッドのように石を載せて
空気に触れさせないようにします。
 
熟練の職人4人掛かりで、
近くを流れる矢作川の河原の石を積んでいきます。
水に洗われ、角が取れた丸石を、
自然の石の形を見極めながら積んでいきます。
常に石の重心を中心に向けて積んでいきます。
実はこの積み方、
城の石垣を造る時の伝統的な手法に倣っているそうで、
石積みの堅牢さは、
コンクリートに勝るとも劣らないと言われています。
今まで地震で崩れたことがないのが自慢です。
2時間かけて、およそ350個、3tもの石が円錐形の山を作り、
一番上に帽子のように石を載せたら、完成です。
 
そうして二夏二冬(2年以上)と、
一般的な味噌に比べて長期に渡り
天然醸造でじっくり熟成させることで
「八丁味噌」に独特の苦味や渋味が生まれるのです。
 

 
 
「八丁味噌」を愛した武将・徳川家康

 
この「八丁味噌」をこよなく愛したのが、
岡崎で生まれた徳川家康です。
 
家康は常に健康を第一に考え、
食事は麦飯と栄養価の高い「八丁味噌」を中心とした
質素なものだったそうです。
その徹底した姿勢は、後に江戸に本拠を構えてからも変わらず、
わざわざ生国の三河から、
慣れ親しんだ「八丁味噌」を取り寄せ食していたほどであったとか。
その甲斐あってか、
当時としては異例の75歳という長寿を全うしたのです。
 

 
家康は、風味が良く長期保存が出来、携行にも便利な点に目をつけ、
武士の粗食として味噌を励行し、「陣中食」としても用いました。
食文化史の研究家・永山久夫さんによると、
芋のつるを味噌で煮て乾燥させ、縄のように編んだものだそうです。
そして戦の際、切って湯に入れて、
今で言う「即席味噌汁」のように食しました。
歴史物語が、味噌を一層深い味わいにしていくようです。
 
 
 

美の壺3.雅な味わい

 

白味噌の極意(「片山商店」片山秋雄さん)

 
京の雅な文化に育まれた「白味噌」の雑煮


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桂離宮の程近くに店を構える和菓子の老舗「中村軒」。
こちらの茶店での冬における主役は、
京都ならではの味がいただける「白味噌雑煮」です。
真っ白い丸餅2つとひと口大の里芋1つに、
京の雅な文化に育まれ、
その白さと甘さを最大限に生かした「白味噌」の雑煮です。
 

 中村軒

  • 住所:〒615-8021
       京都府京都市西京区桂浅原町61
  • 電話:075-381-2650
 

 
 
京丹後味噌醸造元「片山商店

 
京丹味噌醸造元「片山商店」は、
清らかな水と緑豊かな味噌醸造に適した京都丹波で、
昭和34(1959)年創業した味噌蔵です。
 
創業者の片山秋雄さんは白味噌作り70年の名人。
伝統技法を踏襲しながらも、
独自の工夫で大豆をふっくらと煮上げ、
杉室造りの「板麹製法」という独特の製法で作った
極上の「米麹」をたっぷり加えて、じっくりと天然木樽熟成させ、
大量生産体制では実現しえない豊かな味わいの
「京丹味噌」を造っています。
 
白味噌の白さと甘さを生み出す「米麹」は、
普通の味噌の3倍は使うと言います。
麹菌が米の外側を覆い、更に中にも入ることで、
理想的な「米麹」となります。
 
片山さんは、毎朝、出来たての麹をチェック。
「いい出来の麹やなあ。」片山さん会心の麹。
指先から、ふわりと胞子が飛んでいきます。
米に花と書いて「糀」。まさに純白の花が咲いています。
 
加える大豆は、蒸さずに煮ることで、味噌は白く仕上がります。
白味噌の決め手は「スピード」!
仕込みも早ければ、
熟成期間も3週間程とごく僅かで出来上がります。
初々しい「白味噌」です。
 
料理研究家・岩木みさきさんも紹介!

misotan.jp

 京丹味噌醸造元片山商店

  • 住所:〒621-0013
       京都府亀岡市大井町並河3-8-11
  • 電話:0771-23-6665
  • 京丹波 六右ヱ門(店 舗)
  • オンラインショップ
 
 

フレンチ割烹
(「ドミニク・コルビ」ドミニク・コルビさん)


www.youtube.com

 
フランス人のシェフのドミニク・コルビさんは、
日本の調味料やだし文化を取り入れた「フレンチ割烹」という、
新しいジャンルのヘルシーな料理の店「ドミニク・コルビ」の
オーナーシェフです。
 
コルビさんは15歳で料理の道に入り、
パリの「トゥールダルジャン(La Tour d'argent)」副料理長を経て、
平成6(1994)年にホテルニューオータニ東京にある
トゥールダルジャン東京店」のエグゼクティブシェフとして
初来日しました。

tourdargent.jp

 
コルビさんが来日して20数年。
この20余年の中で、日本の伝統食材や和の料理法への造詣を深め、
辿り着いたのは、バター、生クリーム、小麦粉を極力使わず、
和食材やだしを生かした和フレンチをカウンターで提供する
「フレンチ割烹」というオリジナルスタイルでした。
 

 
フランスから春の訪れを告げるホワイトアスパラが届きました。
ソース作りには、卵の黄身に刻んだエシャロットビネガー。
ここに白味噌を加えます。
アスパラの白い肌とみずみずしい香りを生かすためです。
白味噌が、フレンチに新しい風を吹き込みます。
更に京都の白味噌の雑煮をリスペクトして作った白味噌のムースに
その下に鮮やかな色を潜ませて。
白味噌とフランスのお洒落な気分が楽しめる一品になりました。
 

 
コルビさん、3年前から味噌作りに挑戦しています。
豆はフランスのレンズ豆を使っています。
空気を抜くために、木桶に投げつけます。
この味噌が完成するのは8か月後。
自然の不思議な力に操られて生まれる味噌。
世界に誇る日本の食文化です。
 

 

 ドミニク・コルビ

  • 住所:〒105-0004
      東京都港区新橋2丁目15−13
      エレガンス新橋ビル5階
  • 電話:03-6457-9934
 

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