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美の壺「青と白の粋 染付の器」 <File543>

<番組紹介>
京都の骨とう店イチオシの染付「古伊万里」。
その魅力とは?
 
 ▽食器店店主・刀根弥生さんお気に入りの
  現代作家の染付。
  夏にぴったりな料理との取り合わせを紹介!
 ▽中国・明時代末期のある期間にだけ作られた、
  謎多き「古染付」とは?
 ▽今大人気の陶芸家・村田森さんが緻密に作り出す青
 ▽染付に思いを込める、京都の夏の茶会
 ▽ロンドンでも話題の陶芸家・藤吉憲典さんが描く、
  伝統とモダンをあわせた斬新な試み!
<初回放送日:令和3(2021)年7月2日>
 
白地に青の絵柄が施された焼き物の「染付」。
全国には様々な種類があります。
キリっとした青と白のコントラストは、
料理を引き立て、食卓を涼やかに演出してくれます。
京都の夏の茶会では、「染付」に込めた思いに注目します。
いにしえの青に惹かれて研究を続ける陶芸家がいます。
また文様に魅せられた陶芸家は、伝統をモダンに変化させました。
長い歴史を持ち 今も進化し続ける「染付」の多様な魅力を紹介します。
 
 

美の壺1.万人を魅了する2色の世界

京都で古伊万里の染付を扱う骨董店「大吉」・杉本理さん

 
京都・寺町にある骨董店「大吉」の店内には
骨董や作家の作品が
小上がりや壁、棚などにびっしりと展示されています。
「染付」も様々な時代や産地のものがあり、
中でも二代目店主・杉本理(すぎもとおさむ)さんのおススメは、
「古伊万里」の「染付」です。
 
「古伊万里」は江戸時代に
肥前、現在の佐賀県と長崎県で作られた磁器で、
高級品から手頃な品まで、
伊万里の港から全国へと運ばれていきました。
 

 
「古伊万里」は、江戸時代のほぼずっと
200年以上かけて有田で作られ、全国に行き渡り、
今でも、もの凄い種類のものが日本の全国の蔵に残っています。
ですから、200年位前の器が
ちょっとしたお小遣いぐらいの値段から買うことが出来て、
普段使い出来る。
それが「古伊万里」の魅力だと思うと、杉本さんはおっしゃいます。
 
「古伊万里」の絵柄も楽しみの一つです。
江戸時代中期に作られた器には、珍しい幾何学模様が描かれています。
幕末近くになると、いろんなバラエティーの模様がいっぱい出てきて、
こういうのを探す楽しみも「古伊万里」にはあると思います。
 

 
明治時代になると、
型紙や銅版で絵柄を転写する「印判」という技法が広まります。
「印判」の染付には、手描きのものとは一味違う楽しみ方があると
杉本さんはおっしゃいます。
当時、「印判」の技術はまだ安定していなかったため、
未熟な感じの面白さ、キッチリ出来てないところが面白いのだそうです。
 

 
日本やChinaの「染付」を真似た、
17世紀から盛んに作られたというオランダの「デルフト陶器」は、
錫を原料とする白い釉薬をかけているので、
ヨーグルトのような柔らかい肌合いが魅力です。
 


 
「染付」が長きに渡り各地で愛されるのには理由があると
杉本さんはおっしゃいます。
 
「例えば、もっと見た目も良くて、割れなくて清潔で安価で、
 しかも物が盛りやすいものが、デザイン的にも技術的にも、
 どれかの時代のタイミングで出来ていたら、
 それに移行すると思うんですけど。
 多分、そういう意味でこういうものは完成してしまってるんやと思います。」
 

 大 吉

  • 住所:〒604-0932
       京都府京都市中京区二条下る
       妙満寺前町452
  • 電話:075-741-3066
  • 営業時間:12:00~17:00
         (定休日:月曜日)
 
 
 

食器店「うつわshizen」(店主・刀根弥生さん)

東京・渋谷区で食器店「うつわshizen」を営む刀根弥生さんは、
普段使いの器にも並々ならぬこだわりがあります。
骨董から現代作家まで、
食卓にアクセントを与えてくれる「染付」の器が
特にお気に入りなのだそうです。
作家の意思がダイレクトに楽しめる柄を選んでいるそうです。
 
女性作家さんの鉢は描き込み過ぎてない柔らかさの中に
「染付」の絵柄のキリリとした感じが何にでも合い、
煮物やサラダなど、和にも洋にも使っているそうです。
 
合わせる素材によって全く表情を変えるのも
「染付」の魅力だと言います。
竹のカゴにそばちょこを組み合わせると、
竹の風通しのいい感じと「染付」のつるんとした涼やかさがよく合います。
ガラスの透明感も加えると、より夏らしさが目に伝わります。
赤い漆のお盆や金の盃と合わせれば、華やかなおもてなしの席にピッタリです。
 
「染付」の真価は、料理を盛りつけた時に発揮されます。
とうもろこしごはんを盛りつければ、
鮮やかな黄色が引き立つ「夏のお膳」です。
 
四角い絵柄のシンプルな丸皿と瓜形のひょろりと長い皿。
盛りつけは絵柄を少し覗かせて、
トマトの赤と黄色の縁から
角ばった染付の藍の色が見えたらキレイだろうなと思って、
鮮やかな色と「染付」の藍の色の美しさを感じたいと思いました。
 
「染付」と一口に言っても、色みも絵柄も様々。
料理をのせれば、その組み合わせは無限大。
どんな食材でも、どんな食卓でもしっかり受け止めてくれる
頼もしい器です。
 

 うつわshizen

  • 住所:〒150-0001
       東京都渋谷区神宮前2丁目21-17  
  • 電話:03-3746-1334
  • MAIL:shizengallery@gmail.com
 
 
 

美の壺2.ここにしかない青をめざして

石洞美術館(東京・足立区)

東京・足立区には、「石洞美術館」という
焼き物のコレクションで知られる美術館があります。
石洞美術館」には、
とても希少な「染付」が178件も収蔵されています。
Chinaの磁器の一大産地「景徳鎮」で、
ある期間にだけ作られた謎多き焼き物です。
 

 
収集したのは、実業家・佐藤千壽(さとうせんじゅ)です。
29歳で古染付の蒐集を始め、日本有数のコレクションを築き上げました。
 
佐藤 千壽 (さとう せんじゅ)
(1918~2008)
 
千住金属工業株式会社の社長、会長を歴任した実業家。
10代後半から美術品を収集し、「古染付」や「イスパノ・モレスク」、「茶の湯釜」など、特徴的なコレクションを作りました。
その収集品は多岐に渡りますが、何れも愛らしい作品ばかりです。
また、その収集品からは陶芸家や鋳金作家など多くの芸術家との交流を伺い知ることが出来ます。
 
「景徳鎮」は、「官窯」(かんよう)が1000年前に開窯。
磁器の原料である純白の粘土「カオリン」と燃料用の薪(松材)に恵まれた自然環境を背景に、漢の時代から磁器作りの町として始まり、磁器の都「磁都」として栄えてきました。
「景徳鎮」はかつて「昌南鎮」と呼ばれていましたが、
北宋の景徳年間の皇帝「真宗」がこの磁器を大変気に入り、
磁器の底に「景徳年製」 と記すことを命じ、
これを機に「景徳鎮」と呼ばれるようになりました。
 
 
「景徳鎮」には「官窯」(かんよう)と「民窯」(みんよう)があり、
元・明・清代を通して宮廷ご用達の「官窯」が置かれ、
皇帝や皇宮専用の磁器として数多く作られました。
一般市場向けの「民窯」は、China国内だけでなく世界各国にも輸出され、需要が増し生産が追いつかなくなったことで、
官民合同方式が励行されるようになりました。
これにより優秀な磁器原材料と工芸技術が「民窯」に流れ、
「民窯」は大きく発展。
明代・清代、「景徳鎮」は世界における地位を確立しました。
しかし中共成立後、特に1966年に始まった「文化大革命」により、完全に衰退。
1978年以降の「改革開放」後は、現在の窯に復活しました。
 
 
古染付(こそめつけ)の多くは、
日本の茶人が「景徳鎮」の民間の窯に依頼して作らせたと
考えられています。
青と白の焼き物が、当時の茶人の嗜好にピッタリだったのです。
 

sekido-museum.jp

 
縁には釉薬の「欠け落ち」が見られます。
これは釉を塗る際に、薄い縁の部分に気孔が入り、
冷却時にその気孔が弾けて釉が剥げてしまったのです。
こんな欠陥も茶人は「虫喰い」と呼んで景色として楽しみました。
 
裏側にも絵が続いています。
みかんの肌のボツボツなど、遊び心が随所に見られます。
 
Chinaの小皿は円形のものが多いのですが、
「古染付」には、円形の他にも様々な器形が見られます。
器形が多様な理由は、
日本からの注文が多かったためだと推測されています。
一風変わった器形が存在するのは、
日本の愛好家が多かった「古染付」ならではでしょう。
 
形や絵付けの面白さもさることながら、
「古染付」にはもう一つポイントがあります。
それが青の色。
景徳鎮で作られた「染付」は
宮廷用の高級品と比べると、やや鈍く沈んだ青色をしています。
これも日本の茶人の心をくすぐりました。
どこかくすんだこの青を「墨絵のような趣」と捉え、
枯淡の味わいとして好んだのです。

 

 石洞美術館

  • 住所:〒120-0038
       東京都足立区千住橋戸町23   
  • 電話:03-3888-7520
 
 

陶芸家・村田森さん(京都市北区)

 
京都市北区の山あい。
ここに「古染付」に魅了された陶芸家がいます。
村田森(しん)さんです。
村田さんは、China骨董の写しからオリジナルまで幅広い作品を手掛け、
個展を開けば日本各地からファンが集まる人気陶芸家です。
 
村田さんは、高校生の時に行った展覧会で
北大路魯山人の「古染付」の写しの皿と出会ったのがきっかけで、
陶芸家を志しました。
村田さんはこの作品に強く引かれましたと言います。
 
「凄い衝撃を受けましたね。
 単純に言うと、かっこいいなあって思ったんですけど。」
 
陶芸家となってからは、Chinaや日本の古い「染付」を徹底的に研究。
特にこだわったのが、「青」の色でした。
 
「食器で目指す青の色というのは、
 清潔感のある紺色というかね、藍色で、紫色も若干何か混じってて。」
 
「染付」の青の素となるのは「呉須」(ごす)です。
「呉須」(ごす)は、
酸化コバルトを主成分に、
鉄・マンガン・ニッケルなどを含む顔料です。
原石は黒ずんだ青緑色ですが、
粉末にして水に溶いて磁器に文様を描き、
上に釉をかけて焼くと藍色に発色します。
コバルト以外の成分の含有率によって、色みが微妙に変わります。
マンガンが多いと赤みが増し、鉄が多いと黒っぽくなります。
 
村田さんは研究の末、成分の違う「呉須」(ごす)
3種類ブレンドすることにしました。
更に「ベンガラ」を加えて「赤茶色」になった顔料で
素焼きした素地に絵付けしていきます。
釉薬によっても色の出方が変わります。
釉薬が厚く掛けると色がぼけてしまうため、厚みも慎重に調整します。
 
村田さんの器が完成しました。
緻密な作業を繰り返して辿り着いた深い藍色。
深遠なる古典の川を泳ぎ続ける鯰です。
 

 

 となりの村田

  • 住所:〒606-8334
       京都府京都市
       左京区岡崎南御所町18-11
  • 電話:075-746-6897
 
 
 

美の壺3.意匠の中に思いあり

大正9年創業茶道具店「善田昌運堂」・善田喜征さん

大正9年創業の茶道具店「善田昌運堂」に設けられた茶室では、
毎年7月の「祇園祭」に合わせて「茶会」が開かれます。
 
茶席は、この時期ならではのものにしつらえます。
7月ですので外は暑いですけども、
茶席の中は少しでも涼を感じて頂くようなそういう思いで
いつも取り合わせをしています。
 

 
床には桃山時代の祇園祭の掛け物。
青磁には、むくげと葦を合わせました。
 

 
この日の主役は、明朝末期に作られた古染付の水指です。
見た感じもすごく涼し気ですし、
この縦に筋が入って、丸文の水指というのは非常に数少ないんです。
古代インドの装身具を図案化した縁起のいい丸文。
水を連想させる縦縞の上をプカプカと漂うように浮かんでいます。

菓子器は「祥瑞」と呼ばれる17世紀の清朝の「染付」です。
唐草や亀甲などめでたい文様で埋め尽くされ、茶席を盛り上げます。
広間には長寿を願う鶴と亀。
 
代々受け継がれてきた祈りの心が散りばめられています。
こういう染付という磁器を代表するものが入ることによって、
茶席を明るく照らしてくれる。
ひいては全体の品性を上げてくれる。
バランスをよくしてくれる、そういうふうに思いますとおっしゃいます。
 

 善田昌運堂

  • 住所:〒604-8185
       京都府京都市中京区
       姉小路通烏丸東入車屋町262
  • 電話:075-221-7328
 
 
 

陶芸家・藤吉憲典さん(福岡県福津市・花祭窯)


www.youtube.com

 
 
福岡県福津市に、海外でも注目される陶芸家がいます。
藤吉憲典さんです。
 

 
藤吉さんは、元々東京で、グラフィックデザインの仕事をしていました。
22歳の時、故郷で出会ったのが有田焼の「染付」。
その絵柄がデザインとして優れていることに気付いたと言います。
 

 
絵柄には、それぞれに意味があります。
連続する文様は、めでたいことが重なるとされ好まれました。
「暦文」、無限に連なる海の波を表した「青海波」、
「福寿」の文字の繰り返しは、幸せを祈る気持ちが溢れています。
 

 
伝統の文様を使いながらも どこかに現代の感性を生かす。
それが藤吉さんの目指すところです。
藤吉さんの作品は海外でも発表され、人気となりました。
文様の意味を作品と深く結びつける斬新な試みが高く評価されました。
 

 
藤吉さんは、奇抜な表現技術は一切使わずに、
伝統的な技術だけでやっていますが、
そこを変えようとは、今のところは思ってないとおっしゃいます。
深い青が好きなので、そこを基本に変わり続けていけたらいいのかなと。
これまでも、そしてこれからも、限りなく広がる 青と白の世界です。
 

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