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美の壺「日本の筆、はけ、ブラシ」 <File545>

<番組紹介>
日本の筆・はけ・ブラシの奥深き世界
 ▽ミス・ユニバース・ジャパンのメイクを手掛ける
  お坊さんメイクアップアーティストが愛用する
  広島の熊野筆は「かわいさ」が要
 ▽将軍徳川吉宗のお墨付き!はけとブラシの老舗の品数は
  なんと800!驚くべき種類と用途
 ▽繊細な毛先に見る江戸はけ作りの技
 ▽今ブームの靴磨き・手植え靴ブラシの工房へ
 ▽世界が注目する「隠れメイドインジャパン」は
  美しき暮らしのパートナー
 
 
和紙に糊を塗っていく昔ながらの日本の刷毛。
今、ひそかに人気の靴ブラシに、メークには欠かせない化粧筆。
日本の筆・刷毛・ブラシには、用途に応じて大きさや毛、形など、
実に、たくさんの種類があることをご存じですか?
職人のこだわりが生み出す道具は、
今や世界が憧れるメード・イン・ジャパンの優れモノです。
今回の「美の壺」では、
巧みな技が隠された、シンプルで美しい筆、刷毛、ブラシの
奥深き世界が紹介されました。
 
 

美の壺1.繊細な肌触り

熊野の化粧筆
(世界的メイクアップアーティスト・西村宏堂 さん)

 
東京都内に室町時代から続く由緒あるお寺があります。
そこでお勤めをしている西村宏堂さん。
 
実はこの方、浄土宗の僧侶にしてLGBTQ活動家であり、
NYの名門パーソンズ美術大学出身の
世界的なメイクアップアーティストでもあります。
これまで、ミス・ユニバースやハリウッド女優のメイクを
任されてきました。
 
この日も、2020ミス・ユニバース日本代表の
杤木愛シャ暖望(とちぎ・あいしゃ・はるみ)さんの
メイクをされていました。
西村さんは、メークをする部分や化粧品の種類により
化粧筆を細かく使い分け、自在に操ってメークを完成させました。
 
西村さんにはお気に入りの化粧筆があります。
それは日本の「熊野筆」です。
 
 

熊野・化粧筆工房「竹宝堂
(竹森鉄舟さん)

 
 
広島県の西部に位置する広島県熊野町は、
四方を500m級の山々に囲まれた高原盆地にあり、
江戸時代から伝わる筆の製造を産業の中心として
「筆の都」として栄えてきた町です。
 
この熊野町で化粧筆専門の工房「竹宝堂(ちくほうどう)を創業した
竹森鉄舟(たけもりてっしゅう)さんは、
世界中の高級化粧品ブランドの化粧筆を手掛けてきました。
その卓越した技と厳しい目で選び抜かれた確かな品質は、
数多くの一流メークアップアーティスト、メイクブランドに支持され、
日本にとどまらず世界の最高品質として広く知られています。
 


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竹森鉄舟(たけもりてっしゅう)さんは、
熊野の筆作りの技と選りすぐりの素材から、
化粧筆を製作しています。
 
希少価値のあるリスやヤギなど、
各産地から届けられる毛の品質を厳しくチェックし、
良質のものだけを選別したら、
「硬さや太さ、クセ」などがひとつひとつ異なる天然毛を
全て均一の品質を維持するために「混毛」作業を行います。
 
 
天然毛特有の脂を取り、毛を真っ直ぐにする作業後、
「半差し」という筆作り専用の道具で、
先端のない毛や逆毛、擦れ毛を取り除く「逆毛取り」を行います。
これは、熟練した職人にしか出来ない技術です。
 
こうして「逆毛取り」を終えた「穂先」(毛の形)は
中をくり抜いた「コマ」(木型)に入れて、丸い形にしていきます。
化粧筆の命は何と言っても「穂先」です。
穂先がイメージ通り仕上がるかを左右する「コマ作り」は、
全て竹森鉄舟さんが自ら手掛けています。
竹森鉄舟さんは人形の顔を描く「面相筆」を作る家に生まれ、
父からその技を受け継ぎました。

 
穂先の形状を整えて針金で縛った後、
より完璧な形状を作るために「揉み出し」を行います。
化粧筆の善し悪しを決める最も大切な工程です。
仕上げたい穂先の形をイメージしながら、
手のひらで揉み、「穂先」の形を作っていくのです。
ひと揉みごとに目で見て毛に触れて
どこをどう揉んだらよいかを瞬時に確認します。
揉む場所を変えるだけで、穂先の形は変ってしまいます。
手のひらの感覚を頼りに「穂先」を整えていく、職人技です。
その繊細でまろやかな両手の動きは、
竹寶堂でも鉄舟さんにしか出来ない卓越した技です。
 
厳選した素材を惜しみなく使い、
技を極めた鉄舟さんの手による究極の化粧筆です。
 

 
  • 住所:〒731-4221
       広島県安芸郡熊野町出来庭6-5-5
  • 電話:082-854-0324
 
≪参考≫ 伝統工芸品:広島県「熊野筆」(くまのふで)

omotedana.hatenablog.com

 
 

美の壺2.丁寧が生み出す良きモノ

 

東京・日本橋 刷毛とブラシの老舗「江戸屋
(濵田捷利さん)


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東京・日本橋に、刷毛とブラシの老舗専門店「江戸屋」があります。
江戸屋」では800種類に及ぶ刷毛やブラシを扱っています。
創業は江戸中期の享保3(1718)年。
店の屋号は八代将軍徳川吉宗から賜ったのだそうです。
用途に合わせて作られ、使われてきた江戸の刷毛は、
庶民から大奥まで、日常の様々な場面で使われていました。

店内には、様々な刷毛やブラシがあります。
現当主の十二代目・濱田捷利さんに紹介していただきました。
漆を塗るための「漆刷毛」は、
人の髪の毛、それも30年以上乾燥させた
日本女性の髪の毛が最適だと言われていました。
 


              (注)江戸屋の刷毛ではありません。

 
 
「江戸刷毛」と名付けられた、
掛け軸や屏風、ふすまや障子などの表具に糊を塗ための
「糊刷毛」もあります。


            (注)江戸屋の刷毛ではありません。

 
 
享保年間に日用品などの良し悪しを解説した
『万金産業袋』(ばんきんすぎわいぶくろ)には、
「江戸刷毛は表具によろし…」と記されています。
当時の暮らしには、欠かせないものだったんですね。
 

  • 住所:〒103-0011
       東京都中央区日本橋大伝馬町2-16
  • 電話:03-3664-5671
 
 

東京・日本橋「経新堂 稲崎表具店
(表具師・稲崎昌仁さん)


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「江戸刷毛」とはどういうものか、
東京・日本橋に五代続く老舗表具店
経新堂 稲崎表具店(きょうしんどういなさきひょうぐてん)
表具師・稲崎昌仁さんを訪ねました。
稲崎さんのご先祖は、江戸城への出入りと苗字帯刀を許された、
筆頭の表具師でした。
 
 
表具師が使う刷毛には色々な種類があります。
 
糊を塗るのに使う「糊刷毛」、
 
貼った和紙をしっかりなでつける「なぜ刷毛」、
 
裏打ち紙を打って(叩いて)圧着させる「打ち刷毛」、
 
細かいところに糊をつけるための「切り継ぎ刷毛」
など様々です。
 
稲崎さんは、良い「江戸刷毛」について、
「強過ぎてもいけないし、弱過ぎてもいけないという、
 コシの強さというのが、一番大事になってきますよね。
 毛先に糊をつけた時、一直線に揃うのが、よい江戸刷毛。 」と
おっしゃっていらっしゃいました。
 

 
  • 住所:〒103-0007
       東京都中央区日本橋浜町2-48-7
  • 電話:03-3666-6494
 
 

東京・台東区 江戸刷毛「小林刷毛製造所」
(田中重己さん・宏平さん親子)


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今も変わらぬ技で「江戸刷毛」を作り続ける親子がいます。
小林刷毛製造所」の田中重己さん、宏平さん親子です。
父・田中重己さんは、この道64年、
「文化庁認定表具用刷毛制作選定保存技術保持者」です。
 
江戸の表具師が使った当時のままの姿で今も使われる「江戸刷毛」。
田中さんが作る刷毛は、国宝の修復にも使われています。
安土桃山時代の絵師・狩野永徳の『檜図屏風』です。
経年劣化によって、絵の具が剥落したため、
18か月かけて修復が行われました。
その時に使われたのが、田中さんの刷毛でした。
 
品質を保つためには、
自然と時間や行程がかかる職人の技だと言います。
刷毛50本分の毛先の下処理だけでも、およそ2か月がかかります。
 
「糊刷毛」に使う毛は、馬の尻尾です。
まず「先揃え」という毛先を揃える作業を行います。
刷毛にとって、毛先は命。
右手で毛先を持ち、丁寧に引き出し、揃えていきます。
次に、逆毛や毛先のないものを小刀で取り除く、
「すれ取り」を行います。
毛先を一直線に揃えることで、糊を均等に和紙につけることが出来るのです。
まさに刷毛作りの真骨頂です。
そして「仕上げ」は、檜の板を三味線の糸で綴じていきます。
 
余分なものは一切なく、
ただただ仕事をするためだけに作られた「江戸刷毛」。
丁寧な仕事が生み出した、江戸のよきものが ここにありました。
 

 

 
  • 住所:〒110-0008
       東京都台東区池之端2-7-6
  • 電話:03-3821-6296
 
 
 

美の壺3.輝きを生み出す極上のパートナー

 

大阪・中央区 「THE WAY THINGS GO
(靴磨き職人・石見豪さん)


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靴ブラシが密かなブームとなっています。
大阪のかつて「船場」と言われた辺りに、
靴ブラシがブームの今、マニアにとって、垂涎のお店があります。
大阪の船場ビルディングにある「THE WAY THINGS GO」です。
平成30(2018)年「靴磨き日本選手権」で優勝した
靴磨き職人・シューシャイナーの石見豪(いしみ ごう)さんのお店です。
 
石見さんは昭和57(1982)年生まれ。
勤めていた会社を辞めて靴磨きの道へ。
平成30(2018)年に「靴磨き日本選手権大会」で優勝し、
日本一の靴磨き職人の称号を手に入れました。
(靴磨き日本選手権大会三連覇 2018 2019 2020優勝)
 
 
その石見豪さんに、プロの靴磨きを見せていただきました。
まず馬毛のブラシで丁寧に汚れを取ります。
表面に残る古い油やろうを取り除いた後、クリームを塗っていきます。
 
次に使うのが「豚毛のブラシ」。
コシがあって硬い豚毛は、
クリームを均一に伸ばし、靴を輝かせることが出来ます。
つま先はピカピカとまるで鏡のようです。
 
最後に使うのは「ヤギのブラシ」です。
ワックスを少しの水を含ませたヤギのブラシで靴全体に行き渡らせます。
「これで終わりです」
一足にかかる時間は、40分から1時間です。
 
修業中、石見さんは3年で実に2万足を超える靴を磨いたとか。
石見さんにとって靴ブラシとは、「魂」みたいな感じだなのそうです。
 

 
  • 住所:〒541-0047
       大阪府大阪市中央区淡路町2-5-8
       船場ビルディング415
  • 電話:06-6203-0551
 
 

東京・江東区亀戸 手植えブラシ工房「寺沢ブラシ製作所」
(寺澤一久さん)


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東京・亀戸の下町の住宅街の奥に
オーダーメイドのブラシを製造販売、植替え修理をしている
ブラシ工房「寺沢ブラシ製作所」があります。
 
寺沢さんが作るブラシの毛は、何と全て「手植え」。
先代の父から受け継いだ「手植え」の技法で、
手作業で一穴ごとに手縫いをしてブラシを作っています。
「手植え」にすることで、
抜けにくく耐久性に優れているブラシが出来るのです。
 
東京の伝統工芸品「東京手植えブラシ」
近代化に伴って欧米から伝わったブラシは、
明治21(1888)年、当時百三十銀行頭取であった
松本重太郎氏によって
日本最初の刷子製造会社が設立された後、
東京・大阪を中心に発展。
幾多の研鑚を重ねた結果、
洋服ブラシ、靴ブラシ、ボディブラシなど、
幅広い製品展開を遂げてきた。
その多くが機械で作られるようになった今も、
手植えを貫いているのが「東京手植ブラシ」である。
 
オーダーメイドで作るため、
「持ち手(ハンドル)」のサイズや色、
「毛」の種類や毛丈の調整なども
注文者の好みに応じて注文が可能です。
 
大切なことの一つが、毛を植える「穴の形」です。
表は大きく、裏は小さく穴を開けていきます。
大きい穴から二つ折りにした毛の束を入れ、裏から留めるためです。
こうすることで毛が抜けにくくなります。
 
寺沢さんは、小さな穴のほうからステンレスの針金を通し、
指で毛の束を掴んで、針金で引っかけ、引っ張って留めます。
メーカーによってはナイロン糸を使うところもあるようですが、
ステンレスの方が強度が高いため、より丈夫な作りとなります。
 
寺沢さんは秤を使う訳ではなく、
手の感覚を頼りに適量を掴んで穴に植えていきます。
こうして、毛が抜けづらい耐久性など、
機械製との圧倒的な違いが生まれるのです。
 
最後に専用の工具で毛先を揃えます。
「はい、出来上がりました。」
ブラシの毛先が、まるで木の板から自然に生えてきたようです。
靴の輝きを引き立てる極上のパートナー。
今日も紳士の足元を彩ります。
 
  • 住所:〒136-0071
       東京都江東区亀戸9-35-21
  • 電話:03-3684-6938
 

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